(番外編)光の国から僕らのために―金城哲夫伝―

はじめに

この記事では劇団民藝が2016年と2018年に上演した「光の国から僕らのために―金城哲夫伝―」について取り上げます。

www.gekidanmingei.co.jp

光の国から僕らのために―金城哲夫伝―

この演劇は金城哲夫の生涯を題材にした演劇です。2016年には紀伊國屋サザンシアターで上演され、2018年には沖縄も含めた各地で上演されました。

この演劇は冒頭、ラジオ番組で自衛隊のヘリに乗り空から実況している金城哲夫がまるで自衛隊を賛美しているかとも受け取れる発言をしてしまい、ラジオ局に抗議の電話が殺到するところから始まります。金城は無邪気に発言したと思うのですが、沖縄に住む人には自衛隊在日アメリカ軍基地には複雑な感情を抱いています。金城の発言はそれに対する配慮が足りないのではないかと受け取られたのです。私はこの事件を冒頭に持ってきたところがとてもよかったと思いました。金城哲夫の立ち位置を象徴する事件だったからです。

この演劇は以後、2部構成となっていました。第1部では上原正三を金城が円谷一に紹介してから、ウルトラシリーズが続々と続くものの、やがて金城が帰郷するまでを描いていました。主な登場人物は金城哲夫上原正三円谷一、そして満田かずほです。

第2部では金城が帰郷し、沖縄でラジオ番組のキャスターをしたり沖縄芝居を書いたり、海洋博のプロデュースといった仕事を通して壁にぶち当たる様子を描いていました。第2部の最後では時空を超えて上原正三も登場し、金城とその後の様子(上原自身はヤマトに残り、東映などの子供番組を書いてきたこと)を語り会う場面もあります。

私が観劇した日はたまたま役者の方と観客が語り合う時間が設けられている日でした。座長を務めた、円谷一役の千葉茂則さんによれば、上原正三さんも稽古の場にお見えになったそうです。おそらく脚本を書いた畑澤聖悟などともお話しなさったと思います。

この演劇でも金城と上原は太陽と月のような関係になっていたように思います。1999年に上原正三金城哲夫を題材とした小説「金城哲夫 ウルトラマン島唄」を書いています。この小説は元々は沖縄へ帰ってからの金城を題材とした映画のために書いた脚本が元になっていたようです。上原にとって金城哲夫との交友は忘れ難いものだったに違いありません。

観客のほとんどは私よりも年配の方だったので、金城哲夫を取り上げた話がどれだけ響いたのかはわかりませんが、私にはやはり冒頭の場面が印象深く残っています。

機会があれば、今度は上原正三の物語が描かれたら良いのではないかなあと当時思いました。

adventar.org