イナズマンF 第1話「恐怖のガイゼル総統と謎のデスパー軍団!」を観た

今回はイナズマンF 第1話「恐怖のガイゼル総統と謎のデスパー軍団!」(脚本:上原正三、監督:塚田正煕、擬斗:高橋一俊 (C) 東映東映エージェンシー)を紹介しましょう。

まずイナズマン 第25話「壮烈!帝王バンバの最期!!」(脚本:上原正三、監督:塚田正煕、擬斗:岡田勝 (C) 東映東映エージェンシー)で帝王バンバが倒される場面が流れます。

イナズマン「ゼーバーイナズマンフラッシュ!」

あれ、思いっきり技の名前が替わってます。設定が変更されたのでしょう。先を急ぎましょう。帝王バンバは巨大化して爆発。そして渡五郎がガイゼル総統の姿を観たところでタイトルが表示されます。この話はその直後の場面から始まるのです。

さて渡五郎が気がつくとデスパー軍団の姿は消えていました。なので引き上げようとしたところ、マシンガンで銃撃されます。振り返るとそこにいるのはウデスパーとデスパー軍団の兵士つまりデスパー兵士2人です。ガスマスクをしたような顔は共通していますがファントム軍団の兵士と違ってヘルメットは被らず制服は着ていないようです。ファントム軍団の兵士と違って鉤爪もありません。これはファントム軍団の兵士のものを改造したそうです。ウデスパーは渡五郎に宣戦布告します。

ウデスパー「渡五郎、このまま返すわけには行かん。我が軍団の敵は全て倒す!」

ウデスパーは右腕に鉤爪を装着。即座に戦闘開始です。

渡五郎「剛力! 将来!」

というわけでサナギマンに変転。ところがウデスパーに敵うわけがありません。ひたすらサナギマンがぶん殴られている最中に

ハンマーデスパー(声:渡部猛)「待て、ウデスパー。そいつは俺が片付ける。イヤー。」

なんと参謀のウデスパーにタメ口聞いてます。これは後の伏線。兎に角、ハンマーデスパーも参戦しました。ウデスパーの鉤爪で首根っこを押さえつけられているサナギマンをハンマーデスパーは右腕についたハンマーでしこたま殴りつけています。その後、サナギマンはハンマーデスパーに殴り飛ばされ、ウデスパーに蹴られましたが

サナギマン「超力! 将来!」

イナズマンに変転。というわけで戦闘続行ですが二対一という不利な状況に変わりはなく、しかも直前に帝王バンバと戦ったばかり。エネルギーが回復しきれてないうちに戦闘を開始したので次第に劣勢になっていきます。とその時、サングラスをかけカウボーイハットを被った男がライフルを構えていました。イナズマンは岩場で海の方に追い詰められていきます。なおハンマーデスパーの右腕についているハンマーは鎖がついており、鎖を伸ばしてグルグル回すことも可能になっています。明らかにイナズマンは劣勢です。とその時、ライフルが放たれ、イナズマンの足場が崩れてイナズマンは転落。

ハンマーデスパー「誰だ! 邪魔した奴は。」

ハンマーデスパーはプッツンしますが、ウデスパーは冷静にこう命じます。

ウデスパー「追うな、ハンマーデスパー。イナズマンを先に探すのだ。」
ハンマーデスパー「よし。」

相変わらずタメ口のハンマーデスパー。先ほどライフルを撃った男は既に立ち去った後。イナズマン探索にハンマーデスパーとウデスパーは乗り出します。

そして今度は山の中。怪我した渡五郎を通りかかった車が発見。渡五郎は「なんでもありません。」と言いますが、見過ごせないと車の中に乗っていた鈴木(藤竹修)と鈴木良子(八代順子)は五郎を車に乗せて発進しますが、その様子をウデスパーとハンマーデスパーはしっかり観ていました。

ウデスパー「奴は怪我をしている。もうこっちのものだ。」

と渡五郎襲撃に乗り出そうとした、その時、ウデスパーはハンマーデスパーにしこたま殴られて道路の下に転落してしまいました。

ウデスパー「卑怯だぞ、ハンマーデスパー。」
ハンマーデスパー「奴は俺が倒す。悪く思うなよ。」

というわけでハンマーデスパーは単独で出撃。この短慮が後に問題となりますが、それは先の話です。

さて渡五郎は鈴木良子に怪我を手当してもらい、二人が新婚旅行の途中であることを知ります。

渡五郎の心の声「ウデスパー達はきっと追ってくる。幸せな二人を巻き込んでは行かん。」

というわけで渡五郎は車を降りることにしました。

鈴木良子「お気をつけて。」
渡五郎「どうもありがとうございました。どうぞお幸せに。」

というわけで車を見送った渡五郎でしたが、直後に車に乗った二人を不幸が襲います。ハンマーデスパーが襲いかかってきたのです。単細胞のハンマーデスパーは渡五郎が降りたとも気づかず、そのまま襲撃。車は崖下に転落し二人は死亡しました。そしてハンマーデスパーは気がつきました。

ハンマーデスパー「ん! 渡五郎がいない! いえい、くっそう。渡五郎め。いつの間に逃げよったか。殺してやる。」

と立ち去ってしまいました。そして直後にすぐそばから登場する渡五郎。ハンマーデスパーの間抜けぶりが際立ちますが、それは置いといて、五郎は二人の死体と立ち去るハンマーデスパーとデスパー兵士を目撃。

渡五郎の心の声「俺を乗せたばっかりに。気の毒なことをしてしまった。」

思い出すのは生前お世話になったこと。

渡五郎「デスパー、許さん!」

と立ち上がった途端に銃声が。渡五郎の辺りに銃弾が命中。当然

渡五郎「誰だ!」

と激怒しますが、姿を現したのは、先ほど、海辺の戦闘でライフルを構えていた男です。しかし、男は歩いて立ち去りました。ちなみにこの場面、ハーモニカの音色が響いてます。

渡五郎「待て!」

と言われて渡五郎が追いかけ始めますが、「待て」と言われて待つような人はいません…と言うのは定番ギャグかと思ったら、走った渡五郎は男に追いつき、格闘開始。男は五郎を軽くいなしました。

渡五郎「お前は誰だ? お前は何者だ。どうして俺を狙う。」

と言うやいなや、先ほど五郎のいたところが爆発。

男「君をあの餌食にしないためにやったのさ。冷酷無惨なデスパー軍団の手口。渡五郎。東南大学三年。」

おや? しかし、頭に血が上った状態の五郎は男の真意を理解できず

渡五郎「お前は一体何者だ?」

ところが男は

男「知りたいのか?」

とだけ言ってはぐらかし、立ち去ってしまいました。

五郎は男を追跡。出てきたのは鷺沼にある車庫の辺り。ここは制作当時は東急田園都市線の車庫がありました。今では走っていない車両が映りまくります。旧5000系、旧7000系、旧6000系などの姿が見えますが、そんなのは興味ない人にはどうでもいいですね。今は東京メトロの車庫になり、東急の車庫は長津田に移転してます。さてここでも渡五郎はデスパー兵士に狙われたり、デスパー軍団の戦闘機に狙われたりします。戦闘機は渡五郎を狙って機銃掃射しまくり、巻き添えを食って大勢の労働者が銃殺されてしまいました。ここであの男が登場。男は板を投げてさりげなく五郎を守るのですが、頭に血がのぼった五郎がそれに気が付いたかは微妙な感じです。そして戦闘機が去った後、五郎は男を見つけて詰め寄ります。

渡五郎「また貴様か。」

しばらく睨み合う二人。

渡五郎「どうしてこんな事をするんだ。」
男「俺がやらせたわけではない。だが君はもう少しで奴らの餌食になっていた。」
渡五郎「奴ら? 白を切るな。お前もデスパー軍団だ。」

さてここで男の横顔が映りました。もみあげが長いです。

渡五郎「正体を表せ。言え。」

男の答えは

男「ついてくればわかる。」

そしてCMが明けると五郎は男と一緒にどこかのビルから中に入り、地下へ入っていました。階段を降りていくと部屋があり、中に入ると(昭和49年当時の時点では)近代的な設備が整っています。まあテレビはブラウン管ですが。そして男はサングラスを外して話し始めました。

男「ここなら安心だ。(襟をめくって)これがわかるかね。」

男の襟についていたマークは

渡五郎「インターポール。」

そう。男はインターポールに所属していたのです。そして名乗り始めました。

男「国際警察機構の秘密捜査官荒井誠。新人類の動向を調査中なんだ。」

これで渡五郎は合点が行ったようです。荒井誠は帽子(演じる上野山功一さんの私物)を脱ぎながら乱暴なやり方を詫び

荒井誠「君の事は全てわかっている。デスパー軍団を相手にできるのは君だけだ。大事にしてほしい。ガイゼル総統の率いるデスパー軍団はファントム軍団よりも冷酷非情だ。お互いに協力し合おうじゃないか。」

荒井誠は右手を出しました。五郎は応じて握手しました。

荒井誠「君は今日からここに住みたまえ。奴らは君を狙って平気で無差別攻撃をする。人間の命など虫ケラ同然にしか考えていない。君の町に住んでいた周りの人までやられてしまう。ここは地下50メーターの秘密のアジトだ。それに迷路になっているから絶対に入ってこれない。」

あのう、50mを階段で登ったり降ったりするのは大変だと思いますが、それはさておいて

渡五郎「これ以上関係のない人々を巻き添えにするわけには行かない。お願いします。」

そして流れるナレーション。

村越伊知郎のナレーション「渡五郎はデスパー軍団の無差別攻撃を避けるために大学の寮を出て秘密調査官荒井誠の秘密室に移り住むことになった。」

少年同盟の皆さんと丸目豪作は一言も触れられずに退場です。

さてデスパー軍団にも動きがありました。ハンマーデスパーの失態が問題視されたのです。ガイゼル総統とウデスパーのいる部屋にハンマーデスパーが連行されてきました。ガイゼル総統はチェスが好きらしく一人でプレイしています。

ウデスパー「ハンマーデスパー、お前は功を焦るあまり、このウデスパー闇討ちにしたな。」

対するハンマーデスパーの口調はガイゼル総統の御前だからか丁寧なものです。

ハンマーデスパー「は、あのことについては深く反省しております。」

ウデスパーの叱責は続きます。

ウデスパー「お前のために傷を負った渡五郎をみすみす逃す結果になったのだぞ。」
ハンマーデスパー「申し訳ありません、ガイゼル総統。」

ハンマーデスパーは膝を屈して頭を下げました。さてここでガイゼル総統が口を開きました。

ガイゼル総統「お前の役割は何か?」
ハンマーデスパー「はあ?」
ガイゼル総統「ハンマーデスパー、お前の使命。」

ガイゼル総統がモニターのスイッチをつけるとあらゆるところが(「キャプテンウルトラ」や「ジャイアントロボ」などで)破壊される映像が流れました。

ハンマーデスパー「日本無差別破壊作戦。しかし渡五郎が、イナズマンめが。」

この答えにガイゼル総統が満足するわけがなく、ガイゼル総統は持っていた杖でハンマーデスパーの頭を跳ね飛ばしてしまいました! ガイゼル総統は相当強いですね。

ハンマーデスパー「お許しください、ガイゼル相当閣下。お許しください。ガイゼル総統、どうぞお許しを。」

しかしガイゼル総統は無言でチェスのコマを動かしました。それを見て一礼してウデスパーが頭を下げ、今度は自分の鉤爪でハンマーデスパーの右腕のハンマーを跳ね飛ばしてしまいました。それを無言で見るガイゼル総統。

ハンマーデスパー「死ぬのは嫌です。お助けください、ガイゼル総統。」

すると

ウデスパー「生き延びる道が一つあるぞ、ハンマーデスパー。」
ハンマーデスパー「なんでもする。なんでもする、ウデスパー。」

やはりウデスパー相手にはタメ口です、ハンマーデスパーは。

ウデスパー「ようし。渡五郎を殺し、使命を果たせ。それも今日中にだ。」
ハンマーデスパー「な、今日中に。」

ハンマーデスパー絶句。すると

ウデスパー「総統閣下。ハンマーデスパーに自信がなさそうです。」

これは効き

ハンマーデスパー「やる。やります。必ず今日中にやります。」

ガイゼル総統の機嫌がなおったようです。ガイゼル総統はチェスのコマを手に取り、握りしめました。これを見たウデスパーは一礼した後

ウデスパー「ハンマーデスパーを修理部隊に回せ。」

かくしてハンマーデスパーはイナズマンと再戦することになったのでした。

さてハンマーデスパーはまず鉄球でサナギマンを打ちつけまくりましたが、サナギマンはその攻撃に耐えてイナズマンに変転。途端に形勢逆転。それを眺めるウデスパー。

ウデスパー「ハンマーデスパーめ思った通りだ。」

ハンマーデスパー絶対絶命の危機かと思われたその時

ウデスパー「イナズマン、あれを見ろ。」

ウデスパーが指差す先を見るとなんと幼稚園バスがやってきます。止まったバスから降りて来たのはデスパー兵士と幼稚園児や幼稚園の先生。そして運転手(池田力也)。人質を取られたイナズマンはなす術もなくハンマーデスパーにやられ放題。ウデスパーは立ち去りました。ハンマーデスパーは再び鉄球でイナズマンを攻撃させました。やられるしかないのか、イナズマン。とそこへやって来たのは

荒井誠の心の声「あれ(鉄球)を止めなければ。」

というわけで荒井誠は重機の運転台に侵入してデスパー兵士を倒しました。

荒井誠「イナズマン!」

形勢逆転。イナズマンは反撃開始。合流した荒井誠は

荒井誠「子供達を。」

と指示。イナズマンと荒井誠の活躍で子供達は救われ

イナズマン「子供達を頼む。」
荒井誠「わかった。」

となり、なぜか途中から戦う場所が屋上になり、イナズマンのキックでハンマーデスパーの頭が跳ね飛ばされ、

イナズマン「ゼーバーイナズマンフラッシュ」

でダメージを受けたハンマーデスパーに

イナズマン「よし、今だ。」

最終的には空中高く放り投げてハンマーデスパーは倒されたのでした。

さてデスパー軍団は次の「挑戦者」のノコギリデスパーを呼び

ガイゼル総統「サファリ計画、開始せよ。」

と命じたのでした。サファリ計画については次回語られるのでした。

やはりガイゼル総統は帝王バンバよりも怖いです。顔は真っ白。右目は潰れています。服は真っ黒。しかもほとんどの場面で無表情。冷酷無比な姿勢は第1話でしっかり描かれています。次の第2話も必見ですが、荒井誠の言うとおり、人間を虫ケラ同然にしか思っていないのです。

まあ少年同盟が出て来たとしても原作通りの描かれ方ではなかったので全く歯が立たなかったのは明白で代わりに登場したのが荒井誠です。この人、この時点で語られているのはインターポールの秘密捜査官という身分と高い能力だけですが、実は色々とまだ語られていない設定が盛り沢山。「イナズマンF」は渡五郎だけではなくて荒井誠の物語でもあるのです。それは徐々に明らかになりますが、渡五郎と荒井誠が相棒になったのは必然的だったのでしょう。

ただ子供の頃にそこまで気がついていたわけではなくて私の目は第2話と第3話で活躍するライジンゴーやウデスパーやガイゼル総統などのデスパー軍団の戦いにしか目が行っていませんでした。普通の特撮番組だと思っていました。

ただ敵の内部抗争をしっかり描く作劇は当時は少なかったのではないかと思います。「柔道一直線」や「帰ってきたウルトラマン」では主人公が仲間と対立する場面が多くて「帰ってきたウルトラマン」では視聴率低下の一因になってしまいましたが、上原正三は「ゲッターロボ」でその作劇を敵側にも取り入れていました。「イナズマンF」はその発展形と言えるでしょう。

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