ウルトラブレスレット

はじめに

この記事では「帰ってきたウルトラマン」第18話「ウルトラセブン参上!」(脚本:市川森一、監督:鍛冶昇、特殊技術:佐川和夫)から登場したウルトラブレスレットを取り上げます。

登場の経緯

ウルトラブレスレットは第18話で宇宙怪獣ベムスターに敗れて太陽に飛んだウルトラマンウルトラセブンが授けた武器です。ウルトラセブンはこう言って渡しています。

お前にこれを授けよう。ウルトラブレスレットだ!! これさえ身につけておけば、いかなる宇宙怪獣とも互角に戦えるだろう。さあ地球に戻るのだウルトラマン!

この言葉が全てを物語っています。なおベムスターウルトラマンが初めて戦った宇宙怪獣でもあります。

さてウルトラブレスレットは番組強化策の一つです。プロデューサーの橋本洋二は、「苦心の末に怪獣に打ち勝つ」という本来のテーマから外れるので当初は躊躇していたそうですが、「ウルトラマンが弱すぎる」という意見から採用に踏み切りました。

普段はその名の通りブレスレットの形でウルトラマンの左手首に装着されています。これは市川森一が妻がブレスレットをしているのを見て思い付いたのだそうです。

使い方

使用時は左肘を曲げてブレスレットを示し、右手でこれを掴んで外す動作が続き、変形させたり直接投げ付けたりします。ただ、一度に複数の用途には使用できず、第20話「怪獣は宇宙の流れ星」(脚本:石堂淑朗、監督:筧正典、特殊技術:高野宏一)ではウルトラマンがそのジレンマに苦しむ様子も描かれました。脚本は初参加の石堂淑朗で、この話でも石堂の反権力志向が発露していることがわかります。

と言うわけで使い方を列挙しましょう。万能武器なので多種多様な使い方がされています。ウルトラマン史上最大の武器と言っても過言ではありません。なお、形態の名前は劇中では一切呼ばれていません。ほとんどが小学館の学習誌などで紹介されたものです。挙げていくとキリがないので、代表的なものを紹介しましょう。

ウルトラスパーク

スティック状の武器で最も多用されました。ウルトラセブンからウルトラマンにウルトラブレスレットが授与された際は、この形態でした。白熱化して飛び、敵を切り裂きます。ウルトラセブンアイスラッガーと互角か、それ以上の威力とされます。手に持ってナイフとしても使えます。ビルガモ戦では、3つに分裂させたウルトラスパーク3段斬りを使用しました。また、ブレスレットがゼラン星人にコントロールされた時も、数発のウルトラスパークに分裂したことがあります。

ベムスターを倒したのもこの武器ですが、不思議なことに、私は第18話でウルトラマンスペシウム光線を吸収されてベムスターに敗退し、ウルトラブレスレットで切断して勝利するのを観ても、「なぜ八つ裂き光輪を使わなかったの?」とは思いませんでした。それはウルトラブレスレットが第18話でウルトラセブンから授けられる話だと知っていたこともあったのでしょうが、話の構成も巧かったからだと思います。

ウルトラランス

次に有名なのが、ウルトラスパークの尖った柄を伸ばした槍であるウルトラランスです。ただ使用されたのは第29話のヤドカリン戦のみ。そして遠矢孝信が中に入ったまま、ウルトラランスを突き刺しています。これについてきくち英一著『ウルトラマンダンディー帰ってきたウルトラマンを演った男〜』できくちがこう証言しています。

河崎 人が入っているときに刺した?

きくち 刺さっているけど、人間は中に入ってる。脇の空いてるところを貫いているんです。

河崎 中に入ったままですか。スゴいな、タイミングがずれたら最後ですな。

この河崎の言葉を受けてか、遠矢孝信はこう証言しています。

ぼくが入ったまま槍を突き刺して、脇腹のあたりを通過するカットがありますが、あれはアクションやっている人なら、なんてことはないんです。

ウルトラクロス

柄の先端に十字架がついた槍で、ドラキュラスやバット星人に投擲し、突き倒しました。なので使用回数はウルトラランスよりも多いです。撮影用の小道具は後にレッドマンのレッドアローとして流用されました。

さて十字架というのは作劇上の意味がありました。ドラキュラスはドラキュラがモチーフの宇宙人でした。バット星人が登場したのは最終話で、この話で郷秀樹は「死んだ」とMATの面々に思い込まれ、墓まで作られています。まあ最終話は深読みし過ぎなのかもしれませんので、私見でしかありませんが。

ウルトラディフェンダー

これは盾で第40話「冬の怪奇シリーズ まぼろしの雪女」(脚本:石堂淑朗、監督:筧正典、特殊技術:真野田陽一)でスノーゴンの冷凍ガスを吸収、反転させ、スノーゴンを倒しました。

ダムせき止め能力

第20話で使用した能力です。マグネドンの攻撃で穴が空いた熊沢ダムに投げ付け、水を堰き止めました。しかし、戦っている最中はウルトラブレスレットをウルトラマンが使うことができないため、ウルトラマンは何度かブレスレットを手元に戻して水が流れ出し、仕方なくまたウルトラマンがブレスレットをダムに投げると言うのが繰り返されました。これも脚本を書いた石堂淑朗の反権力志向の現れでしょう。

磁力封じ能力

これも第20話で使用した能力です。マグネドンの磁力に捕らえられたため、ブレスレットから黄色い渦巻状の光線を放ち、敵の磁力を無力化しました。

反重力光線

これもまた第20話で使用しました。マグネドンを宇宙へ運ぶため、ブレスレットから緑の渦巻状の光線を放ち、マグネドンを空中に浮かび上がらせてから、ウルトラリフティングで宇宙へ運びました。

ウルトラマンを再生させる能力

さてウルトラブレスレットはウルトラマンを再生させる能力を持っています。第21話「怪獣チャンネル」(脚本:市川森一、監督:筧正典、特殊技術:高野宏一)ではビーコンの攻撃を受けて倒れたウルトラマンに吸収した太陽光線を転換したエネルギーを与えて復活させました。そして第40話ではスノーゴンに凍らされた上にバラバラにされたウルトラマンを復活させています。石堂淑朗ウルトラマンをバラバラにしてしまったのです。

ゼラン星人

そのウルトラブレスレットを悪用したものがいます。それが第31話「悪魔と天使の間に....」(脚本:市川森一、監督:真船禎、特殊技術:高野宏一)に登場したゼラン星人です。ゼラン星人は囮怪獣プルーマをウルトラマンと戦わせます。プルーマにはスペシウム光線が効かず、ウルトラマンはウルトラブレスレットを使って倒しますが、その直後、ウルトラブレスレットはウルトラマンに襲い掛かります。ゼラン星人はウルトラブレスレットを特殊な装置で操ったのです。この作戦に自信があったのか、ゼラン星人は口が不自由な少年に化けて伊吹美奈子と一緒にMAT基地に入り、わざわざ郷秀樹にウルトラマンを倒すと予告までしています。実際、ゼラン星人に操られた時のウルトラブレスレットは強力な光線技などを繰り出しており、ウルトラマンがバリアで弾いたりする羽目に陥りました。伊吹竜隊長がゼラン星人の射殺に成功していなければウルトラマンはウルトラブレスレットで倒されていたに違いありません。市川森一ウルトラマンにウルトラブレスレットを授けましたが、授けられたウルトラブレスレットに裏切らせたのです。

おわりに

この記事ではウルトラブレスレットを取り上げました。上記の能力以外にも多様な能力が劇中では描かれています。まさに万能武器で魔法の道具のようです。橋本が躊躇したのもわかりますが、それでも「帰ってきたウルトラマン」の人間ドラマが描かれなくなったかというと、そうではなかったと私は思います。話の幅が広がったと思います。

さて「帰ってきたウルトラマン」の制作終了後、ウルトラブレスレットのプロップはきくち英一に記念として渡されたそうです。なので「ウルトラマンA」や「ウルトラマンタロウ」や「ウルトラマンレオ」に登場した時、左手首には別のものがはめられていますが、これはよく観ないとわからないでしょうね。私もきくち英一に制作終了後に渡されたと聞くまでは気がついていませんでした。

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