ゲッターロボ

はじめに

この記事では上原正三東映動画(現東映アニメーション)で手がけた「ゲッターロボ」について取り上げます。

ドロロンえん魔くん」への参加

上原正三が「ロボット刑事」の脚本を書いていたのは以前書きましたが、その後番組は東映動画が手がけた「ドロロンえん魔くん」でした。フジテレビのプロデューサーは別所孝治でしたから、その縁で上原も「ドロロンえん魔くん」に参加しました。もっともこの時点ではサブライターで全26話中6本のみ。メインライターは辻真先でした。余談ですが辻真先は山手線の車内で一周している間に脚本を1本書き上げたと平山亨が著書で書いているほど執筆時間は速かったため多作で、本当に色々な番組を担当しています。「サイボーグ009」では第1シリーズも第2シリーズも担当しています。

ゲッターロボ

さて「ドロロンえん魔くん」の後番組が1974年4月4日に放送を開始した「ゲッターロボ」です。「ドロロンえん魔くん」は永井豪原作でしたが、当時は日曜夜7時台放送の「マジンガーZ」は終盤に差し掛かろうとしている頃で、ロボットアニメが流行っていました。そのため「ドロロンえん魔くん」の後番組もロボットアニメという事になり、さらには変身ものの要素を加えて「ゲッターロボ」が作られることになったのでした。なお当初は3人が合体して1台になる案を東映動画は考案したそうですが、スポンサーのポピーがロボットを3体出した方が売れるのではないかと言い出した事により、3機の戦闘機が合体順を変えて合体する事により3つのロボットになる、というものになったのでした。

戦闘機が3機と書きましたが、主人公は流竜馬、神隼人、巴武蔵の3人。それぞれイーグル号と空陸戦に向いたゲッター1、ジャガー号と陸戦に向いたゲッター2、ベアー号と海中や悪路に向き怪力なゲッター3を操縦します。3つの形態を持つと強力に思えるかもしれませんが、マジンガーZと比べるとさほど武器は持っていませんでした。ゲッター1はゲッタービームとゲッタートマホークのみ。ゲッター2は左手がドリルで右手がペンチ。ただゲッター2は高速で走ることが可能でそれを利用したゲッタービジョンという分身幻惑技も使えます。そしてゲッター3に至っては怪力とゲッターミサイルのみでした。こうなったのは元々開発者の早乙女博士が宇宙開発用に作ったものだったからです。なので戦況に応じて各形態を使い分けるのが定番で例えばゲッター1の時に苦戦していると隼人は「竜(りょう)、俺に任せろ。」と言い、竜が「オープンゲット」と叫んで分離し、ゲッター2に再合体するという感じで戦闘が進んでいきました。ただ合体の仕方はかなり強引で金属製であるはずのゲットマシンがむくむくと変形して合体が完了するため、おもちゃは合体前のゲットマシンと、合体後のロボットがそれぞれ売られていました。「合体順を変えて」合体するということは実は6通りの形態が可能な気もしますが、それだと複雑すぎるからか、それとも制作者が単に気がつかなかっただけなのか、おそらく後者だと思いますが、3つの形態のみになっています。

敵は恐竜帝国で彼らは太古、地球を支配していました。しかしゲッター線という宇宙線に弱く、そのため地中に逃れていたのでした。その彼らが再度地上への進出を狙うのをゲッターロボが阻止するというのが大まかな流れです。恐竜帝国はメカザウルスを使ってゲッターロボと戦っていました。ボスは帝王ゴール…のはずでしたが、中盤でさらにその上に大魔神ユラーがいたことが明らかになり、途中からは中間管理職の様相を呈するようになりました。さらに幹部は戦闘指揮担当のバット将軍とメカザウルスなどの開発担当のガレリィ長官がいますが、この二人は仲が悪く、作戦が失敗に終わった時は責任の擦り合いをしておりました。これはゴールの頭痛の種だったことでしょう。

さて開発者の早乙女博士は元々ゲッターロボを宇宙開発のために開発していました。科学者らしく白衣を着てはいますが、下駄を愛用しています。また平和主義者なためかゲッターチームで諍いが起きると「今は喧嘩している時ではない。まず問題解決が先だ。」というようなことよく言って諭していました。またかなり活動的な人物でもあり、ゲットマシンや支援機であるコマンドマシンに乗ろうとしたことがありましたが、二度とも武蔵に阻止されています。早乙女博士には子供が3人おり、長兄が達人で元々は彼と早乙女研究所所員2名がゲッターロボの操縦者でした。ですが、第1話で実験用ゲッターロボのテスト中に恐竜帝国が送り込んだ先兵メカザウルス・サキに襲われて実験用ゲッターロボごと残りの所員共々戦死します。達人は浅間学園のサッカー部の指導も行なっていたため、その場に居合わせた竜が武蔵と隼人を勧誘してゲッターチームが結成されたのです。達人の妹がミチルで彼女は高校生です。そして竜達と同じ浅間学園に通っていました。ミチルの弟が元気で彼は小学生。「マジンガーZ」でいうところの兜シローのようなポジションだと思えば良いでしょう。

さて上原は「ゲッターロボ」ではメインに昇格。全51話中半分強の27話を書いています。第1話では実験用ゲッターロボが3形態に変化する様子を描いたり、ゲッター1がサキを倒したところでメカザウルス・ザイ、メカザウルス・バド、メカザウルス・ズーに取り囲まれてしまい、ピンチに陥ったところで終わりとなります。この展開は巧みですね。やはり上原は一度に複数の敵を出すのが好きなのです。元は円谷一の発案だったのですが、この面白い展開を後の話でも使っているのです。続く第2話冒頭では巴武蔵の爬虫類嫌いが発動してゲッター1の合体が解けてしまい、ゲッターチームは退散。隼人が武蔵をトカゲなどの爬虫類だらけの部屋に閉じ込めるという荒療治で武蔵の爬虫類嫌いはなんとか治癒され、最後はゲッター1、ゲッター2、そしてゲッター3がそれぞれ1体ずつメカザウルスを倒しておしまいです。2話をかけて3体のロボットの特徴を上原は見事に表現したのです。上原は第1話から第4話までを連続して書き上げ、物語の設定を見事に固めました。

それにしても1974年4月の時点では、このブログで取り上げただけでも「ゲッターロボ」の他に「イナズマンF」、「電人ザボーガー」を書いており、いずれもメインライターを務めてハイペースで書いています。本当に多作です。以後もこのペースで書いており、「電人ザボーガー」は途中で抜け、「イナズマンF」も半年で終わるものの10月からは「がんばれ!!ロボコン」が始まり、これもハイペースで書いています。この多作ぶりは驚くばかりです。

閑話休題。「ゲッターロボ」最終回も上原正三が書いていますが、こちらは前後編です。恐竜帝国の拠点のマシンランドを帝王ゴールはついに失ってしまいますが、大魔神ユラーは無敵戦艦ダイを与えます。その大きさはゲッターロボよりも遥かに巨大でメカザウルスを何体も収容できる他に戦闘機を多数発進させることができます。さらには首長竜のような首が複数あり、戦闘機はこの中から発進していました。ゲッターロボがかなう相手とは思えません。ですが、最終的には無敵戦艦ダイの登場は恐竜帝国全滅の始まりでもあったのです。早乙女博士は戦闘機の発進口にもなっている首に着目し、これにゲットマシンに搭載した合体式巨大ミサイルで内部を突く攻撃を発案します。一応訓練は行なわれましたが、本番では武蔵の操縦ミスでミサイルの合体は失敗。恐竜帝国の返り討ちにあってゲットマシンも大破してしまい、竜と隼人は重傷を負ってベッドに寝る羽目に陥りました。早乙女博士は今度はコマンドマシンにミサイルを積んで出撃しようとしましたが、それを武蔵が阻止。武蔵は無線で「必ず帰還する」と誓って出撃したのですが、恐竜帝国の攻撃により、ミサイル分離装置が故障してしまいました。それを知った武蔵はそのまま内部に突撃して爆発。これにより無敵戦艦ダイは暴走し、恐竜帝国のゴールや大魔神ユラーやガレリィ長官ら恐竜帝国の面々を踏み潰し、かくして恐竜帝国は全滅したのでした。

さて武蔵は原作漫画でも死亡しますが、漫画の描写はアニメ作品とは違うそうです。ですが、私は原作漫画を一切読んでいないので「違うそうです」としか書けません。伝え聞く話ではアニメでは竜も戦死させる案が永井豪からあがったようですが、流石に悲惨すぎるため、フジテレビが反対して武蔵のみが戦死することになったようです。

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