郷秀樹

はじめに

この記事ではウルトラマンに変身する郷秀樹について取り上げます。

郷秀樹の設定

郷秀樹の設定は次の通りです。

年齢23歳。坂田自動車修理工場に勤務しながら、カーレーサーを目指していました。「帰ってきたウルトラマン」第1話の時点では、坂田自動車修理工場の主人坂田健の設計・開発中のレーシングマシン「流星号」のレーサーとして、その完成を目前に控えていました。趣味はギターで坂田アキにギターを教えてあげる場面があります。なお設定では台東区浅草在住なのだそうです。

タッコング襲来時に逃げ遅れた少年浩(藤江喜幸こと後の伍代参平)と彼の愛犬を救おうとして命を落としますが、それを目撃し、郷の正義感と勇敢さに感動したウルトラマンが(勝手に)一体化したことで復活しました。復活直後は坂田とともに流星号の開発を目指すつもりだったのですが、アーストロンとの戦いと、その直後にウルトラマンから自分が復活した経緯を聞いたことで人類の自由と幸福を脅かす敵と戦うことを決意し、MATに入隊しました。既にMATには加藤隊長を含めて隊員が5人いたのでヘルメットの番号は「6」になりました。

さて少年時代から運動神経に恵まれていましたが、ウルトラマンと一体化したことでさらにその能力が増幅されています。第2話では、剣道(上野、丘)や射撃(岸田)といった先輩隊員たちの得意種目でも初心者ながら勝利するという成績を打ち出しました。しかし、その超人的な能力に思い上がって身勝手な攻撃を行なってタッコングを逃すという過失を犯したため、加藤隊長から除隊を命じられ、坂田からも「もう組むつもりはない。」と言い放たれたことがありました。もちろん、二人の本音は郷を見捨てることではなく、郷に独りで考えて反省を促すことにありました。自らの思い上がりを悟り、人間郷秀樹としてギリギリまで頑張ることを決意した郷は、加藤の目論見通りにタッコングの上陸現場を訪れます。そして郷秀樹はウルトラマンに変身することができ、タッコングも倒された後は、加藤が郷のMATへの復帰を要請し、さらには坂田の要請で休暇の時は流星2号を開発することになったのです。

こうして心の弱さを一つ克服した郷でしたが、超能力を身に付けたことで怪獣出現の前兆を他人よりも鋭敏にキャッチできることが仇となり、事件の有無を巡って他の隊員との対立を起こすことも度々ありました。代表的なのが第3話での上野(と岸田)との対立であり、第5話での岸田との対立です。ですが、人間的に成長するにつれ、他の隊員とも打ち解けるようになります。第5話で上野は「MATを辞めた」郷にMATに戻るように説得を試みますし、第6話では上野に加えて南からも仲間として扱われています。上原正三は明確に描いていませんが、第11話の毒ガス怪獣モグネズンとの戦いを通じて岸田とも和解したようです。もっともこれは度重なる歪み合いにメインの視聴者だった小学年低学年層がついていけず、視聴率が下がったことも要因としてあったのでしょう。上原正三と橋本洋二は「帰ってきたウルトラマン」の直前に「柔道一直線」を手がけていました。上原(と橋本)は「柔道一直線」で描いた作劇(先輩と一条直也との対立)を「帰ってきたウルトラマン」にも導入したのですが、これが仇となってしまったのです。

なお第1話で(この時は)亡くなっていた郷を思い出す坂田とアキが、郷がレースで優勝したら母親に楽をさせたいと語っていたことが描かれています。また父親については第3話で、13歳の時に父が登山中の遭難事故で死亡したことが語られています。救助隊が目の前まで来ていながら救助隊が発見できず、死亡してしまったのです。

坂田家とは家族同然のつきあいで、健は郷の後見人、アキは郷の恋人、そして次郎は弟のような存在でした。MATの隊員と歪みあっている時も健は郷を保護し、アキは郷を愛し、次郎は慕っていたのです。「柔道一直線」で言えばミキっぺや一条直也の母親にあたる存在を上原はちゃんと用意していたのです。それが後の「ウルトラマンレオ」との違いで、おおとりゲンには坂田健に当たる人物が存在しませんでした。余談ですが、私は大人になってから「ウルトラマンレオ」を観た時はあまりにもゲンが責められるのでスカッとしませんでした。第一期ウルトラシリーズの時代に私は生まれておらず、第二期ウルトラシリーズの中で「ウルトラマンレオ」は本放送を観た唯一の番組なのですが、第1話を観た記憶は残っているのに私には特訓編を本放送で観た記憶が全く残っていないのです。「ウルトラマンレオ」といえばウルトラマンキングやアストラ、ババルウ星人に騙されてウルトラ兄弟と戦った話、そして円盤生物のイメージしか残っていません。マグマ星人が再登場したローランの話は本放送で観た記憶が残っています。おそらく、特訓編の話を観て私は引いてしまい、観なくなってしまったのだと思います。

坂田健とアキの死後は次郎を引き取りました。郷のマンションの隣の部屋に住んでいたのが村野ルミです。

そして第51話でバット星人とゼットンを倒した後、次郎に「ウルトラ5つの誓い」を残し、ウルトラの星の危機を救うべく、ウルトラマンとしてウルトラの星に旅立っていったのでした。この頃はウルトラマンと意識が一体化していたのでしょう。

郷秀樹を演じた俳優

さて郷秀樹を演じたのは団次郎(団時朗)です。当時、資生堂の男性化粧品「MG5」のテレビCMに出演していてファッションモデルとして注目を集めていました。団時朗に決まったため、ウルトラマン役もきくち英一に代わったことは先述しました。

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さて団時朗が起用された件について、熊谷健が白石雅彦と荻野友大編著「帰ってきたウルトラマン大全」でこう証言しています。

熊谷 主役の団次郎さんについては、僕の以前からの知り合いで芸能事務所をやっている井沢さんという女性がいまして、彼女が「どうかな」ってプロフィールを持ってきたんですね。柄もいいしCMで好評だったから局のほうでも受けるんじゃないかと思って。それから円谷一さんを通して局の了解をいただいて主役に決定しました。僕はその頃『ウルトラファイト』をやってたりいろいろ忙しい時期だったんで、立ち上がりの部分はそれぐらいしか参加してなかったのです。

「それぐらい」と謙遜してますが、大事な仕事をしていたわけですね。

余談ですが南隊員を演じる池田駿介は主役の話も来ていたそうです。

おわりに

この記事では「帰ってきたウルトラマン」に登場したウルトラマンに変身する郷秀樹について取り上げました。「ウルトラマン」ではハヤタの家族構成まで踏み込まれることはありませんでしたが、郷秀樹は坂田兄妹の存在など、かなり踏み込まれて人物設定が行なわれました。これは上原正三が「ウルトラマン」との差別化を図るために行なったことと言えるでしょう。「帰ってきたウルトラマン」は上原の自信作でもあると生前語っていましたが、と同時に、金城哲夫が作った「ウルトラマン」にはかなわない、と作る前から思っていることも明かしています。上原正三にとって金城哲夫は絶対的存在だったのです。

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