今回はイナズマンF 第9話「少年サーカスとマルチ大作戦」(脚本:上原正三、監督:田口勝彦、擬斗:高橋一俊 (C) 東映、東映エージェンシー)を紹介しましょう。まあ普通の話、と言うか、少年サーカスの『ベンポスタ子ども共和国』とタイアップした話です。制作局のNET(テレビ朝日)が日本に呼んで興行していたそうです。
さてデスパー軍団は山の中にある第三レーダー基地を狙っています。東京郊外にあるそうです。映るのは
電波調節室
BOOSTER
DANGER
と書かれた看板が戸についている施設ですがパラボラアンテナが塔のテッペンにあるので電波を増幅させるのでしょう。なぜ危険なのかは知りません。ウデスパーαとウデスパーβが山の上にいるのが映った後、潜入したのはハサミデスパー(声:西尾徳)軍団。
ところが大きな誤算がありました。なんと近くの川で渡五郎が空手の特訓をしていたのです。道着は黒帯。なお伴大介さんが黒帯だったかどうかは知りません。そして遙か上をわたる吊り橋をロペ・アキラ(宮田真)と言う少年が渡っていました。アキラは五郎に気がつき、声をかけました。
ロペ・アキラ「こんにちはあ。こんなとこで何してるんですかあ。」
渡五郎「体を鍛えてるんだ。」
すると少年は「トー!」と叫んで吊り橋から川に降りました。なおトランポリン担当としてクレジットされているのは大野剣友会の佐藤巧さん。ジャンプしている場面は大人のように見えますが、気にせず、先に進みましょう。着地したアキラは
ロペ・アキラ「さようなら。」
と無邪気に走り去っていきました。もしかしてミュータント?
渡五郎「ミュータントではないのに。」
違うそうです。
場面変わって第三レーダー基地。ハサミデスパーが基地の壁をチョッキンして切って、侵入しようとしています。この時は仮面ライダーV3に登場したハサミジャガーとほぼ同じ方式でチョッキンします。後でわかりますが、違いがあります。ところがその様子をアキラはしっかり見てしまいました。なんという御都合主義もとい悪運の持ち主なのでしょう、アキラは。ハサミデスパー軍団は電波調節室に侵入して小型爆弾を仕掛けました。ところがアキラはその様子をすぐそばまで来て目的。
ハサミデスパー「見たな、小僧。」
自分の無能さを棚にあげてアキラを脅すハサミデスパー。アキラは走って逃げますが、ハサミデスパーが先回りして通せんぼ。
ハサミデスパー「待て、小僧。」
またジャンプして、着地後に前転したり、またジャンプしたりしてアキラは逃げますが、その時の背格好が大人に見えてしまうのは目を瞑りましょう。まあ爆弾が爆発。気がついた基地の職員が修理班に連絡すると、電話はデスパー軍団のところに繋がるように細工がされていて、デスパー兵士が何食わぬ顔をして応答しました。声は第7話で「ミスワンは?」と確認した人と同じ気がします。と言うわけで「修理班」に化けたデスパー兵士が出動しますが、その様子もアキラはしっかり見てしまいました。なんという間抜けなハサミデスパー。そうとも知らず(?)
ウデスパーα「これで第三レーダー基地は我々の手で特殊な装置をセットできる。」
ウデスパーβ「まだ第一レーダー基地が残っている。マルチハリケーン作戦は両レーダー基地が必要だ。」
さてアキラはデスパー兵士に追いかけられてます。そしてハサミデスパーもやってきました。ですが緊急車両が近づいたので撤退せざるを得ませんでしたが
ハサミデスパー「小僧、何か喋ってみろ。その時はお前の首をちょん切ってやるからなあ。」
この脅し文句は聞きました。アキラの脳裏に浮かぶのは首をちょん切られる様子。画面がネガのようになってますが、鮮明に思い浮かんでいるようです。
ロペ・アキラの心の声「喋ったら殺される。」
これは恐い。とそこへ通りかかったのは渡五郎が運転するライジンゴー。アキラはライジンゴーを止めました。
ロペ・アキラ「すいません。乗せてください。」
渡五郎「真っ青だ。何かあったのか。」
ロペ・アキラ「なんでもありません。」
そこへ荒井誠が山の中から駆けつけました。レーダー基地の電波調節装置が爆破されたと言うのです。
渡五郎「まさか奴らの仕業では。(アキラに)この辺りは危険だ。一緒に来たまえ。」
渡五郎はアキラと荒井誠を乗せて移動。第三レーダー基地に着きました。アキラは基地から出てくる車がデスパー軍団のものだと気づいてハッとしました。
渡五郎「(アキラに)どうしたんだ?」
アキラの脳裏に自分が首をちょん切られる姿が浮かんでしまい何も言えません。
荒井誠「なんだ、その顔は。」
思わず
ロペ・アキラ「な、なんでもありません。」
しかし渡五郎にはわかりました。
渡五郎の心の声「何かを知っている。」
とりあえず、第三レーダー基地の調査は荒井に任せ、五郎はアキラを送っていくことにしました。その様子をしっかりハサミデスパーは見ており、連絡して監視させることにしました。道中、五郎はアキラに、何か見たのではないのか、と尋ねましたが、アキラは見ていないと答えます。その様子を途中で張り込んでいたデスパー兵士(が化けた男達)はしっかり見ていました。
さて五郎がアキラを送って行ったのは、アキラが所属するという「ロス・ムチャチョス」「スペイン少年サーカス」の興行が行なわれている会場。デスパー軍団の車もライジンゴーを尾行し、しっかり場所を掴みます。さて渡五郎はアキラに山へ行った理由を尋ねました。アキラの父が好きだった山があの山でアキラもあの山が好きだったのです。そして
渡五郎「亡くなったのか、両親とも。」
アキラは頷きました。
渡五郎「僕と同じだ。」
ロペ・アキラ「渡さんも一人ぼっちなんですか?」
渡五郎「うん。」
そしてライジンゴーから降りたアキラは尋ねました。
ロペ・アキラ「渡さん、寂しくない? お父さんやお母さんがいなくても」
ライジンゴーから降りた五郎の答えは
渡五郎「寂しくなんかないさ、男だもん。アキラ君だって寂しくないだろう。」
ロペ・アキラ「うん。寂しくなんかないや。じゃあね。」
アキラは中に入って行きました。そこからしっかり流れるロス・ムチャチョスの宣伝文句や映像。アキラはその一員なので
渡五郎「道理で敏捷なはずだ。」
ところがデスパー軍団が来襲。アキラは神宮球場を逃走しましたが、ハサミデスパーに襲われました。
渡五郎「剛力! 将来!」
渡五郎はサナギマンに変転。ハサミデスパーの攻撃に耐え
サナギマン「超力! 将来!」
イナズマンに変転しました。ところがハサミデスパーはアキラの腹を攻撃。イナズマンはなんとかハサミデスパーをアキラから離すことに成功したものの、アキラは腹を押さえて「痛いよー」と叫ぶ状態。
イナズマン「アキラ君を助けなければ。」
イナズマンはアキラのそばへ行き
ライジンゴーにアキラを抱えて飛び乗って逃走しました。
CM明けると、そこは病院。治療の甲斐ありアキラの病状は回復しそうです。しかし恐怖で譫言を言っている状態。
さてウデスパーαとウデスパーβはマルチハリケーンの実験を始めていました。ウデスパーαの右腕とウデスパーβの左腕から光線のようなものが飛び出て交わって一つになると竜巻が発生。どこがマルチ(複数)なのかはわかりませんが、色々な建物が破壊され、ガイゼル総統御満悦。
デスパー兵士(声:岩名雅記)「ガイゼル総統閣下、マルチハリケーン作戦は成功です。ウデスパーα、ウデスパーβ、両参謀の手から発せられたクロスハリケーン電流がこのパラボラアンテナに受け止められ、この特殊装置で十万倍に強化される仕組みです。その威力は御覧の通りです。どんな大都市も一夜にして死の砂漠となります。」
だそうです。深く考えないことにしましょう。
ガイゼル総統「マルチハリケーン作戦を直ちに実行せよ。」
そして攻撃されるのは第一レーダー基地。川崎市にある長沢浄水場がロケ地です。第三レーダー基地も攻撃しました。
さて病室ではアキラが意識を回復しました。アキラは渡五郎と荒井誠に告白しました。
ロペ・アキラ「さっきの怪人がレーダー基地で警備員を殺すのを見たんです。」
渡五郎「ハサミデスパーだ。」
ロペ・アキラ「またあの人達、修理班に化けてレーダー基地へ行くのを見たんです。」
荒井誠「デスパー兵士が修理団に?」
アキラは頷きました。
渡五郎の心の声「レーダーを利用して何か侵略計画を実行するつもりだ。なんとしても阻止せねばならん。」
と言うわけで
渡五郎「荒井さん、この子を頼みます。」
と病院を出た瞬間にデスパー兵士に襲われる渡五郎。気がつけば多摩川の水門のそばに戦場が移り
渡五郎「剛力! 将来!」
サナギマンに変転。デスパー兵士とハサミデスパーと戦った後、
サナギマン「超力! 将来!」
イナズマンに変転して戦闘が続きます。イナズマンは空手を使って戦闘。一文字隼人の構えに似ているような気がしますが私はそこまではよく知りません。
なぜ悪の組織の皆さんは作戦の途中でペラペラと内容を喋ってしまうのでしょうねえ。
イナズマン「レーダーを利用してクロスハリケーンを強力にするつもりか。」
ハサミデスパー「その通り。」
イナズマン「なんとしてもその計画は阻止する。」
とまあ戦いは続行。そして
ハサミデスパー「ハサミホース!」
なんかロケットパンチみたいに両腕のハサミが火を噴きながら飛びましたが、ハサミデスパーには手が残り、カニのハサミを小さくしたような感じの間抜けな姿になりました。ところがそんな技は最終的には通用せずに
で破壊されてしまいました。まあどういう技かは映像でご確認ください。なおも戦闘を続行するハサミデスパーでしたが頭を外されて蛇腹状の間抜けな姿の首が現れた後、キックを食らった末に
で倒されたのでした。
イナズマン「デスパーの計画を阻止しなくては。」
と言うわけでライジンゴーを呼んで飛ぶイナズマン。第一レーダー基地はウデスパーα、第三レーダー基地はウデスパーβが装置をセットし、
ガイゼル総統「(チェスのコマを起きながら)これで東京は全滅か!」
と御満悦でしたがイナズマンが第三レーダー基地の装置を外したので
ウデスパーβ「おかしい。そろそろ大竜巻が起こっても良い筈だが。」
と言うや否や
イナズマン「ウデスパーβ」
イナズマン登場。
イナズマン「いくらやっても無駄だ。」
因みにこの時、ウデスパーαは第一レーダー基地の方に詰めていました。
イナズマン「お前達は正に悪魔だ。許せん。」
イナズマンは特殊装置を投げ捨て、戦闘開始。激しい戦闘の末、ウデスパーβはエネルギーを消耗。
ウデスパーβ「イナズマン、お前は幸運な奴だ。我らがエネルギーを使う前でなければ、お前は今頃死んでいた。」
と捨て台詞を残して、駆けつけたデスパー兵士が運転するジープに乗ったのでした。なぜかそこにウデスパーαも登場。同じジープに乗りました。
ウデスパーβ「イナズマン、また会おう。」
結局、ウデスパー兄弟は撤退したのです。
さて引き返したウデスパー兄弟を前にして
ガイゼル総統「イナズマンめ。馬鹿者!」
チェスのコマを跳ね飛ばし、ウデスパー兄弟にもそれが当たりました。ガイゼル総統のドアップと入れ替わりに映ったのはサーカスの様子。手を振る渡五郎。拍手する荒井誠。このカットが何故か仮面ライダーXに流用されていますが理由は私は知りません。尺の都合だったのでしょうか。
まあ今回は普通の話という感じでしたが首をチョッキンされるのはかなりこわいのは間違いありません。ウデスパー兄弟の性格の違いは今回は影を潜めていましたが、次回でそれが露わとなりガイゼル総統がプッツンするというのが大筋です。それ以外にも女性ゲストの動向が見どころですが、イナズマンFのファンが語るカルトな雰囲気になるのはもう少し先というのが実状でしょう。だから子供の頃の私はイナズマンFは普通の特撮番組だと思って観ていました。なお私は合体ウデスパーまでは覚えていましたがサデスパーは大人の頃は忘れ去っていました。でもギロチンデスパーの話は覚えていましたが、それが何故なのかまでかまではわかりません。
なお少年サーカスの『ベンポスタ子ども共和国』はスペインのサーカス団。作中では強引にアキラと言う姓にして「アキラ君」と呼ばせていますが、サーカスの少年達は当然、スペインの少年でしょう。タイアップするために強引にそういう名前にしたのは間違いないでしょう。力技としか言いようがありません。