仮面ライダーBLACK RX 第21話「愛と友情の戦線」を観て

はじめに

仮面ライダーBLACK RX 第21話「愛と友情の戦線」(脚本:宮下隼一、監督:松井昇、アクション監督:金田治と村上潤)を観て思ったことを書きます。澄川真琴さんとの約束を果たすためです。

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白鳥玲子

冒頭は南光太郎と霞のジョーがサッカーをしている場面です。それを(前回は全く出なかった)白鳥玲子がパシャパシャ撮りまくります。サッカーをしているのが重要ですが、それは後にわかります。さて白鳥玲子は何気に(この表現もよく使いますが使いたくなってしまいます)こう言います。

白鳥玲子「良いわねえ、男同士の友情って。」

以前にも言っていたようなセリフですよ。で実はこれはテーマの一つです。

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かつての思い出

そしてこの後、白鳥玲子は仕事があるので慌てて退散。光太郎はジョーにいきなり「一生親友でいてくれよな。」と言って霞のジョーを驚かせますが、それには理由があります。ナレーションだけ書きましょう。

政宗一成南光太郎はかつて友を亡くした。無二の親友。二度と繰り返したくない。心密かに彼は祈っていたのである。」

そしてしっかり流れる仮面ライダーBLACKからの流用場面。誰のことを指しているのかはわかりますよね。秋月杏子…も頭をよぎったかもしれませんが、秋月信彦の事を指しているのは明白です。紀田克美も入っているのかもしれませんが、この話(そして次の話)で描かれているのは信彦の事です。

セーラ

そしてやって来るのはセーラ(木村公美)です。この直前にクライシス帝国の皆さんのやりとりが流れるのですが、マリバロンとジャーク将軍達がしでかした大きな失敗を既に観ていた身としては白けてしまい言い訳ばかり並ぶ(我ながらひどすぎますが)ので端おります。でも彼らなりに一生懸命やっていることは彼らの立場に立てばわかります。大事なのはセーラです。

セーラはかつて霞のジョーと関わりのあった人で、あっという間に霞のジョーと結婚の約束までしてしまった人です。でもジョーと別れざるを得なくなり、でいつの間にかジョー同様にクライシス帝国に抵抗するゲリラになってしまったという凄い人です。そんな人が地球に来るのですから何かあるに決まっています。それも今回のテーマです。シティーハンターにも似たような人はいましたね。もっとも霞のジョーは海坊主のような人ではありませんが。端おって書いてますが濃すぎます。深読みすれば後の(中略)ですが、この時点でそこまでわかる視聴者はいなかったと思いますが、いたかもしれません。さりげなく描かれていますから。

疑念

そして霞のジョーとセーラは再会し、セーラが重要な任務を帯びていることまでわかります。「向こう(地球)へ逃げた同志達と連帯して」その絆を深めることが任務なのです。怪魔界でのやりとりが描かれ、地球にやってきて、霞のジョーと南光太郎と出会うのです。ですが南光太郎はセーラに対して何か怪しいものを感じ、疑念を抱き、それをジョーに指摘します。初対面であることと確かに怪しいものがあったので南光太郎の立場に立てばそうしてしまうのは当然なのですが、ジョーにしてみればそれは許される行為ではありません。当然大喧嘩となり、一旦、ジョーはセーラを連れて南光太郎と別れてしまうのです。

で後に南光太郎の疑念は確かに正しかったとわかりますが、微妙に間違っていたこともわかります。なぜならセーラがペンダントに同志のリストが列挙されたマイクロフィルムを隠していてそれを元に任務を遂行するとジョーに話した直後に

クライシス帝国の刺客「そんなところに隠してあったのか。」

とほざいてセーラの影からクライシス帝国の刺客が登場するからです。そのことは色々あって南光太郎も察知します。なお今回の刺客はボーゾック一(当然の事ながら本放送当時にこの言葉が生まれてはいませんし生まれると思った人もいないでしょう。少なくとも私は思いませんでした)の、もとい、(自称)怪魔異生獣一の追跡の名手だそうです。

和解

でジョーは負傷し、セーラは捕まりますが、ペンダントはなぜかジョーの手に渡り、ジョーは入院する羽目に陥ります。そういえばこの頃の病院のベッドは白いパイプ状のもので昭和50年代の刑事ドラマで映りまくった病院のベッドもこういうもの。ということは「ちむどんどん」で映ったようなベッドのある病院はなかったような気がするのですが、本題とは関係ないので先へ進みましょう。それと前後して南光太郎と霞のジョーの誤解はお互いに解け、結果的に前よりも絆が更に深まります。雨降って地固まるを地で行く展開です。

ですが、白鳥玲子は気がつきます。霞のジョーが病室のベッドを抜け出してジョーがどこかへ行ったことを。クライシス帝国の刺客に脅迫されてセーラを救いに出ていってしまったのです。この時の小山力也さんの演技も必見です。とても巧みです。それもそのはず、当時は劇団俳優座にいたのです。その関係で途中で霞のジョーが出ない期間がありますが、それは先の話です。

別離

紆余曲折の末、セーラと霞のジョーは南光太郎に救出されました。思いっきり端折りましたが、もともとこのシリーズの趣旨は仮面ライダーBLACK RXを観たと言い張ることなので戦闘シーンはもはやどうでも良いのです。岡元次郎さんをはじめとする当時のJACの皆さん、すみません。一番描きたかったのはこの場面です。

霞のジョー「マイクロフィルムのソフトを使って同志達を組織し、クライシス帝国に戦いを挑む。(と言いながら例のペンダントをセーラに示して)セーラ、これは君の任務だ。」

セーラ「でも、ジョー。これは。」

ジョー「クライシスに騙されたとしても、騙されなかったとしても、(ペンダントをセーラの首にかけさせながら)いずれ君は地球にやってきたはずだ。(ペンダントをつけ終わる)」

ハッとしたセーラは振り返ってジョーの方を向いた後、ジョーは頷きました。ここまででもうわかるでしょう。なんとジョーとセーラは別れてしまう事を決めたのです。それを南光太郎もしっかり観ます。そして映るのはセーラを乗せた飛行機。セーラは外国へ旅立ったのです。パスポートやら飛行機のチケットをどうやって得たのかは瑣末な疑問(この言葉自体は実相寺昭雄監督がスクリプターに言った言葉からの発案)に過ぎません。でよくよく考えればこれは後の先輩(中略)の動きに繋がる伏線で高野槙じゅんさん演じる白鳥玲子の後の行動の伏線にもなっているという凄い場面ですが、それがわかるのは先の話でしょう。

そしてラストカットは南光太郎が思い出したあの男が歩く場面です。え? 死んだんじゃなかったの? これも瑣末な疑問に過ぎません。

おわりに

戦闘場面を描かずに今回もこの話のテーマを拾えたかなあと思います。拾えていないかもしれませんが。それは兎に角、仮面ライダーBLACK RXを本放送でつまみ食いした状態にとどまってしまったのは本当にもったいなかったなあと思いますが、あの白倉伸一郎さんが東映に入社する際、面接で岡田茂ら当時の役員を前に本作品を挙げて批判したという逸話も残っている(もっとも白倉さんの真意は他にもあったそうですが)ので仕方がなかったかなあとも思います。そんな人を入社させて仮面ライダーシリーズを制作させている東映はやはり凄いです。

さて次回はあの男が暴れる話です。この話は観たような気もしますし、観なかったような気もします。いずれにしろ、仮面ライダーBLACK RXにあの男が登場した話をしっかり観ていたことは事実です。