宇宙刑事シャイダー

はじめに

この記事では1984年3月2日から1985年3月8日まで、テレビ朝日系列で毎週金曜19:30 - 20:00に全49話が放送された「宇宙刑事シャイダー」を取り上げます。

宇宙刑事シャイダー

宇宙刑事シリーズ3作目は前2作と大きく違う点が少なくとも2つ挙げられます。まず1つ目は前2作が主人公の男性の宇宙刑事JACから起用していたのですが、この作品では相棒の女性宇宙刑事JACから起用した点です。そして2つ目は1つ目から必然的に生まれた作風の違いとなりますが、主人公となる男性の宇宙刑事はそれまでの2名と違って訓練途中の未熟な刑事と設定されたことです。必然的に女性刑事の活躍もそれまでと違って激増しました。

さて主人公の最終オーディションに残ったのは円谷浩と吉田淳でした。最終的に主人公に選ばれたのは円谷浩でしたが、これは上原正三の強力な推薦があったためです。円谷浩の父親は円谷一、そう、上原正三にとっては恩人に当たる人です。上原は一から受けた恩に報いたかったのです。加えて特撮を担当していた矢島信男も松竹時代は円谷英二とともに仕事をし、「ミラーマン」では円谷一とともに仕事をした縁もありました。なので主人公に抜擢されたのは円谷浩となったのです。その代わり、上原は「宇宙刑事シャイダー」の脚本全49話を書き上げています。

さて主役の沢村大(円谷浩)のコードネームであるシャイダーはかつて地球でムー帝国を倒した過去を持つ戦士シャイダーにちなんで名付けられています。当初は明らかになっていませんでしたが、後に沢村大は戦士シャイダーの子孫であることが判明します。

敵側もムー帝国に関係があります。そもそも首領のクビライは戦士シャイダーに首と胴体をはねられ、胴体をサイボーグ化して現代まで生き残ったのです。

話を銀河連邦警察に戻しましょう。クビライ率いる不思議界フーマはそれまでの敵よりも強大で宇宙全土で暴れ回っていました。そのため、沢村大ことシャイダーとアニー(森永奈緒美)、そして彼らの同期も訓練半ばで戦地に赴くことになりました。シャイダーとアニーは協力しながらフーマと戦い、後にクビライを倒すことに成功したのです。

二人が乗る戦艦がバビロスです。バビロスは巨大ロボ形態のバトルフォーメーションの他、巨大な銃形態であるシューティング・フォーメーションに変形します。シューティング・フォーメーションの状態から放つ波動砲ビッグマグナムはフーマの巨大戦艦(だと思います)を何度も破壊しました。ただバンクシーンが多かった気はしますけど。

またシャイダーとアニーが操るのが超次元戦闘車シャイアンです。こちらはアニーが操縦する場面が多かった印象があります。そしてシャイダーが乗るオートバイがブルーホークです。

沢村大とアニーは別々に調査することが多かったです。そして、沢村大を演じる円谷浩JAC出身でなかったこともあり、JAC所属の森永奈緒美演じるアニーが活躍する場面が全2作と比べて激増しました。もちろん、沢村大の格闘する場面をなしにするわけには行きませんので、円谷浩も格闘場面を演じて傷だらけになりながら奮戦したそうですが、吹き替えも多用していました。

未熟な戦士ということは特訓場面もあるわけですが、私が覚えている限りでは第19話「アニー危機一髪」だけしかありません。この話ではシャイダーは不思議獣マグマグに一度敗れ、コム長官に心の弱さを指摘された沢村大は滝の流れを日本刀で切る技の習得を命じられます。「ウルトラマンレオ」のツルク星人の話を思い出しますが、「ウルトラマンレオ」が特訓だらけだったのとは対照的に、「宇宙刑事シャイダー」はこれだけしかないのです。そういえば市川森一が嫌ったスポ根ものを取り入れた「帰ってきたウルトラマン」でも特訓は第4話のみです。これはメインシナリオライターのセンスの差だったのではないかと思いますね。なお、第19話を書くにあたって上原が「ウルトラマンレオ」を意識したかどうかは知りません。

さて地球人のレギュラーですが、大山小次郎は引き続き登場します。ただし、この作品ではペットショップを営み、第17話からは沢村大を下宿させるようになりました。それでもUFOを追いかける情熱は失っていなかったようで、「宇宙刑事シャイダー」でもフーマの悪事に巻き込まれることが多々あったように思います。またアニーにも好意を寄せていました。彼の甥や姪も登場します。なお星野月子はバード星でコム長官の補佐を務めています。

不思議界フーマ

さて敵のフーマについて書きましょう。首領のクビライについては既に書きました。彼の孫娘が神官ポー(吉田淳)です。沢村大と同年代のように見えますが、実は年齢1万2000歳です。クビライからエネルギーをもらって若さを保っていたのです。ポーの両親については語られていません。クビライ自体は100万年くらい生きているという設定で、戦士シャイダーの活躍も1万2千年前の出来事です。

戦闘の指揮をとるのがヘスラー指揮官で「征伐!」が口癖です。彼の弟のヒムリーが第28話で登場しますが、ヒムリーはヘスラーに取って代わろうという野心を抱いていたため、ヘスラーの策略で抹殺されます。

ヘスラーの配下にいるのがギャル軍団です。ギャル1、ギャル2、ギャル3、ギャル4、ギャル5です。

フーマの作戦は人間の心を支配することで侵略を進める戦略をとったものが中心になっています。「地球を傷つけずに征服するため直接的な武力に訴えない」という説得力ある理由づけがなされていました。このため衣食住や娯楽、教育などが侵略作戦に利用され、身近なところにまで魔手を伸ばし人間の心の闇をえぐる作戦が実に多いです。しばしば子どもがターゲットとされるため、子どもが絡んだエピソードも増えました。劇中でしばしば流れた不思議ソングも不気味さを増幅させておりました。またシャイダーやアニーの心の未熟なところを突く作戦も取られました。そのためシャイダーとアニーが対立することがありましたが、事件解決後はお互いに成長し、二人の絆は強くなっていきました。これも二人が訓練半ばで派遣した戦士であることから生まれた話なのでしょう。「ウルトラマンA」で市川森一が発案した構想が奇しくもこの番組で描かれているのが興味深いです。

さてフーマが作戦に用いるのが不思議獣です。初期は卵から生まれる様子が描かれていました。第1話と第2話を担当した澤井信一郎監督の演出では、ギャル軍団の踊りや流れる音楽、そして神官ポーのセリフも相まって何だか淫靡な描写になっていました。子供の頃はなんとも思わなかったのですが、東映チャンネルで放送されたのを観た時はそう思いました。ただ流石に毎回流すのには長すぎたのか、中盤からは誕生の場面は省略されています。なお不思議獣の名前はバリバリとかペトペトというように二文字の繰り返しとなっています。「UFOロボグレンダイザー」の円盤獣やベガ獣と似た命名規則なのですが、上原がそれを流用したかどうかはわかりません。なお不思議獣はフーマが生み出した不思議時空では通常の4倍の力を発揮できます。

おわりに

番組は1年間の予定を全うしました。次作「巨獣特捜ジャスピオン」の準備が遅れたため終盤で3話延長されました。円谷浩森永奈緒美の代表作になったことは間違いありません。残念ながら円谷浩は若くして亡くなりましたが、上原正三円谷一への恩を返すことに成功したと言えるでしょう。なお実質的な最終回は第48話になっており、第49話ではそれまで揃わなかった宇宙刑事3人が西新宿に集まり、それまでの地球での活動を振り返る話となりました。最後にガイラー将軍そっくりの人(栗原敏)が登場する遊びもありましたけどね。

adventar.org