宇宙刑事ギャバン

はじめに

1982年3月5日から1983年2月25日まで、テレビ朝日系列で毎週金曜19:30 - 20:00に全44話が放送された「宇宙刑事ギャバン」を取り上げます。

企画の流れ

企画のきっかけとなったのは、宇宙のどこかで金属質のヒーローが剣を持ってたたずむ姿を描いた村上克司による1枚のプライベートイラストだそうです。このイラストを見た東映の吉川進は、「仮面ライダー」を超える単体ヒーローの創造に挑戦するに当たって、大きな戦力となると判断したそうです。

またこの頃、上原正三は「電子戦隊デンジマン」の後番組「太陽戦隊サンバルカン」を書いていましたが、マンネリになる前に次は降板したい、と吉川に言ってきていました。そこで吉川は上原をこの番組の制作に回そうと考え、キャラクターのデザインを見せたところ、上原も乗り気になり、参加が決まりました。

企画当時のタイトルは「宇宙刑事Z」でした。正式な設定上の武器であるレーザーZビームとコンバットスーツにZの文字を彷彿させる黒のラインに、その名残があります。決定名称「ギャバン」はフランスの俳優ジャン・ギャバンからとっています。この命名路線は「時空戦士スピルバン」まで続きました。

宇宙刑事ギャバン

こうして「宇宙刑事ギャバン」の制作が始まりました。主役のギャバンを演じたのは大葉健二です。「バトルフィーバーJ」「電子戦隊デンジマン」と出演していたので子供達にはおなじみでした。JAC所属なのでアクションは得意で変身前の状態でも激しいアクションを披露しました。なお本名はギャバンですが、ギャバン宇宙刑事でバード星人だったボイサー(千葉真一)と地球人一条寺民子との間に生まれたので、地球では一条寺烈という名前を使っていました。烈はアバロン乗馬クラブで働くことになったのですが、マクー絡みの事件が起きると捜査のためにしょっちゅう仕事を放り出すため、「仕事をサボる」とみなされて月給が3000円しかもらえなかったこともありました。また宇宙で暮らしていた期間が長かったため、お金を使う習慣がなく、お金が必要になると他の人(ミミーやマリーン、次作ではシャリバン)にお金を借りるのが定番でした。どうやって返していたのかは謎です。

ギャバンの助手を務めるのがミミー(叶和貴子)です。ミミーは銀河連邦警察の最高責任者コム長官(西沢利明)の娘でバード星人です。レーザービジョンという能力があり、インコになることができます。ギャバンのことが好きで強引についてきました。途中、第32話で母親の看病のためにバード星に帰りましたが、第42話で戻ってきました。バード星人のため、テレパシーや予知能力を持ち、それを使ってギャバンの危機を救ったこともあります。なおミミーがバード星に帰っていた時期はコム長官の秘書のマリーンが代わりにギャバンの助手を務めていました。なおミミーもマリーンもインコをモチーフにしたヘルメットのようなものを頭につけていました。

さて宇宙刑事シリーズ全作に登場する地球人のレギュラーもいます。その一人がルポライターの大山小次郎(鈴木正幸)です。彼はUFO絡みの取材をしており、マクーが起こした事件に巻き込まれることが度々ありました。ですが、宇宙刑事の活躍もあってなぜか生き延びています。いわば狂言回しの役割です。

もう一人の地球人のレギュラーが星野月子です。彼女はギャバンの父ボイサーの親友でプラズマエネルギー装置・ホシノ・システムを開発した星野博士の娘です。第11話で初登場し、マクーから狙われていました。ボイサーはホシノ・システムを知っているため、マクーに捕まっていたのです。彼を救い出すことが「宇宙刑事ギャバン」の縦糸になっていました。

宇宙犯罪組織マクー

さてギャバンが戦う相手が宇宙犯罪組織マクーです。首領はドン・ホラー。初期の幹部はハンターキラーでした。彼は元宇宙刑事でしたが、マクーに入り、ボイサーを拉致した張本人です。彼は獣星人ダブルマンとベム怪獣を率いて戦っていました。ダブルマンはマクーが制服した星からやってきた宇宙人でベム怪獣はその名の通り、怪獣です。初期はこの2体をギャバンは倒していました。ただこの流れは冗長となったためか、第13話以降はダブルマンとベム怪獣が合体したダブルモンスターとギャバンは戦うことになりました。

さてマクーと言えば魔空空間です。これはマクーが地軸転換装置を作動することで創りだす、一種のブラックホールです。マクーは、ダブルマンやベム怪獣の能力を3倍に増幅させる魔空空間へ相手を引きずり込むことで、1対1での戦闘をより有利に展開しようとしていました。それに対してギャバンは、一人乗りマシンであるサイバリアンに騎乗し、あえて魔空空間で戦うことで、実世界の破壊と被害を最小限にとどめています。魔空空間では幻想的な描写が多かったです。またベム怪獣やダブルモンスターは巨大化することも可能でしたが、その場合、ギャバンは電子星獣ドルーを呼び出していました。これはギャバンがバード星から乗ってきた超次元光速機ドルギランの下半分が分離して登場するロボットで、ブロントザウルスのような形をしています。ギャバンはドルーの頭の上に立ち、その状態で指揮するのです。ドルーはしょっちゅう首を振っていましたが、よく落っこちなかったものです。なおサイバリアン搭乗時もギャバンは立ちのりしていました。

最後はギャバンが使うレーザーブレードを使ったギャバンダイナミックでダブルモンスターを倒すのが定番でしたね。これは「電子戦隊デンジマン」や「太陽戦隊サンバルカン」との差別化も図っていたのだろうと思います。

サン・ドルバ

さて第30話で転機が訪れます。ドン・ホラーの息子サン・ドルバ(西田健)が武者修行から帰ってきたのです。と同時に彼の母ギバ(三谷昇)が登場。それに危機感を抱いたハンターキラーはギャバンにギバの魔術を宇宙刑事が使う暗号で警告するのですが、すぐに露見してしまい、ドン・ホラーによって宇宙に追放されてしまいました。よって以後はサン・ドルバとギバが指揮をとることになりました。サン・ドルバは直情的な性格だったため、ギバが悪知恵を働かせてサポートしていました。

最終回

上原正三は全44話中37話を書いています。最終回の三部作も上原が書いています。まず第42話で宇宙に追放されたハンターキラーは銀河連邦警察に保護され、コム長官が尋問します。それにより、ついにボイサーの居場所が判明しました。早速出動するギャバンでしたが、途中、森林警備員だった伊賀電(渡洋史)と出会います。戦いの最中、電が負傷したため、ギャバンは電をバード星へ送りました。第43話「再会」でギャバンはボイサーと再会し、救出に成功。しかし、ボイサーは亡くなってしまいます。と同時に彼が守り抜いた秘密設計図はボイサーの手のひらに浮かび上がりました。体温が下がると浮かび上がる特殊なインクで描かれていたのです。それを目の当たりにしたギャバンは改めてマクーの打倒を誓います。第44話でギャバンはサン・ドルバとギバを倒し、最後はドン・ホラーを倒しました。途中、宇宙刑事にスカウトされた電が駆けつけ、宇宙刑事シャリバンとしての姿を見せる場面もあります。ギャバン銀河パトロール隊太陽系地区隊長に昇進することになり、地球担当の後任は伊賀電こと宇宙刑事シャリバンがつくことになったのでした。

おわりに

宇宙刑事ギャバン」は好評で平均視聴率は14.9%でした。以後、「宇宙刑事シャリバン」「宇宙刑事シャイダー」と続いていくことになります。ギャバンが父ボイサーと再会する第43話が放送された直後は東映に電話が殺到したそうです。それくらい盛り上がったのです。

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