電子戦隊デンジマン

はじめに

1980年2月2日から1981年1月31日まで、テレビ朝日系列で毎週土曜18:00 - 18:30 に全51話が放送された「電子戦隊デンジマン」を取り上げます。

スパイダーマン

さて「電子戦隊デンジマン」は、東京12ちゃんねる(今のテレビ東京)で放送されていた「スパイダーマン」の流れを受け継いで作られた番組です。「スパイダーマン」は東映とマーベル・コミックの「3年間にわたり、お互いのキャラクターを自由に使用してよい」という契約により生まれた番組です。1978年5月17日から1979年3月14日に掛けて、全41話が放送されました。この毎週水曜日19:30 - 20:00の枠は東映が特撮番組を放送していた枠でした。当然ヒーローはあのマーベルコミックのスパイダーマンですが、オリジナルとは違う点が盛り込まれていました。まず一つがレーサーだった山城拓也がスパイダー星人ガリアからスパイダーエキスを注入された事で体質が変化したためにクモの能力を持ち、垂直の壁に張り付く事や昇り降りする事ができるようになったことです。拓也は馬鹿でかいブレスレットをつけており、ブレスレットから取り出した強化服を着てスパイダーマンになります。そしてスパイダーマンが巨大ロボットのレオパルドンに乗って敵のマシーンベムを倒すことです。そういえば等身大で倒されたマシーンベムは数えるほどしかおりません。首領のモンスター教授(安藤三男)まで巨大化してレオパルドンと戦ったのは子供心にやり過ぎだなあと思いましたけど。

上原は第1話や最終話など主要な話を15話を書き上げましたが、書いた本数は高久進の16話の方が多くなっています。

バトルフィーバーJ

さて「スパイダーマン」は平均14%という高視聴率(当時の東京12ちゃんねるはネット局を持っていませんでした)を弾き出し、好評でした。その後継作が「バトルフィーバーJ」です。でこの番組は1979年2月3日から1980年1月26日まで、テレビ朝日系列で毎週土曜18:00 - 18:30に全52話が放送されました。あれ? なぜ放送局が違うのでしょうか? それはこの枠の前番組「闘将ダイモス」の視聴率がさほど高くはなかったために打ち切られてしまい、ちょうど同じ頃に企画が進んでいた「バトルフィーバーJ」と放送枠を交換して制作することになったからです。そんな裏事情など知らなかった私は「闘将ダイモス」の最終回を観た直後に放送された予告を観て、「アニメ番組じゃないんだ」と驚いた記憶が残っています。東京12ちゃんねるで放送された「闘将ダイモス」の流れを組む番組は「未来ロボ ダルタニアス」になりました。

さてこの番組の仮題は「キャプテンジャパン」で、元々は世界各国から集まったヒーローの活躍を描くものとして企画されました。その名残がバトルジャパン、バトルコサック、バトルフランス、バトルケニア、ミスアメリカという名称として残っています。

さて「スパイダーマン」でレオパルドンの人気が高かったため、この番組でも巨大ロボが登場することになりました。それがバトルフィーバーロボです。ところが先述した関係もあったのか、放送開始に造形が間に合わなかったため、初登場は第5話からになり、第4話までは「建造中」の様子だけが映されていました。そう。「秘密戦隊ゴレンジャー」や「ジャッカー電撃隊」とは別の流れで「バトルフィーバーJ」は企画され、制作されたのです。原作者も石ノ森章太郎ではなくて八手三郎になっています。ですので、一時は「バトルフィーバーJ」がスーパー戦隊シリーズの第1作となっていました。「バトルフィーバーJ」も高久進上原正三が交代した形で書いており、第1話は高久進が書いていますが、最終4話分は上原正三が締めています。

なおバトルフィーバーロボが戦うのは敵のエゴス怪人の弟や妹のロボットでした。でも明らかに着ぐるみはエゴス怪人の額にエゴスの紋章をつけたものばかりでしたけどね。当然、お約束として突っ込まずに観ていました。

電子戦隊デンジマン

さて「バトルフィーバーJ」の後継作が「電子戦隊デンジマン」です。この番組はその後のスーパー戦隊シリーズのフォーマットを作った番組となりました。まず一つはデンジレッド、デンジブルー、デンジイエロー、デンジグリーン、デンジピンクというように、色をモチーフとしたキャラクターになったことです。その次は顔にゴーグルが採用されたことです。実は「バトルフィーバーJ」でも検討されていたそうですが、ミスアメリカとの差がありすぎることから一旦見送られ、デンジマンから採用されています。ただアクション用には従来のような、空気穴も兼ねた覗き穴が開けられているそうです。当時はアップ用マスクの衝撃が大きすぎて気づきませんでした。なお上原正三は全51話のうち31話を書いています。

さて大河ドラマのような縦糸が設定されていたのも「電子戦隊デンジマン」の特徴で、これはヒーローも敵も同様です。主人公は遥か3000年前にベーダー一族に滅ぼされたデンジ星からやってきたデンジ星人の末裔です。デンジ星が滅ぼされた経緯は第7話で描かれていますが、デンジマンの基地デンジランドが地球へやってきた様子は第1話冒頭で描かれています。

対するベーダー一族は首領に当たるのがヘドリアン女王(曽我町子)、その次がヘドラー将軍(藤堂新二)、女王の侍女がミラーとケラーです。ミラーはその名の通り、ヘドリアン女王が使う鏡や水晶玉にもなります。ケラーは女王の盾にもなります。ベーダー一族はヘドリアン女王以外は皆「○○ラー」という名前で統一されており、「太陽戦隊サンバルカン」に登場するアマゾンキラーもその命名規則に従っています。

デンジマンの変身後の名前を先に書いてしまいましたが、変身するのは赤城一平、青梅大五郎、黄山純、緑川達也、そして桃井あきらと変身後の名前と繋がりがあります。赤城は格闘家で青梅は元サーカス団員。黄山は元科学者。元刑事の緑川は刑事だった父をベーダー怪物のムササビラーに殺され、元プロテニスプレイヤーだった桃井も同じくムササビラーにコーチを殺されています。その直後にデンジ星からやってきたロボット犬アイシーに選抜されて電子戦隊デンジマンになったという経緯があります。ただ桃井は第2話でテニスプレイヤーになる夢を捨てきれず、電子戦隊をやめようとしましたが、直後にシャボンラーに襲われ、他のメンバーにその危機を救われたことにより、デンジマンに戻りました。以後、5人はアスレチッククラブに就職することになりました。青梅はあんぱん好きでロッカーには山のように入っている他、しょっちゅう食べていました。これは演じた大葉健二の発案です。当初は黄山が「カレー好きのようなもの」を割り当てられる予定だったようですが、これを演じた津山栄一が「自分のイメージとは違う」と難色を示したところ、大葉が進んで引き受けてそうなったようです。そういえばバトルコサックや一条寺烈も三枚目なところがありましたね。野生児だとか、お金を持っていなくてピーピー言っているとか。

さてデンジマンの必殺技はデンジブーメランと電子稲妻落としの2つがあります。デンジブーメランは5人が集まり、各人が手に持つデンジスティックを5本一緒にして飛ばして斬り殺す技で、電子稲妻落としは各人がジャンプしてベーダー怪物の脳天にデンジスティックを同時にぶつける技です。映画では電子稲妻落としが使われていますが、デンジブーメランの方が印象深いですね。でその直後にベーダー怪物は巨大化。デンジレッドが万能戦艦デンジタイガーを呼び出し、その中から巨大戦闘機のデンジファイターが発進。デンジファイターは巨大ロボットのダイデンジンに変形し、デンジマンが乗り込み、戦うのです。ダイデンジンは色々な武器を駆使しますが、最後はデンジ剣・電子満月斬りでベーダー怪物を倒します。余談ですが、ダイデンジンに乗り込む時、デンジマンの5人は立っているダイデンジンまで走って搭乗するのですが、なぜベーダー怪物はダイデンジンに乗り込むまで待っているのかは突っ込んではいけないお約束です。

初の第三勢力 バンリキ大魔王

さてデンジマンを語る上で避けて通れないのが初の第三勢力バンリキ大魔王(大前均)でしょう。この人は第37話「蛮力バンリキ魔王」 (脚本:曽田博久、監督:小林義明)から登場したへび座暗黒星雲から来た宇宙を放浪する無法者です。巨大化してダイデンジンのデンジ剣を真剣白刃取りするという圧倒的な力を見せた後、ベーダー一族に加わってしまいました。ただ当初は宮殿で食っちゃ寝、食っちゃ寝しており、ヘドリアン女王に「一緒に一杯やらんか」と誘って「無礼者」と罵られたり、その後も女王に「食って飲んで寝る、まるで豚じゃ」と軽蔑されるなど遊び呆けていました。ですが、この人、ベーダー一族を乗っ取るという野望を隠し持っており、それが露わになって大暴れするのが第48話から始まる最終4部作です。もちろん脚本を書いたのは上原正三です。

まず大魔王はベーダー怪物のサッカラーを勲章を餌に裏切らせ、反乱を起こします。ですがベーダー一族はカラクリラーとケンダマラーを誕生させ、反乱を鎮圧。途中、この3体のベーダー怪物が巨大化したまま戦うという凄い場面も描かれています。この反乱は失敗し、大魔王はマネキンと化されてしまったわけですが、大魔王には隠し球がありました。それが第49話の最後の場面から登場したバンリキモンスです。こいつは強敵で尻尾から発する念動力が最大の武器です。また口からはくガスでマネキンにされたバンリキ大魔王を解放してしまいました。勢いに乗ったバンリキ大魔王はベーダー城(書き忘れていましたがベーダー一族の本拠地です)を制圧。第50話ではヘドラー将軍が巨大化してダイデンジンと戦いますが敗れ、最終話の第51話です。デンジマンは巨大化したバンリキモンスと戦いますが、念動力の前に全くはが立たず、ダイデンジンは出動不能の状態になってしまいました。その様子を観ていた女王の側近ミラーは女王を裏切ってバンリキ大魔王の家来になった…というのは真っ赤な嘘。ミラーはバンリキ大魔王がバンリキモンスの尻尾にエネルギーを注入する様子をしっかり目撃し、ヘドリアン女王に注進します。ヘドリアン女王はミラーが変身した水晶玉を使って妖術でバンリキモンスの弱点が尻尾であることをアイシーに伝えます。

アイシー「モンスの弱点は尻尾」

さてデンジマンはアイシーの制止を振り切ってバンリキモンスと戦っていました。そこへ出動不能なはずのデンシタイガーがやってきました。ダイデンジンも動作します。そしてダイデンジンは念動力に苦戦しましたが、

アイシーの声「モンスの弱点は尻尾」

それを聞いたデンジレッドはバンリキモンスの尻尾を攻撃。念動力は止まり、ダイデンジンはバンリキモンスを倒すことに成功しました。直後にデンジマンは、アイシーがその身を犠牲にしてダイデンジンの回路になったことを知るのでした。

ちょうどその頃、バンリキ大魔王はミラーの裏切りは見せかけだと知って女王を襲いますが、ミラーとケラーを倒すことには成功したもののミラーの攻撃で失明してしまいました。大魔王はそのまま地上に出てしまったところにデンジマンと遭遇。デンジブーメランに倒されます。

残りはヘドリアン女王です。デンジマンはベーダー城に乗り込みましたが、そこには女王の虚像のみがあるのみ。ヘドリアン女王は死に、こうして戦いは終わりました。デンジマンはアイシーの功績を讃えるため、サッカー大会を開くのでした。

番組は好評のうちに終わり、次作「太陽戦隊サンバルカン」へと続きます。「電子戦隊デンジマン」はスーパー戦隊シリーズの礎を築いた作品だったと言えるでしょう。

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