曽田博久

秘密戦隊ゴレンジャーの脚本家はこれだけの人が書いています。

この中で、ゴレンジャーを語る上で欠かせないのはメイン脚本家の上原正三さん、高久進/新井光の師弟コンビ、そして怪作を連発した曽田博久さんの3組でしょう。23日目はゴレンジャーの中では怪作が目立つ曽田博久さんを取り上げます。

 

曽田博久さんは1947年生まれで島根県出雲市(旧:簸川郡大社町)出身。平山公夫さんの年齢は存じ上げませんが、ゴレンジャーの脚本陣ではおそらく唯一の戦後生まれです。横浜国立大学工学部に入学したのですが、新左翼運動に傾倒しました。ですが、内ゲバに嫌気がさして脱退。大学も中退しています。そんなある日、たまたま立ち寄った本屋で雑誌『シナリオ』を手にとり、これなら自分にも書けると思って脚本家を目指すことを決意し、松浦健郞さんに弟子入りします。デビュー作はタツノコプロの作品ですが、これは同門の鳥海尽三さんがタツノコプロの文芸部の部長だったため。「科学忍者隊ガッチャマン」も松浦健郞さんとの共作という形で参加しています。そしてやはり松浦健郞さんの紹介で吉川進プロデューサーがプロデュースしていた「非情のライセンス」に参加した事が縁となり、吉川進プロデューサーの作品(「キカイダー01」「ザ・ボディーガード」)に参加することになります。「秘密戦隊ゴレンジャー」に参加したのは吉川進プロデューサーの口利きでしょう。

 

高久進/新井光コンビが比較的硬派な作品を書いたのに対し、曽田博久さんは比較的軟派な怪作を連発しています。その才能は2作目となる第20話「青すじ七変化! 恐怖の毒薬博士」で早くも開花します。この話に登場する青筋仮面は吹矢で色々な薬を射ち込みます。薬の名前もおかしな名前になっています。人間が錆びたり(原理不明)、木が枯れたりします。ところが「ハシルタンX」(だったかな?)を射ち出そうとした瞬間、キレンジャーが吹矢の筒を捻じ曲げ、なんと吹矢が自分に命中。所狭しと走り回る羽目に陥ります。これはゴレンジャーの作戦で、彼が走り回るのを新命がバリブルーンで追いかけ、「血液を交換すれば治る」と彼が叫んでいるのをしっかり聞きます。これで彼の吹矢の被害者を治す方法が見つかりました。最終的にはゾルダーが陸上競技のゴールのような紐を張って強制的に止め、血液を交換。最期は「青筋仮面は青筋立てて怒ったぞ。」と叫びながら突進しているところをゴレンジャーストームで倒されてしまいました。

 

黒十字軍のホームラン王野球仮面も彼の脚本です。永井一郎さんの怪演も光っていましたが、配下のゾルダーは9人います。野球仮面も含めて全員背番号がついており、野球仮面の背番号1番から始まって、2番はキャッチャーなのかプロテクターとマスクをしており、9まで順番に続いた後、次は0番です。そして0番はこう叫びます。

0番「俺は補欠だ。」

なんと芸が細かいことでしょう。彼はゴレンジャーハリケーン・ストレートを赤バットで打ち返しますが、モモがリモコンで操作する、若干卑怯な気もする、ゴレンジャーハリケーン・変化球に敗れます。

 

極め付けは黒十字ハリケーンをひっさげて登場した牛靴仮面でしょう。黒十字ハリケーンとは、ゾルダーにファンファーレを鳴らせた後、ゾルダーが順番にエンドボールをパスして行き

ゾルダー「殺人キック、Go!」

の掛け声の後、彼がエンドボールをキックし、ゴレンジャーハリケーンと同様に何かに変化する、という技です。ですが、最初の時点では未完成でゴレンジャーを倒すには至りませんでした。その前の回(これも曽田博久さんの脚本)で海中に没したエンドボールを回収して研究しようと企てます。ところがモモとミドの活躍で偽物のエンドボールをつかまされ、黒十字総統への御披露目は大失敗。黒十字総統は八名信夫さんに代わっていましたが、彼のセリフはなんと

黒十字総統「わしゃ帰る。」

うーむ。安藤三男さんの時はこんなセリフではないはずですが、まあそれは兎に角、最終的にはゴレンジャーハリケーンクワガタムシに黒十字ハリケーン・カブトムシで対抗しますが敗れ去りました。ちなみに、「黒の十字架」を2回、「パイナップル」を1回、そして「カブトムシ」を1回放っていました。

 

上原正三さんも前後編を書いていますが、曽田博久さんもロケ絡みで連作を書いています。鳥取・島根ロケの3本と松山ロケの3本は曽田博久さんの脚本です。

 

とまあ、サブの立場だったので自由に色々とかけたのでしょう。後に上原正三さんが「太陽戦隊サンバルカン」を最後にスーパー戦隊シリーズから宇宙刑事シリーズに異動した後は曽田博久さんがスーパー戦隊シリーズのメイン脚本家になります。ただメインになってからはゴレンジャーの時のようなノビノビとした作品が減ったような気もいたします。

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