キレンジャー/熊野大五郎

8日めは二代目キレンジャーこと熊野大五郎を取り上げます。

 

正直に申し上げましょう。本放送を観ていたのですが、彼について、その当時の記憶はほとんど残っていません。本放送当時の記憶で残っているのは次の通りです。

  • 「あんみつが好き」と小学館が販売していた雑誌「てれびくん」で紹介されていた。
  • 大岩大太より、かなり大柄だった。
  • 初出動時、転換に手間取り、中々転換できなかった。
  • カンキリ仮面の攻撃を受けて殉職し、その直後に大岩大太が戻ってきた。

これしかないのです。なので後年、ファミリー劇場東映チャンネルなどの再放送、およびDVDを見返した時は記憶と違っているところがあって戸惑いました。

 

大岩大太が九州支部の教官として赴任したため、ゴレンジャー予備軍から昇格し、第55話からキレンジャーを務めることになったのが熊野大五郎です。「大ちゃん」という呼び名はそのまま継承されましたが、海城からは「大五郎」と呼ばれることも多かったです。で初出動時は中々転換できず、アカレンジャーから精神を集中するんだとアドバイスを受けてやっと転換できました。

 

「あんみつが好き」というのは第56話冒頭で新命が語ったのみで食べる場面はありません。大食漢であるのは間違いなく、フルールパーラーゴンではスパゲティーナポリタンを食べていました。これは全く記憶になく、見返した時は驚きました。何らかの理由で設定が変更されたのは間違いありません。おそらく、演じただるま二郎さんがあんみつが好みではなかったのでしょう。

 

初出動時に中々転換できなかった事でもわかる通り、未熟です。明日香以上に未熟です。設定年齢は不明ですが、基本的にはタメ口で第58話で柔道の特訓を受ける場面ではなんと江戸川総司令にこう言います。

熊野大五郎「総司令、俺にも出動させてくれ。」

で焦って単独で出動し、黒十字軍に捕まって人質にされる始末。ちなみに第62話でも黒十字軍に捕まり、人質にされています。また第56話では007の弟太郎が出したなぞなぞにも真面目に答えようとしませんでした。人懐っこい大岩大太とは大違いです。 だるまさんの演技もアドリブを交えて芸達者な畠山さんよりもかなり見劣りするのは否めません。

 

一応、ブルースターグリーンスターの運転やバリドリーンでの新命の助手を務めてはいますが、大岩の代役にとどまってしまったのは否めません。第59話からは戦闘時に「どすこい」というようになりました。

 

第67話で殉職するまで成長した様子は観られませんでした。第67話では熊野のわずかな油断からイーグルのカビを使った新兵器「カビカX」を奪われてしまいますが、事の重大さを理解できず「たかがカビなのに?」と言って叱責されています。スタッフも熊野大五郎のキャラクターを深く掘り下げるつもりはなかったようです。

 

こうなった理由はよくわかりません。だるま二郎さんが出演することになったのは、演じる畠山麦さんのスケジュールの都合です。秘密戦隊ゴレンジャーは2年目を迎えていましたが、始まった当初、ここまで長く続くとは誰も想像していなかったでしょう。それが関係しているのかもしれません。この時期、畠山さんが何をしていたのかは諸説ありますが、現在確実な説だと考えられているのは、松方弘樹さん主演のドラマ『あがり一丁!』で主人公の弟分の板前、純役でレギュラー出演することになったことです。その直前に畠山さんは映画『沖縄やくざ戦争』で松方さんと共演しており、それで畠山さんを気に入った松方さんの御指名でそのドラマに出演することになったようです。今もそうかもしれませんが、子供向けの番組よりも大人向けのドラマの方が立場は上です。なのでゴレンジャーよりもそちらが優先されてしまったのでしょう。

 

さて私は以前、誠直也さん、新堀和男さん、そしてだるま二郎さんの3人が出るイベントへ行ったことがあります。3人とも当時の話をしておりましたが、その時に聞いた話を書きます。当時だるまさんは誠さんと同じ事務所に所属していました。熊野大五郎役はその縁で決まったようです。それまでだるまさんは秘密戦隊ゴレンジャーを観たことがなく、その後も過去の話を見直したりすることもしなかったようです。「どすこい!」というようになったのは技斗の岡田勝さんの発案だったそうです。以上の事から受ける印象は受身の姿勢。ただ言われた通りに仕事をこなしていただけなのでしょう。これでは畠山麦さんの代役に終わってしまったのも当然の話でしょう。道理で私があまり覚えていなかったわけです。

 

第67話で殉職する事は台本を受け取って初めて知ったそうです。最期のシーンはキレンジャーのスーツを着用していますが、この時はサイズが合わず、チャックを止めずに背中にガムテープを貼りまくって対処したそうです。だからよく見ると背中は一切映っていません。誠さんはこの場面の事をあまり覚えていないそうですが、それも道理で他のメンバーは転換しています。誠さんが現場にいる必要もなかったのです。アテレコしただけだったので記憶に残っていなかったのでしょう。

 

イベントでは誠さんは時には面白い話を交えて大いに楽しませようというサービス精神が観られましたが、だるまさんは自分の話をするだけでした。厳しい話になりますが、俳優としてだるま二郎さんが大成しなかった理由がなんとなくわかった気がしました。

 

結局、熊野大五郎を貶してばかりになってしまいましたが、畠山さんの代役を務めてゴレンジャーを支えたのは確かです。殉職場面は子供心に衝撃を受けましたが、このような最期になってしまったのも必然的だったのかなあと私は思います。

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