ロボット刑事 第1話「バドーの殺人セールスマン」を観た

今回はロボット刑事 第1話「バドーの殺人セールスマン」(脚本:伊上勝、監督:奥中惇夫、助監督:平山公夫、技闘:風間健 (C) 東映)を紹介しましょう。

この番組はヒットしたとは言い難いものの色々な人の人生を決めたと言っても過言ではありません。特筆すべき事がいくつかあります。一つは JAPAN ACTION CLUB (今のジャパン・アクション・エンタープライズ)が初めて直請でアクションを担当してやり切った事。もう一つは脚本家の上原正三さんが制作局のプロデューサーである別所孝治さんと出会った事。とはいうものの今回の話の脚本を書いたのは平山亨プロデューサーが信頼を寄せていた伊上勝さんで作風も彼らしい感じになっています。

とは申しながら『イナズマンF』を紹介した調子で書いていたら、力を使い果たして歩行者天国の雑踏に消え去る感じになってしまうのは目に見えてますので、極力省力化して書きたいと思います。なお私の記憶が確かならばフジテレビはあまり再放送をしてくれませんでした。なので子供の頃に番組を観た記憶は皆無に近く、存在を知ったのは何故か自宅にあった水筒に描かれていた絵のみ。そういう番組があったのだなあ、という感じの記憶しかありませんでした。

さて本題に入りましょう。冒頭は刑務所から黒田行夫(吉原正皓)が出所する場面。刑期を終えたようです。すると迎えの車が。運転していたのは声から判断するとバドーのロボットのワッカマン(声:矢田耕司ではなくて八奈見乗児)のようです。なお、『ロボット刑事』の声優クレジットは出鱈目なので Wikipedia に載っている担当声優は1995年に講談社が出版した『変身ヒーロー大全集』の記述が元になっています。黒田は仲間と共に5年前に10億円強盗事件を起こしたそうですが、罪を被ったのは黒田のみ。仲間の岡崎(北九州男)と伊達(伊吹聰太朗)は悠々と娑婆で生活しています。ワッカマンはそこにつけ込み、黒田に話を持ちかけたのです。黒田の要求は三等分した3億3千万円。ところが岡崎と伊達にその気はない。ワッカマンは言葉巧みに誘導し

黒田行夫「バドー、殺人契約?」

を結ぶことになりました。ワッカマンはバドーの殺人セールスマンなのです。以上のことはワッカマンと黒田とのやりとりで述べられますが、伊上勝の脚本なのでほぼ一方的にワッカマンのセリフのみで語られます。さて契約内容は

ワッカマン「10億円はそっくり頂き、我々と半分ずつ分ける事が条件。」

さてその夜。12時少し前。岡崎のところに電話が。黒田から殺人予告があったようです。新條強刑事(千葉治郎)と芝大造刑事(高品格)が外に駐まるパトカーの中で見張っています。電話も盗聴しているようです。黒田と岡崎がグルだと睨んで張り込んでいたのです。岡崎の部屋の入口は一つだけ。芝は新條に階段で見張ってくれと指示し、新條はそれに従います。一方岡崎は

岡崎「12時にこの俺が死ぬだと。蟻一匹この中に入れるものか。」

とほざくと同時に天井近くについた通風口が映ります。そして12時になり

岡崎「見ろ。この俺はピンピンしている。」

とほざいた直後にまた電話が。岡崎が電話に出ている隙に通風口からバラバラになったワッカマンが侵入。電話はしばらく無言でしたが、ワッカマンが侵入完了した頃合いを見計らってか

バドー(声:川久保潔)「黒田行夫と取り交わした殺人契約書に基づき、お前を殺す。」

そしてバラバラになった状態のワッカマンが

ワッカマン「岡崎、死んでもらう。」

と宣言し、あっという間に体を復元。岡崎はワッカマンに殺されてしまいました。新條と芝が犯行に気づいて踏み込んだ時、部屋には岡崎の死体が転がるのみ。ありとあらゆるところは鍵がかかっているので外部からの侵入は不可能。窓、すなわち部屋の高さは下から15m上。密室殺人か?

新條強「鑑識を呼ばせて徹底的に洗わせましょう。何か手がかりがあるはずだ。」
ロボット刑事K(声:仲村秀生)「それは無駄です。」

誰、声の主は? と思ったら入ってきたのはコートを着てハンチング帽を被った人物。芝はその人物を怪しんで拳銃を向けて両手を挙げさせ、後ろを向かせました。身体検査をする新條は「やけにゴツい体だぜ」と言った後、警察手帳をその人物が持っていることに気がつきました。芝が警察手帳が本物であることを確認したので

芝大造「悪かったな。まあ、入れ。」

とその人物を中に入れました。その人物がコートを脱ぐと着ているのは赤いブレザー。しかし顔はお面のような顔です。彼はロボット刑事Kだったのです。芝も新條も顔にお面をしていると思いましたが、これが素顔だとKは説明。当然、戸惑う芝と新條。警視庁の刑事の中にロボットが入ったのかという芝に

ロボット刑事K「そうです。私はロボットです。」

と大真面目に答えるK。長官から託された手紙を読み、芝はKの言う事が事実である事を知ります。

芝大造「長官がなあ、俺にこのロボット様の指導をしろとな。」

一礼するKでしたが芝は明らかに不満そう。とりあえず芝はKに鑑識を呼ぶのが無駄な理由を尋ねました。Kは足跡や指紋などの手がかりがこの部屋にないことを根拠として挙げました。Kには最高精度のセンサーのようなものがついているので即座に分かったのです。この指摘に明らかについていけない芝と新條。芝はどうやって殺されたのかとKに尋ねるとKは

ロボット刑事K「何か見落としているところがあるかもしれません。」

この指摘を聞いて明らかに不満そうな新條。

新條強「俺はともかくなあ、この芝の親父さんはなあ、警視庁の刑事生活25年。鬼の芝と言われた腕利きだあ。見落としなんかあるかあ。」

思わず『ど根性ガエル』の「教師生活25年」を思い出しましたがベテランであることは確か。ちなみに当時の高品格さんは54歳。あらあ。今の私くらいの年齢です。うーむ。軽い衝撃を受けてしまいましたが、とっとと先へ進みましょう。この調子では終わりません。

芝大造「相手は機械人形さ。何を言っても無駄だろうさ。」

出た。このような言葉、特に初期は頻出します。最終的にKは例の通風口に目をつけました。

芝大造「ロボットでも考える事は同じだなあ。その通風口から入ってくるのは、それこそお化けでもない限り無理だ。」
新條強「そう言うこと。」

馬鹿馬鹿しいと芝が別室を調べようとした、その時、

ロボット刑事K「聞こえる。通風口を伝わって。犯人はまだ遠くへ行っていません。」

は? 視聴者は既に観ているのでその通りだとわかりますが芝と新條には想定外。Kは犯人を追跡するため出ていってしまいましたが

芝大造「ほっとけ、ほっとけ。鉄屑人形の言う事なんか信用できるか。」

とまあつれない感じ。

一方、Kは屋上へ出て辺りを見回し、逃走する車を発見。直ちにK専用の車ジョーカーに乗って追跡です。途中、ダンプカーが横断して止まってジョーカーの追跡を妨害しましたが、ジョーカーは空も飛べます。車を追い詰め

ロボット刑事K「岡崎進殺人犯としてお前を逮捕する。」

逮捕令状はありませんが、無視して先へ進みましょう。

ワッカマン「捕まえられるものななら捕まえてみろ。」

と言うわけで格闘開始。

ロボット刑事K「お前はロボット。」
ワッカマン「貴様もロボット。」

Kがワッカマンを投げるとワッカマンは体をバラバラにして逃げてしまいました。

ロボット刑事K「しまった。」

ここでCMが入り、CMが明けると翌朝。Kが芝を出迎えにジョーカーを走らせ、芝の自宅に到着。露骨に嫌がる芝大造。娘の奈美(紅景子)と由美(加賀由美子)は最初は戸惑いながらもKを受け入れて挨拶したのとは対象的に

芝大造「このうちに近づくな。大事な嫁入り前の娘がいるんだ。近所の噂にのぼったら迷惑だ。」

と言い放ち更には

芝大造「お前の迎えなどいらん!」

とトドメの一撃(大門豊談)を放つ始末。それでもジョーカーには乗りました。

その頃、新條強は再度現場で犯人が舞い戻るのではないかと張り込んでいましたが、窓から侵入したのは強の兄の敬太郎(千葉真一)。元刑事の弁護士だそうですが、やっている事は私立探偵の方が合っているのではないかと思います。強は敬太郎に(強が持っていた?)拳銃を突きつけられてしまい

新條敬太郎「安全装置をかけっぱなしだ。」

と甘さを指摘される始末。おそらくJACのアクション初担当番組ということで出演が決まったのでしょう。なお敬太郎は密室殺人が本当にできるのかを確認しに来たとのこと。やはり私立探偵の仕事ではないでしょうかねえ、伊上勝さん。検証結果を当然尋ねる弟強に

新條敬太郎「甘ったれなさんな。自分で考えなさい。」

と教えてくれませんでした…と思ったら

新條敬太郎「ただし、人間じゃ絶対に不可能だ。」

教えてくれました。そして

新條敬太郎「芝の親父さんによろしくな。元刑事新條敬太郎。今は弁護士だが腕は落ちてないってな。」

と言って、元来た方法で、すなわち窓から縄を伝って上へと戻るのでした。何の意味があるのかは不明ですが、インパクトは大きかったです。

その頃、芝は警視庁で(警視総監ではなくて)長官に文句を垂れていました。

芝大造「どうしてもロボット野郎と俺を組めって言うんですか。」

長官はそうだと答え、前の晩の失敗、すなわち岡崎殺しのような失態をおかしてはいけないとまで言い切りました。この言葉に納得できない芝大造。

芝大造「俺のやり方に間違いはないっていうんだ。」
長官「足と勘で捜査する時代はもう終わったんだ。これからは科学捜査が重要になってくる。そのためにもロボット刑事Kに是非組んでもらいたいのだ。」
芝大造「(即座に)長官。」
長官「芝君。これは命令だ。」

長官は辞令を渡しました。辞令は「昭和48年4月5日」付。すなわち第1話の放送日。芝は「警視庁 特別捜査科学室長」に任じられたのです。普通は4月1日付だと思いますが、放送日に合わせたのでしょう。憮然としながら部屋の外へ出ようとする芝に

長官「芝君。ロボット刑事Kの能力は十分に信頼していい。大いに期待しておる。」

芝は不服そうに立ち去りました。

さて特別科学捜査室に入った芝は未だ不満を垂れましたが

新條強「ひでえところですな。」

先に新條がいたのです。曰く

新條強「特別科学捜査室付を命じるってさ。もっとも俺は頼み込んでね。」

いつ察知したのかは謎ですが、無視して先へ進みましょう。

芝大造「お前までも責任を取る事はない。このロボット野郎と一緒に冷飯食うのは俺一人でたくさんだ。お前にはまだまだ出世の道があるんだ。」

本当にボロクソに言ってますが、これは一応、新條を気遣っての発言です。芝はこの人事を左遷と受け取ったのは明白です。まあ足と勘による、今までのやり方を否定されたのですから、こう思ってしまうのは仕方のない事。初期は本当にKをボロクソに貶すのです、芝の親父さんは。一応、新條の言い分はというと

新條強「辞めた兄貴同様、俺には出世より親父さんと一緒になって足を棒にし、靴を何足も履き潰す方が向いてる。兎に角、黒田の野郎、暗いところにぶち込まなければ。」

とそこへやってきたのは情報屋の地獄耳平(三上左京)。この番組、刑事ドラマの作りも意識していたそうです。特別科学室長御栄転と聞いて駆けつけたそうです。

芝大造「御栄転かどうか、その目でよく観てみろ。」

不満そうに言う芝に対して

地獄耳平「なるほど、これは酷い。とても人間様の住むところではない。察するにこれは体のいい島流し。今様に申せば左遷。」

さて耳平がやってきた真の目的は情報提供。黒田が伊達(伊吹聰太朗)を狙っていると言うのです。それを聞き、新條はKと一緒にジョーカーに乗って出動。伊達が乗っているヨットが停泊している港にやってきました。伊達は海の上なら安全と睨んだようです。ヨットの中で伊達は散弾銃に弾を込めました。新條は無線で呼びかけましたが伊達は岸に戻ろうとはしませんでした。

ロボット刑事K「私が行きます。」

Kは海に飛び込みました。伊達のところに天井の通風口からワッカマン来襲。

ワッカマン「約束通りに来た。さあ命か、それとも10億円の隠し場所か。」

伊達に迫るワッカマン。散弾銃は効きません。伊達は部屋の外へ出て船上へ。しかし目の前には即座にワッカマン登場。

ワッカマン「逃げても無駄だ。」

伊達が命乞いをした、その時、Kが泳ぎつき、船上に飛び出しました。泳いできたのにブレザーなどが濡れてないのは無視しましょう。

ロボット刑事K「殺人および殺人未遂罪で逮捕する。」
ワッカマン「いつかのデカだな。死ね。」

Kの目の色が黄色から赤に変わりました。ハンチング帽を脱ぎ、ブレザーも脱ぎながら

ロボット刑事K「ゴー!」

かくしてワッカマンとKの格闘が始まるのでした。なぜか巨大ロボット(?)のマザーも登場。

野田圭一のナレーション「ある日、突然と現れたロボット刑事K。そして巨人ロボットマザー。その前に起こった殺人事件。正体不明の怪ロボットの目的は一体何であろうか?」

次回へと続きます。

なお『ロボット刑事』の脚本を書いたのは伊上勝、中山昌一、上原正三の三人で伊上勝は最初と中盤と最終回のみを書いたので、実質的には中山昌一と上原正三の二人で脚本を書いていました。中山昌一は平山亨の義兄でもある松村昌治のペンネームだったそうです。中山昌一の書いた話は一話完結が基本でしたが、伊上勝上原正三の書いた話は最終話を除いて仮面ライダーV3初期のような前後編になっています。

なお技闘でクレジットされている風間健さんJAC所属ではなくて元プロボクサーでフリーランスの人です。殺陣師もJAC所属の人が務めるのはもう少し先の話になります。