イナズマンF 第13話「白い闇!! 鬼女がうたう子守歌」を観た

今回はイナズマンF 第13話「白い闇!! 鬼女がうたう子守歌」(脚本:上原正三、監督:前川洋之、擬斗:高橋一俊 (C) 東映東映エージェンシー)を紹介しましょう。今回は合体ウデスパーがついに再登場する話と思いきや、一捻り加わった、デスパー軍団の内部抗争劇も入った話になっています。とは言うものの、今まで力込めて書いてきたので記事を書くのに時間がかかりすぎる事に今頃になって気がつきました。極力省力化を図りたい…ところですが、後半は見どころがてんこ盛りなのが困りものです。

まず前半は鬼ケ原で繰り広げられた、団地の子供の誘拐事件。あまりにも事件が頻発するので渡五郎と荒井誠が調査に出かけます。渡五郎と遭遇した夏子(栗原啓子)の息子の太郎という赤ん坊が鬼女(声:加川真規)に攫われたので五郎は追いかけます。途中で見失い、五郎は荒井誠から現地に鬼女伝説があって現地の人が鬼塚をブルドーザーで壊して開発して団地にしてしまった(モデルは明らかに多摩ニュータウンなど)話を聞きますが

渡五郎「しかし、攫われているのは子供達だけでしょう。もし祟りなら大人達にも降りかかって良いはずだ。」

と疑問を抱き、荒井誠もそれに同意すると今度は夏子の悲鳴が聞こえてきました。荒井誠が鬼女を追いかけると墓地らしきところに出ました。ロケ地は京王よみうりランド駅から山を登ったところにある(あった?)ありがた山の辺りでしょう。荒井誠はショットガンを撃ちますが鬼女には通用せず、強風も吹いたこともあって、穴に落ちてしまいました。さて鬼女の前にイナズマンが現れ、対決。鬼女とイナズマンは対決し、途中、鬼女が使ったマサカリをイナズマンが奪って鬼の面を叩き割ると現れたのは

マサカリデスパー(声:吉原正晧)「流石、イナズマン。よくぞ見破った。」

後にここで正体を晒してしまったのがマサカリデスパーの命取りとなりますが、先を急ぎましょう。イナズマンとマサカリデスパーはしばらく戦いますが、焦って乱入した夏子の腕をマサカリデスパーが傷つけたため、イナズマンは夏子の息子の太郎の奪回には失敗します。

さて場面変わって荒井誠が落ちた穴。なんと都合の良い事に、そこはデスパー軍団のアジトです。現れたデスパー兵士を倒して中に潜入した荒井誠が何をしているのかと怪訝に思いながら覗き

荒井誠「子供達だ。一体何をするつもりだ。」

というや否や

ウデスパーα「知りたいのか。」

その声に気がついた荒井が声のする方を見るとウデスパーβもいます。

ウデスパーβ「ニューブラッド計画。」
ウデスパーα「つまりデスパーが発明した新しい血液で新人類を飼育する計画なのだ。」

なんというとんでもない計画。

荒井誠「新人類を飼育?」
ウデスパーα「それには子供が一番適している。」
荒井誠「なんて酷いことを。子供はモルモットではないぞ。」

荒井誠は子供達を救出しようとしましたが、ウデスパーαとウデスパーβには敵わず、捕まってしまい、独房に閉じ込められてしまいました。そして

ウデスパーβ「マサカリデスパー」

マサカリデスパーが入ってきました。

ウデスパーβ「ガイゼル総統がお呼びだ。」

というわけでマサカリデスパーがガイゼル総統に謁見すると待っていたのはウデスパーαとウデスパーβによる制裁。ガイゼル総統は相当お怒りのようです。サデスパーが隣に控えています。

マサカリデスパー「何をするんだ。ガイゼル総統、これはどういうことですか。ニューブラッド計画は予定通り進んでいるというのに。」

というや否や、ウデスパーαに背後から歯がいじめにされたマサカリデスパーの腹をウデスパーβがパンチ。ガイゼル総統は無言です。

マサカリデスパー「総統!」

この状態でCMに突入。CMが明けた後、なおもウデスパーαとウデスパーβに殴る蹴るの暴行を受けるマサカリデスパー。

マサカリデスパー「理由をお聞かせください。なぜ俺が拷問を。」

サデスパーが口を挟みました。

サデスパー「まだわからんのか、戯け。」
マサカリデスパー「わかりません。」
サデスパー「ガイゼル総統はお前がイナズマンに素顔を見られたことを怒っていらっしゃるのだ。」
ウデスパーα「お前は鬼婆のままで通すべきだった。」
ウデスパーβ「うーん。」
ウデスパーα「それならニューブラッド計画をスムーズに運ぶことができたのだ。イナズマンに気づかれたらいくつかの困難を覚悟せねばならぬ。わかったか。」

マサカリデスパーはこう言い出しました。

マサカリデスパー「イナズマンは私が必ず倒します。」
ウデスパーα「(マサカリデスパーの肩を掴み)ほざくな。我らウデスパー兄弟ですら手こずった相手だぞ。」

ところがマサカリデスパーはウデスパーαの腕を振り払ってこう言いました。

マサカリデスパー「私はイナズマンを倒すための秘策があります。」

ガイゼル総統は無言のまま。冷ややかに見ている感じです。

マサカリデスパー「ホントです。必ずイナズマンめを倒してご覧に入れます。」

これを聞いたガイゼル総統は無言でスイッチを入れました。すると入口の戸が開き、入ってきたのはデスパー科学者(山口譲)。そして命じたのは

ガイゼル総統「合体ウデスパーの完成を急げ。一刻も早く合体ウデスパーを。」

科学者は自信満々。

デスパー科学者「今度は間違いなく成功するものと確信致しております。」

マサカリデスパーには期待していない感じです。それを聞き

ウデスパーα「ええい、嫌です。」

ところがウデスパーβは無言でガイゼル総統の合図に頷いています。やはり彼は合体手術を受け入れているようです。

ウデスパーα「総統!」
ウデスパーβ「さあ、来い。」

結局、ウデスパーαはウデスパーβに連れ出され、

ウデスパーα「ええい。」

と憤慨しながらも部屋の外へ出て行きました。即座に

マサカリデスパー「ガイゼル総統にお願いがあります。」

相変わらず冷ややかな感じの総統閣下。

マサカリデスパー「イナズマンを倒した暁には私を参謀に昇格させてください。」

ガイゼル総統は立ち上がり、マサカリデスパーに近づいてこう言いました。

ガイゼル総統「倒せたらな。」

あまり期待していない感じです。

さて合体手術が開始されました。

デスパー科学者「電圧2000V。」

デスパー兵士も復唱し、指示に従って電圧を合わせました。

デスパー科学者「1時間後に合体ウデスパー誕生だ。」

その後、デスパー科学者と兵士は立ち去りましたが、大きな誤算がありました。なんとマサカリデスパーが手術室の入口にやってきたのです。

マサカリデスパー「合体ウデスパーが完成すれば私の参謀への道も遠くなる。完成を少し遅らせることだ。」

そして何をしたかと言えば、電圧を1500Vに下げてしまったのです。

さてその直前。荒井誠が独房から発信した狼煙による信号を察知。

マサカリデスパー「渡五郎、二度と鬼ケ原からは生きては帰れん。」
渡五郎「何? ふん! 剛力! 将来!」

しばらく戦うサナギマン。

サナギマン「超力! 将来!」

イナズマンはマサカリデスパーと戦いますが、マサカリデスパーには秘策がありました。途中でマサカリデスパーの姿が消えて戸惑うイナズマン。さらにマサカリデスパーは二体になったり三体になったりして変幻自在です。どれが本体だかわかりません。イナズマンのパンチやキックは空を切るばかりです。マサカリデスパーの秘策とはこれだったのです。

イナズマン「分身の術ではない。何か仕掛けがあるはずだ。」

その原理は後でわかります。

ですが、マサカリデスパーの攻撃が失敗する時が思わぬ形、というよりは、自らの悪事がバレてやってきました。ガイゼル総統とサデスパーがデスパー科学者と共に手術終了予定時刻に手術室に来てみれば

デスパー科学者「おかしい。まだ合体しきってはおらん。(ガイゼル総統に)私の計算に間違いは。」

ふと電圧の設定を見ると1500Vになっていました。

デスパー科学者「馬鹿者。2000Vにしろと言った筈だぞ。」
デスパー兵士「2000Vにしておきました。」
デスパー科学者「1500しかないではないか!」
デスパー兵士「私は2000にしておきました。」

このやりとりを聞いてピンと来たのか、ガイゼル総統は無言でサデスパーに合図。サデスパーがモニターテレビに記録されている動画を再生させるとマサカリデスパーの犯行がしっかりと残されていたのでした。

ガイゼル総統「マサカリデスパー。」

ガイゼル総統は無言でサデスパーに合図。

サデスパー「承知いたしました。」

そして何かのスイッチの前で

サデスパー「くっそう、マサカリデスパーめ。」

と叫んだ後、スイッチを切ってしまいました。マサカリデスパーへの懲罰です。

村越伊知郎のナレーション「デスパーはこの2台の映写機でマサカリデスパーの幻影を鬼ケ原に投射しているのである。」

他にも仕掛けがしてありましたが、いずれにしろ、マサカリデスパーの幻影が消えて本体だけが姿を見せる状態になりました。慌てふためくマサカリデスパー。

イナズマン「霧をスクリーンにしていたのか。映像さえなければこっちのものだ。」

というわけで形勢逆転。最終的には

イナズマン「ゼーバーイナズマンフラッシュ!」

で倒されたのでした。

子供達はイナズマンと荒井誠の活躍で解放されましたが、最後は誕生した合体ウデスパーが登場しておしまいです。

今回はヒーロー側の描写よりもデスパー軍団側の描写に力が入っている感じです。こんな感じで足の引っ張り合いをする人達は多いように思います。ふと思い出したのが『スーパーロボット マッハバロン』でのロボット帝国の抗争劇ですが、番組が始まるのは1974年10月7日で『イナズマンF』の放送終了後。上原正三さんはこの内部抗争劇を後の作品にもしっかり転用して行きます。『電子戦隊デンジマン』終盤もそうでしたし宇宙刑事シリーズもそうでしょう。ただ毎回、こういうドラマを描くのは如何に多作の上原正三さんも大変だったのは間違いなかったようで、『時空戦士スピルバン』を書いた後で「疲れていました」と証言したのは本音だったのではないかと思います。そして『仮面ライダーBLACK』序盤で降板してしまったのでした。

次回は合体ウデスパーとの対決。今回とは違って今度はヒーロー側の描写に力が入っています。

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