今回はイナズマンF 第7話「大決戦!ウデスパー対イナズマン!!」(脚本:上原正三、監督:塚田正煕、擬斗:高橋一俊 (C) 東映、東映エージェンシー)について取り上げましょう。この話からイナズマンFらしい話が頻出しだすと思います。
最初の場面はガイゼル総統がウデスパーを呼び出すところ。やってきたウデスパーに、ガイゼル総統は無言でチェスの黒いナイトのコマをクルッと回しました。すると壁が回ってイナズマンの絵が登場。心臓の辺りが的のようになっています。ガイゼル総統がナイトのコマをいじると底から小さなナイフのようなものが出て、ガイゼル総統がナイフ投げの要領で投げると刃は的の中心、すなわち心臓のところにブッ刺さり、血が流れ出てきました。イナズマンを殺せと言うのです。
ウデスパー「ガイゼル総統、その指令が降るのを今か今かと心待ちにしておりました。」
さてウデスパーは女サイボーグ・ミスワン(鹿沼えり)を作らせていました。デスパーの科学者(津野哲郎)は心臓部にも人工肉を使っているのでサイボーグとは見破られないと豪語し、実戦テストの結果も良好。
ウデスパー「この猟犬はなかなか出来がいい。」
そしてウデスパーは学者をねぎらい、さらにペンダントをミスワンに渡します。曰く
ウデスパー「これにはトドメを刺す時の破壊光線が仕込んである。わかっているな。」
ミスワンは頷きました。
そして作戦が実行されました。ウデスパーは囮として作業現場から脱走したと思われる労務者の死体を海辺に置きました。渡五郎と荒井誠が遺体の発見現場に到着。そして、デスパー軍団を脱走して銃撃されて追われているミスワンが登場。渡五郎と荒井誠はミスワンを保護したのでした。ロケ地は三浦半島の剣崎でしょう。
ウデスパー「渡五郎、お前は私の罠に落ちた獲物だ。」
さて思惑通りに行くのでしょうか。
ミスワンは病院に運び込まれました。よほどのショックだったのか何も話さないようです。荒井誠はミスワンのカメラに入っていたフィルムを現像し、写真を五郎に見せているところへ
看護士「治療の時間です。」
とやってきましたが、それは実はデスパー兵士。銃を構え、発砲。素早くミスワンが身をかわして難を逃れました。渡五郎と荒井誠も銃弾をかわし、渡五郎はミスワンを保護し、荒井誠はデスパー兵士と応戦。荒井誠がデスパー兵士を倒した後
荒井誠「このお嬢さんをどこか匿わないといけないなあ。デスパー軍は秘密を知られたからにはどこまでもつけ狙うぞ。」
渡五郎「いい場所を知ってます。」
と言うわけで渡五郎と荒井誠はどこかの地下倉庫にミスワンを匿いました。荒井誠と渡五郎が話している間
ミスワンの声「私はウデスパーの猟犬なんだ。獲物の場所をウデスパー参謀に知らせるのが使命なのさ。」
と言うわけで左目を瞬きしたのですが
渡五郎「(立ち上がってミスワンの方を見た後)電波の発信音を」
聞いたそうです(原理不明)。なので
ミスワンの声「流石、渡五郎。聴力素晴らしい。夜を待って超音波に切り替えるしかない。」
だそうです。まあ少なくとも渡五郎は連れてくる前からミスワンを怪しんでいたのは確かなようです。
さて夜になったのでしょう。荒井誠や渡五郎が寝ている間
デスパー兵士「ミスワンからの通信です。渡五郎と一緒にいるそうです。」
それにより渡五郎と荒井誠の居場所がわかりました。すると
ウデスパー「ようし。ミサイル発射準備。」
デスパー兵士がこう言います。
デスパー兵士「ミスワンは?」
ウデスパー「そんなことは心配しなくても良い。」
なんと。CMが挿入された後、ミスワンは寝ていた渡五郎に襲いかかりましたが、渡五郎は素早く反応。寝ていたふりをしていたようです。曰く
渡五郎「とうとう正体を表したな。君は病院で襲われた時、俺が庇うより速く身をかわした。君がサイボーグであることはすぐわかったよ。」
なんと言う誤算。ミスワンは握っていたナイフのようなものを落とされ
渡五郎「どうやらウデスパーは俺一人に狙いを定めたようだな。」
その時、ミサイルが発射されました。荒井誠も起きて気がつき、三人は脱出。ミスワンは衝撃を受けたようです。
さて避難した後、渡五郎と荒井誠は話します。
荒井誠「あの子はまたウデスパーに連絡を取るかもしれないなあ。自分も殺されかかったのに可哀想な奴だ。」
渡五郎「やはり知ってたんですね。悪のために作られたサイボーグ。」
やはり荒井誠は有能です。
荒井誠「サイボーグと言えども人間だ。人の心を持っているはずだ。」
もしかして、このセリフを言わせるために第6話でサイボーグだと明かしたのでしょうかねえ。そこまではわかりませんが、これを受けて
渡五郎「憎むべきは彼女を操っているウデスパーです。」
荒井誠「サイボーグ。命令のままに動く機械か。いやあ、そうじゃない。」
それをしっかりミスワンは聞いていたのでした。
さて大まかな流れは読めてきたかと思いますが、ミスワンは当然、ウデスパーのところへ直行します。戻ってきたことをなじるウデスパーに
ミスワン「あのミサイル攻撃はどういう事なんですか?」
ウデスパー「作戦が急遽変更されたのだ。」
その言葉を信じるミスワンではありません。
ミスワン「あたしも殺すつもりだったんですね?」
それに対する答えは
ウデスパー「お前は私の猟犬だ。主人の命令に従えば良いのだ。行け。」
ミスワンは黙ったまま動きません。
ウデスパー「どうした。私の猟犬らしく渡五郎に噛みついて来い。」
だがミスワンはそっぽを向いて動きません。
ウデスパー「反抗する気か!」
ウデスパーはミスワンを殴り飛ばしました。起き上がった彼女は不満な顔のまま外へ出て行きました。
そしてミスワンは渡五郎と荒井誠のところに戻ってきました。ミスワンが攻撃用のナイフを構えると荒井誠は拳銃を握る手に力込めて構えようとしましたが、五郎は荒井誠を制止しました。そして無言で立ち上がる渡五郎と荒井誠。渡五郎とミスワンはしばらく睨み合い、ミスワンが襲いかかってきましたが、渡五郎との格闘の末、最終的にミスワンは逃走。三浦半島の剣崎の辺りを走って逃げます。外でも二人は戦いましたが、ミスワンは敗れ
ミスワン「殺して。殺してください。」
渡五郎はしばらく黙ります。そして言います。
渡五郎「命を粗末にするんじゃない。」
とその時、銃弾が。五郎が気がついた時には銃弾がミスワンに当たっていました。気づくとウデスパーがいました。右腕につけたガトリング砲を放ったのです。
渡五郎「部下を手にかけたのか?」
ウデスパーはこう言い切りました。
ウデスパー「戦えない者は生きる資格はない。それがデスパー軍団の掟だ。」
なんという非情な組織。五郎はミスワンに「しっかりするんだ」と呼びかけましたが
ミスワン「(ペンダントを手に持ち)一度だけ使えます。これでウデスパーを。」
これが最期の言葉でした。五郎はペンダントを握りしめ、ウデスパーと対峙。荒井誠も駆けつけます。
渡五郎「サイボーグだって命があるんだぞ。」
ウデスパー「余計な事だ、渡五郎。今日は最後の勝負だ。」
と言うわけで
渡五郎「ふん! 剛力! 将来!」
サナギマンに変転。すると
ウデスパー「サナギマン。速くイナズマンになれ。」
なんと攻撃してきません。そして
サナギマン「超力! 将来!」
イナズマンに変転。
そして戦闘開始です。二人の戦いを見守る荒井誠。ガイゼル総統もモニターテレビに見入ってます。ウデスパーは鉤爪を飛ばし、イナズマンの首を拘束。思わず荒井誠がハッとし
ウデスパー「イナズマン、苦しむがいい。」
と攻撃を加え、投げ飛ばした挙句に
ウデスパー「イナズマン、最後だ。死ね。」
と爆弾を投げ、爆弾はイナズマンのすぐそばで爆発。思わず
荒井誠「イナズマン!」
と叫びましたが
イナズマン「ウデスパー、私はここだ。」
なんと別の場所に立っていました。荒井誠は一安心。
イナズマン「ウデスパー、残念だったなあ。正義は必ず勝つ。」
そして
ウデスパーは直撃を受けましたが
ウデスパー「ゼーバーの威力はやはりすごい。だがこのウデスパー、たとえ死んでも必ず蘇ってくるぞう。」
はて? 兎に角、まだ生きてます。イナズマンはミスワンが託したペンダントを思い出しました。
イナズマン「ミスワン、ウデスパーの最期だ。」
なんとウデスパーは自らがミスワンに与えた殺人光線発射ペンダントで倒されてしまったのでした。ウデスパーは文字通り、粉々に砕け散りました。
戦い終わり、死亡したミスワンをお姫様だっこしながら歩く渡五郎。後ろに続くのは荒井誠。渡五郎と荒井誠はデスパー兵士がウデスパーの破片を拾い集めるのを目撃しました。
荒井誠「奴ら、一体何をしているのだ?」
渡五郎の心の声「ウデスパーの破片を集めている。一体どうするつもりなんだ?」
ガイゼル総統がこう言います。
ガイゼル総統「ウデスパーは我がデスパー軍団の誇りだ。だからウデスパーは死なない! ウデスパーよ。お前に復讐の時を与えよう。お前はウデスパーα、ウデスパーβとして蘇るが良い。そして戦うのだ。イナズマンを倒し我が帝国を打ち立てるまで。」
そしてナレーションがこう締めます。
村越伊知郎のナレーション「強敵ウデスパーは倒したが、ここにさらに強力なロボット戦士が誕生しつつある。その名はウデスパーα、ウデスパーβ。ガイゼルの改造室では凶悪な大計画が進行しているのだ。」
後半に頻出するような話です。デスパー軍団の犠牲になる女性達。その怒りを新たな糧として渡五郎は戦うのです。第1話や第2話でも語られていましたが、ガイゼル総統は人間の自由を守る事など全く考えていません。で上原正三さんが一番描きたかったのはやはり、「自分の猟犬になれ。」と言う指令に疑念を抱くミスワンの姿だったのではないでしょうか。ミスワン自身さえも捨て石にする非情なやり方に異議を唱えるミスワンを描きたかったのではないかと大人になって上原正三さんの言動を見聞きしたり、上原正三さんが描いた話を観てからは思います。上原正三さんは沖縄を捨て石にした日本を憎んでいましたが、異議も唱えずに自決のために手榴弾を引き抜いた人達にも怒りを覚えていました。誰か一人でも「おかしい」と異議を唱えれば少なくとも自決して死ぬ犠牲者は減ったのではないだろうか、とも生前語っています。
とはいうものの子供の頃はそこまで深く考えたわけではなく、渡五郎、荒井誠、ウデスパー、ガイゼル総統の攻防戦の方に目が行っていたのは確かです。
さて次回はウデスパーαとウデスパーβが登場しますが、ガイゼル総統の思惑とは大きく違った感じになってしまいます。第8話の時点ではばれませんが、第10話でガイゼル総統にそれがばれ、合体ウデスパー誕生となるというのが大まかな流れ。結構、人間ドラマとしても見応えある出来になっていますが、子供の頃はそこまで私は気がついていなくてキャラクターの動きの方に目が行ってましたのが事実です。この辺りから熱心なファンが語るカルトな方向になっていくのでしょうが、それは未だ先の話だと思います。