さらば、上原正三

上原正三が亡くなったのは2020年1月2日。彼の生涯を振り返ってきましたが、私は彼が書いた作品を観て育ってきたのだなあとしみじみと思いました。私が取り上げなかった作品の一部を挙げても、これだけあります。

上原が結婚したのは1969年。彼は自分の子供の反応もみたりしていたそうです。以前も書きましたが、上原の年齢が私の父と近かったのも関連があるのだと思います。

彼は金城哲夫と出会って上京し、金城とは対照的に琉球人としてヤマトに残る道を選びました。その反骨精神が最後の最後まで貫かれたのだろうと思います。上原正三はウルトラ5つの誓いで「他人の力をあてにしないこと」と書きました。これは市川森一からは「人は一人では生きていけない」と言われたそうですが、ヤマトで独りで生きていく自分の生き方を挙げたものだったのでしょう。ただ市川とは仲が良かったのは以前も書いた通りです。仲が良かったからこそ、そういう論争もできたのでしょう。

また引用した本を書いてくださった白石雅彦さんをはじめとする皆さん、本当に参考になりました。ありがとうございます。

さて最後に一つの逸話を書きましょう。それは長坂秀佳についての話です。上原が多作だったのはこれまで書いた通りですが、「快傑ズバット大全」で長坂はインタビューで次のエピソードを話しています。ある時、上原正三が「週8本執筆した」という話を長坂は耳にしたそうです。それを聞いた長坂は「本数で負けてなるものか。1度抜いてやろう」と1週間で12本執筆したことがあったのだそうです。ただし、作品に質を落とさないようにするため、脚本だけではなくテレビ番組の構成台本の仕事も含めたそうですが。これを読んだ私は、なんでも日本一という早川健長坂秀佳自身を書いたものだったのだなあ、と思いました。おそらく上原自身はそんな話を聞いたとしても意に介さなかったでしょうが。

上原正三さん、本当にお疲れ様でした。

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(番外編)光の国から僕らのために―金城哲夫伝―

はじめに

この記事では劇団民藝が2016年と2018年に上演した「光の国から僕らのために―金城哲夫伝―」について取り上げます。

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光の国から僕らのために―金城哲夫伝―

この演劇は金城哲夫の生涯を題材にした演劇です。2016年には紀伊國屋サザンシアターで上演され、2018年には沖縄も含めた各地で上演されました。

この演劇は冒頭、ラジオ番組で自衛隊のヘリに乗り空から実況している金城哲夫がまるで自衛隊を賛美しているかとも受け取れる発言をしてしまい、ラジオ局に抗議の電話が殺到するところから始まります。金城は無邪気に発言したと思うのですが、沖縄に住む人には自衛隊在日アメリカ軍基地には複雑な感情を抱いています。金城の発言はそれに対する配慮が足りないのではないかと受け取られたのです。私はこの事件を冒頭に持ってきたところがとてもよかったと思いました。金城哲夫の立ち位置を象徴する事件だったからです。

この演劇は以後、2部構成となっていました。第1部では上原正三を金城が円谷一に紹介してから、ウルトラシリーズが続々と続くものの、やがて金城が帰郷するまでを描いていました。主な登場人物は金城哲夫上原正三円谷一、そして満田かずほです。

第2部では金城が帰郷し、沖縄でラジオ番組のキャスターをしたり沖縄芝居を書いたり、海洋博のプロデュースといった仕事を通して壁にぶち当たる様子を描いていました。第2部の最後では時空を超えて上原正三も登場し、金城とその後の様子(上原自身はヤマトに残り、東映などの子供番組を書いてきたこと)を語り会う場面もあります。

私が観劇した日はたまたま役者の方と観客が語り合う時間が設けられている日でした。座長を務めた、円谷一役の千葉茂則さんによれば、上原正三さんも稽古の場にお見えになったそうです。おそらく脚本を書いた畑澤聖悟などともお話しなさったと思います。

この演劇でも金城と上原は太陽と月のような関係になっていたように思います。1999年に上原正三金城哲夫を題材とした小説「金城哲夫 ウルトラマン島唄」を書いています。この小説は元々は沖縄へ帰ってからの金城を題材とした映画のために書いた脚本が元になっていたようです。上原にとって金城哲夫との交友は忘れ難いものだったに違いありません。

観客のほとんどは私よりも年配の方だったので、金城哲夫を取り上げた話がどれだけ響いたのかはわかりませんが、私にはやはり冒頭の場面が印象深く残っています。

機会があれば、今度は上原正三の物語が描かれたら良いのではないかなあと当時思いました。

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宇宙刑事シャイダー

はじめに

この記事では1984年3月2日から1985年3月8日まで、テレビ朝日系列で毎週金曜19:30 - 20:00に全49話が放送された「宇宙刑事シャイダー」を取り上げます。

宇宙刑事シャイダー

宇宙刑事シリーズ3作目は前2作と大きく違う点が少なくとも2つ挙げられます。まず1つ目は前2作が主人公の男性の宇宙刑事JACから起用していたのですが、この作品では相棒の女性宇宙刑事JACから起用した点です。そして2つ目は1つ目から必然的に生まれた作風の違いとなりますが、主人公となる男性の宇宙刑事はそれまでの2名と違って訓練途中の未熟な刑事と設定されたことです。必然的に女性刑事の活躍もそれまでと違って激増しました。

さて主人公の最終オーディションに残ったのは円谷浩と吉田淳でした。最終的に主人公に選ばれたのは円谷浩でしたが、これは上原正三の強力な推薦があったためです。円谷浩の父親は円谷一、そう、上原正三にとっては恩人に当たる人です。上原は一から受けた恩に報いたかったのです。加えて特撮を担当していた矢島信男も松竹時代は円谷英二とともに仕事をし、「ミラーマン」では円谷一とともに仕事をした縁もありました。なので主人公に抜擢されたのは円谷浩となったのです。その代わり、上原は「宇宙刑事シャイダー」の脚本全49話を書き上げています。

さて主役の沢村大(円谷浩)のコードネームであるシャイダーはかつて地球でムー帝国を倒した過去を持つ戦士シャイダーにちなんで名付けられています。当初は明らかになっていませんでしたが、後に沢村大は戦士シャイダーの子孫であることが判明します。

敵側もムー帝国に関係があります。そもそも首領のクビライは戦士シャイダーに首と胴体をはねられ、胴体をサイボーグ化して現代まで生き残ったのです。

話を銀河連邦警察に戻しましょう。クビライ率いる不思議界フーマはそれまでの敵よりも強大で宇宙全土で暴れ回っていました。そのため、沢村大ことシャイダーとアニー(森永奈緒美)、そして彼らの同期も訓練半ばで戦地に赴くことになりました。シャイダーとアニーは協力しながらフーマと戦い、後にクビライを倒すことに成功したのです。

二人が乗る戦艦がバビロスです。バビロスは巨大ロボ形態のバトルフォーメーションの他、巨大な銃形態であるシューティング・フォーメーションに変形します。シューティング・フォーメーションの状態から放つ波動砲ビッグマグナムはフーマの巨大戦艦(だと思います)を何度も破壊しました。ただバンクシーンが多かった気はしますけど。

またシャイダーとアニーが操るのが超次元戦闘車シャイアンです。こちらはアニーが操縦する場面が多かった印象があります。そしてシャイダーが乗るオートバイがブルーホークです。

沢村大とアニーは別々に調査することが多かったです。そして、沢村大を演じる円谷浩JAC出身でなかったこともあり、JAC所属の森永奈緒美演じるアニーが活躍する場面が全2作と比べて激増しました。もちろん、沢村大の格闘する場面をなしにするわけには行きませんので、円谷浩も格闘場面を演じて傷だらけになりながら奮戦したそうですが、吹き替えも多用していました。

未熟な戦士ということは特訓場面もあるわけですが、私が覚えている限りでは第19話「アニー危機一髪」だけしかありません。この話ではシャイダーは不思議獣マグマグに一度敗れ、コム長官に心の弱さを指摘された沢村大は滝の流れを日本刀で切る技の習得を命じられます。「ウルトラマンレオ」のツルク星人の話を思い出しますが、「ウルトラマンレオ」が特訓だらけだったのとは対照的に、「宇宙刑事シャイダー」はこれだけしかないのです。そういえば市川森一が嫌ったスポ根ものを取り入れた「帰ってきたウルトラマン」でも特訓は第4話のみです。これはメインシナリオライターのセンスの差だったのではないかと思いますね。なお、第19話を書くにあたって上原が「ウルトラマンレオ」を意識したかどうかは知りません。

さて地球人のレギュラーですが、大山小次郎は引き続き登場します。ただし、この作品ではペットショップを営み、第17話からは沢村大を下宿させるようになりました。それでもUFOを追いかける情熱は失っていなかったようで、「宇宙刑事シャイダー」でもフーマの悪事に巻き込まれることが多々あったように思います。またアニーにも好意を寄せていました。彼の甥や姪も登場します。なお星野月子はバード星でコム長官の補佐を務めています。

不思議界フーマ

さて敵のフーマについて書きましょう。首領のクビライについては既に書きました。彼の孫娘が神官ポー(吉田淳)です。沢村大と同年代のように見えますが、実は年齢1万2000歳です。クビライからエネルギーをもらって若さを保っていたのです。ポーの両親については語られていません。クビライ自体は100万年くらい生きているという設定で、戦士シャイダーの活躍も1万2千年前の出来事です。

戦闘の指揮をとるのがヘスラー指揮官で「征伐!」が口癖です。彼の弟のヒムリーが第28話で登場しますが、ヒムリーはヘスラーに取って代わろうという野心を抱いていたため、ヘスラーの策略で抹殺されます。

ヘスラーの配下にいるのがギャル軍団です。ギャル1、ギャル2、ギャル3、ギャル4、ギャル5です。

フーマの作戦は人間の心を支配することで侵略を進める戦略をとったものが中心になっています。「地球を傷つけずに征服するため直接的な武力に訴えない」という説得力ある理由づけがなされていました。このため衣食住や娯楽、教育などが侵略作戦に利用され、身近なところにまで魔手を伸ばし人間の心の闇をえぐる作戦が実に多いです。しばしば子どもがターゲットとされるため、子どもが絡んだエピソードも増えました。劇中でしばしば流れた不思議ソングも不気味さを増幅させておりました。またシャイダーやアニーの心の未熟なところを突く作戦も取られました。そのためシャイダーとアニーが対立することがありましたが、事件解決後はお互いに成長し、二人の絆は強くなっていきました。これも二人が訓練半ばで派遣した戦士であることから生まれた話なのでしょう。「ウルトラマンA」で市川森一が発案した構想が奇しくもこの番組で描かれているのが興味深いです。

さてフーマが作戦に用いるのが不思議獣です。初期は卵から生まれる様子が描かれていました。第1話と第2話を担当した澤井信一郎監督の演出では、ギャル軍団の踊りや流れる音楽、そして神官ポーのセリフも相まって何だか淫靡な描写になっていました。子供の頃はなんとも思わなかったのですが、東映チャンネルで放送されたのを観た時はそう思いました。ただ流石に毎回流すのには長すぎたのか、中盤からは誕生の場面は省略されています。なお不思議獣の名前はバリバリとかペトペトというように二文字の繰り返しとなっています。「UFOロボグレンダイザー」の円盤獣やベガ獣と似た命名規則なのですが、上原がそれを流用したかどうかはわかりません。なお不思議獣はフーマが生み出した不思議時空では通常の4倍の力を発揮できます。

おわりに

番組は1年間の予定を全うしました。次作「巨獣特捜ジャスピオン」の準備が遅れたため終盤で3話延長されました。円谷浩森永奈緒美の代表作になったことは間違いありません。残念ながら円谷浩は若くして亡くなりましたが、上原正三円谷一への恩を返すことに成功したと言えるでしょう。なお実質的な最終回は第48話になっており、第49話ではそれまで揃わなかった宇宙刑事3人が西新宿に集まり、それまでの地球での活動を振り返る話となりました。最後にガイラー将軍そっくりの人(栗原敏)が登場する遊びもありましたけどね。

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宇宙刑事シャリバン

はじめに

この記事では、1983年3月4日から1984年2月24日まで、テレビ朝日系列で毎週金曜19:30 - 20:00に全51話が放送された「宇宙刑事シャリバン」を取り上げます。

宇宙刑事シャリバン

この番組は「宇宙刑事ギャバン」の続編です。前作の主人公だったギャバン(大葉健二)が隊長に昇格し、地球を守るのは伊賀電ことシャリバン(渡洋史)の役割になりました。シャリバンをサポートするのがリリィ(降矢由美子)です。さて前作同様、伊賀電を演じる渡はJACのメンバーでした。なので前作同様、伊賀電も激しいアクションを見せていました。初期1クールではギャバン隊長が電に指令を出していましたが、中盤からは直接コム長官(西沢利明)が指令を出す場面が増えました。ギャバンやコム長官が登場する他、コム長官の秘書のマリーンやコム長官の娘のミミーも引き続き登場しています。また地球人でも大山小次郎(鈴木正幸)や星野月子も引き続き登場しています。小次郎は前作同様ルポライターをしており、これまた前作同様、事件に巻き込まれてはシャリバンの活躍で助かるという狂言回しの役割をはたしておりました。

シャリバンのコンバットスーツは真っ赤で、コンバットスーツを装着するときのコードネームは「赤射」となりました。

シャリバンの基地にもなる戦艦はグランドバースで巨大な敵と戦うためのバトルフォーメーションに変形する機能もありました。前作では下の部分が分離して変形していたのですが、グランドバースは戦艦全体が変形したのです。ただグランドバースのバトルフォーメーションは子供達には不評で「弁当売り」と揶揄されていました。最近はあまり駅弁をホームで立ち売りする人は見かけなくなりましたが、たしかにバトルフォーメーションの姿は「弁当売り」に見えてしまいます。なお、電子星獣ドルーとは違い、シャリバンはグランドバースを遠隔操縦していました。

シャリバンが乗るマシンもモトシャリアン(オートバイ)とシャリンガータンク(戦車)の2種類となり、前作よりも増えています。サイバリアンに立ち乗りして遠隔操縦していたギャバンと違ってシャリバンはモトシャリアンには普通に座って運転していました。

宇宙犯罪組織マドー

さてシャリバンと戦うのが宇宙犯罪組織マドーです。こちらも前作よりも強化されています。

まず首領は魔王サイコです。普段はアジトの幻夢城の玉座に座っています。この人は後述する理由で不死身を誇っていました。

初期の幹部は2名います。まず科学部門担当者がドクターポルダー(吉岡ひとみ)です。この人はあまり前線に出ることはなく「幻夢界発生マシン、作動!」と叫んでいる場面が定番でしたが、稀に変装して諜報活動をすることがありました。もう一人がガイラー将軍(栗原敏)です。この人は戦闘指揮担当でシャリバンが現れると「抹殺!」と叫ぶのが定番でした。

また他にミスアクマ1とミスアクマ2というスパイがいました。

さて話が前後しましたが、マクーが魔空空間を発生させたのと同様、マドーは幻夢界というホワイトホールを発動させていました。幻夢界では魔怪獣は4倍の力を発揮することが出来ます。

イガ星

さて中盤で伊賀電は奥伊賀島出身であることと、奥伊賀島の住民はかつて2000年前、超エネルギー結晶体のイガクリスタルを狙うマドーによって滅ぼされた銀河系第17星雲の惑星・イガ星からやってきたイガ星人の子孫であることが明かされました。イガクリスタルを巡る攻防が中盤からの縦糸となりました。これは「電子戦隊デンジマン」で描かれた設定をさらに発展させたものでしょう。伊賀電も当然イガ星人の末裔です。また奥伊賀島の住民(長老ジイ(花沢徳衛)とその孫のみゆき(柿崎燈子)らイガクリスタル親衛隊)の他、ベル・ヘレン(矢島由紀)など宇宙で活動していたイガ星人の末裔も登場しました。戦いを通して伊賀電はイガ星の再興を自分の使命と考えるようになって行きます。その電を教え導くものが聖なる者(声は渡部猛)でした。聖なる者の正体はイガ星の守護神だったことが終盤で明かされます。

軍師レイダー

さらには終盤の第34話で死霊界からレイダー(安藤三男)がやってきてマドーに加わります。このレイダーは初戦でシャリバンを圧倒し、電は一時は生死の境をさまよいます。コム長官がギャバンに、地球担当再任もあり得ると言ったほどです。安藤三男が演じる悪役は皆そうですが、レイダーは本当に恐かったです。

さてレイダーは最終盤でマドー乗っ取りを企み、魔王サイコに襲いかかります。そして一度はサイコを倒したと思われたのですが、ここで驚愕の設定が明かされ、敗れ去ったのでした。その設定とはなんでしょうか。

海坊主こと戦士サイコラー

実は魔王サイコには分身がいました。それが海坊主(山田一善)こと戦士サイコラーです。魔王サイコは戦士サイコラーと命を分け合っており、一度は敗れた魔王サイコもサイコラーからエネルギーを受けて復活してしまいました。またサイコラー自体も強力でレイダーの攻撃をことごとく跳ね返していました。そのため、レイダーは返り討ちにあってしまったのでした。海坊主は序盤から姿を見せており、伊賀電の挙動を監視していました。スキンヘッドに白い服装というのがその姿でした。

最終回

上原正三は全51話中41話を書いています。なお残りは高久進の8話が最多執筆です。最終回は4部作で演出は田中秀夫監督です。最終回の題名は「赤射・蒸着」で文字通り、シャリバンギャバンが初めて共闘します。今までの物語ではギャバンがコンバットスーツを着る場面はありませんでした。この番組はシャリバンの成長譚だったので、スタッフは最後の最後まで2名の共闘を温存したのでしょう。2名が共闘するのは魔王サイコと戦士サイコラーを同時に倒さなければならなかったからです。紆余曲折の末、イガクリスタルの支援もあり、シャリバンは魔王サイコを、ギャバンは戦士サイコラーを同時に倒すことに成功しました。イガクリスタルを守っていたみゆき達も救出されました。シャリバンはイガ星担当の宇宙刑事に任命され、みゆき達イガ星人の末裔とともにグランドバースでイガ星へと発進していきます。それを地球で見送りながら、リリィは、私も一緒にいきたかった、とつぶやくのでした。

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宇宙刑事ギャバン

はじめに

1982年3月5日から1983年2月25日まで、テレビ朝日系列で毎週金曜19:30 - 20:00に全44話が放送された「宇宙刑事ギャバン」を取り上げます。

企画の流れ

企画のきっかけとなったのは、宇宙のどこかで金属質のヒーローが剣を持ってたたずむ姿を描いた村上克司による1枚のプライベートイラストだそうです。このイラストを見た東映の吉川進は、「仮面ライダー」を超える単体ヒーローの創造に挑戦するに当たって、大きな戦力となると判断したそうです。

またこの頃、上原正三は「電子戦隊デンジマン」の後番組「太陽戦隊サンバルカン」を書いていましたが、マンネリになる前に次は降板したい、と吉川に言ってきていました。そこで吉川は上原をこの番組の制作に回そうと考え、キャラクターのデザインを見せたところ、上原も乗り気になり、参加が決まりました。

企画当時のタイトルは「宇宙刑事Z」でした。正式な設定上の武器であるレーザーZビームとコンバットスーツにZの文字を彷彿させる黒のラインに、その名残があります。決定名称「ギャバン」はフランスの俳優ジャン・ギャバンからとっています。この命名路線は「時空戦士スピルバン」まで続きました。

宇宙刑事ギャバン

こうして「宇宙刑事ギャバン」の制作が始まりました。主役のギャバンを演じたのは大葉健二です。「バトルフィーバーJ」「電子戦隊デンジマン」と出演していたので子供達にはおなじみでした。JAC所属なのでアクションは得意で変身前の状態でも激しいアクションを披露しました。なお本名はギャバンですが、ギャバン宇宙刑事でバード星人だったボイサー(千葉真一)と地球人一条寺民子との間に生まれたので、地球では一条寺烈という名前を使っていました。烈はアバロン乗馬クラブで働くことになったのですが、マクー絡みの事件が起きると捜査のためにしょっちゅう仕事を放り出すため、「仕事をサボる」とみなされて月給が3000円しかもらえなかったこともありました。また宇宙で暮らしていた期間が長かったため、お金を使う習慣がなく、お金が必要になると他の人(ミミーやマリーン、次作ではシャリバン)にお金を借りるのが定番でした。どうやって返していたのかは謎です。

ギャバンの助手を務めるのがミミー(叶和貴子)です。ミミーは銀河連邦警察の最高責任者コム長官(西沢利明)の娘でバード星人です。レーザービジョンという能力があり、インコになることができます。ギャバンのことが好きで強引についてきました。途中、第32話で母親の看病のためにバード星に帰りましたが、第42話で戻ってきました。バード星人のため、テレパシーや予知能力を持ち、それを使ってギャバンの危機を救ったこともあります。なおミミーがバード星に帰っていた時期はコム長官の秘書のマリーンが代わりにギャバンの助手を務めていました。なおミミーもマリーンもインコをモチーフにしたヘルメットのようなものを頭につけていました。

さて宇宙刑事シリーズ全作に登場する地球人のレギュラーもいます。その一人がルポライターの大山小次郎(鈴木正幸)です。彼はUFO絡みの取材をしており、マクーが起こした事件に巻き込まれることが度々ありました。ですが、宇宙刑事の活躍もあってなぜか生き延びています。いわば狂言回しの役割です。

もう一人の地球人のレギュラーが星野月子です。彼女はギャバンの父ボイサーの親友でプラズマエネルギー装置・ホシノ・システムを開発した星野博士の娘です。第11話で初登場し、マクーから狙われていました。ボイサーはホシノ・システムを知っているため、マクーに捕まっていたのです。彼を救い出すことが「宇宙刑事ギャバン」の縦糸になっていました。

宇宙犯罪組織マクー

さてギャバンが戦う相手が宇宙犯罪組織マクーです。首領はドン・ホラー。初期の幹部はハンターキラーでした。彼は元宇宙刑事でしたが、マクーに入り、ボイサーを拉致した張本人です。彼は獣星人ダブルマンとベム怪獣を率いて戦っていました。ダブルマンはマクーが制服した星からやってきた宇宙人でベム怪獣はその名の通り、怪獣です。初期はこの2体をギャバンは倒していました。ただこの流れは冗長となったためか、第13話以降はダブルマンとベム怪獣が合体したダブルモンスターとギャバンは戦うことになりました。

さてマクーと言えば魔空空間です。これはマクーが地軸転換装置を作動することで創りだす、一種のブラックホールです。マクーは、ダブルマンやベム怪獣の能力を3倍に増幅させる魔空空間へ相手を引きずり込むことで、1対1での戦闘をより有利に展開しようとしていました。それに対してギャバンは、一人乗りマシンであるサイバリアンに騎乗し、あえて魔空空間で戦うことで、実世界の破壊と被害を最小限にとどめています。魔空空間では幻想的な描写が多かったです。またベム怪獣やダブルモンスターは巨大化することも可能でしたが、その場合、ギャバンは電子星獣ドルーを呼び出していました。これはギャバンがバード星から乗ってきた超次元光速機ドルギランの下半分が分離して登場するロボットで、ブロントザウルスのような形をしています。ギャバンはドルーの頭の上に立ち、その状態で指揮するのです。ドルーはしょっちゅう首を振っていましたが、よく落っこちなかったものです。なおサイバリアン搭乗時もギャバンは立ちのりしていました。

最後はギャバンが使うレーザーブレードを使ったギャバンダイナミックでダブルモンスターを倒すのが定番でしたね。これは「電子戦隊デンジマン」や「太陽戦隊サンバルカン」との差別化も図っていたのだろうと思います。

サン・ドルバ

さて第30話で転機が訪れます。ドン・ホラーの息子サン・ドルバ(西田健)が武者修行から帰ってきたのです。と同時に彼の母ギバ(三谷昇)が登場。それに危機感を抱いたハンターキラーはギャバンにギバの魔術を宇宙刑事が使う暗号で警告するのですが、すぐに露見してしまい、ドン・ホラーによって宇宙に追放されてしまいました。よって以後はサン・ドルバとギバが指揮をとることになりました。サン・ドルバは直情的な性格だったため、ギバが悪知恵を働かせてサポートしていました。

最終回

上原正三は全44話中37話を書いています。最終回の三部作も上原が書いています。まず第42話で宇宙に追放されたハンターキラーは銀河連邦警察に保護され、コム長官が尋問します。それにより、ついにボイサーの居場所が判明しました。早速出動するギャバンでしたが、途中、森林警備員だった伊賀電(渡洋史)と出会います。戦いの最中、電が負傷したため、ギャバンは電をバード星へ送りました。第43話「再会」でギャバンはボイサーと再会し、救出に成功。しかし、ボイサーは亡くなってしまいます。と同時に彼が守り抜いた秘密設計図はボイサーの手のひらに浮かび上がりました。体温が下がると浮かび上がる特殊なインクで描かれていたのです。それを目の当たりにしたギャバンは改めてマクーの打倒を誓います。第44話でギャバンはサン・ドルバとギバを倒し、最後はドン・ホラーを倒しました。途中、宇宙刑事にスカウトされた電が駆けつけ、宇宙刑事シャリバンとしての姿を見せる場面もあります。ギャバン銀河パトロール隊太陽系地区隊長に昇進することになり、地球担当の後任は伊賀電こと宇宙刑事シャリバンがつくことになったのでした。

おわりに

宇宙刑事ギャバン」は好評で平均視聴率は14.9%でした。以後、「宇宙刑事シャリバン」「宇宙刑事シャイダー」と続いていくことになります。ギャバンが父ボイサーと再会する第43話が放送された直後は東映に電話が殺到したそうです。それくらい盛り上がったのです。

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(番外編)金城哲夫は太陽のように

はじめに

ここまで上原正三の足跡を書いてきましたが、ここで視点を変え、彼を脚本家に導いた金城哲夫について軽く取り上げます。

東京生まれの沖縄人(うちなんちゅ)

1938年7月5日、東京・芝の病院で金城哲夫は生まれました。彼の父忠榮は妻つる子とともに麻布獣医専門学校(今の麻布大学)に通っていたため、東京で生まれたのです。忠榮は2年の東京暮らしのあと、沖縄へ戻りました。なので私もそうですが、東京で暮らしていた頃の記憶は哲夫にはなかったと思います。

沖縄戦

こうして沖縄で暮らしていた哲夫でしたが、7歳になる時、沖縄戦が始まります。哲夫の母つる子は米軍の機銃掃射を浴び、左足を失ってしまいました。家族と別れ、哲夫とともに逃げていた最中の出来事でした。つる子は哲夫に自分を置いて逃げるように言い、哲夫は仕方なくそれに従いました。結局、哲夫はアメリカ軍に救われ、つる子も含めた家族全員と再会しました。この体験は後の哲夫に影響を与えます。

玉川学園への進学

戦後、沖縄はアメリカの信託統治領となりました。金城哲夫は沖縄で成長し、高校受験の時を迎えました。金城は那覇高校を受験しましたが、不合格に終わります。以前も書きましたが、上原正三那覇高校に前年入学しています。これが金城のもう一つの転機となりました。金城は母つる子の進めで東京都町田市にある玉川学園高等部へ進学することになったのです。こうして金城は高校時代以降を本土(ヤマト)で過ごすことになりました。このことも後の金城に影響を与えます。玉川学園在学時には沖縄訪問団を結成して学友とともに当時の沖縄を訪れたりしていました。またのびのびと育ったようです。

円谷プロ

さて金城哲夫は国語研究家の上原輝男と出会います。上原輝男は玉川学園に在籍していた円谷皐(英二の次男)を介して円谷英二を紹介され、「竹取物語」の脚本を依頼されました。この作業を金城も手伝ったのです。この経験を通して金城は脚本家を目指すことを決意し、上原輝男に英二を紹介して欲しいと頼みました。こうして金城は円谷プロに入ったのです。もっとも当時はまだ円谷特技研究所の時代でした。

円谷一との出会い

こうして金城を預かった円谷英二でしたが、彼は脚本家ではありません。そこで東宝の映画を手がけていた関沢新一に金城を預けることにしました。関沢は金城に天賦の才があるのがわかったと証言しています。金城の作風は明朗でポジティブな娯楽志向、そして、絵がみえる、あるいは、絵がわくト書きです。その2つの作風は関沢に出会って得たものでもありました。

次に金城の面倒をみたのが、円谷英二の長男でTBSで演出家として活躍していた円谷一です。一の方が7つ年上でしたが、すぐに金城と一は仲良くなりました。一は金城を自分の作品などで起用し、脚本を書かせたのです。自分が演出したドラマでは金城に意見を出したのは間違いないでしょう。円谷一は常々「ディレクターは脚本を書けなければ駄目だ」と言っていました。「ウルトラQ」や「ウルトラマン」で飯島敏宏、実相寺昭雄、樋口祐三が脚本も書いているのはそれも関係しています。ただ、一自身は脚本を書くタイプではありませんでした。そのため、金城は自分の代わりに脚本を書いてくれる脚本家として育てようとしたのです。一は金城が書いた脚本にもよく意見し、書き直しを命じることが多々あったようです。これもその思いがあったからなのでしょう。

円谷プロでの活躍

さて以前書いたとおり、円谷プロは「ウルトラQ」の制作を開始します。金城も脚本を書いていますが、制作第1話の「マンモスフラワー」は演出した梶田興治が意見を出し、何度も改稿しています。この当時は未だ修行の時代だったと言えるでしょう。この頃の金城の佳作といえば「五郎とゴロー」「宇宙からの贈りもの」「クモ男爵」「ガラダマ」「1/8計画」が挙げられると思いますが、いずれも円谷一と組んで書いた作品です。特に「五郎とゴロー」は「邪気のない人間」五郎が主役となった話です。金城はこういう作品を得意とし、円谷一もそれを得意にしていました。逆に金城は「邪気のある人間」の描写が苦手で梶田が演出した「甘い蜜の恐怖」では、それが顕著に現れてしまっています。事件を起こした木村の描写が粗いのです。なお、この頃、上原正三が上京したのは以前書きました。

ウルトラQ」は好評のうちに終わり、「ウルトラマン」が始まりました。この作品で金城は一本立ちしたと言えるでしょう。樋口祐三が監督した「恐怖のルート87」「まぼろしの雪山」、そして鈴木俊継が演出した「禁じられた言葉」、そして満田かずほが絵演出して「ウルトラマン」最高視聴率を記録した「小さな英雄」。金城は円谷一以外の監督とも組んで傑作を書いています。「禁じられた言葉」では、メフィラス星人に、お前は宇宙人なのか地球人なのか、と問われたハヤタに「両方さ」というセリフがありますが、それは金城哲夫自身の立場とダブります。金城は沖縄と本土との架け橋になりたかったのです。

沖縄への帰郷と死

しかし、金城が活躍した期間は長くは続きませんでした。「ウルトラセブン」の途中から制作が始まった「マイティジャック」が低視聴率に終わったからです。また「ウルトラセブン」の後番組「怪奇大作戦」でも金城は苦悩の日々を送っていました。金城は3本しか書いていません。これについて、上原正三は白石雅彦著「「怪奇大作戦」の挑戦」でこう証言しています。

上原 「人喰い蛾」が第一話にならなかったというのは、金城のプライドをひどく傷つけたと思うよ。「マイティジャック」の失敗のしわ寄せも来ている時期だったしね。あの頃は苦悩の日々でしたよ。だから「怪奇大作戦」の金城の作品は、みんな苦渋に満ちているよね。それからは企画室長の立場があるから、一応脚本は読むんだけど、それだけで何も言わないんだよね。あれは辛かったよね。だって絶対のエースがもう投げられなくなっていたんだから。

怪奇大作戦」終了後、制作が途絶えた円谷プロは円谷皐主導で人員整理を始めました。金城哲夫は企画文芸室の室長の役を解かれ、プロデューサー室に異動となりました。この頃から金城は酒浸りの日々を送るようになりました。さて田口成光は無給なのに円谷プロに出入りして金城と付き合っていましたが、1969年初頭、金城の頼みで信州にある彼の実家へ金城を連れて行きました。途中、金城は諏訪湖のほとりの骨董屋でラッパを買っています。そして恩師の上原輝男やTBSの拵井プロデューサーなどへ電話をかけていました。「怪奇大作戦」の橋本洋二プロデューサーも電話を受けています。橋本は金城が帰郷の決意を固めていたのを知ると懸命に引き留めたと言います。金城と"四つに組んで勝負をしていない"という思いが残っていたからです。ですが、金城の決意は変わりませんでした。

こうして金城は1969年3月1日、船に乗って沖縄へ帰りました。離岸する船上、何を思ったのか、金城はラッパを吹き出したと言います。その音色は見送りに行った人達の記憶にずっと残ったのでした。

帰郷後、金城は沖縄のラジオ番組のパーソナリティーや沖縄芝居の脚本を書いていました。しかし、金城は沖縄芝居では言葉の壁にぶち当たることになります。高校時代からずっと本土で暮らしたため、ウチナーグチが想像以上に不得手になっており、脚本を一度標準語に書いた後、ウチナーグチに翻訳されるという過程を経て芝居にされていました。翻訳される過程で微妙なニュアンスが変わることもあり得ます。このことは金城を徐々に苦しめました。そういえば「ウルトラQ」で「SOS富士山」を金城とともに制作した件について飯島敏宏は白石雅彦著「飯島敏宏 「ウルトラマン」から「金曜日の妻たちへ」」でこう証言しています。

金ちゃん、台詞回しにちょっとおかしいところがある。そういう部分というのは全部直しました。それは平気で言い合って、「金ちゃん、こういう言い回しはあまりしないよ」とかね。彼は高校のときに沖縄からこっちに来たでしょう。だから言葉のハンディがあった。東京弁と書こうとすると東京弁にならない。今度は故郷に帰って沖縄芝居を書き始めると、純粋なウチナーグチ(沖縄言葉)じゃない。だからその両方で悩んだみたいだね。

 また高校時代から本土で過ごした時は上原正三ほどの差別は受けていなかったようで、そのため沖縄が置かれていた立場を上原ほど理解できていたとも言い難かったようです。金城哲夫は本土と沖縄との架け橋になりたいと思っていましたが、残念ながら壁にぶち当たり、晩年はまた酒浸りの日々を送るようになりました。そして1976年2月23日、泥酔した状態で自宅2階の仕事場へ直接入ろうとして足を滑らせ、転落。直ちに病院に搬送されましたが、3日後の2月26日に脳挫傷のため死去したのでした。享年37歳でした。

おわりに

以前も書きましたが、金城哲夫は私の父と同年です。全盛期はあまりにも短かったのですが、第一期ウルトラシリーズの関係者は誰もがその才能を褒め称えていました。上原正三も同様で「帰ってきたウルトラマン」では「ウルトラマン」との亜流にならないようにするため腐心したと言います。帰郷せずに橋本洋二と4つに組んでいればどうなっていたのかなあと、ふと思いました。

最後に金城哲夫の実家がある南風原町の公式サイトの載っている金城哲夫の資料館のリンクを載せておきます。

www.haebaru-kankou.jp

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電子戦隊デンジマン

はじめに

1980年2月2日から1981年1月31日まで、テレビ朝日系列で毎週土曜18:00 - 18:30 に全51話が放送された「電子戦隊デンジマン」を取り上げます。

スパイダーマン

さて「電子戦隊デンジマン」は、東京12ちゃんねる(今のテレビ東京)で放送されていた「スパイダーマン」の流れを受け継いで作られた番組です。「スパイダーマン」は東映とマーベル・コミックの「3年間にわたり、お互いのキャラクターを自由に使用してよい」という契約により生まれた番組です。1978年5月17日から1979年3月14日に掛けて、全41話が放送されました。この毎週水曜日19:30 - 20:00の枠は東映が特撮番組を放送していた枠でした。当然ヒーローはあのマーベルコミックのスパイダーマンですが、オリジナルとは違う点が盛り込まれていました。まず一つがレーサーだった山城拓也がスパイダー星人ガリアからスパイダーエキスを注入された事で体質が変化したためにクモの能力を持ち、垂直の壁に張り付く事や昇り降りする事ができるようになったことです。拓也は馬鹿でかいブレスレットをつけており、ブレスレットから取り出した強化服を着てスパイダーマンになります。そしてスパイダーマンが巨大ロボットのレオパルドンに乗って敵のマシーンベムを倒すことです。そういえば等身大で倒されたマシーンベムは数えるほどしかおりません。首領のモンスター教授(安藤三男)まで巨大化してレオパルドンと戦ったのは子供心にやり過ぎだなあと思いましたけど。

上原は第1話や最終話など主要な話を15話を書き上げましたが、書いた本数は高久進の16話の方が多くなっています。

バトルフィーバーJ

さて「スパイダーマン」は平均14%という高視聴率(当時の東京12ちゃんねるはネット局を持っていませんでした)を弾き出し、好評でした。その後継作が「バトルフィーバーJ」です。でこの番組は1979年2月3日から1980年1月26日まで、テレビ朝日系列で毎週土曜18:00 - 18:30に全52話が放送されました。あれ? なぜ放送局が違うのでしょうか? それはこの枠の前番組「闘将ダイモス」の視聴率がさほど高くはなかったために打ち切られてしまい、ちょうど同じ頃に企画が進んでいた「バトルフィーバーJ」と放送枠を交換して制作することになったからです。そんな裏事情など知らなかった私は「闘将ダイモス」の最終回を観た直後に放送された予告を観て、「アニメ番組じゃないんだ」と驚いた記憶が残っています。東京12ちゃんねるで放送された「闘将ダイモス」の流れを組む番組は「未来ロボ ダルタニアス」になりました。

さてこの番組の仮題は「キャプテンジャパン」で、元々は世界各国から集まったヒーローの活躍を描くものとして企画されました。その名残がバトルジャパン、バトルコサック、バトルフランス、バトルケニア、ミスアメリカという名称として残っています。

さて「スパイダーマン」でレオパルドンの人気が高かったため、この番組でも巨大ロボが登場することになりました。それがバトルフィーバーロボです。ところが先述した関係もあったのか、放送開始に造形が間に合わなかったため、初登場は第5話からになり、第4話までは「建造中」の様子だけが映されていました。そう。「秘密戦隊ゴレンジャー」や「ジャッカー電撃隊」とは別の流れで「バトルフィーバーJ」は企画され、制作されたのです。原作者も石ノ森章太郎ではなくて八手三郎になっています。ですので、一時は「バトルフィーバーJ」がスーパー戦隊シリーズの第1作となっていました。「バトルフィーバーJ」も高久進上原正三が交代した形で書いており、第1話は高久進が書いていますが、最終4話分は上原正三が締めています。

なおバトルフィーバーロボが戦うのは敵のエゴス怪人の弟や妹のロボットでした。でも明らかに着ぐるみはエゴス怪人の額にエゴスの紋章をつけたものばかりでしたけどね。当然、お約束として突っ込まずに観ていました。

電子戦隊デンジマン

さて「バトルフィーバーJ」の後継作が「電子戦隊デンジマン」です。この番組はその後のスーパー戦隊シリーズのフォーマットを作った番組となりました。まず一つはデンジレッド、デンジブルー、デンジイエロー、デンジグリーン、デンジピンクというように、色をモチーフとしたキャラクターになったことです。その次は顔にゴーグルが採用されたことです。実は「バトルフィーバーJ」でも検討されていたそうですが、ミスアメリカとの差がありすぎることから一旦見送られ、デンジマンから採用されています。ただアクション用には従来のような、空気穴も兼ねた覗き穴が開けられているそうです。当時はアップ用マスクの衝撃が大きすぎて気づきませんでした。なお上原正三は全51話のうち31話を書いています。

さて大河ドラマのような縦糸が設定されていたのも「電子戦隊デンジマン」の特徴で、これはヒーローも敵も同様です。主人公は遥か3000年前にベーダー一族に滅ぼされたデンジ星からやってきたデンジ星人の末裔です。デンジ星が滅ぼされた経緯は第7話で描かれていますが、デンジマンの基地デンジランドが地球へやってきた様子は第1話冒頭で描かれています。

対するベーダー一族は首領に当たるのがヘドリアン女王(曽我町子)、その次がヘドラー将軍(藤堂新二)、女王の侍女がミラーとケラーです。ミラーはその名の通り、ヘドリアン女王が使う鏡や水晶玉にもなります。ケラーは女王の盾にもなります。ベーダー一族はヘドリアン女王以外は皆「○○ラー」という名前で統一されており、「太陽戦隊サンバルカン」に登場するアマゾンキラーもその命名規則に従っています。

デンジマンの変身後の名前を先に書いてしまいましたが、変身するのは赤城一平、青梅大五郎、黄山純、緑川達也、そして桃井あきらと変身後の名前と繋がりがあります。赤城は格闘家で青梅は元サーカス団員。黄山は元科学者。元刑事の緑川は刑事だった父をベーダー怪物のムササビラーに殺され、元プロテニスプレイヤーだった桃井も同じくムササビラーにコーチを殺されています。その直後にデンジ星からやってきたロボット犬アイシーに選抜されて電子戦隊デンジマンになったという経緯があります。ただ桃井は第2話でテニスプレイヤーになる夢を捨てきれず、電子戦隊をやめようとしましたが、直後にシャボンラーに襲われ、他のメンバーにその危機を救われたことにより、デンジマンに戻りました。以後、5人はアスレチッククラブに就職することになりました。青梅はあんぱん好きでロッカーには山のように入っている他、しょっちゅう食べていました。これは演じた大葉健二の発案です。当初は黄山が「カレー好きのようなもの」を割り当てられる予定だったようですが、これを演じた津山栄一が「自分のイメージとは違う」と難色を示したところ、大葉が進んで引き受けてそうなったようです。そういえばバトルコサックや一条寺烈も三枚目なところがありましたね。野生児だとか、お金を持っていなくてピーピー言っているとか。

さてデンジマンの必殺技はデンジブーメランと電子稲妻落としの2つがあります。デンジブーメランは5人が集まり、各人が手に持つデンジスティックを5本一緒にして飛ばして斬り殺す技で、電子稲妻落としは各人がジャンプしてベーダー怪物の脳天にデンジスティックを同時にぶつける技です。映画では電子稲妻落としが使われていますが、デンジブーメランの方が印象深いですね。でその直後にベーダー怪物は巨大化。デンジレッドが万能戦艦デンジタイガーを呼び出し、その中から巨大戦闘機のデンジファイターが発進。デンジファイターは巨大ロボットのダイデンジンに変形し、デンジマンが乗り込み、戦うのです。ダイデンジンは色々な武器を駆使しますが、最後はデンジ剣・電子満月斬りでベーダー怪物を倒します。余談ですが、ダイデンジンに乗り込む時、デンジマンの5人は立っているダイデンジンまで走って搭乗するのですが、なぜベーダー怪物はダイデンジンに乗り込むまで待っているのかは突っ込んではいけないお約束です。

初の第三勢力 バンリキ大魔王

さてデンジマンを語る上で避けて通れないのが初の第三勢力バンリキ大魔王(大前均)でしょう。この人は第37話「蛮力バンリキ魔王」 (脚本:曽田博久、監督:小林義明)から登場したへび座暗黒星雲から来た宇宙を放浪する無法者です。巨大化してダイデンジンのデンジ剣を真剣白刃取りするという圧倒的な力を見せた後、ベーダー一族に加わってしまいました。ただ当初は宮殿で食っちゃ寝、食っちゃ寝しており、ヘドリアン女王に「一緒に一杯やらんか」と誘って「無礼者」と罵られたり、その後も女王に「食って飲んで寝る、まるで豚じゃ」と軽蔑されるなど遊び呆けていました。ですが、この人、ベーダー一族を乗っ取るという野望を隠し持っており、それが露わになって大暴れするのが第48話から始まる最終4部作です。もちろん脚本を書いたのは上原正三です。

まず大魔王はベーダー怪物のサッカラーを勲章を餌に裏切らせ、反乱を起こします。ですがベーダー一族はカラクリラーとケンダマラーを誕生させ、反乱を鎮圧。途中、この3体のベーダー怪物が巨大化したまま戦うという凄い場面も描かれています。この反乱は失敗し、大魔王はマネキンと化されてしまったわけですが、大魔王には隠し球がありました。それが第49話の最後の場面から登場したバンリキモンスです。こいつは強敵で尻尾から発する念動力が最大の武器です。また口からはくガスでマネキンにされたバンリキ大魔王を解放してしまいました。勢いに乗ったバンリキ大魔王はベーダー城(書き忘れていましたがベーダー一族の本拠地です)を制圧。第50話ではヘドラー将軍が巨大化してダイデンジンと戦いますが敗れ、最終話の第51話です。デンジマンは巨大化したバンリキモンスと戦いますが、念動力の前に全くはが立たず、ダイデンジンは出動不能の状態になってしまいました。その様子を観ていた女王の側近ミラーは女王を裏切ってバンリキ大魔王の家来になった…というのは真っ赤な嘘。ミラーはバンリキ大魔王がバンリキモンスの尻尾にエネルギーを注入する様子をしっかり目撃し、ヘドリアン女王に注進します。ヘドリアン女王はミラーが変身した水晶玉を使って妖術でバンリキモンスの弱点が尻尾であることをアイシーに伝えます。

アイシー「モンスの弱点は尻尾」

さてデンジマンはアイシーの制止を振り切ってバンリキモンスと戦っていました。そこへ出動不能なはずのデンシタイガーがやってきました。ダイデンジンも動作します。そしてダイデンジンは念動力に苦戦しましたが、

アイシーの声「モンスの弱点は尻尾」

それを聞いたデンジレッドはバンリキモンスの尻尾を攻撃。念動力は止まり、ダイデンジンはバンリキモンスを倒すことに成功しました。直後にデンジマンは、アイシーがその身を犠牲にしてダイデンジンの回路になったことを知るのでした。

ちょうどその頃、バンリキ大魔王はミラーの裏切りは見せかけだと知って女王を襲いますが、ミラーとケラーを倒すことには成功したもののミラーの攻撃で失明してしまいました。大魔王はそのまま地上に出てしまったところにデンジマンと遭遇。デンジブーメランに倒されます。

残りはヘドリアン女王です。デンジマンはベーダー城に乗り込みましたが、そこには女王の虚像のみがあるのみ。ヘドリアン女王は死に、こうして戦いは終わりました。デンジマンはアイシーの功績を讃えるため、サッカー大会を開くのでした。

番組は好評のうちに終わり、次作「太陽戦隊サンバルカン」へと続きます。「電子戦隊デンジマン」はスーパー戦隊シリーズの礎を築いた作品だったと言えるでしょう。

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