はじめに
1975年(昭和50年)10月5日から1977年(昭和52年)2月27日までフジテレビ系列で毎週日曜日19:00 - 19:30に全74話が放送された「UFOロボ グレンダイザー」を取り上げます。
宇宙円盤大戦争
1975年7月26日に東映まんがまつりで「宇宙円盤大戦争」というアニメ映画が上映されました。この映画の脚本を書いたのは上原正三でした。その内容は次の通りです。ヤーバン帝国に故郷・フリード星を滅ぼされたデューク・フリード王子(声はささきいさお)は敵の追撃を逃れて地球にたどりつき、宇門大介を名乗って平和に暮らしていました。しかし、捜索の魔の手はついに地球にも及び、その身柄引き渡しを要求して地球各地に攻撃の手が伸びてきます。デュークは元の姿に戻れば、もう宇門大介に戻れない事を承知で地球を護るため、UFOロボ・ガッタイガーに乗り込んでヤーバン軍に立ち向かうのです。さてこの映画、主要な登場人物は牧野牧場を営む娘の牧野ひかる(声は松島みのり)や弟の吾郎(声は清水マリ)、デュークを助けた宇門源蔵(声は久保保夫)と「UFOロボ グレンダイザー」に似ています。この映画は「UFOロボ グレンダイザー」のパイロット版に当たるのです。この映画の主題歌「戦え! 宇宙の王者」は「UFOロボ グレンダイザー」のエンディング「宇宙の王者グレンダイザー」に歌詞を変えて流用されました。音楽担当は菊池俊輔で彼も「UFOロボ グレンダイザー」をそのまま担当しています。この映画自体も「UFOロボ グレンダイザー」第72話「はるかなる故里の星」としてリメイクされました。ただし脚本は馬嶋満の担当です。
UFOロボ グレンダイザー
番組前半
さて「UFOロボ グレンダイザー」は「宇宙円盤大戦争」の設定を活かして「グレートマジンガー」の後番組として制作が始まりました。この頃、東映動画の制作体制が変更され、「グレートマジンガー」のスタッフは「鋼鉄ジーグ」へと異動となり、「UFOロボ グレンダイザー」の制作はそれまで「ゲッターロボ」や「ゲッターロボG」を制作したスタッフが行なうこととなりました。なので上原正三や菊池俊輔などが「UFOロボ グレンダイザー」も担当することになったのです。というわけで作風は「ゲッターロボ」に近いものとなりました。ただフジテレビの要望により、「UFOロボ グレンダイザー」には「マジンガーZ」の主人公兜甲児も登場することになりました。これについて上原はやりにくかったことを述べています。前半の兜甲児は「マジンガーZ」当時同様の単細胞で、自身が開発したTFOという円盤で円盤獣と戦っていました。ですが、戦力から考えても所詮はボスボロット以下の雑魚キャラでしかなく、ボスや弓さやか以上に役立っていませんでした。見ていた私は兜甲児がマジンガーZに乗ってたことは当然覚えていたのでなんだか中途半端な感じがするなあと思ったものです。その不満は中盤、ダブルスペイザーやドリルスペイザーの登場で解消されることになります。操縦者が兜甲児になったからです。
さて「ゲッターロボ」や「ゲッターロボG」のような作風は敵のベガ星連合軍の構成に顕著に現れてます。「ゲッターロボ」では恐竜帝国のキャプテンがメカザウルスを操縦し、彼らとゲッターチームとの攻防も見どころでしたし、「ゲッターロボG」でも百鬼帝国の百鬼百人衆が戦闘ロボを操縦していました。ベガ星連合軍も各コマンダーが円盤獣やベガ獣を操縦していました。コマンダーはベガ星に占領された星からやって来た者がおり、デューク・フリード(声は富山敬)の幼馴染や知り合いも登場しました。彼らとの人間ドラマも「UFOロボ グレンダイザー」の見所でもありました。これは「ゲッターロボ」と「ゲッターロボG」でも培われた作劇です。ただ本放送当時、私は小学校低学年でしたので、正直申し上げて、グレンダイザーと円盤獣やベガ獣との戦いの方にしか目が行っていませんでした。
「マジンガーZ」「グレートマジンガー」にはボスが登場しましたが、実は「UFOロボ グレンダイザー」にボスは2回ゲスト出演しています。第14話と第31話です。ただ脚本を書いたのは両方とも藤川桂介で彼は「マジンガーZ」と「グレートマジンガー」の脚本を多数書いています。当然、ボスボロットに乗って兜甲児を訪ねて来ており、第31話ではグレンダイザーが使用するスペイザーを真似たボススペイザーを製作したり、TFOを失った兜甲児にボスボロットを貸したりしていました。この友情にはデューク・フリードも感心し、兜甲児に「甲児君は羨ましいな、あんな良い友達を持って」と語っています。
デューク・フリードはフリード星の王子様ですから、兜甲児よりは思慮深い性格となっていました。兜甲児が単細胞で暴走しやすいところがあったのですが、デュークは落ち着いた性格になってバランスをとっています。今にして思えば、兜甲児の登場がいい方向に作用していたのかもしれません。
さてヒロインはシラカバ牧場の娘牧葉ひかる(声は川島千代子)です。彼は兜甲児からも好意を寄せられていましたが、それには気づかず、宇門大介に好意を寄せていました。前半は宇門大介の正体を聞かされていませんでしたが、中盤でそれを知ることになります。彼女の父親が牧葉団兵衛(声は富田耕生)でデュークを保護した宇門源蔵(声は八奈見乗児)と共同でシラカバ牧場を経営していました。キャラクターデザインの元ネタは『あばしり一家』の悪馬尻駄エ門なので「キューティーハニー」に登場するあの人と全く同じ容姿です。彼も当初は大介の素性を知らず、ひかるが大介に好意を寄せるのを苦々しく思っていました。ひかるの弟が吾郎(声は沢田和子)で彼は兜甲児と仲がよく、団兵衛を「父上」と呼んでいるので、これまた「キューティーハニー」に出てくるあの方と似てますね。あと前半はシラカバ牧場の近くの荒野牧場の息子荒野番太(声は緒方賢一)も三枚目として登場し、兜甲児に「四色旗」と呼ばれてからかわれていましたが、この人が出ていたのは高校時代に講談社の本で見るまで忘れ去っていました。
さてデューク・フリードが操縦するロボットがグレンダイザーです。普段は巨大な円盤であるスペイザーと合体しており、グレンダイザーはスペイザーと合体したまま出動し、飛行します。フリード星で作られたので宇宙空間も航行可能です。しかもフリード星の王族しか操縦できないようになっており、デュークが重傷を負ったので代わりに兜甲児が乗り込もうとした時は兜甲児を攻撃して搭乗を断念させています。兵器として開発されたためゲッターロボとは違って武器は豊富です。スペイザーもグレンダイザーも武器を持っています。
対するベガ星連合軍の構成は次の通りです。まずベガ星連合軍の総帥は強星大王ベガ(声は八奈見乗児)です。当初、この人はベガ星にいて月の裏にある前線基地スカルムーンにはいなかったのですが、第52話で消滅したため、スカルムーンにやってきます。次にスカルムーンで指揮をとるのがガンダル司令(声は富田耕生)です。この人は二重人格でレディ・ガンダル(声は沢田和子)が住んでいました。初期は顔が割れてレディ・ガンダルが登場していたのですが、第28話でガンダルが火傷の治療で整形手術を受けた後は顔が完全にスライドして登場するようになりました。その部下がブラッキー隊長(声は第2話以降が緒方賢一、第1話のみ富田耕生)でしたが、力押しの作戦ばかりが目立ち、戦果をあげられず、最終的には第27話で戦死してしまいました。ブラッキー戦死後、第28話からズリル長官(声は後の銀河万丈)が着任しましたが、彼はガンダルとは同格でした。
なお敵が操るのは前半が円盤獣で第52話からベガ獣が登場しました。円盤獣はその名の通り、円盤が変形するものでしたが、ベガ獣は普通のロボットでした。名前は最初のベガ獣キングゴリを除いて全てがギルギル、ガメガメというように二文字の繰り返しになっていました。この命名方式は永井豪の発案でしたが、いずれネーミングに苦しむことが予想されたことから、実兄の泰宇(ダイナミック企画)は当初反対したようです。ですが、最後までこの命名方式が貫かれました。
番組後半
さて先ほど少し触れましたが、グレンダイザーは後半、路線変更がなされます。それは地球製スペイザーの登場です。一番最初に登場したのは第35話に登場した空を飛ぶダブルスペイザーです。これは兜甲児が中心になって開発されました。当初はグレンダイザーと合体する機能はなく、グレンダイザーはダブルスペイザーにつかまって空を飛んでいました。スペイザーを使えばグレンダイザーは空を飛べるのですが、合体に6秒かかったり、胸部や腹部が収納された形になるので一部の武器が使えなくなるという弱点もありました。その解消のために開発されたのがダブルスペイザーです。
次に開発されたのが第41話から登場した海中潜航用のマリンスペイザーです。操縦者に抜擢されたのが牧葉ひかるでした。彼女は第23話で大介の正体を知らされてショックを受けますが、彼を手助けしたいと決心し、ダイザーチームに参加したのです。なお兜甲児は第2話でデュークの正体を知らされています。
3番目に開発されたのが第45話から登場したドリルスペイザーです。これはその名の通り、地中用のスペイザーで当初の操縦者は兜甲児でした。ですが第49話からデューク・フリードの妹マリア・グレース・フリード(声は吉田理保子)が登場し、彼女がメインパイロットになりました。当初は荒野番太をパイロットにする案もあったそうですが、没になり、マリアが登場することになったそうです。後にマリアは兜甲児に好意を抱くようになります。
なので番組後半のオープニングや出撃シーンはグレンダイザーも含めた4機が同時に出動する場面が定番になりました。それに伴って宇門研究所も改築されています。第52話までは円盤獣と戦い、第52話からはベガ獣と戦うようになりました。なお第52話は円盤獣とベガ獣キングゴリが登場しています。
さてこれはスペイザーと言えるのかどうかは微妙なところですが、ベガ星連合軍が深海に設置した海底基地を攻撃するため第67話で登場したのがウルトラサブマリンです。これは今までのスペイザーとは違ってグレンダイザーが乗り込んで操縦する形をとっており、かなり巨大です。マリンスペイザーの潜行限界深度は400メートルでしたが、ウルトラサブマリンは3000メートルまで潜れます。ズリル長官がこもっていた海底基地を破壊するという戦果をあげています。
最後に登場したのがスカルムーンを攻撃するために開発されたコズモスペシャルスペイザーです。スカルムーンとの攻防戦は第73話と第74話の前後編で描かれていました。グレンダイザーと合体するわけではありませんが、3機に別れており、操縦者は兜甲児、牧葉ひかる、そしてマリアです。
「UFOロボ グレンダイザー」は全74話続きました。これは「マジンガーZ」に次ぐ本数です。上原正三は同時期に「秘密戦隊ゴレンジャー」や「がんばれ!!ロボコン」や「大空魔竜ガイキング」なども書いていた関係で全21話程度の本数に止まっていますが、初回やブラッキー戦死、ベガ獣初登場の話など重要な話を書いています。途中から田村多津夫や馬嶋満の書く本数が増えますが、第67話までを上原は書いたのでした。