今回はイナズマンF 第8話「ウデスパー兄弟!クロスハリケーン!!」(脚本:上原正三、監督:塚田正煕、擬斗:高橋一俊 (C) 東映、東映エージェンシー)を取り上げましょう。前回倒されたウデスパー(声:岩名雅記)がウデスパーα(声:渡部猛)とウデスパーβ(声:岩名雅記)として復活するのですが、ガイゼル総統の思惑とは違った形で復活し、話がややこしく、もとい、面白くなっていきます。
さてガイゼル総統はウデスパーαとウデスパーβを呼び寄せ、こう告げます。
ガイゼル総統「お前達はデスパー軍団の名誉ある戦士ウデスパーの分身だがウデスパーよりさらに優れた能力を持たせてあーる。まずお前達2人の使命はにっくきイナズマンを討ち、私の頼りある両腕となることだ。」
そして今回の「挑戦者」はジェットデスパー(声:青森伸)。ガイゼル総統はこう命じます。
ガイゼル総統「ジェットデスパーを使い、まずイナズマンの力を知れ!」
と言うわけでウデスパーα、ウデスパーβ、そして彼らの部下のジェットデスパーを交えた三人で作戦会議が行なわれましたが、その会議から暗雲が立ち込めます。ウデスパーがそのまま2人になったとガイゼル総統は思ったのでしょうが、なんと違ったのです。まあ声優の配役である程度わかるようになっています。
ウデスパーβ「ジェットデスパー、お前、どうやってイナズマンを倒すつもりだ。」
ジェットデスパー「は。私には必殺兵器があります。これ(小指ではなく左腕についたもの)です。この凍結銃さえあればイナズマンと言えども問題ではありません。」
ジェットデスパーの姿は一応、ジェット機をイメージさせるデザインになってますので、一応、名前と平仄は取れてはいます。ただ、ジェットデスパーの意見に異議を唱えた者がいました。
ウデスパーα「えーい、生ぬるいわ!」
なんとウデスパーαは腕についた万力でジェットデスパーの腕についた冷凍銃を殴り飛ばしてしまいました。ものすごく興奮しています。さて彼と対照的に沈着冷静だったウデスパーβはこう言いました。
ウデスパーβ「ウデスパーα、お前の考えを聞こう。」
すると返ってきた答えは
ウデスパーα「奴を倒すにはもっと暴力的かつ破壊的戦略が必要だあ。」
ウデスパーβ「というと?」
ウデスパーα「ミサイルだよ、ミサイル。」
なんと。ウデスパーαはウデスパーの腕力などは継承したのですが、知謀は備えておらず、単細胞な粗暴な性格だったのです。あまりにも短絡的な答えに呆れたのかウデスパーβ(こちらはウデスパーの知謀を受け継いでいます)はこう聞き返しました。
ウデスパーβ「なに?」
ウデスパーα「奴が潜んでいそうなところに片っ端からミサイルを撃ち込むのだ。絨毯爆撃こそ最良の方法なり。」
ジェットデスパー「なるほど。ウデスパーα参謀殿の方法にも一理ある。」
まあジェットデスパーの立場ではこう言わざるを得なかったでしょうが、ミサイルを撃ち込みまくると言うのはあまりにも乱暴すぎます。当然
ウデスパーβ「私は反対だ!」
ウデスパーα「なんだと!」
ウデスパーβ「イナズマン一人を探すためにデスパー軍団の貴重なミサイルを無駄使いする事は愚かな事だ。」
とウデスパーβは反対します。ただ「愚かな事だ」と言う言い方は冷徹すぎ、単細胞のウデスパーαはプッツン!
ウデスパーα「ええい、愚かとは何だ!」
怒り狂ったウデスパーαはウデスパーβと掴み合いの喧嘩を始めてしまいました。仕方なく部下のジェットデスパーは
ジェットデスパー「まあ、まあ、まあ、ウデスパーα参謀殿。」
と仲裁に入りましたが
ウデスパーα「うるさいわい。」
ジェットデスパーは突き飛ばされてしまいました。まあなんとか立ち上がったジェットデスパーでしたが喧嘩は未だ続いています。
ウデスパーα「どっちの方法を取るか、二人の勝負で決めよう。来い。」
ウデスパーβ「もっと冷静になれ、ウデスパーα。どの方法にするかはジェットデスパーに決めさせれば良い。」
ウデスパーα「ええい。良かろう。」
ウデスパーαは渋々ながら納得したようで
ウデスパーα「ジェットデスパー、決めろ。」
この投げやり気味な問いに対する哀れな部下ジェットデスパーの答えは
ジェットデスパー「私の作戦でやってみたいと思います。」
となりました。なおガイゼル総統はこの内輪揉めを知りません。
さてここは横浜港。林清(長谷川誉)少年(小学生くらい)が絵を描いていると姉の林多美(池永和美)がセーラー服を着てやってきました。どうやら多美は高校生のようです。二人の父親は船員で今は出航していますが、もうすぐ帰って来るようです。そして多美は清が怪しい飛行機の絵を描いた事に気がつきました。
林多美「渡さんに知らせなきゃ。」
もしかして少年同盟の関係者…かどうかはわかりませんが、渡五郎と荒井誠と面識があったようです。ところが絵を描かれたことをジェットデスパーが察知。デスパー軍団の皆さん、御登場。とその時、港の作業者がこんなことを言ってきて、多美と清を救い出そうとしました。
作業者「何するんだよー。」
あれ、どこかで見たお顔。その後、デスパー軍団の攻撃を受けてトンボを切ったことからも明らかなように、この人は大野剣友会の山田茂さんです。ところがジェットデスパーには敵わず、同僚と一緒に凍結銃で凍結されてしまいました。多美と清は貨物船の中に連れ込まれました。
さて荒井誠と渡五郎もこれを察知。貨物船に潜り込んで多美と清を発見。随分、愚策すぎませんか、と思いきや、即座にデスパー軍団の皆さん御登場。五郎はジェットデスパーと戦い、荒井誠が多美と清を連れて逃げたのですが、そこで双子の青年と出会しました。この二人は大野剣友会にいた中本恒夫さんと中本竜夫さん。その正体はウデスパーαとウデスパーβでした。荒井誠が敵う相手ではなく、荒井誠は倒されてしまいました。
場面変わってイナズマン(いつの間になったのでしょうか?)とジェットデスパー率いるデスパー軍団の戦闘場面。そこへ合流したのは
ウデスパーβ「あれがイナズマンか。」
ウデスパーα「やってやる。」
初めてイナズマンを観た時の反応も対象的です。しばらくジェットデスパーと戦うイナズマンでしたが
ウデスパーα「イナズマン!」
それを観て
イナズマン「ウデスパー! いや、違う。」
気がつくとウデスパーβも登場。
ウデスパーβ「我らはウデスパー回路をさらに増強してできたロボットファイターだ。いいか、イナズマン。あれがウデスパーα、私がウデスパーβだ。」
ウデスパーα「来い!」
それを聞き
イナズマン「ウデスパーα、ウデスパーβ。」
と鸚鵡返しのように復唱するイナズマン。
ウデスパーα「行くぞ、イナズマン。」
二対一の戦いとなり、圧倒的に不利なイナズマン。なおジェットデスパーは加勢していません。
イナズマン「強い。ウデスパー以上の実力だ。」
さらに
ウデスパーα「そろそろトドメと行こうぜ。」
ウデスパーβ「よし。」
と言うわけで放ったのはウデスパークロスハリケーン。その名が示す通り竜巻で、特撮は非常にチープなのは目を瞑りましょう、兎に角、竜巻なので強力で
イナズマンの心の声「渦巻の中が真空になっている。恐るべき必殺技。」
かなりこたえているようです。そこで
イナズマン「ゼーバーテレポーテーション!」
で逃げてしまいました。
ウデスパーα「くっそう、逃げられたぜ、ちくしょう。」
なんかチンピラが言うような乱暴な口調。ジェットデスパーも合流し
ウデスパーβ「イナズマンの実力はわかった。所詮、我らの敵ではない。クロスハリケーンは絶対だあ。」
ウデスパーα「奴を探し出せ!」
ジェットデスパー「は!」
あれ、荒井誠達は捕まってなかったようですねえ。渡五郎は横浜の中華街の辺りを歩いています。
渡五郎の心の声「すごい奴が出てきた。ウデスパーが四人になったようなもんだ。」
そして渡五郎は荒井誠や多美、清と合流。何をしてたの、ウデスパー兄弟は。荒井誠は林姉弟の家にいました。渡五郎と荒井誠は相談し、多美と清を「例のところ」へ避難させる事にしました。
CM明けると、そこは多分逗子か葉山のヨットハーバー。船にいる渡五郎に多美と清がやってきて、話をします。林姉弟は食事を差し入れに来たのですが、渡五郎は危険だから「これっきりにしてほしい」と言います。
と談笑する二人でしたが、そこへジェットデスパー軍団の皆さん、御登場。荒井誠も駆けつけ応戦しますが、逃げる多美と清の前にジェットデスパーが現れました。
ジェットデスパー「貴様達を囮にしてやる。」
そして
ジェットデスパー「ええい、待て。貴様達を固めてやる。」
凍結銃で二人は固められてしまいました。そして
渡五郎「剛力! 将来!」
直後に
渡五郎「超力! 将来!」
速過ぎます。イナズマンは
イナズマン「チェスト!」
で林姉弟の凍結を解除。ジェットデスパーとの戦いです…と思ったら
ジェットデスパー「イナズマン、見ろ!」
手に持っているのは怪しい腕輪。この腕輪をジェットデスパーが投げると多美の腕についてしまいました。外そうとする荒井誠とイナズマンにこう告げます。
ジェットデスパー「これは時限爆弾だ。あと5分でその娘は爆発する。」
それを聞き、必死に外そうとする荒井誠とイナズマンでしたが
ジェットデスパー「無駄だ。その時限爆弾はこのプラス光線がなければハズレないのだ。」
そしてジェットデスパーはそのまま逃走。例の飛行機に乗って空を飛びます。
イナズマン「心配しなくてもいい。私が奪い取ってくる。」
と言うわけで前回登場しなかったライジンゴーが登場。追跡開始です。まず飛行機は逃げ回りましたが
ジェットデスパー「ジェット万力」
飛行機から万力が飛び出し、ライジンゴーを挟み付けてしまいました。ライジンゴーも潰れそうな勢いです。
さてこれを基地に控えていたウデスパーαとウデスパーβも察知。
これは単細胞のウデスパーαだけではなく誰もが思う事だと思うのですが、なんとウデスパーβはこう言います。
ウデスパーβ「ええい、慌てるな。我々はまだイナズマンの力を十分には掴んではいない。」
当然、ウデスパーαはこう言います。
ウデスパーα「そんなこと言っている場合か。イナズマンに復讐するチャンスなんだぞ。」
復讐かどうかは置いといて、ウデスパーα参謀殿の言葉にも一理あると思いますが
ウデスパーβ「いいか。作戦は密なるをもってよしとする。ここはジェットデスパーに任せるのだ。」
と言うわけでウデスパーαとウデスパーβは出動しなかったのですが
イナズマン「ゼーバーテレポーテーション」
でイナズマンはライジンゴーごとテレポートしてこの危機を脱出。イナズマンはジェットデスパーを追って、海中やら地中やらを移動。ついにジェットデスパーは戦闘機を海岸で降りました。場所は三浦半島の剣崎でしょうね。しばらくジェットデスパーとイナズマンとの戦闘が続きます。とそこへ荒井誠と多美と清がやってきました。5分以内に移動できるかどうかは地図をご覧ください(棒)。
荒井誠「イナズマン、時間がない。」
なんと時計の針は0近く。多美を気遣いながらイナズマンは戦いますがジェットデスパーは先ほどのプラス光線を握りしめてこう言います。
ジェットデスパー「俺は死ぬ。だがあの娘を道連れにな。このプラス光線も俺と一緒に自爆する。」
さあ困りました。
しばらく考えるイナズマン。
荒井誠「清君、もうすぐ爆発する。逃げるんだ。」
林清「やだあ、姉ちゃんと一緒にいる。」
ジェットデスパー「どうだイナズマン、手が出せまい。」
勝ち誇るジェットデスパー。とその時
イナズマン「そうだ。」
イナズマンはジャンプして
と叫んで分身。ジェットデスパーを迷わせて翻弄した末、プラス光線を奪うことに成功しました。
イナズマン「荒井さん。」
イナズマンは荒井誠にプラス光線を投げ渡し、ジェットデスパーは悔しがりながら自爆するのでした。
さて基地ではこんなやりとりが。明らかにウデスパーβの判断ミスだと思いますが
ウデスパーβ「ジェットデスパーには気の毒なことをした。だがイナズマン、今度会った時は必ず殺してみせる。」
とモニターテレビ(?)を切ろうとしたのか腕を伸ばしましたが
ウデスパーα「(ウデスパーβの手を叩いた後)えーい。イナズマンは俺がやるんだ。奴は必ずこの俺が倒して見せるぞ。いやあ。」
なんと万力でチョップしてしまいました。すごい単細胞ぶり。ガイゼル総統はこの様子をまだ知りません。
最後は横浜港で渡五郎、荒井誠、林姉弟が談笑しておしまいです。
子供の頃は気がつきませんでしたが、ウデスパーαとウデスパーβのやりとりは面白過ぎます。ウデスパーの能力をそのまま両方に引き継がれていれば良かったのでしょうが、そうならなかったのはデスパー軍団にとっては大誤算。この性格の違いが弱点であることはやがてガイゼル総統も気がつきますが、それは次の次の話。次回はサーカスとのタイアップ話になります。もっともデスパー軍団の非情さは相変わらずで結構怖い話になっています。