今回はイナズマンF 第10話「ウデスパー兄弟の挑戦状!!」(脚本:上原正三、監督:田口勝彦、擬斗:高橋一俊 (C) 東映、東映エージェンシー)を取り上げましょう。この話は別のネタで書いたので大丈夫…ではなくて、お話を語る上で重要な部分を削除せざるを得なかったので加筆しなくてはなりませぬ。
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子供の頃でさえもここまで細かく観ていたわけではないのですが、合体ウデスパーが誕生するきっかけが描かれた話というのがほとんどの皆さんの印象でしょう。でも実は、それだけではないのです。というわけで再度見直して書きましょう。
さてある山の中。ハイカーの一団が運悪くデスパー軍団に遭遇してしまいました。場所は東映生田スタジオ制作作品ではよく登場する滝の辺り。デスパー軍団のジシャクデスパー(声:野島昭生)とウデスパーα(声:渡部猛)に襲われました。鈴木二郎(諏訪和文)が撃たれた後、
ウデスパーα「渡五郎を連れて来い。お前達の生き延びる道はそれしかない。」
そう聞くや否や、ハイカーの一員だった原陽子(林靖子)が元来た道を川沿いに降りて駐在所に駆け込みました。
原陽子「渡五郎さんを呼んでください。」
駐在所のお巡りさん(邦創典)は老人です。定年間際なのかもしれません。
お巡りさん「渡五郎?」
突然そう言われても困るよなあ、とお巡りさんは思ったのでしょうが
腹陽子「お願いします。とても急ぐんです。渡五郎さんに会わせて下さい。」
お巡りさんは少々呆気に取られながらも
お巡りさん「渡五郎ねえ。」
と所轄の警察署に電話したようです。
そして画面が切り替わると渡五郎がライジンゴーに乗っていました。そう。駐在所に来たのです。お巡りさんからどうやって連絡が行ったのかが謎ですが、荒井誠がインターポールの秘密調査員なので、多分、警視庁の上層部を通して連絡が行ったのでしょう、多分。そして駐在所に到着するや否や
原陽子「あなたね。」
渡五郎「渡五郎です。」
原陽子「二郎が死にそうなんです。一緒に来て下さい。そうでないと仲間もみんな殺されてしまいます。」
そう言われても事情がよくわからない五郎は
渡五郎「え!?」
と言うのみ。でも陽子は相当前のめりです。押し切られる形で五郎は陽子と一緒にあの滝へ向かいました。そして滝に着いた途端に銃殺されるハイカー仲間。
原陽子「けいこ。もりやまくん。ごとうくん。」
立って泣き出す陽子を置いて(?)、五郎はハイカー達の死体に駆け寄り、全員の死亡を確認しました。
渡五郎「デスパー。若者達のパーティーを人質に俺を呼び出すとは卑怯だぞ。出てこーい。」
即座にジシャクデスパーとデスパー兵士2名が御登場。
ジシャクデスパー「渡五郎。待っていたぞ。」
渡五郎は立ち上がりました。
渡五郎「罪もない若者達をよくも。」
ジシャクデスパー「渡五郎、もう一人の人質が死んでもいいのか。」
途端に陽子は慌ててこう言います。
原陽子「二郎、二郎はどこなの?」
ジシャクデスパーはこう言います。
ジシャクデスパー「渡五郎、大人しく着いて来い。それ。」
渡五郎はデスパー兵士に鎖で縛られてしまいました。もう一人のデスパー兵士は陽子を拉致しました。
渡五郎「二郎くんのところへ案内しろ。」
ジシャクデスパー「よかろう。行け!」
と言うわけで連れて行かれます。
渡五郎の心の声「二郎くんだけでも助けられたら。」
こうして二郎が閉じ込められている小屋に着いたのですが、陽子と渡五郎の目の前でジシャクデスパーは二郎を殺害します。曰く
ジシャクデスパー「デスパーは甘くないぞ。」
原陽子「二郎、死んじゃいや。」
そして渡五郎はウデスパーαのところに連れてこられました。
ウデスパーα「自由にしてやれ。」
はて? まあそれなりの理由がありました。
ウデスパーα「お前達、手出しをするな。」
ジシャクデスパーが頷きました。
ウデスパーα「俺は1対1の勝負がしたい。」
と言うや否やウデスパーαは拘束を解かれた渡五郎を回し蹴りしました。まあ勝負したかったのは確かでしょうが、展開はや。顔にまともに食らった五郎は倒れてしまいましたが即座に立ち上がりました。
渡五郎「望む所だ。剛力! 将来!」
そして即座に
サナギマン「超力! 将来!」
展開速過ぎます。
空中一回転して着地しました。
ウデスパーα「行くぞ!」
暫く戦うイナズマンとウデスパーα。だがそこへ割って入ったものがいました。
ウデスパーβがイナズマンを2発も回し蹴り。展開速過ぎます。ところがこの加勢をウデスパーαは気に入らず、ウデスパーβを止めました。ウデスパーβは攻撃はやめましたが
ところがこの提案にウデスパーαは乗らず、かえって怒り出しました。
ウデスパーα「待て。この勝負は俺がつける。」
もちろんイナズマンの本音は
ですが
ウデスパーβ「(ウデスパーαを殴った後)イナズマンは我らデスパー軍団の敵だ。私闘で決着をつけるべきではない!」
ウデスパーα「(イナズマンに近づこうとするウデスパーβを止めて)ええい、やめろ! こいつは俺一人で十分だ!」
ウデスパーβ「イナズマン退治の功を独り占めしようと言うのか? ずるい奴だ。」
これを聞いた単細胞のウデスパーαは当然プッツン。ウデスパーβの腹に何発もパンチを入れました。ウデスパーβは悶絶しましたが立ち上がってウデスパーαを蹴り、喧嘩を始めてしまったのでした。あーあ。
この様子をガイゼル総統はモニターテレビで観ていました。
ジシャクデスパー「(ウデスパーαとウデスパーβの間に割って入って)やめて下さい。お願いです、やめて下さい。」
だがジシャクデスパーはウデスパーαとウデスパーβに同時に蹴られ
ウデスパーα「どけ!」
ガイゼル総統は思わず目を背けてしまいました。
ガイゼル総統「なんという、馬鹿者め。」
相当お怒りのようです。イナズマンはウデスパーαとウデスパーβの喧嘩を眺めているだけでしたが、ふと崖の上を見ると陽子がいます。飛び降りそうな感じです。
イナズマン「陽子さん。」
陽子は崖から飛び降りてしまいました。イナズマンが彼女を受け止めたので死は免れました。
陽子は二郎が死んで絶望したので自殺を図ったのです。イナズマンは陽子を止めますが、そこへジシャクデスパーがマシンガンで銃撃してきました。イナズマンは陽子を庇いましたが、銃撃が止むと陽子はどこかへ去ってしまいました。陽子を探し回るイナズマン。とその時
イナズマン「あれはなんだ。」
崖の一部が開いて中から幌つきのトラックが出てきました。イナズマンはトラックが止まった隙を突き、積荷を確認。積荷はニトログリセリン…と分かった理由はよくわかりませんが
イナズマン「すると、あそこに火薬工場が。」
とその時
原陽子「きゃあ。助けてえ。」
陽子がデスパー兵士に見つかり襲われようとしていました。イナズマンは陽子を救出。マフラーで怪我の手当てもします。
投げやりになっている感じです。イナズマンはこう言って諭します。
イナズマン「私は人類の自由のために戦うことを使命としている。だが、今は君を守るために戦う。」
ところが陽子はこの言葉を素直に聞き入れようとはしません。
原陽子「私を守る? 余計なお世話だわ。私はこの山で死にたいのよ。邪魔しないで。」
イナズマンの説得は続きます。
ですが
陽子は走り去ってしまいました…が、とその時、強風が吹き、陽子はバレーを踊りながら…と言うわけではなくて、強風のため、クルクル回り出してしまいました。
イナズマンはピンピンしてそう言いました。段々風が強くなった…と思ったら
イナズマン「竜巻が止まった。」
と思ったら崖の上にウデスパー兄弟がいました。いつの間にか陽子は人質にされていたのです。展開、速すぎます。
ウデスパーα「どうだ。手が出ないだろう。」
イナズマン「どうした?」
ウデスパーβ「この娘を殺されても良いというのか?」
ウデスパーα「どうした、イナズマン。」
ウデスパーαは陽子の頭を掴んでいました。するとイナズマンはこう返しました。
イナズマン「兄弟揃って弱い者いじめか。卑怯者のウデスパー兄弟らしいやり方だ!」
これにプライドを傷つけられたウデスパーαは怒りました。「卑怯者」と言う言葉が癇に障ったようです。
ウデスパーα「ええい。俺は卑怯者ではないわい!」
イナズマン「だったら、その娘を自由にしてやれ。」
ウデスパーα「ん! (ウデスパーβの方を向いて合図しあった後)よし。よかろう。さあ、行け。」
ウデスパーαは陽子の背中を突き飛ばし、こうして陽子は解放されました。ちなみにウデスパーβはこの直前まで終始無言で陽子の腕を掴んでいただけです。
イナズマン「さあ、逃げなさい。」
イナズマンは陽子を逃しました。そして近寄ってくるウデスパー兄弟とイナズマンは戦うこととなりました。なおウデスパーαがウデスパーβより前に並んで近づいています。これも彼らの性格を表しているといえるでしょう。
イナズマン「来い、ウデスパー。二人揃わなければ何もできない、半人前!」
プッツン! という音が聞こえてきそうな感じで
ウデスパーα「何! 半人前だと!」
しかしウデスパーβはイナズマンの魂胆を見抜いていました。
ウデスパーβ「待て。ウデスパーα。此奴の口車に乗るな。我らがクロスハリケーンが恐ろしいのだ。」
それを聞き
ウデスパーα「へへー。のこのこと出てきたのが運のつきだあ。イナズマン、行くぞ。」
自分達の方から呼んでおいてウデスパーαはそうほざきました。単細胞なので勢いでそう言ったのでしょう。
ウデスパーβ「行くぞ、クロスハリケーン。」
こうしてウデスパー兄弟はクロスハリケーンを放ちました。イナズマンはひとたまりもありません。その様子を逃げたはずの陽子が観ていました。戻ってきたのです。なんで? なんで陽子は戻ってきたの? それは後でわかるので置いといて、ウデスパー兄弟は高笑い。イナズマン、ピンチ。
イナズマン「このままではバラバラにされる。」
ところがCMが明けた後、ガイゼル総統はうかぬ顔。満足していませんでした。曰く
ガイゼル総統「まずい。まずい、まずい。」
ガイゼル総統はここから無茶苦茶なことを配下に命じるのです。
ガイゼル総統「ウデスパーα、βを合体ウデスパーにしろ!」
白衣をきたデスパー兵士はこう言いましたが。
デスパー兵士「合体ウデスパーは未だ設計の段階です。」
だがガイゼル総統はこの答えに納得しません。
ガイゼル総統「みろ。二人の心がバラバラのため、クロスハリケーンの威力も半減してしまっている。このままあの二人を放っておくわけには行かん。」
イナズマンは苦しんでいましたが
ウデスパーα「なぜ粉々にならん?」
ウデスパーβ「行くぞ。」
ウデスパー兄弟「超強力クロスハリケーン!」
もっと威力のある超強力クロスハリケーンというのがあったようで、これは効いたようです。ウデスパー兄弟は高笑いしたのですが、それでもイナズマンはバラバラになりません。とそこへジシャクデスパーが走ってきました。
ジシャクデスパー「ガイゼル総統閣下からの緊急集合サインです。」
ウデスパーβ「わかった。運のいい奴だ。」
ウデスパー兄弟「ストップハリケーン」
こうしてイナズマンは危機を脱しました。当然、バラバラにはなっていません。イナズマンは渡五郎に戻りましたが彼に声をかけたのは
さてガイゼル総統は設計図(と言うよりはデザイン画?)を観ていました。
ガイゼル総統「これが合体ウデスパーか。成功すれば無敵のロボット戦士が誕生するぞ。」
ガイゼル総統は笑いが止まりません。ただ成功した場合しか考えていないように見受けられます。
さて手術室ではウデスパー兄弟はベッド(?)に拘束されていました。
ウデスパーα「はなせ。はなせ。ガイゼル総統、総統! お考え直しを。」
ウデスパーβは無言。彼は合体手術を受け入れたようで無言です。
デスパー兵士「ガイゼル総統のご命令です。」
なおも暴れるウデスパーαでしたが、それを無視して合体手術は強行されました。そして誕生したのは
合体ウデスパー(声:和田周)「ええいやー!」
ガイゼル総統ご満悦。大笑いしています。やはり成功する場合しか(省略)
ガイゼル総統「ジシャクデスパー、お前はかねて計画の大都市空爆作戦を実行するのだ。イナズマンめを翻弄してやるのだ。」
ジシャクデスパー「わかりました。」
その頃、五郎は陽子を返そうとしていましたが
陽子には何か考えがあるようですが
渡五郎「デスパー軍団を倒すことは俺の使命なんだ。死を恐れて逃げる事はできない。」
と立ち去りました。
原陽子「渡さん…」
ととりあえず見送る陽子でした。
さて渡五郎は先程の火薬工場のあるところまで戻りました。
渡五郎の心の声「よし、叩き潰してやる。」
とその時、陽子の悲鳴が聞こえてきました。なんと急な坂を滑り降りています。五郎の後をつけてきたようです。デスパー兵士もやってきたので、五郎はとりあえず陽子を保護しますが、デスパー兵士の追撃を避けたところで五郎と陽子は口論します。そのやりとりを書きましょう。
渡五郎「どうして言われた通りに帰らなかったんだ。」
原陽子「お手伝いしたかったんです、あなたの。」
渡五郎「君は敵の恐ろしさを知らないから、そんなことが言えるんだ。」
原陽子「知ってます。あなたの使命が如何に大変なものであるか。」
渡五郎「だったら邪魔するな。」
原陽子「命懸けで戦ってみたいんです。二郎や仲間達の敵討がしたいんです。」
五郎の言い分もわかりますが陽子の言い分もわかります。大抵、五郎のような行動をとりがちですが、果たしてそれで良いのかどうか。
とその時、火薬工場から戦闘機が何機も飛び立ちました。戦闘機は五郎と陽子を銃撃。五郎は陽子を庇った後
渡五郎「剛力! 将来!」
五郎はサナギマンに変転。陽子を庇います。とそこへ荒井誠がライフル銃を持って登場。
荒井誠「サナギマン。」
サナギマン「荒井さん。」
荒井誠「奴らは五大都市を空爆するつもりだ。」
なぜ荒井誠が知っているのかは置いといて
荒井誠「撃墜頼む。」
サナギマン「あの岩の中が火薬工場になっています。爆破を。」
荒井誠「わかった。」
と言うわけで
サナギマン「超力! 将来!」
イナズマンはライジンゴーで戦闘機と戦闘開始。さて荒井誠はというと陽子を岩陰に連れて行き
荒井誠「お嬢さんはここへ隠れてろ。」
そしてライフル銃を陽子に渡し
荒井誠「当たらなくてもいい。デスパーが出てきたら、ぶっ放して脅かしてやるんだ。」
なぜ陽子が戦いたいと知っていたのかは置いといて、五郎との態度の違いがわかるでしょう。これは年齢もあってのことでしょう。できる範囲の事だけやってくれればいい。失敗しても仕方がないけど成功すれば儲け物という感じだったのでしょう。あくまでも個人的な意見ですが、『ゲッターロボ』の早乙女博士を思い出します。竜達が対立していると「今は喧嘩している場合ではない。」と諭していた、あの下駄を履いていた人です。それはさておき、荒井誠は突撃。デスパー兵士が二人現れましたが、二人とも、陽子がぶっ放したライフルで倒されました。ピースして、それを陽子に見せつける荒井誠。上原正三さんが一番描きたかった場面だと個人的には思います。
さてデスパーの戦闘機は全機撃墜されました。五大都市空爆という割には撃墜された戦闘機が少なかった気がしますが、それは置いといて、ジシャクデスパーは地上に落ち、イナズマンとの戦闘再開。オープニングが流れる中、それなりに激しい戦闘が続きましたが最終的には
でジシャクデスパーは倒されました。
さて火薬工場には荒井誠が潜入成功。火のついた葉巻を咥えながらデスパー兵士を倒したあと
荒井誠「あれだな。始末してやる。」
と心臓部にある火薬を発見。導火線に火をつけました。そして陽子のところに戻り
原陽子「荒井さん」
荒井誠「伏せるんだ。」
て火薬工場の爆破に成功しました。とそこへイナズマンが荒井達のところにやってきました。
素直に礼を述べるイナズマン。
原陽子「私、自分が精一杯生きていないことに気がついたんです。」
イナズマンは頷きました。
原陽子「私、一生山登り続けようと決心したんです。亡くなった二郎や仲間達の分まで、頑張って登ります。」
その言葉を受け
イナズマン「それが良い。荒井さん、陽子さんを。」
荒井誠は陽子を連れて立ち去りました。今回は出番が少ないながらも美味しい役どころでしょう。さてイナズマンの耳に地響きの音が聞こえました。
そしてイナズマンが走るところは当時建設中だった武蔵野線。本放送当時は未だ開業していなかった京王相模原線の稲城駅の近くです。ほぼ同時期の仮面ライダーXのエンディングにも使われた場所です。閑話休題。トンネルの中から何かが出てきます。合体ウデスパーです。イナズマンは合体ウデスパーと戦いましたが全く歯が立ちません。そのまま次回へ続くのでした。
合体ウデスパーの誕生劇に子供の頃は目が行っていましたが、大人になった今見返すと、上原正三さんが本当に描きたかったのは原陽子の行動だったのではないかと思います。精一杯生きることが大事なんだと言いたかったのではないでしょうか。とはいうものの精一杯生きるのは結構大変なことだと思います。
一方で合体ウデスパーの誕生に至る流れもよく見ると性急な感じ。たしかにイナズマンを圧倒したところで終わるのですが、もう少し慎重に行動すべき箇所が見受けられるのもまた事実。ガイゼル総統が前のめりすぎるのも不安な要素ですが、果たして次回どうなるのか、当時の子供達は固唾を飲んで次回を待ったのだろう、と思いますが、雑誌に載っていて既に知っていたかもしれませんねえ。私は何度も観たのでその顛末は知ってますが。なお『仮面ライダー』ではヒルカメレオンの正体がブラック将軍だということは本放送前に雑誌に載っていたそうです。ま、ネタバレしてつまらない作品はネタバレしない状態で観てもつまらないと思うのではないでしょうか。