高橋一俊

秘密戦隊ゴレンジャーの技斗は次の4人です。

  • 大野剣友会(第1 - 66話)
    • 高橋一俊(第1 - 23話)
    • 池田力也(第24 - 26話)
    • 岡田勝(第27 - 66話)
  • JAC(現JAE)(第67 - 84話)
    • 山岡淳二(第67 - 84話)

その中で殺陣の基礎を固めた高橋一俊さんを10日目は取り上げます。

 

1943年生まれで東京都出身。17歳で劇団ひまわりに入り、そこで大野幸太郎と出会います。1964年に大野幸太郎が大野剣友会を結成して間も無く入会しました。中村文弥さんより少し遅れての入会で、岡田勝さんと中屋敷哲也さんとは同期です。

 

1969年、「柔道一直線」に大野剣友会が技斗を担当する事になり、高橋一俊さんに転機が訪れます。元々は別のチームが「柔道一直線」の技斗を担当していたのですが、制作担当の内田一作は普通の柔道に即した地味な殺陣に不満を抱き、大野剣友会に交代させたのです。その時、大野幸太郎により、高橋一俊さんが殺陣に抜擢されました。彼はその期待に十分応える殺陣をつけました。JACから人を呼んでトランポリンでのジャンプや空中でのアクションをたくさん取り入れ、柔道とはかけ離れた荒唐無稽な技を映像化する事に成功しました。当初、「柔道一直線」は「妖術武芸帳」打ち切りで空いてしまった期間を埋めるための繋ぎ番組としてスタートしたのですが、最終的には2年くらい続く長寿番組になりました。これも高橋一俊の技斗が好評だったからです。

 

以来、大野剣友会では大野幸太郎に次ぐ立場になり、数々の番組の技斗を担当しました。東映制作番組だけでも「仮面ライダー」「変身忍者嵐」「超人バロム1」「仮面ライダーV3」「イナズマン」「イナズマンF」「仮面ライダーX」「仮面ライダーアマゾン」の技斗を担当しています。その流れで「秘密戦隊ゴレンジャー」の技斗を担当する事になりました。

 

さてゴレンジャーはそれまでの単独ヒーロー物とは違い集団ヒーロー物だったため、初期の殺陣は試行錯誤が目立ちます。ただお馴染みの

アカレンジャー「五人揃って」

全員「ゴレンジャー」

のポーズは歌舞伎の白浪五人男を参考に早々と決まりました。ゴレンジャーストームの方式や名乗り方などが固まるのは10話目くらいになってからです。戦闘の流れは大まかにはこんな感じになりました。

  1. ゴレンジャーのメンバーが5人登場し、仮面怪人を遠巻きに取り囲む。
  2. 仮面怪人が「お前たちは?」と問う。
  3. ゴレンジャーのメンバーがポーズを取りながら名乗りをあげる。
  4. ゴレンジャーのメンバーが一人ずつ「トイヤー」と掛け声をあげてジャンプして集まる。
  5. 「(アカレンジャー)五人揃って(全員)ゴレンジャー」の決め台詞を言う。
  6. ゾルダーを倒す。
  7. ゴレンジャーストームを繰り出して仮面怪人を倒す。

 後の作品では3で各メンバーが名乗る順番は固定されているのですが、ゴレンジャーでは各話でバラバラです。アカが最初になったこともあれば、第20話のように最後になったこともあります。また名乗るときも「アカレンジャー」「アオレンジャー」「キレンジャー」「ミドレンジャー」「モモレンジャー」と言うようにポーズをとって名乗るだけで後の作品のように長々と決め台詞を述べたりはしません。

 

一番特徴的なのは4でしょうか。後の作品では最初から一箇所に集まって名乗っているので、この部分がありません。またジャンプする順番も各話でバラバラです。この部分を冗長と見られたり、情緒ある場面と見られたりしますが、私は後者だと思います。後の殺陣師である岡田勝さんや山岡淳二さんはこの部分の簡略化を図って変えてしまいますが、岡田さんは結局元に戻してしまいます。

 

そして戦闘の流れは固まるのですが、その矢先に事件が起きました。高橋一俊さんが大野幸太郎さんと対立し、大野剣友会を脱退する事件が起きてしまったのです。二人が対立した理由は定かではなく、今は二人とも亡くなっているので真相をしる事は出来ないのですが、この対立は本当に些細なことが原因で起きたようです。高橋一俊さんを慕って大野剣友会を脱退したメンバーも出てしまい、混乱が起きる事態となりました。そのため、高橋一俊さんはゴレンジャーも降板する事になってしまいました。

 

この当時は「仮面ライダーストロンガー」も制作されており、岡田勝さんはそちらの技斗を担当していました。岡田さんは当時、高橋一俊さんに次ぐ立場にあったので、本来なら「秘密戦隊ゴレンジャー」の技斗の後任は彼になるべきでした。ですが、本当に突然降板事件が起きてしまったために「秘密戦隊ゴレンジャー」を担当する準備が間に合わず、中継ぎで池田力也さんが技斗を担当する事になったのです。

 

さて、岡田勝さんが技斗になってから、ゴレンジャーの殺陣はますます面白くなっていくのですが、それについては次の記事で記述します。

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