はじめに
最後に「秘密戦隊ゴレンジャー」など数々の東映特撮作品が制作された東映生田スタジオを取り上げます。
沿革
1971年当時、東映はストライキが頻発していました。当時は映画も斜陽化しており、労使関係が最悪の状態だったのです。東映は大泉撮影所を東京の拠点にしていましたが、「仮面ライダー」を制作するにあたって大泉撮影所を使用できない可能性もありました。そこで東映の内田有作が撮影の拠点として探し出してきたのが、細山スタジオという貸しスタジオで、これが東映生田スタジオになりました。その場所をOpenStreetMapで図示したのが下の地図です。
ご覧の通り、最寄駅は小田急小田原線読売ランド前駅です。よみうりランドがある山の麓にあり、その山を越えれば京王よみうりランド駅です。実際に行ってみるとわかりますが、山が迫った場所にあり、住宅地がそばにあるとは言え、山の中という印象は否めません。大泉撮影所がある東京都練馬区からも離れた場所にあるので、ある意味スト破りとなるような、「仮面ライダー」制作には格好の場所だったわけです。
とはいうものの設備が整っていたわけではなく、内田有作は「最初に訪れた時点では建物は築3 - 4年くらいでまだ新しかったが、側だけのバラックで何もない倉庫のようだった」と証言しているそうです。内田の指揮の元、「柔道一直線」の制作にも関わっていた大野剣友会のメンバーによって整備が進められたそうです。それでも設備が完全だったわけではなく、屋根がトタン屋根だったために雨が降ると同時録音での撮影やアフレコの収録は不可能で、別の場所を借りて行なうという状態でした。
そのような劣悪な環境だった事もあり、ストライキが沈静化した1978年に制作された「透明ドリちゃん」を最後に東映は撤退しました。スタジオ自体は後にCALという制作会社が使ったようですが、後に取り壊され、現在に至るというわけです。
制作された作品
東映生田スタジオで制作された作品は次の通りです。大野剣友会が技斗を担当した作品が多いですが、「ロボット刑事」、「秘密戦隊ゴレンジャー」(途中から)、「アクマイザー3」、「超神ビビューン」、「ジャッカー電撃隊」、「透明ドリちゃん」はJACがアクションを担当しています。また「5年3組魔法組」も大野剣友会が制作に関わっていません。なお「フィンガー5の大冒険」に大野剣友会が関わったかどうかについては私は何も知りません。
テレビ番組
- 仮面ライダーシリーズ
- 仮面ライダー(1971年4月 - 1973年2月)
- 仮面ライダーV3(1973年2月 - 1974年2月)
- 仮面ライダーX(1974年2月 - 10月)
- 仮面ライダーアマゾン(1974年10月 - 1975年3月)
- 仮面ライダーストロンガー(1975年4月 - 12月)
- 好き! すき!! 魔女先生(1971年10月 - 1972年3月)
- 超人バロム・1(1972年4月 - 11月)
- 変身忍者 嵐(1972年4月 - 1973年2月)
- どっこい大作(1973年1月 - 1974年3月)
- ロボット刑事(1973年4月 - 9月)
- イナズマン(1973年10月 - 1974年3月)
- イナズマンF(1974年4月 - 9月)
- 秘密戦隊ゴレンジャー(1975年4月 - 1977年3月)
- アクマイザー3(1975年10月 - 1976年6月)
- 超神ビビューン(1976年7月 - 1977年3月)
- 5年3組魔法組(1976年12月 - 1977年10月)
- 大鉄人17(1977年3月 - 11月)
- ジャッカー電撃隊(1977年4月 - 12月)
- 透明ドリちゃん(1978年1月 - 7月)
映画
- 仮面ライダーシリーズ
- 飛び出す立体映画 イナズマン(1974年)
- フィンガー5の大冒険(1974年)
- 秘密戦隊ゴレンジャー 爆弾ハリケーン(1976年)
- ジャッカー電撃隊VSゴレンジャー(1978年)
現状
スタジオ跡地へ2018年12月15日に行ってきました。現状はこのようになっています。更地になっていたのですが、北半分の山奥の場所は何かの建物になるようです。南半分は有料駐車場になっています。
すぐそばの電柱には「東映」の文字が残っています。これが唯一の痕跡と言えるでしょう。
周辺のロケ地
なお東映生田スタジオ跡地のそばは同スタジオ制作作品ロケ地の宝庫です。まず、すぐそばにある階段状の道は「仮面ライダー」制作開始時のスチール写真が撮られた場所です。本郷猛、緑川ルリ子、サイクロンなどが写っている写真などが該当します。
次に、東映生田スタジオから読売ランド前駅の方向を振り向いてみれば、そこは「秘密戦隊ゴレンジャー」第9話「黒い恐怖! 殺しの毒牙」でMr. スコットが襲撃された場所です。
右側の坂を登っていくと、「仮面ライダー」第2話「恐怖蝙蝠男」で人間蝙蝠が襲撃したマンションが見えてきます。このマンションは「仮面ライダー」で頻繁に登場します。
坂道途中の崖も「仮面ライダー」でよく映ります。
坂を登りきったところもロケでよく使われています。山の上から読売ランド前駅を見た風景ですが、これは「好き! すき!! 魔女先生」で よく映る風景です。
撮影所から山奥に入った場所もよく戦闘場所に使われています。
さて、以前は「仮面ライダー」第76話「三匹の発電怪人シードラゴン!!」でナオキ、ミツル、チョコがシードラゴンを摑まされた駄菓子屋も読売ランド前駅から東映生田スタジオまで行く道沿いに存在したのですが、現在は廃業していてどこだか特定不能でした。
とまあ、近くを散策してみると近場で撮影を済ませていたことがよくわかります。時間があったら、もっと散策してみたい場所です。
なお、山を越えた反対側の京王よみうりランド駅付近などの京王相模原線沿いもロケ地が点在しています。立ち回りの定番ロケ地だった三栄土木は今の稲城駅付近にありました。「変身忍者 嵐」は時代劇だったのでロケ地には苦労したようです。話数を忘れてしまったのですが、初期の話では山の上のお寺の建物でロケしたのに麓にある学校の建物が映ってしまった事もありました。
おわりに
「秘密戦隊ゴレンジャー」の制作拠点だった東映生田スタジオを取り上げました。既に施設は取り壊されていますが、周辺は往時を忍べる所もたくさんあります。当時の映像と今の様子を見比べるのも一興だと思います。