宇宙鉄人キョーダイン

はじめに

1976年4月2日から1977年3月11日まで、全48話がTBS系列で放送された毎日放送東映製作の特撮テレビ番組「宇宙鉄人キョーダイン」を取り上げます。この番組は「仮面ライダーストロンガー」のスタッフが移行したため、アクションは大野剣友会、音楽は菊池俊輔が担当しています。ただ初期の脚本は藤川桂介上原正三が中心でした。

第1話のあらすじ

葉山一家の末っ子・健治(古川聡)の誕生日パーティの最中、世界的ロボット工学者の父・葉山博士(宇佐美淳)、長兄・譲治(夏夕介)、次兄・竜治(佐々木剛)が、知識を狙って侵入して来たダダ星人によって拉致されてしまいました。

やがてダダ星人のロボット群“ダダロイド”による地球侵攻が始まりましたが、発足した地球防衛軍でははが立ちません。

1年後、円盤に乗って2体のロボットがやって来ました。それがスカイゼルとグランゼルです。葉山博士が、健治と地球をダダ星人から守るため、2人の兄の記憶・人格を全てロボットに移植した“サイバロイド”でした。健治は、父と兄が帰れない事実に戸惑うものの、2体のサイバロイドと共にダダ星人と戦うことを決意するのでした。

初期の展開

上記の通り、ヒーローは2体のサイバロイドでした。サイバロイドは電子頭脳に特定の人間の人格をコピーしたロボットで、いわば「身代わりロボット」。その人間の過去の記憶、感情、性格、癖も全て記憶しています。クローンなどとは異なりますが、遺伝子も記憶しています。なお、サイバロイドの食事はダダニウムをガソリンと混合させ料理状にした物で、腹部から伸びるチューブで摂取します。

スカイゼルは健治の長兄譲治の身代わりで作られたサイバロイドです。色は赤でオープンフェイスという機能により、顔を開くと譲治の顔(の映像)が表示されます。その名の通り、モチーフは飛行機です。

グランゼルは健治の次兄竜治の身代わりで作られたサイバロイドです。色は青でやはりオープンフェイスで竜治の顔(の映像)が表示されます。グランゼルのモチーフは自動車でした。

さて2体は巨大変身する事が可能でした。これは次の2つに大別されます。

まずスカイゼルがスカイジェットという戦闘機に変形し、グランゼルがグランミサイルに変形して攻撃するパターンです。次がグランゼルがグランカーという大型特殊自動車に変形し、そのカタパルトにスカイゼルがスカイミサイルに変形して攻撃するパターンです。グランカーは屋外で地上走行可能なものが実際に作られ、撮影に登場していました。ミサイルを発射するためのカタパルトにスカイゼルが変形せずに乗ることもありました。私はグランカーのおもちゃを持っていました。

スカイゼルとグランゼルが巨大変身するということは敵も巨大変身するということです。第6話までは敵のダダロイド(要するにダダ星から来たロボット)も変形し、スカイミサイルやグランミサイルによって倒されていました。またキョーダインは基本的に複数話で一つの話が終わるようになっており、藤川桂介が脚本を書いた第1話から第3話までと上原正三が脚本を書いた第4話から第6話までで2つの話を展開していました。

ですが、この流れは開始早々に破棄され、ダダロイドは特に巨大変身しなくなりました。明らかに制作予算の関係でしょう。なので第7話以降は等身大での戦いが中心になりました。ダダロイドの着ぐるみも「仮面ライダーストロンガー」や「秘密戦隊ゴレンジャー」などから流用されることが多くなりました。

他のレギュラーは葉山博士の助手で地球防衛軍に入った白川エツ子(堀江美都子)、キョーダインのサポートをするために一緒にベース円盤に乗ってやってきたロボットのゴンベス(声は和久井節緒)、地球防衛軍と丸井大佐(伊達正三郎)と細井軍曹(沼田爆)、さらに「はなつみの歌」の謎を解こうとしている海堂博士(天本英世)でした。細井軍曹は非常に頼りなかったのをよく覚えています。

サイバーグラフィー

さて上述した通り、当初は2体のサイバロイドが戦っていましたが、それが子供達に受けたとは言い難かったようです。第15話から、キョーダインはキョーダイヤのエネルギーにより、擬似的な仮想人格(頭脳部分の副装コンピュータに記録された細胞記号を再生して実体を作り出すサイバグラフィーによるコピー人間)とサイバロイドボディ(キョーダイン本体)とが分離し、一定のポーズを取って「インダー・○○」の掛け声で実体化した仮想人格がサイバロイドボディに入ることでキョーダインへとなるようになりました。これは従来の変身物に近づけるための苦肉の策で本放送を見ていた、当時小学生だった私もそれを察していました。なので今までは顔と声が中心で回想場面にしか登場していなかった夏夕介さんと佐々木剛さんの顔出し出演場面が激増しました。この2体のサイバーグラフィーは姿形も性格も癖も譲治や竜治と全く同じでしたが、本物とは違って自分達はキョーダインであるという自覚があり、自分達の安全よりも健治達の安全を優先する行動を常にとっていました。それは最終回に繋がる重要な伏線と言えるでしょう。たまたまそうなっただけかもしれませんが。サイバーグラフィーもそこそこ強力で雑兵のロボ兵程度とは互角に戦っていました。

ただこの路線変更もさして効かなかったようで、今度は後述するように敵側のキャラクターを変更していくことになりました。

ところで東映は1975年(昭和50年)10月7日から1976年(昭和51年)6月29日までチャンネルは違えど「アクマイザー3」という3人の悪魔が人間のために戦うドラマを制作していました。この番組も着ぐるみのみしかヒーローとして登場しなかったのですが人気が出ず、途中から主人公のザビタンが魔法力(まほうりき)かわるんだらあで南雲健二という人間に変身するようになっています。仮面ライダーとの差別化をはたそうとしたのでしょうが、難しい物ですね。なおメインシナリオライター長坂秀佳でした。最初は「チェンジサビタン」と言って変身していたのですが、豊川出身の長坂は地元の三河弁を使った方が面白いのではないかと思いつき、「魔法力かわるんだらあ」というようになったという逸話があります。上原正三琉球の言葉を色々使って遊んでいたのを思い出しますね。

ガブリン

さてダダ星の実質的な大ボスがガブリンです。これは巨大な手の形をした巨大ロボットで、手のひらに当たるところに巨大な一つ目がついていました。「ガーブリン」というだけなのですが、なぜか部下は彼の意思を理解できました。当初はダダ星にいたのですが、地球には第22話にやってきます。宇宙を自分で飛んでやってきたのです。

デス五人衆

さてガブリンは5本の指にロボットを格納していました。それがデス五人衆です。第26話からはダダロイドに代わって彼らが暗躍するようになりました。それから第39話まで、再生したのも含めて彼ら五人がキョーダインと戦うようになりました。明らかに予算削減策ですね。ただそれなりに強かったのは確かです。親指から順にデスガッター、デスギラン、デスギャット、デスバイキン、デスフラッシュがおり、当初は単体でキョーダインと戦い、敗れましたが、第32話で再生されて、以後は5人まとめて戦っていました。再生デス五人衆は後述するガブリンクイーンの指揮下に入ったこともあいまって、雑魚キャラに堕してしまった感は否めません。

ガブリンクイーン

第31話から登場したのがガブリンクイーンです。その名の通り女性でダダ星ではガブリンにつぐNo. 2です。以降は彼女が指揮をとってキョーダインと戦っていました。変装の名人で健治のクラスの担任の先生になったり、大胆にも地球防衛軍の准将に変装して潜入したこともあります。第32話からはガブリンクイーンと再生デス五人衆がキョーダインと戦う話ばかりが制作されました。

ブラックナイト

ところが第40話に転機が訪れます。作戦の失敗続きについにガブリンが怒り、デス五人衆を解体してしまったのです。で解体したデス五人衆を元に生まれたのがブラックナイトでした。彼は月光の剣を持ち、キョーダインを圧倒しました。一度は月光の剣と同じくムー帝国に伝わる太陽の剣を手に入れたキョーダインによって第41話で敗れましたが、再生され、またキョーダインを圧倒しました。キョーダインは第44話でキョーダイヤで剣を作り、ようやくブラックナイトを倒すことに成功したのでした。ですがキョーダイヤで剣を作ったためにキョーダインはサイバーグラフィー体になる(?)ことができなくなってしまい、以後は最終回までサイバロイドの姿のままでした。この時期はオープンフェイスさえもしませんでした。本当にできなくなったのか、スタッフが設定を忘れたのかは定かではありません。

最終回

さて最終回です。藤川桂介上原正三も降板し、最終回を書いたのは江連卓です。海堂博士は「はなつみの歌」を流しました。これによりダダ星のアルファタ・ダダーリン王の脳髄が目覚め、真相を葉山博士に語ります。元は開拓するための星を探せとロボットに命じていたことを。それがいつしか侵略に変わってしまったのです。ダダ星のコンピューターはそのまま機能を停止し、葉山博士、譲治、竜治はダダ星を脱出します。地球ではガブリンクイーンが倒され、健治とキョーダインは葉山博士達と再会します。とそこへガブリンが飛んできました。キョーダインは葉山一家を救うため、(唐突に登場した)エネルギー極限発生装置を発動し、葉山博士や健治の制止も振り切って特攻。ガブリンとともに宇宙の星となったのでした。

おわりに

うーむ。こうして書いていて、改めて中途半端な作品に終わってしまったなあ、と思いました。巨大変形体同士の戦いが続けば少しは違ったのかなあと、ふと思いましたが、そうでもなかったような気もします。それは兎に角、次作は巨大ロボットが主人公の「大鉄人17」になったのでした。上原が最終回を書いていないのはもしかしたら「大鉄人17」の準備のためだったのかもしれませんが、真の理由は知りません。なおTBSは「宇宙鉄人キョーダイン」を全く再放送してくれませんでした。それも致し方なかったのかもしれません。

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