MAT隊員

はじめに

この記事では郷が働くMATのメンバーについて取り上げます。

南猛

南猛(みなみたけし)は年齢25歳。長野県出身。柔道5段の腕前を持つ設定がありましたが、第2話「タッコング大逆襲」(脚本:上原正三、監督:本多猪四郎、特殊技術:高野宏一)では郷を投げても郷は空中で回転して立ってしまい、その後

南「凄まじい技だ。お前が受け止めてくれなかったら、首の骨を折るところだったよ。」

という技を受けて驚嘆します。これと前後して郷の慢心が生まれてしまいます。タッコングを郷が独断専行で攻撃してタッコングを手負のまま逃してしまい、マットサブ2号機に乗っていた岸田に責められますが

南「1号の艇長は俺だ。俺が撃てと言ったから郷は撃ったんだ。責任はすべて俺にある。」
郷「そんな。」
南「お前は黙ってろ。隊長、すべて私のミスです。処分は私だけに。」

と言って郷を庇います。まあ実際には加藤隊長が事情をすべて把握していたため、郷は処分を受けますが。という風に、郷には優しい人です。第9話「怪獣島SOS」(脚本:伊上勝、監督:本多猪四郎、特殊技術:高野宏一)では郷の代わりに怪獣ソナーの受け取りを引き受けています。また第25話「ふるさと 地球を去る」(脚本:市川森一、監督:富田義治、特殊技術:大木淳)では弱虫だった過去が語られているのは先述しました。

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なお恋人がいたようで、第49話「宇宙戦士 その名はMAT」(監督:松林宗恵、特殊技術:真野田陽一)ではこんなやり取りを岸田としています。

マットアロー1号に乗る南が欠伸するのを聞きながら
岸田「(マットジャイロから)南さん、デートもほどほどにした方がいいんじゃないですか。」
南「そうひがむなよ、モテない男、岸田さんよ。」
岸田「ちぇ。鏡を見ろってんだ。」

こうして観ると、上原正三は南の優しさしか描いていなかったことがわかります。なお団時朗によれば、南を演じた池田駿介は本当にああいう感じの人だったそうです。「キカイダー01」のイチローもああいう感じの人格でしたね。

岸田文夫

岸田文夫(きしだふみお)は年齢25歳。ヘルメットの番号は「3」。
射撃の名手で、真面目であり、プライドも高いです。第2話で南が郷に投げられたのを見た後、今度は射撃で勝負しようとしますが、彼も郷に敗れます。南は素直に郷を褒め称えますが、岸田は無言。これが後々、郷との対立を繰り返す伏線となります。上原正三の興味も岸田にあったのは明らかでしたし、他の脚本家も岸田に焦点を当てた脚本を書いています。

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他に兵器開発を行なっているという設定があり、第8話「怪獣時限爆弾」(脚本:田口成光、監督:筧正典、特殊技術:高野宏一)と第44話「星空に愛をこめて」(脚本:田口成光、監督:筧正典、真野田陽一)でそれが描かれています。第44話では広田あかね(ことケンタウルス星人)との悲恋も描かれました。

演じた西田健はその後は悪役が多くなりますが、西田は、岸田のイメージが強すぎたからではないかと語っています。

上野一平

上野一平(うえのいっぺい)は年齢23歳。郷秀樹とは同年だったのですね。ヘルメットの番号は「4」です。郷同様、未熟なところが見られ、第11話「毒ガス怪獣出現」(脚本:金城哲夫、監督:鍛冶昇、特殊技術:高野宏一)冒頭では、喉が渇いたことを理由にパトロールを途中で打ち切って基地に引き上げてしまい、岸田に叱られます。岸田に叱らせているのが金城哲夫の作劇のポイントですが、岸田でなくても叱りたくなりますよね。

郷とは対立(第3話「恐怖の怪獣魔境」(脚本:上原正三、監督:筧正典、特殊技術:高野宏一))したり、説得を試みよう(第5話「二大怪獣 東京を襲撃」第6話「決戦! 怪獣対マット」(脚本:上原正三、監督:富田義治、特殊技術:高野宏一))としたりします。郷とは同年ですから、基本的には郷とは仲良しだったのでしょうね。

話のコメディーリリーフの役割を(脚本家や監督に)振られることもあります。第32話「落日の決闘」(脚本:千束北男、監督・特殊技術:大木淳)での暴れぶりが印象的です。脚本を書いた千束北男はもちろん飯島敏宏。この頃は木下プロへ出向し、同社の立ち上げに関わっていたので演出をする時間が取れませんでした。なので脚本だけの参加に留まっています。きくち英一著『ウルトラマンダンディー帰ってきたウルトラマンを演った男〜』での大木淳の証言によれば、「脚本は飯島さんにお願いしたいと思いました。」とのことでした。さて飯島は白石雅彦と荻野友大編著「帰ってきたウルトラマン大全」でこう証言しています。

いよいよクランクインするに当たって早速、脚本冒頭の野外オーケストラの演奏シーンが、出演者が多く予算が掛かり過ぎるというのでカットされましたが、これはこちらも計算済みで、ここはカットされても、その代わりストーリー上カットできない他のところで贅沢すればいいという、条件闘争の結果です(もっともそのシーンは、のちに私が脚本監督で撮らせて頂いた円谷プロの映画『怪獣大奮戦 ダイゴロウ対ゴリアス』でしっかり実現させていただき、特撮を担当した大木監督を呆れさせました)。

映像化に当たって面白いやりとりがあったわけですね。ただ大木淳の本編監督は飯島の脚本をただ映像にしているという印象が私にはあります。また飯島も「帰ってきたウルトラマン」の設定を把握しきれていないのは否めず、坂田次郎は「ウルトラマン」のホシノ少年のような役回りで登場します。

閑話休題。上野には孤児という設定があります。第5話で語られていますが、この設定が生きるのは第50話「地獄からの誘い」(脚本:斎藤正夫、監督:松林宗恵、特殊技術:真野田陽一)のみです。恩人だった小泉博士(邦創典)と彼の娘で上野とは幼馴染の小泉チドリ(八木孝子)が登場します。この話で上野は小泉博士を殺したという容疑を受けてしまい、苦しみます。

丘ユリ子

最後に丘ユリ子を取り上げましょう。年齢20歳。最年少だったんですね。

第2話では剣道四段だと上野の口から語られていますが、郷に小手を取られてしまいました。男まさりの腕前を持ちます。にも関わらず通信を主に担当しており、この設定が生きるのは第38話「ウルトラの星 光る時」(脚本:上原正三、監督:富田義治、特殊技術:大木淳)のみとなってしまいました。第38話では丘(と郷)以外のMAT隊員がナックル星人の罠にハマって操られてしまいますが、郷と丘の二人で4人全員を倒し、MAT隊員の洗脳を解くことに成功します。

第4話「必殺! 流星キック」(脚本:上原正三、監督:筧正典、特殊技術:高野宏一)では国連病院へ向かうアキと次郎を送ってあげますが、直後にアキからは嫉妬されてしまいます。もっとも、丘は郷への好意はなかったようですがね。

さて石堂淑朗は丘をひどい目に合わせています。第36話「夜を蹴ちらせ」(脚本:石堂淑朗、監督:筧正典、特殊技術:佐川和夫)ではドラキュラス操る鈴村みどり(戸部夕子)(の死体)に襲われますが、こんなのは序の口。第47話「狙われた女」(脚本:石堂淑朗、監督:佐伯孚治、特殊技術:真野田陽一)では怪獣フェミゴンに憑依されてしまいました。第48話では丘の母親(葦原邦子)が登場。他にニュースキャスターを務める父親が設定されていましたが、劇中での登場はありませんでした。第48話では「新宿の目」の前で丘がアンニュイな感じのポーズをとるのが印象に残ります。佐伯の演出はやはり冴えています。

髪型は初期は黒髪の長髪でしたが、第5話以降は茶色の短髪に変更されています。

おわりに

この記事ではMAT隊員について取り上げてみました。改めて思ったのは、上原正三や製作者は岸田に注目して作劇していたのだなあ、ということです。他の隊員も色々と設定されていますが、彼らに焦点を当てた話は岸田ほど多くはなかったと思います。そのことにこの記事を書きながら気がつきました。

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