イナズマンF 第18話「レッドクイン 暗殺のバラード」を観た

今回はイナズマンF 第18話「レッドクイン 暗殺のバラード」(脚本:長石多可男、監督:塚田正煕、擬斗:高橋一俊 (C) 東映東映エージェンシー)を紹介しましょう。子供の頃に何度も何度も『イナズマンF』の再放送を観ましたが、正直申し上げて子供の頃の記憶には全く残っていません。それもそのはずで明らかに大人向けの内容と言ってもいい内容。カルトな志向のファンが代表作の一つとして、この作品を挙げる事が多いのですが、子供の頃の私はおそらく「は?」と思ってしまって理解できなかったのでしょう。まあ脚本を書いたのが当時は助監督を務めた長石多可男さんで演出したのが塚田正煕さん。二見書房が出した『仮面ライダー大研究』のP210で

たとえば『イナズマンF』の法則(ゲスト女優はメロ芝居担当で、最後は必ず殺されて、例のBGMが流れて…)を適用するなら、

と赤星政尚さんが暴走気味に書いているのを体現したのが、第17話以降の作品群だと言えるでしょう。全体から見れば終盤の話。まあ赤星さんは1965年生まれで私よりも4学年上なので、こういう話も楽しめたのでしょう。なお私は1969年10月末の生まれです。再放送時も小学校低学年なので理解不能だったと思います。

とまあ前置きが長くなってしまいましたが、冒頭は飛鳥夕子(八代順子)がお台場辺りの埋立地で日傘…の中から拳銃を取り出して撃つ場面。日傘の柄には通信機が仕込んであり

飛鳥夕子「花は死んだ。」

蝶が飛んでいます。明らかに作り物を操演で動かしたものです。たくさん飛んでます。そこへサデスパーが登場。日傘と拳銃を受け取り、バイオリンケースを渡します。

飛鳥夕子「明日の午後3時に約束を果たします。」

次はその日の夜に夕子がピアノを弾く場面。この話専用に作曲されたような曲を弾いています。作曲したのが誰なのか、渡辺宙明さんか塚田正煕なのか、よく知りません。ピアノで弾かれている曲はバラードで、タイトルが表示されます。

そして翌日。五郎が平和な新宿の歩行者天国を歩いています。平和な日々を満喫しています。一方、飛鳥夕子は代々木と原宿の間の辺りのアパートで恋人の哲也(佐藤仁哉)と会っていました。哲也も夕子もデスパー軍団に恨みを抱いているようです。あれ? 夕子はサデスパーと会っていなかったっけ? その理由は後でわかるので先へ進みましょう。そして夕子は告げます。

飛鳥夕子「あたし、デスパーの一員になるわ。」

まさに聞いてないよーと言う感じの哲也。当然、口論となります。夕子は母(上野綾子)も妹もハンマーデスパー(声:渡部猛)に殺された過去がありました。その時の情景を思い出しながら

飛鳥夕子「忘れもしない。忘れるもんか。忘れてもいないわ。」

哲也は夕子の気持ちが理解できず、一方的に話すだけ。

飛鳥夕子「花は死んだ。さようなら。」

またあのピアノのバラードが流れて夕子は哲也のアパートを去りました。

そして午後3時になり、夕子はビルの屋上で、サデスパーから受け取ったバイオリンケースからライフル銃の部品を取り出して組み立てて、哲也を射殺。約束とは哲也を射殺する事だったのです。その前に赤いバラの花束を持っていたのは哲也への惜別があったのでしょうか? 狙撃後

飛鳥夕子の心の声「あなたの命を無駄にしない。」

と思いながら、薔薇の花束を投げます。やはり何か考えがあるようです。

さて夕子は教会らしきところでサデスパーと会います。サデスパーは夕子の仕事を褒め

サデスパー「今日からお前はデスパー暗殺の女王。その名はレッドクイン。」

命名。その使命は渡五郎暗殺。サデスパーは「死のメロディー」を流す花束を夕子にプレゼント。先ほどのバラードを変調して電子音に仕立てたものです。これを聞くと渡五郎は(何故か)苦しみ、動けなくなるのです。

さて夕子はガイゼル総統の肖像画の前で右手を銃に見立てて狙いをつける仕草をしました。それをハンマーデスパーが発見。

ハンマーデスパー「貴様がレッドクインか。何をしている。」

飛鳥夕子は引き上げてハンマーデスパーのところまで戻りましたが

ハンマーデスパー「ガイゼル総統を侮辱したな、貴様。」

立ち去ろうとする飛鳥夕子の右腕を掴み

ハンマーデスパー「待て。」

と倒してしまい、ハンマーデスパーは夕子の右手をハンマーで打ち付けてしまいました。これが後に彼の命取りになります。そこへサデスパー登場。

サデスパー「待て、ハンマーデスパー。」

ハンマーデスパーはリンチをやめましたが納得がいかない様子です。ですが

サデスパー「レッドクインには重要な仕事がある。余計な事をしおって。レッドクイン、成功を祈る。行け。」

レッドクインは出て行き、サデスパーも出て行こうとしましたが、なおも抗弁するハンマーデスパー。

ハンマーデスパー「サデスパー参謀、なぜ俺にやらせないんだ。」
サデスパー「貴様には無理だ。」

サデスパーは出て行ってしまいました。

そして荒井誠と一緒に新宿駅西口のビル街を歩く渡五郎。彼に狙いをつけるレッドクイン。ところがハンマーデスパーに打たれた右手が使えません。それでも五郎を狙撃するレッドクインでしたが、弾は外れてしまいました。レッドクインに気がつき、後を追う渡五郎と荒井誠。ロケ地は新宿駅周辺ですが、新宿駅西口から東口へと移動して地下街を走り回って地上へ出た挙句に渡五郎と荒井誠はレッドクインを見失い、二手に分かれることにしました。そして五郎はレッドクインがビルのエレベータを登るのに気づいて屋上へ出ましたが、そこでライフルを突きつけられてしまいました。五郎がレッドクインの名前と狙撃した目的を尋ねると

レッドクイン「今のところは命令に従ったまでよ。」

ガイゼルの命令かと五郎が尋ねると

レッドクイン「たとえそうだとしても、あたしには関係のないこと。あたしはあたしの目的を達成するために今あなたの命を利用しなければならない。」

二人の睨み合いは続き、レッドクインは発砲。弾はそれました。

レッドクイン「動かないで。今度は本当に撃つわよ。」

わざと外したようです。五郎は背を向けてレッドクインを油断させた後、回し蹴り。ライフルを落とす事に成功。ところが「死のメロディー」が鳴って五郎は身動きが取れなくなりました。形勢逆転、と思ったら

荒井誠「五郎君。」

レッドクインはその声を聞いて引き揚げました。ここでCMが入ります。

さてCMが明けるとガイゼル総統の御前。レッドクインの狙撃失敗が問題となりました。ガイゼル総統が杖をレッドクインの右肩に置きましたが

サデスパー「お待ちください、ガイゼル総統。レッドクインの右手を使えなくしたのはこのハンマーデスパーデス。」

ハンマーデスパーは抗弁しましたがガイゼル総統はサデスパーの言い分を認め、レッドクインの肩から杖を離してサデスパーに合図。ハンマーデスパーは処刑される事になったのでした。ただし

ガイゼル総統「レッドクイン。一日だけ待ってやる。」

そして次の場面はまた飛鳥夕子がピアノを弾く場面。曲も同じ曲です。ただし右手が使えないので左手だけで弾いています。飛鳥夕子の脳裏に浮かぶのはガイゼル総統の姿。レッドクインがライフルをぶっ放すと花の入った植木鉢だか花瓶だかが吹っ飛びました。真の狙いはわかるでしょう。

さてここは第17話でも登場したガイゼル総統の私邸。ロケ地は東京都目黒区駒場にある旧前田家本邸です。ガイゼル総統は屈強な若者を集めてこう言います。

ガイゼル総統「貴様達の中から一番強い者に我がデスパー軍団の幹部としてのチャンスをやろう。いいか。一番強い奴はだ。死ぬまで戦え。始めろ。」

全員、大野剣友会のメンバー。最終的に勝ち残るのは新堀和男さんですが、倒す順番は、湯川泰男さん、中村裕さん、翁長和男さんだそうです。たしかに映像で確認したらそうなっていますが、実際には五人並んでいるので計算が合いません(苦笑)。尺の都合でしょう。

さてこの様子を飛鳥夕子はずっと伺っていました。サデスパーが最終的に勝った男を中に入れようとした隙を突いてガイゼル総統を狙撃しようと狙う夕子。

ガイゼル総統「よし。お前を改造してハンマーデスパー2として蘇らせる。」

なおも狙う夕子のライフルに手をかけて止めたのが渡五郎でした。渡五郎は夕子を外に出して尋ねました。

渡五郎「君は一体誰だ。昨日は俺を狙い、今日はガイゼルを撃とうとしている。」
飛鳥夕子「余計な事だわ。私を邪魔するものは許せない。」
渡五郎「(夕子を制して)そうは行かない。もっと命を大切にするんだ。今の君は右手で引き金を引くことができないじゃないか。ガイゼルは倒せん。もっと命を大切にするんだ。ガイゼルはこの俺がやる。」

さて飛鳥夕子の返事はこうでした。

飛鳥夕子「やめて。そんなくだらないヒロイズムなんて通用しない。」

そして渡五郎にライフルを突きつけました。

飛鳥夕子「あなたの力なんて借りない。あたしはあたしの手でガイゼルに復讐してやる。父、母、妹や、そして哲也。復讐こそ私の生きる全てよ。」

五郎は夕子の気持ちを理解したようです。が、子供の頃の私は理解できなかった事でしょう。それは兎に角、五郎は毅然としてこう言います。

渡五郎「撃てるものなら撃て。」

そして銃を突きつけられた五郎が夕子とともにやって来たのは競馬場。大井か府中かどこかは知りません。兎に角、競馬場の観客席で

渡五郎「君はどうしてもガイゼルを撃つつもりか。」
飛鳥夕子「もちろんよ。(振り返ろうとする五郎に)動かないで。」
渡五郎「左手しか使えないその腕でもか。」
飛鳥夕子「あたしはやるわ。ガイゼルに近づくために、たった一人の優しい友達を死なせた私の気持ちなんか、あんたにはわかんないわ。」

幼かった私にはわからなかったと思います。それは兎に角、なんと五郎はこう言います。

渡五郎「よし、俺が的になってやろう。その左手で俺が撃てたらガイゼルを撃て。」

この五郎の気持ちも幼かった私にはわからなかったと思います。五郎は夕子に背を向けながら何歩か歩いて止まりました。そして振り返りました。五郎を狙う夕子。本当に撃ちましたが、弾は外れました。

渡五郎「どうした!」

二発目も外れました。とその時、夕子が誰かに撃たれて倒れてしまいました。思わず駆け寄る五郎。夕子を抱き起こしながら

渡五郎「どこだ。出てこい。姿を現せ。」

出てきたのはデスパー兵士、ハンマーデスパー2(声:丸山詠二)、サデスパー、ガイゼル総統。

ハンマーデスパー2「役に立たない者は死ぬ。渡五郎、俺と勝負しろ。」

倒れたままの夕子を寝かせて五郎は立ち上がり

渡五郎「貴様は誰だ。」
ハンマーデスパー2「俺の名はハンマーデスパー2。たった今、蘇った。」
渡五郎「ハンマーデスパー2。」

五郎は歩いて近寄りました。ハンマーデスパー2も近寄ります。とその時、飛鳥夕子が動き始めました。夕子はライフルを構えて撃ちました。その弾丸はガイゼル総統の右耳に命中。五郎は振り返って夕子に駆け寄り

サデスパー「総統。ハンマーデスパー2、後はお前に任せる。」

サデスパーはガイゼル総統を連れて引き揚げました。

ハンマーデスパー2「渡五郎。」

五郎は立ち上がり

渡五郎「剛力! 将来!」

即座に

サナギマン「超力! 将来!」

というわけでイナズマンとハンマーデスパー2軍団との戦闘です。イナズマンは「死のメロディー」に苦しめられましたが、花をショットガンで荒井誠が破壊した事により形成逆転。

イナズマン「念力キック」

イナズマン「念力パーンチ!」

最終的には

イナズマンイナズマンフラッシュキック!」

で倒されました。最初の技と最後の技との違いがよくわかりませんが、そう叫んでいるので違うのでしょう。

最後の場面は新宿駅東口の歩行者天国でガードレールに座っていた渡五郎が立ち上がって歩くのを映しながら

村越伊知郎のナレーション「渡五郎、イナズマン、23歳。暗躍するデスパーがいる限り、彼に青春の日は遠い。」

ハーモニカが吹かれる中、雑踏の中に五郎の姿は消えるのでした。

なんだか後の最終回準備稿を思わせるような終わり方。予算も尽きて終わりも見えたのでスタッフは自分のやりたい事をやる事に決めたのでしょう。次回はイナズマンがデスパー軍団に操られてしまうという驚愕の内容。その科学考証の出鱈目さは目を瞑りましょう。話のテーマは渡五郎と荒井誠との信頼関係です。

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