イナズマンF 第19話「イナズマン デスパー軍団に入隊す!!」を観た

今回はイナズマンF 第19話「イナズマン デスパー軍団に入隊す!!」(脚本:上原正三、監督:前川洋之、擬斗:高橋一俊 (C) 東映東映エージェンシー)を紹介しましょう。

冒頭はいきなりミキサーデスパー(声:和田周)とイナズマンとの戦闘。どうやらミキサーデスパーが呼び出したようです。勝負の途中で

ミキサーデスパー「サデスパー参謀殿。」

現れたのはサデスパー。サデスパー闇走りとかいう技を繰り出した後、

ミキサーデスパー「驚くのはまだ早いぞ。貴様を呼び出した目的は他にあるのだ。」

そして投げつけたのはミキサーグローブ。文字通り、自分がはめていた手袋でイナズマンの目が覆われてしまいました。

サデスパー「引き揚げろ。」
ミキサーデスパー「イナズマン、また会おうぞ。」

これがイナズマンの苦闘の始まりでした。

渡五郎は川の水で目を洗いましたが

渡五郎「あの目隠しが俺を呼び出した目的。どんな策略が隠されてるんだ。」

そこへ荒井誠から通信が。デスパー兵士が東京E地区に現れたというのです。現場へ急行する渡五郎。ミキサーデスパー軍団が人々を襲っていました。ちなみに

勝の父親(岩名雅記)「私は市役所の戸籍課に勤めている者です。」

とオドオドしながら言っているのがウデスパーやサデスパーの声を演じた岩名雅記さんです。こういうお顔だったんですねえ。ミキサーデスパーに殴られて倒された勝の父親に勝(高橋直太)が心配して近寄ります。そこへ

イナズマン「待て! デスパー、やめろ!」

と叫び荒井誠と共に駆けつけるイナズマン。勝がイナズマンに駆け寄ります。

勝「イナズマン、パパを助けてえ。」

するとミキサーデスパーは不適な笑みを浮かべ

ミキサーデスパー「イナズマン、待っていたぞ。」

何か魂胆がありそうで、右手で変な銃を持っています。勝を保護する荒井誠。身構えるイナズマン。ミキサーデスパーが手に持った銃を撃つと、銃口は何度も発光。途端に目を抑えて苦しむイナズマン。頃は良しと

ミキサーデスパー「我が同士イナズマン。後は頼むぞ。」

どういうこと? イナズマンは倒れてしまいました。

荒井誠「どうした、イナズマン?」

イナズマンは立ち上がりましたが

イナズマン「頭痛がする。意識が薄れる。一体どうしたというんだ。」

苦しむイナズマン。助けを求める人々に

ミキサーデスパー「バカめ。イナズマンはデスパー兵士になったのだ。我々の同士。人類を滅ぼすために戦う戦士なのだ。」

そんなバカな。

荒井誠「バカなことを言うな。イナズマンは正義の味方だ。」
ミキサーデスパー「それはイナズマンが決める事なのだ。イナズマン、我らは先に行くぞ。来い。」

人々は連行されました。イナズマンは何もせずに見ているだけ。

荒井誠「動くと撃つぞ。」
ミキサーデスパー「イナズマン、こんなことをさせて良いのか。」

なんとイナズマンは荒井誠からショットガンを取り上げて荒井誠に銃口を突きつけました。当然驚く荒井誠。

荒井誠「イナズマン、なんてことを。」

さてガイゼル総統の御前ではサデスパー、ミキサーデスパー、そしてデスパー科学者(小倉雄三)が原理を説明していました。今回行なったのはミクロニードル作戦。要するに目に特殊電極を撃ち込み、ミキサーデスパーが手に持つ中性子銃から放った中性子で特殊電極を制御して、渡五郎を制御するというものです。ミキサーグローブは特殊電極を撃ち込むためにミキサーデスパーが投げたのです。その科学考証が出鱈目なのは目を瞑りましょう。

ガイゼル総統「ミクロニードル作戦を続けろ。人間どもは愛するものを奪われた時、その相手を怒り、憎む。全ての憎しみをイナズマンに向けさせるのだ。」

その頃、五郎は頭を検査していましたが、検査の結果は異常なし。その結果を聞き落胆する五郎。

荒井誠「そう、くよくよするなよ。装置を埋め込まれてないことが分かっただけでもよかったじゃないか。」
渡五郎「むしろ、それが発見された方が良かった。取り除くことができますからねえ。」

とその時、女性の悲鳴が。襲っていたのはミキサーデスパー軍団。駆けつけた五郎と荒井は応戦。女性を荒井に任せて

渡五郎「剛力! 将来!」

渡五郎はサナギマンに変転しましたが

ミキサーデスパー「よく来たな。同士サナギマン。」

なんと。またも中性子銃によってコントロールされる羽目に陥りました。

ミキサーデスパー「さあ、サナギマン。その女を渡せ。渡すのだ。」

サナギマンは荒井誠の方を向き、襲いかかりました。そして女は連れて行かれました。赤ん坊が泣く乳母車だけが残った状態。

荒井誠「サナギマン!」

その後、渡五郎は道路を渡る歩道橋の上で考え込んでいました。

渡五郎の心の声「原因は一体なんなんだ。」

とその時、子供達が口論するのが聞こえてきました。子供達は皆、イナズマンは人攫いだとか悪い人だと言っていますが、ただ一人、意見の違うものがいました。

勝「違う。あれは偽者だ。本物のイナズマンがきっと助けてくれる。」

子供達は罵声を浴びせて立ち去りました。五郎は勝に声をかけました。

渡五郎「イナズマンを信じてくれるのか。」
勝「うん。」
渡五郎「そうか。君の願い通り、正義のイナズマンはきっと来る。待っているんだ。」
勝「うん。」
渡五郎「君のお父さんももうじき帰ってくる。さあ、元気を出すんだ。」
勝「うん。」

立ち去る勝を見送りながら

渡五郎の心の声「この少年の心を傷つけないためにも、これ以上、奴らの言いなりになるわけには行かん。」

そして五郎は山荘に籠ることを決心しました。山荘の中に檻を作り、檻の周りは超音波を遮蔽する膜で覆って遮り、五郎は牢の中にいます。手にも足にも鎖で枷が付いている状態。荒井誠が差し入れたパンを食べる五郎に

荒井誠「痛いだろう。食う時ぐらい自由にしたらどうだ。」

しかし五郎は荒井の差し出した鍵を受け取らず、そのまま食べます。

渡五郎「結構です。僕は自分でも何をしでかすかわからない怪物ですからね。」
荒井誠「五郎君。」
渡五郎「このまま、檻を開けないでください。」
荒井誠「原因がわかるまで君を町へは行かせないつもりだ。イナズマンの名をこれ以上汚すわけには行かんからな。」

荒井誠はデスパーが五郎を制御することなどできないと言い切りましたが、CM挿入後、盲点が明らかになります。ミキサーデスパーは五郎の潜伏先を察知。中性子銃を操作。

村越伊知郎のナレーション「中性子は電波とは違い、あらゆる物質を貫通する素粒子である。苦心の電波遮蔽網も中性子を防ぐことはできないのだ。」

たしかにそうかもしれませんが、中性子を使って制御できるかどうかは別問題。でも無視して先へ進みましょう。渡五郎は結局、デスパー軍団の指揮下に入ってしまいました。

渡五郎「荒井誠、鎖を解け。早くしろ。」
荒井誠「五郎君。」

荒井誠はそれを拒否。そして気がつきました。

荒井誠「いつもの五郎君ではない。」

口論する五郎と荒井。

渡五郎「早く鎖を解け。」
荒井誠「いやだ。ここから行かせるわけには行かん。」
渡五郎「なんだと!」
荒井誠「イナズマンの名誉のためには俺は腕づくでも君を行かさんぞ。」

すると五郎は怪力で鎖を引きちぎってしまいました。

荒井誠「五郎君、行ってはいかん。今度行けば君は人類の敵になってしまう。」
渡五郎「どけ!」
荒井誠「これほど言ってもまだわからんのか。」

仕方なく、荒井誠は五郎をチョップ。しばらく五郎と荒井誠は格闘しましたが、五郎は外へ出てしまいました。追跡し、川べりで五郎と戦う荒井誠。そこへミキサーデスパー軍団登場。

ミキサーデスパー「渡五郎、その男は憎むべきインターポールだ。殺せ。叩きのめすのだ。」

それを聞き、頷き、荒井誠に襲いかかる渡五郎。

荒井誠「五郎君、目を覚ませ。君は奴らに操られてるんだ。」
ミキサーデスパー「やれ。そいつを倒せ。」

結局、五郎は飛び蹴り二発で荒井誠を倒してしまいました。

ミキサーデスパー「さあ、渡五郎。俺と来い。攫った人間どもを大衆の目前で死刑にするのだ。その役をお前がやれ。良いな。」

五郎は頷き、ついて行きました。さてこの言葉を荒井誠も聞いていました。なんとか起きると

荒井誠「さらった人間を死刑。そうか。ガイゼルはイナズマンを人間社会から追放し、デスパーの戦力にしようとしているんだ。(立ち上がり)そんなことはさせん。」

追跡した荒井誠は吊り橋の上で格闘。最終的に荒井誠は渡五郎と一緒に橋の上から川へと落ちました。

さて落ちた五郎と荒井は岸辺に流れつきました。気絶する荒井を起こす五郎。五郎の目を見て

荒井誠「その目だ。澄んだ目に戻った。」
渡五郎「澄んだ目?」

荒井は頷きました。

荒井誠「君が発狂する時は目も充血している。」

荒井の言葉を聞き五郎は気がつきました。

渡五郎「そういえば、目の奥に激痛が走るんです。そうか。あの時、目で目の中に注入されたんだ。」
荒井誠「ミキサーデスパーは特殊な発電装置を使っている。電波遮断網を突き通すような何かだ。」
渡五郎「電波でないとすれば中性子だ。」

その理屈が適当極まりないことは目を瞑りましょう。

さてここはデスパー軍団の処刑場。

ミキサーデスパー「みんなよく聞け。今日の処刑はイナズマンのデスパー軍入隊を祝って行なわれるものなのだ。したがって死刑執行人はイナズマンだ。楽しみにしておれ。」

勝の父ががっくりしたその時、

勝「パパ。」

駆け寄ろうとしましたが、デスパー兵士がマシンガンで銃撃したので諦め

勝の父「勝!」

繰り返しますが、この人を演じているのはウデスパーやサデスパーの声も演じた岩名雅記さんです。デスパー兵士が勝にマシンガンを向けて近づくのを見て

勝の父「勝!」

そしてミキサーデスパーはこう言いました。

ミキサーデスパー「死刑執行人イナズマン。出て来い。」

すると崖の上にイナズマンが立っていました。

勝「あ、イナズマンだ。」

イナズマンは叫びます。

イナズマン「自由の戦士イナズマン!」

すると先ほど勝に罵声を浴びせた子供達が順番にこう言います。

「何が自由の戦士だあ。」
イナズマン、消えろ。」
イナズマンのバカ。」
「悪魔の使い。」

しかし勝は

勝「イナズマン、来てくれたんだね。」

そしてイナズマンはこう演説。

イナズマン「うん。みんな、聞いてくれ。私はデスパーの陰謀により、心ならずも悪事に加担させられた。だがもう、奴らに操られることはない。私が人類の味方であることをこれから証明してみせる。」

対するミキサーデスパーは

ミキサーデスパー「うん? 気が狂ったか、イナズマン。お前は私の奴隷だ。食らえ。」

中性子銃を構えましたがイナズマンはマフラーで自分の目を覆い隠しました。中性子銃が効いた様子もなく、ミサイルデスパーは何度も撃ちましたが無駄でした。なぜなら

村越伊知郎のナレーション「全ての物質を貫通する中性子イナズマンのマフラーを突き通すことはできなかった。」

だそうです。深く考えずに先へ進みましょう。イナズマンは攻撃に転じます。デスパー兵士と戦うイナズマン

勝の父「イナズマン、頑張れ。」

さてミキサーデスパーは

ミキサーデスパー「我らの仕掛けに気づいたからには生かしておけぬ。」

イナズマンを足蹴にしました。

勝「イナズマン、頑張れ。」

とはいうもののマフラーで目を覆っているため、実はイナズマンは何も見えていない状態です。いろんな作品では心眼とやらを使う展開になるのでしょうが、そうはなりません、いや、それに近いのかな。なぜなら荒井誠が駆けつけてショットガンで援護したからです。デスパー兵士は倒されて、後はイナズマンとミキサーデスパーとのタイマン勝負。とはいうもののイナズマンの劣勢は否めません。このままではやられてしまうのか?

勝「イナズマン、頑張れ。」

荒井誠は崖の上にいます。

荒井誠「このままでは行かん。」

すると荒井誠はあることに気がつきました。画面に何故かアナログ時計と同じ並びで数字が表示されます。

荒井誠「イナズマン、時計の針を思い出せ!」

うーむ。これ、真面目に映像化してますが、荒井誠がこれから行なう助言が荒井誠の主観によるもの。でもこれが役に立つので目を瞑りましょう。

荒井誠「20分! 50分だ! 12時ジャスト! 今だ、10分!」

そしてイナズマンはジャンプして

イナズマン「念力パーンチ!」

ミキサーデスパーに命中し

ミキサーデスパー「あー!」

と飛んでいき、最後は

イナズマン「ぜーバーイナズマンフラッシュ!」

で倒したのでした。なお、荒井誠の助言は上記のとおりなのでどうやってぜーバーイナズマンフラッシュを当てたのかまでは知りません。

捉えられていた人々は家族と再会。

勝「イナズマン。ありがとう。」
イナズマン「(勝の目線で)坊やが私を信じてくれたからだよ。感謝している。」

他の人々もイナズマンに感謝し、荒井誠はそれをみて黙って頷くのでした。

報告を聞いたガイゼル総統は相当お怒りのご様子でチェスのコマを散らかしてしまいました。

サデスパー「申し訳ございません。イナズマンのマフラーまでは計算していませんでした。」

そりゃ計算不能でしょう。超能力でしょうからねえ。

なおミクロニードルを除去する手術は成功したのでした。

実はこの話、中性子で操られるというのを除いてよく見ればイナズマン 第17話「謎の対決!ふたりの渡五郎!!」(脚本:上原正三、監督:塚田正煕、擬斗:高橋一俊 (C) 東映東映エージェンシー)とほぼ同じテーマを扱っています。大きな違いはイナズマンの協力者が荒井誠であること。丸目豪作は渡五郎を糾弾する側に回っていましたが、荒井誠の場合は五郎を信じて五郎の名誉を守るために奔走します。イナズマンFが子供心に響いたのは渡五郎の相棒が荒井誠だったからではないでしょうか。荒井の方が遥かに年上だということもあるのでしょう。

そして見逃せないのが勝少年の存在。私がウルトラシリーズでの田口成光が脚本を書いた話を観てもあまり心に響かないのは、荒井誠や勝少年のように主人公を信じる人が出ないからだと思うのです。『ウルトラマンレオ』が成功しなかった大きな理由はそこにもあったのではないかと思います。私は『ウルトラマンレオ』の第1話を本放送で観た記憶が残っていますが『ウルトラマンレオ』と聞いて思い出すのはアストラやウルトラマンキングや円盤生物と言った路線変更後に登場したキャラクターばかり。『ウルトラマンレオ』が特訓ばかりしていたという記憶は全く残っていませんでした。子供心に引いてしまったのでしょう。その理由の一つが主人公の味方があまりいなくてただ責められるばかりだったからではないかなあと思います。

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