今回はイナズマンF 第2話「戦慄のサファリ!海中大作戦!!」(脚本:上原正三、監督:塚田正煕、擬斗:高橋一俊 (C) 東映、東映エージェンシー)を紹介しましょう。
この話、実は2つの作戦が同時並行されますが、デスパー軍団、荒井誠、双方ともに大事な話です。
冒頭で描かれるのはデスパー軍団がスポーツ選手を次々と攫っていくこと。陸上やらボクシングやら柔道(黒帯)の選手などがさらわれていきます。ボクシングのトレーナーは高橋一俊さんのような気がしますが気のせいかもしれません。それはどうでも良くて、二日目の朝、プロボクサー勝山の死体が発見されます。その死体の肩には矢が刺さっていました。さらに柔道の坂本選手の死体を荒井誠と渡五郎が観ます。やはり肩に矢が刺さっていました。さて二人の共通点は凶器が矢である他に
荒井誠「相当走り回った後で殺されている。」
と言う事です。ちなみに坂本選手の遺体が発見された現場は京王よみうりランド駅付近のような気がします。それは兎に角、荒井誠は被害者の足についている土の分析を急ぐ事にしました。そして渡五郎はノコギリデスパー(声:細井雅男)が現場を覗いている事に気がつき追いかけます。山の中で追いつき、格闘しますが
ノコギリデスパー「待った。この勝負、一日待ってくれ。」
なんと。さらにこう言います。
ノコギリデスパー「今、お前と戦っている時間はないのだ。」
その理由は
ノコギリデスパー「明日になればわかることだ。」
だそうです。選手を攫っている理由も、矢で殺す理由もわかるのだそうです。そしてノコギリデスパーは逃走しました。
渡五郎「一体、ガイゼルは何を考えているんだ?」
これに答えるかのように次の場面はガイゼル総統の訓示の場面。こんなことを言い出します。
ガイゼル総統「帝王バンバはミュータントを仲間にしようとして悉く失敗した。人間どもは家畜同様だ。奴隷として労役に使い、はたまたサファリとして楽しめば良い。つまり、殺したい時にはいつでも殺せる、取るに足らぬ生き物だ。しかるにミュータントはどうか。ミュータントは我が新人類にとって有害な存在だ。それはイナズマンをみればわかる。ミュータントの中から第二のイナズマンが出ないという保証はない。ミュータントは敵だ。ミュータントは殲滅すべきである。」
ガイゼル総統がサムダウンするとデスパー軍団の一同「ディー」と叫んでサムダウン。
ガイゼル総統「サファリ計画、開始。ミュータントを殲滅せよ。」
と言うわけでミュータント殲滅計画も開始されます。
さて東映生田スタジオのすぐそばの坂を上がったところでデスパー兵士が車に乗り、「ミュータント反応」のある人々がいるかどうかを捜索。該当する人物のいる家に矢に似た「熱線発射装置」を弓で射ち込んでいくのです。ところがそれを渡五郎が察知。持ち帰って調べ出しました。ウデスパーも渡五郎が持ち帰るところを見ており
ウデスパー「渡五郎に気づかれたらまずい。攻撃の時間を早めるか。」
さて渡五郎が例の「熱線発射装置」を調べていると通信が入りました。
荒井誠「渡君、荒井だ。例の被害者の足に付着した土を分析した結果、二人ともオニガミ峠一体の土を踏んでいることがわかった。何か手がかりをつかみたいのでオニガミ峠へ行ってくる。」
その頃、ノコギリデスパーはミュータント殲滅計画の実施を前倒しで進めていました。
ノコギリデスパー「熱線誘導装置発射。」
と言うわけで熱線誘導装置(?)を空に浮かべた後、熱線誘導装置(?)から何かがが「熱線発射装置」に発射され、攻撃開始。「熱線発射装置」が次々と爆発しました。微妙に日本語が間違っているような気がしますが、兎に角、攻撃は成功。
ノコギリデスパー「成功だ。」
だそうです。渡五郎も緊急事態が発生したことを察知しました。
ウデスパー「ミュータント殲滅計画の小手調べは大成功です。」
ガイゼル総統もこの報告に御満悦の様子。とそこへデスパー兵士が入室。
デスパー兵士「アジトの周辺を探し回っていた怪しい男を捕らえました。」
そして連れてこられたのは荒井誠。帽子を被っていません。
別のデスパー兵士「この男の身元が判明しました。インターポール秘密捜査官荒井誠。」
判明したのはこれだけではありません。
別のデスパー兵士「最近、渡五郎と手を結んだ様子です。」
なんと言う情報収集能力の高さ。ガイゼル総統は右手で合図。ウデスパーが一礼し
ウデスパー「連れて行け。」
荒井誠が連れ出された後、ウデスパーはガイゼル総統にこう言いました。
ウデスパー「これで明日のサファリは面白い趣向ができそうです、ガイゼル総統。」
ガイゼル総統もそう思ったらしく笑っています。
そしてCMが挿入された後、翌朝になり、渡五郎がオニガミ峠一帯を歩き回っていました。そして荒井誠の帽子を発見。さらに見つけたのは荒井誠が妻と娘らしき人物と写っている写真が入った懐中鞄。でも荒井誠は例の秘密室に一人で住んでいました。なので五郎は初めて観た事になります。
渡五郎の心の声「もしかすると荒井さんは。」
五郎は荒井誠に何かあった事を察知しました。
さてオニガミ峠の頂上に着いた五郎は陸上の早田選手(津森正夫)が走り回されているところに出会します。デスパー兵士やオートバイに乗ったウデスパーなどに進路を阻まれ、ジープに乗ったガイゼル総統が弓矢で早田選手を狙っていました。サファリ計画とはそういう事だったのです。
渡五郎「サファリを楽しむためにわざわざ鍛えた選手を攫ったのか。」
これを黙って見るわけにはいきません。
渡五郎「待て!」
そして早田選手のところに駆け寄り
渡五郎「ガイゼル、このまま見過ごすわけにはいかん。」
ところがこれはデスパー軍団も計算済みでした。
ガイゼル総統「渡五郎、良い獲物が舞い込んできたのう。」
ウデスパー「計算通りです。」
ガイゼル総統「今日のサファリは一段と楽しくなるぞ。」
驚く渡五郎。
渡五郎「計算通りだと? 貴様らの獲物になるような俺ではない!」
抵抗する渡五郎でしたが
ガイゼル総統「悪あがきはよせ。見よ。」
荒井誠が連行されてきました。驚く渡五郎にウデスパーが右腕にガトリング砲を装着しながらこう言います。
ウデスパー「動くな。少しでも動いてみろ。仲間の体は蜂の巣になるぞ。」
渡五郎は動けません。その五郎、いや、デスパー軍団にも荒井誠はこう言います。
荒井誠「渡君。私に構わず戦いなさい。戦うのだ。」
荒井誠は渡五郎を「渡君」と呼んでますが、こう呼ぶのは実は次の第3話(ここまで上原正三が脚本執筆)まで。第4話以降は「五郎君」と呼びます。親しくなってきたからでしょう。閑話休題。
渡五郎「しかし。」
荒井誠「私は職業柄、いつかはこうなると覚悟はできている。私に構うな。なぜ戦わぬ。自分の使命を忘れたのか。君はそれでも漢か。」
それを聞き、ハッとする五郎。ふと郷秀樹と坂田健の関係を思い出しましたが、まあ参考にした可能性はあるでしょう。閑話休題。
荒井誠「ガイゼル総統、私を的にしろ。」
五郎は既に荒井誠に妻子がいるのを知っています。なので
渡五郎「荒井さん。」
しかし
荒井誠「うるさい。」
荒井誠は自力でデスパー兵士を振り切るとガイゼル総統の乗るジープに駆け寄り、なおもこう言いました。
荒井誠「さあ、私を早く野獣にしろ。サファリを楽しむがいい。」
立っていたガイゼル総統は自動車の席に座り
ガイゼル総統「よかろう。荒井を自由にしろ。」
荒井誠が五郎を守ろうとする気持ちは本物です。荒井誠の拘束が解かれました。
荒井誠「渡君。後を頼む。」
しかし五郎は荒井誠に妻子がいることを既に知っています。
渡五郎「荒井さん。俺が走る。ウデスパー、計算通り、俺が獲物になってやる。」
荒井誠「馬鹿者!」
掴み合いの喧嘩をする渡五郎と荒井誠でしたが
渡五郎「ここは俺に任して荒井さんは早田選手を連れて早く逃げてください。」
荒井誠は納得していないようでしたが、渡五郎が腹にパンチをしたため、倒れてしまいました。そして五郎は走り出しました。五郎を追いかけ、ガイゼル総統の乗るジープやウデスパーの乗るバイクが走ります。仕方なく荒井誠は早田選手を連れて逃げざるを得ませんでした。
一方、渡五郎を追いかけるガイゼル総統とウデスパー。
ウデスパー「変転したければいつでもいいぞ。」
しかしジープやオートバイや矢をかわすのが精一杯で変転する余裕などありません。ついにガイゼル総統の放った矢が渡五郎の右肩に命中。五郎は倒れてしまいました。ガイゼル総統の乗るジープやウデスパーの乗るオートバイが停車。
ガイゼル総統「流石は渡五郎。素晴らしい手応えだった。」
ガイゼル総統は相当御満悦の様子です。
ウデスパー「ノコギリデスパー、後はお前の仕事だ。」
渡五郎「何?」
と言うわけでノコギリデスパーが登場。
ウデスパー「お前に任せる。」
ウデスパーとガイゼル総統は引き揚げました。渡五郎はノコギリデスパーに殴られ
ノコギリデスパー「覚悟はいいな、渡五郎。」
デスパー兵士も詰め寄りましたが、渡五郎は応戦してなんとか撃退。隙をついて右肩の矢を抜き
渡五郎「剛力! 招来!」
サナギマンに変転。デスパー兵士との戦闘が続きます。多分、オープニングのサナギマンの映像はこの時に一緒に撮られたものでしょう。しばらく戦った後
サナギマン「超力! 招来!」
イナズマンに変転しました。ノコギリデスパーはしばらくイナズマンと戦いましたが次第に劣勢となったため
ノコギリデスパー「第2作戦」
と叫び、イナズマンを赤いロープで拘束し、戦闘機で吊り下げてしまいました。そして空高く飛んだところでロープを切らせて
ノコギリデスパー「イナズマンの最期だ!」
しかし
やはりね。と言うわけでイナズマンはライジンゴーを呼び出し、搭乗。反撃に転じます。ノコギリデスパーの乗る戦闘機は海中へ逃げましたが
ライジンゴーの運転席が透明なフードで包まれました。防水はこれで完璧なようです。そのままライジンゴーは海中に潜ります。因みに『イナズマン』ではこんな場面はありませんでした。初期はライジンゴーの魅力も最大限に押し出していたのです『イナズマンF』でも。ただ制作時期はオイルショックの真っ只中。予算の関係で出番を減らさざるを得なかったのが真相なのでしょう。閑話休題。ライジンゴーは体当たりも駆使して攻撃。最終的には
ノコギリデスパー「水中弾発射。」
イナズマン「逆転ジェットスクリュー」
で決着がつきました。「逆転ジェットスクリュー」は扇風機の羽根のような何かがただ高速回転しているだけの代物でどこがジェットなのかはよくわかりません。戦闘機は水中で爆発。生き残ったノコギリデスパーは海岸に逃げました。そこへイナズマンが襲来。最終的には
でノコギリデスパーは倒されたのでした。
そして渡五郎は引き上げるべく海岸を歩いていましたが、イナズマンの仮面の左目に矢が突き刺してあるものを見つけました。もちろんデスパー軍団の警告です。
渡五郎「またしてもデスパーの挑戦か。(矢を引き抜き)俺は決して敗けないぞ。ガイゼル。デスパー。」
渡五郎は矢を投げ捨てました。
村越伊知郎のナレーション「ガイゼル総統の率いるデスパー軍団の組織力はファントム軍団を遥かに凌いでいる。だがイナズマンは人類の自由を守ってただ一人戦い続ける。」
まあ荒井誠も一緒ですが、趣旨はわかるのでこれでいいのです。
さて荒井誠の設定の一部がまた語られました。妻子がいるのに今は家族と別れて行動している荒井誠。その理由が完全に語られるのはしばらく先になりますが、壮絶なものです。この設定は加藤貢プロデューサーも含めた全員で話し合って決めたのでしょう。荒井誠には職務上の理由の他にもデスパー軍団と戦う理由があるのです。また五郎の協力者という立場は一貫しており、第19話でイナズマンがデスパー軍団に操られる事態となっても五郎を信じて行動します。渡五郎の偽者が暴れた時に五郎を糾弾した丸目豪作とは大違い。この交代劇はある意味必然的なものだったのでしょう。五郎よりも一回り年上なのも五郎の協力者とするためなのでしょう。
またデスパー軍団の冷酷無比さは凶悪です。人類を「家畜同様」だとガイゼル総統は言い切っています。人類の自由など考えてはいません。人類の自由を守るのがイナズマンの使命なのです。
子供の頃にそんなことがわかるはずもなくやはりイナズマンやライジンゴーの活躍などしか子供の頃は観ていなかったのは事実でしょう。