イナズマンF 第17話「青い瞳のインベーダー」を観た

今回はイナズマンF 第17話「青い瞳のインベーダー」(脚本:山田哲久と楢岡八郎、監督:塚田正煕、擬斗:高橋一俊 (C) 東映東映エージェンシー)を紹介しましょう。楢岡八郎というのは加藤貢プロデューサーのペンネーム。楢岡八郎名義ではもう一本、共作ながら書いています。どういう分担で執筆したのかまでは私は知りません。

今回は宇宙にまでイナズマンの名前が知れ渡っているという話です。冒頭で描かれるのはクリスティーヌ(郷田ジュン)という少女が海岸からゴムボートで上陸する場面。それを一人の青年(下塚誠)がしっかり観ていました。

次に映るのは荒井誠と渡五郎がインターポールの秘密捜査室。真鶴沖上空に未確認飛行物体が来ているという通信が入ります。デスパーの仕業ではないかと考え、二人は現場へ急行。

その頃、クリスティーヌは青年に操られた5人の男達(中屋敷哲也、池田力也、山田茂など)に襲われていました。そこに渡五郎と荒井誠が到着。クリスティーヌを救出しました。そして遠く離れたところまで逃げたところで襲われた理由を五郎は尋ねましたがクリスティーヌは首を振るのみ。そして言った言葉は

クリスティーヌ「東京まで連れて行ってください。」

という突飛な言葉。五郎が東京のどこまで行くんだと尋ねても、クリスティーヌはそれ以上の事を知らない模様。そこで

荒井誠「君はどこから来たんだ。なぜ東京へ行く。」
クリスティーヌ「いいです。もう一人で行きます。」

本当にクリスティーヌが立ち去ろうとしたのですが、デスパー兵士が彼女を狙撃。否応なく格闘する羽目となり、格闘後、クリスティーヌを荒井が手当するのをみてクリスティーヌは五郎と荒井に心を許し、話し始めました。なんとクリスティーヌはイグアス星から円盤でやってきたのです。イグアス星からは毎年のように友達になるために使節が来ているというのです。

クリスティーヌ「今回の友好使節ジェット(下塚誠)は東京シティに着陸したという連絡を最後に行方不明になってしまいました。」

そのジェットを探しに来たというのです。クリスティーヌを連れて立ち去ろうとした五郎と荒井でしたが、クリスティーヌは突然、海に向かって「イナズマーン」と叫びます。

渡五郎「どうしてその名前を?」
クリスティーヌ「イグアス星を出発する時、大統領である私の父に言われました。もし危ない目に遭遇したら、イナズマンと叫びなさいと。彼は地球でもっとも勇敢な男なんだと。必ず助けに来てくれるんです。イナズマーン。イナズマーン。」

なんというスケールの大きな話。とりあえず五郎と荒井は新宿へクリスティーヌを連れて行きました。そこで荒井は秘密捜査室に戻り、仲間に連絡をとってジェットを探すこととし、五郎はクリスティーヌと一緒にジェットを探すことにしましたが

クリスティーヌ「これからは私一人で探してみます。」

五郎は危険だと反対しますが

クリスティーヌ「それはわかってます。それでもジェットは私一人になったら出てきてくれるような気がするのです。」

その理由は

クリスティーヌ「ジェットは私の婚約者なのです。今日、ジェットと二人だけで結婚式を挙げる予定になっています。結婚式の当日かっきりにイグアス星から到着するように出発したのです。」

その決意を聞いて五郎は同意し、歩くクリスティーヌの後を五郎がつけることにしました。そして東京の屋敷町で、昭和40年代後半でも舗装道路ばかりですが、なぜ「ちむどんどん」では…というのは本題ではないので置いといて、兎に角、屋敷町で冒頭でクリスティーヌを襲わせた男が登場。ジェットに間違いなさそうです。しばらくクリスティーヌの後をつける男。五郎がクリスティーヌをつけていることにも気がついている素振りを見せますが

ジェット「クリスティーヌ。」
クリスティーヌ「ジェット。」

と声をかけ、クリスティーヌも応じました。ジェットは自分の部屋へクリスティーヌを連れて行くことにしました。曰く

ジェット「やっとくつろげる場所を見つけたんだ。」

もちろん、五郎も尾行。ジェットがクリスティーヌを連れて行ったのはある洋館。五郎は荒井誠に通信をしました。

渡五郎「荒井さん。ジェットが現れた。でもちょっと様子がおかしい。」

五郎が睨んだ通り、クリスティーヌが連れ込まれたのはなんとデスパー軍団、しかもガイゼル総統の御前。サデスパーも控えて不敵に笑います。クリスティーヌは拘束されますがジェットは立ったままでクリスティーヌの呼びかけに答えません。

サデスパー「いくら呼んでも無駄だ。三月前、東京に来たジェットは我がデスパーに志願したのだ。」

まさに聞いてないよーという状態のクリスティーヌ。

サデスパー「そして東京中心部にあるガイゼル総統の私邸、すなわちこの洋館でサイボーグ手術を行ない、ジェットデスパーとして蘇らせたのだ。」

信じられないクリスティーヌにジェットがこういいます。

ジェット「俺は元々お前などなんとも思っていなかった。」

驚くクリスティーヌをビンタした後

ジェット「お前に取り入れば大統領であるお前の父親はこの国に俺を送り込むと考えたんだ。間抜けめ。」

なんと、ハナから愛情などなかったと言われるクリスティーヌ。

クリスティーヌ「ひどい。」

さらにジェットはこうほざきます。

ジェット「俺は平和で退屈な星が嫌で嫌でたまらなかったんだ。俺は東京でデスパーと手を結んで悪の限りを尽くしてやるんだ。」

この言葉に対するクリスティーヌの感想は

クリスティーヌ「狂っている。」

それでも平然としているジェットは

ジェット「クリスティーヌ、俺の正体を見せてやろうか。」

そしてジェットはジェットデスパー(声:山下望)に変身。以前登場したものと違って凍結銃はついていません。失神したクリスティーヌをデスパー兵士に命じて外へ連れて行かせた後

ジェットデスパー「ガイゼル総統、渡五郎をすぐ近くまで引きつけておきました。」

ガイゼル総統はサデスパーに無言で合図。

サデスパー「ジェットデスパー、渡五郎を蹴散らして来い。」
ジェットデスパー「必ず奴を仕留めて参ります。」

と意気揚々とジェットデスパーは出動しました。

さてCMが明けると荒井誠が洋館に駆けつけました。荒井誠に五郎はおかしいと考えた根拠を述べます。

渡五郎「ジェットは俺がつけているのを気がついてたようなんです。」

さて洋館の庭ではサデスパーがガイゼル総統にこんなことを言っています。

サデスパー「ジェットデスパーをこのままデスパー軍団の一員としてお認めのお考えですか。」

とりあえずガイゼル総統は無言。

サデスパー「あんなサイボーグ手術によってデスパーとなった正体不明の余所者は我々にとっては対イナズマン用の単なる消耗品にしか過ぎません。」

ここまで言い切るサデスパー。大まかな流れは見えて来たと思います。

さてジェットが洋館の外へ出ました。

渡五郎「あの男がジェットです。おかしい。どうして一人。クリスティーヌは。」

五郎はジェットを追いかける事にし、荒井誠は中を調べる事にしました。

さてジェットは五郎の追跡に気がついており

ジェット「デスパーの敵、渡五郎。」
渡五郎「やはりデスパーに操られていたのか。クリスティーヌはどうしたんだ?」
ジェット「うるさい。貴様を倒して俺は参謀に出世してみせる。」

ジェットは渡五郎に襲いかかりました。

渡五郎「考え直すんだ。」

さて荒井誠はデスパー兵士を薙ぎ倒してクリスティーヌを発見。ところが現れたサデスパーには敵いません。

そして渡五郎はジェットと格闘。

ジェット「俺の正体を見せてやる。」

ジェットはジェットデスパーに変身。

渡五郎「ジェットデスパー!」

しばらく格闘した後

渡五郎「ふん! 剛力! 将来!」

サナギマンに変転。サナギマンはジェットデスパーとしばらく格闘。

ジェットデスパー「サナギマン、貴様の仲間も今頃捕まっているところだ。」

ジェットデスパーの右腕はいつの間にかライフル銃になっています。

ジェットデスパー「貴様も死ね。」

銃声一発。サナギマンの叫び声が聞こえました。

さてここはガイゼル総統の御前。捉えられたクリスティーヌと荒井誠が連れてこられています。そこへジェットデスパーが戻って来ました。

ジェットデスパー「ガイゼル総統、サナギマンを撃ち倒しました。」

本当に死んだところを確認したのでしょうか? 無言で報告を聞くガイゼル総統。

ジェットデスパー「私が撃ち倒しました。奴は永久に姿を現すことはありません。」
ガイゼル総統「よくやったぞ、ジェットデスパー。」

ガイゼル総統は無言で合図。サデスパーは一礼して、こう言いました。

サデスパー「ジェットデスパー、総統もお喜びになっている。後でお前にお考えがあるそうだ。」

あれ? さっきのやり取りとはサデスパーの態度が違います。そんな事など知らないジェットデスパーは無邪気に

ジェットデスパー「は! それは光栄です。」

と喜びます。

サデスパー「その前に二人の処刑を行なう!」

というわけで二人が連れてこられたのはいつも戦闘が行なわれる場所。いわゆる三栄土木のどこかでしょう。クリスティーヌと荒井誠は磔にされています。ここで

クリスティーヌ「本当にサナギマンはイナズマンにならずに死んでしまったの?」
荒井誠「心配するな。イナズマンは来る。必ず来る!」

荒井誠が渡五郎を信じているのは本物です。それを聞き

ジェットデスパー「バカめ。いくらわめいてもイナズマンは来る事はない!」

高笑いしてデスパー兵士に「処刑用意」と命じるジェットデスパーでしたが、ここで

ジェットデスパー「処刑開始!」
ガイゼル総統「待て!」

ガイゼル総統はなんとこう告げました。

ガイゼル総統「ジェットデスパー、これでお前の任務は終わった。」

驚くジェットデスパー。さらに

ガイゼル総統「私は純粋なデスパーの血筋を受けた者だけが信じられている。」
ジェットデスパー「(膝を落として)なんということを!」
ガイゼル総統「お前のような得体の知れない半端者は、いつか私を裏切るかもしれない。」
ジェットデスパー「総統!」

ガイゼル総統はジェットデスパーを杖で打ち据えました。さらにすがるジェットデスパーを杖で跳ね除けた後、今度はサデスパーが何度もジェットデスパーを蹴ります。この屈辱にジェットデスパーは耐えていて、荒井誠もクリスティーヌもそれを観ていましたが、ガイゼル総統はこんなことまで述べます。

ガイゼル総統「よく聞け。デスパー兵士よ。私のように自分の肉体を張って戦える者だけが戦いに勝利をする。強い者だけが全てを想いのままに動かせるのだ。」

ガイゼル総統が合図するとサデスパーはジェットデスパーをどけました。

ガイゼル総統「処刑開始!」

クリスティーヌと荒井誠に銃口を向けるデスパー兵士。万事休すか?

クリスティーヌ「イナズマン。」

思わず荒井誠がクリスティーヌの方を見ました。ガイゼル総統はまた合図。

サデスパー「狙え!」

クリスティーヌは目を閉じました。

サデスパー「撃て!」

とその時、

イナズマン「待て!」

なんと崖の上にイナズマンが立っていました。驚くガイゼル総統。微笑む荒井誠。

イナズマン「自由の戦士イナズマン。」

イナズマンは「チェースト!」と叫んでジャンプしてデスパー兵士を薙ぎ倒した後、荒井誠を救出し、その後、荒井誠とともにクリスティーヌも救出しました。

クリスティーヌ「あなたがイナズマン!」

そして

イナズマン「荒井さん、早く。」
荒井誠「うん。」

イナズマンと格闘するのはサデスパーでしたが

ジェットデスパー「私にやらしてください。」

先ほどの屈辱を忘れたのか、それとも失地回復を図ったのか、おそらく後者でしょうが、ジェットデスパーが出動。ガイゼル総統はサデスパーとともに逃げたようです。ジェットデスパーとイナズマンがジャンプすると戦場は海岸、おそらく真鶴の辺りに移り、イナズマンとデスパー兵士の戦闘が続きます。そしてイナズマンの相手はジェットデスパーになりました。荒井誠はクリスティーヌを守りながらデスパー兵士と格闘しますが、ジェットデスパーはなんとクリスティーヌを右腕にはめたライフル銃で狙撃。弾はクリスティーヌの頭に当たってしまいました。ジャンプしてクリスティーヌと荒井誠のところへ移動するイナズマン。クリスティーヌを助けようとしましたが

ジェットデスパー「イナズマン。貴様達、三人とも地獄へ行けえ。」

ライフルで狙いにかかったので

イナズマン「貴様はどこまで残酷なんだ。許せん。」

怒りに燃えるイナズマンはジェットデスパーと格闘。ジェットデスパーはイナズマンの敵ではなく最終的には

イナズマンイナズマンキリモミキック!」

で倒されました。

さてイナズマンは瀕死のクリスティーヌのところへ駆け寄ります。

クリスティーヌ「イナズマン、私はあなたを信じて地球へやって来ました。」
イナズマン「だが、私はジェットを死なせてしまった。」
クリスティーヌ「いいえ。あなたの責任ではありません。あなたは私達のために全力を尽くしてくれました。私はイグアスへ父の元へ帰ります。イナズマンも一緒に来てください。そして私の星で一緒に暮らしてください。お願い、イナズマン。私と一緒にイグアスの星に来てください。」

イナズマンはクリスティーヌが伸ばした手を握ってあげました。

イナズマン「うん。」
クリスティーヌ「私、地球に来て、本当に良かった。」

それが最期の言葉となりました。

そしてその夜。

荒井誠「今まで世界各地で円盤が発見されたが果たしてそれが宇宙から来たものかどうか、謎に包まれたままだった。クリスティーヌは本当に宇宙からやって来たんだろうか?」

その言葉を受け

渡五郎「誰にもわからぬまま、デスパーの犠牲になってしまった。」

クリスティーヌの姿はこうして渡五郎(と荒井誠)の心の中に刻み込まれたのでした。

クリスティーヌの高潔さとは対照的にジェットの卑劣さが際立つ話ですが、彼もデスパー軍団は信じていないというのが悲惨な感じがします。なおガイゼル総統が言い放った言葉に嘘偽りはなく、放送された最終回では生身のままでイナズマンと互角の勝負を繰り広げます。伝説となっている準備稿を私は読んだことはないのですが、仮面ライダーの幹部のように変身させなかったのは正解だったと思います。

さて次回は更にテーマが先鋭化。助監督だった長石多可男が書いた脚本を塚田正煕さんが演出した、スナイパー飛鳥夕子(八代順子)の物語です。

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