新・必殺からくり人

この記事では必殺シリーズ第11弾の『新・必殺からくり人』を取り上げましょう。

この作品が作られた経緯は『必殺シリーズ異聞 27人の回想録』で櫻井洋三プロデューサーがこう証言しています。

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櫻井 山田さんから電話がかかってきまして「櫻井さん、次なにやるの? わたし出ますわよ」と。そう言われたら作らんわけにはいきまへん(笑)。もう「ハイ、ハイ」ですよ、大女優ですから。浮世絵を手がかりにするというストーリーは山内さんのアイデア、そこから毎回の話を作っていったんです。

というわけで制作が決まりました。歌川広重(放送当時は安藤広重の名前が一般的でした)が描いた「東海道五十三次」の浮世絵に殺しの標的が隠されているという趣向で話が進みました。

脚本は先頭(第1話と第2話)と最終回(第13話)を早坂暁さんが執筆しています。ただし『必殺からくり人』での遅筆ぶりに懲りたのか、他の話は野上龍雄(第3話、第4話)、安倍徹郎(第5話、第7話)、村尾昭(第6話)、保利吉紀(第8話、第10話、第12話)、中村勝行(第9話、第11話)と言った面々が書いています。

さて物語は天保の改革の頃。第1話はこんな感じです。天保太夫こと、泣き節お艶一座は表の顔は小屋掛けの芸人一座ですが、裏では弱い者の恨みを金で晴らす「からくり人」です。ある夜、役人に追われる男(近藤正臣)が潜り込んできました。その翌日、天保の改革による奢侈禁止令により、江戸所払いを言い渡され、さらに小屋に火がかけられ、身の回りの物まで全て失ってしまいました。そこへ声をかけたのが浮世絵師の安藤広重(緒形拳)です。広重は以前、お艶(山田五十鈴)たちの裏稼業の現場を目撃していた上に、自分が「東海道五十三次」を描き上げる道中で見てきた、各地の非道な悪人たちを仕置して欲しいと依頼します。頼み料は百三十両。真意は不明ながらもお艶は依頼を引き受け、江戸での仕置を終えた後、旅に出ます。そして例の謎の男「蘭兵衛」が加わり、東海道五十三次の殺した日へ旅立つのでした。

さて『新・必殺からくり人』と銘打ったこともあり、登場人物は『必殺からくり人』と共通点があります。また全メンバーが殺し技を持つのも大きな特徴です。

謎の男蘭兵衛(近藤正臣)の正体は高野長英で黒子を務めています。第2話でお艶はその正体を見抜いた上で仕込み杖を渡しました。

ブラ平(芦屋雁之助)は一座の副座長で油と蝋燭を使った火吹き芸が得意な男で殺しにもその芸を使用します。

噺し家塩八(古今亭志ん朝)は落語家で、殺し技は話芸を活かした催眠術。屋根の上から落とします。スケジュールの問題から、第7話で銃で撃たれ、瀕死の体で高座を務めた後に死亡。

小駒(ジュディ・オング)はお艶の義理の娘。独楽を使った芸を披露しますが、殺しの得物も独楽です。蘭兵衛に淡い恋心を抱いていました。

一座の座長のお艶(山田五十鈴)は一座の座長で、三味線の新内節を演目とする他、他の芸人の伴奏役も務めています。得物は三味線のバチでした。

さて最終話の舞台は京都。いつもの通り、炙り出しで標的を炙り出そうとしたお艶でしたが、なぜか三条大橋が崩れる様子が写し出されます。不審に思いながらも別の絵があることがわかり、無事に標的は見つかり、殺しが遂行されるのですが、蘭兵衛が高野長英であることが役人にバレてしまいました。蘭兵衛はブラ平に顔を焼いてもらいます。お艶は広重と会いますが、彼の正体が隠密であることを見抜き、頼みの筋の問題から始末しました。そして蘭兵衛は旅先で知り合った女性千代(服部妙子)を送り届けるために一座と別れるのでした。

さて音楽は旧作で使用されたものが流用され、新しく作られたのは主題歌のアレンジのみでした。殺しの場面で使われたのは『必殺仕掛人』で使われたものになりました。その事情については『江戸プロフェッショナル 必殺商売人』のところで語りましょう。