今回はロボット刑事 第2話「目撃者はゼロ」(脚本:伊上勝、監督:奥中惇夫、助監督:平山公夫、技闘:風間健 (C) 東映)を紹介しましょう。
前回、ヨットの船上で戦闘を開始したKとワッカマン(声:矢田耕司ではなくて八奈見乗児)。格闘は続きますが、ワッカマンは体をバラバラにしてKのパンチを無効化。
ロボット刑事K「奴の体のどこかに復元装置があるはずだ。」
ワッカマンと組み合って、背後から抱き抱えた状態になった時、Kは復元装置の場所が左胸(バドーのマークがあるところ)であることを察知。ワッカマンがバラバラになった、その時
ロボット刑事K「二度と合体させない。」
Kは右胸に備えられているロボット破壊銃でワッカマンを倒したのでした。
ロボット刑事K「やったよ、マザー。」
しかし、マザーは首を左右に振って消えてしまいました。
ロボット刑事K「なぜマザーは首を振ったのか?」
ここからKの受難の道が始まります。伊達はヨットの船室に入ってしまいました。Kは伊達の保護に動きましたが、伊達はロボットのKを恐がり、Kの入室を拒否。そうこうするうちに窓から中に伸びてきた手によって殺されてしまったのでした。Kが踏み込んだ時は虫の息。
と言う言葉を残して死んでしまいました。その言葉を復唱するKは何かの暗号だなと睨みましたが、そこへ警視庁の水上ランチが到着。Kは伊達の殺害犯と間違えられて捕まってしまいました。ワッカマンは海の藻屑と消えてしまい、実行犯は逃亡した後。よってKが疑われてしまったのです。芝や新條がそうだったように、末端にはKが刑事であることは連絡が行き届いてなかったのでしょう。
結局、Kは芝の奔走により留置所から出られる事になり、新條がKを迎えに行きました。さて特別科学捜査室では礼を言うKに対して
芝大造「馬鹿野郎。お前のために出してやったんじゃない。いっそのことお前なんか、10年でも20年でも留置場に入れときたいよ。」
ロボット刑事K「でも私は何もしていません。岡崎、伊達を殺したのは、いや、完全密室殺人の犯人はロボットなんです。」
しかし芝は信じません。
芝大造「まだそんな夢物語を言っているのか。いい加減にしろ。ロボットが犯人ならその証拠を見せてみろ。」
ごもっとも。ところが
ロボット刑事K「ロボットは破壊して海の底に。」
新條強「物的証拠なしじゃ事件の解決にはなりゃしない。第一、信じろと言うのが無理な話だ。」
芝大造「行こう、新條。このウスノロの鉄屑野郎のために時間を無駄にしちまった。」
と言うわけで芝は新條を連れて捜査に出動しようとしました。
ロボット刑事K「どこに行くのです?」
その行先は
新條強「お前の聞いた暗号、俺の兄貴がバッチリ解読したんだ。」
それを聞き
ロボット刑事K「あれは簡単な暗号です。」
芝大造「なんだと? じゃあ解いてみろ。」
芝の親父さんはKの言葉が一々癇に障る模様です。Kは左胸を開き、月を映しながら解説しました。
ロボット刑事K「ヘラクレス、クレオメデス、マーキュリー、プリニウスは月の表面の地形です。そして月の緯度は地球の緯度と同じですから、四つの地点を結ぶ交点を地球の緯度に置き換えればいいわけです。おそらく10億円の隠し場所の事と思われます。」
新條は驚きました。敬太郎の解読結果と全く同じだったからです。さらに芝は尋ねました。
芝大造「わかってたんなら、なぜもっと早く言わんのだ。」
ロボット刑事K「私の任務は殺人犯を追うことであって10億円に関しては…」
芝大造「(呆れて)今度の事件の元は10億円から始まったんだ。」
新條強「(芝をみかねて)親父さん、そうカリカリしないでいきましょう。」
芝大造「貴様は大人しくここで待っていろ。絶対についてくるな。」
芝は新條と一緒に出て行きました。置いてけぼりとなったKは落ち込んで目の色が青くなってしまいました。
ロボット刑事K「事件の裏には謎のロボットがいる。あの暗号はとっくの昔に解読してしまったはずなのだ。行っても無駄なのに。でも、これを言えば芝刑事はますます気を悪くするだけか。」
さてKの予想は的中。黒田行夫(吉原正皓)は10億円を掘り出していました。トランクはおあつらえ向きに二つあります。黒田はトランクを二つとも自分の車の中に入れました。
黒田行夫「やったあ。とうとう10億円は俺のものだ。」
バドー「それは違うはずだ、黒田君。君はバドーと契約を取り交わした。10億の半分5億をバドーの集金人に渡していただこう。」
ところが欲をかいた黒田はこれを拒否。集金人はテナガマン(声:永井一郎ではなくて水鳥鉄夫)でしたが黒田は車を走らせ、テナガマンを二度も轢きました。これで大丈夫と思った黒田でしたが、テナガマンはロボット。その程度ではピンピンしています。
バドー「裏切り者には死を与えよ。」
と言うわけで黒田の車を追いかけるテナガマン。さらに
バドー「黒田、お前はバドーの契約を一方的に破った。契約書に基づいて全額はバドーがもらう事にする。」
テナガマンは手を伸ばし、黒田の車を掴んでしまいました。
テナガマン「貴様は死ぬのだ。」
どう聞いても永井一郎さんの声ではありませーん。往生際の悪い黒田は車を止めて両手にトランクを持って逃げました。その間、テナガマンが何をしていたのかは謎ですが、場所は三栄土木の辺りのようですが、採石場の近くのようです。逃げる黒田。追いかけるテナガマン。
その頃、パトカーに乗って芝と新條がやってきて、車が止まっている事に気がつき、降りました。
芝大造「この車は?」
新條敬太郎「黒田の車さあ。」
やはり職業は私立探偵なのではないかという言動ですが、彼は弁護士です、この話では。崖の上に立っています。
新條敬太郎「金は掘り出してしまった。」
そう言うと飛び降りて芝と強と合流しました。
芝大造「くそ。遅かったのか。」
新條敬太郎「いや、遅くはないです。妙なものに追われている。」
とその時、銃声が。その方向へ向かう強と芝に
新條敬太郎「油断するな。親父さんも。」
銃声は黒田の発砲によるもの。しかし、テナガマンに通用するわけがありません。黒田が後退りし、テナガマンが迫るのを芝も新條も観ました。
芝大造「黒田。岡崎ならびに伊達殺害犯人で逮捕する。」
新條強「武器を捨てろ!」
ワッカマンは無視するの?
黒田行夫「違う。俺じゃない。二人を殺したのはこのロボットだ。」
一部、嘘が混じっていますが、実行犯は確かにバドーのロボット。それを聞いてやっと気がつく芝と新條。
芝大造「ロボット?」
新條強「まさかKが言っていたロボット。」
さてテナガマンは振り返り、芝と新條にこう宣言。
テナガマン「黒田は殺す。邪魔すれば命はない。」
それに対し
芝大造「(テナガマンと黒田に近づきながら)貴様、公務執行妨害だぞ。」
まだ現実についていけていないようです。
新條強「親父さん、相手はロボットですぜ。」
芝大造「全く調子が狂っちまう。」
テナガマンが芝と新條の相手をしている間に黒田は逃げにかかりますが、追いかける芝達もテナガマンが邪魔して追いかけることができません。それでいいのか、テナガマン? と思う間も無く空を飛んでKの乗るジョーカーがやってきました。
ロボット刑事K「ヨットで戦ったのとは別のロボットだ。あの鉄の爪で伊達を殺したのか。よし。」
ジョーカーは着陸し、Kはテナガマンと芝と新條の間に割って入りました。
芝大造「K。貴様、つけてきたのか。」
ロボット刑事K「相手は私と同じロボットです。さ、任せて。黒田を追ってください。」
芝大造「ノコノコでしゃばって。」
これはKを気遣った発言とも受け取れますが、芝がテナガマンの相手になるわけがないからか
新條強「小言は後だ。親父さん、黒田を。」
新條と芝は黒田を追跡する事にしました。
テナガマン「ワッカマンを倒したのは貴様だな?」
ロボット刑事K「そうか。お前も仲間だったのだな。ロボットが犯罪を犯しているのは許せん。」
テナガマン「ロボットが刑事になるのも俺達は許さないのだ。」
ロボット刑事K「言うのだ。お前達の組織はなんだ。」
そんな質問にテナガマンが答えるわけがなく、「死ね」と襲い掛かりました。しばらく格闘が続くかと思ったら、ワッカマンは口に仕込まれた音波砲で崖を破壊してKを埋めてしまい、その隙に逃走してしまったのでした。当然、黒田を追いかけるためでしょう。後からKが出てきました。
さてCMが明けると時刻は夜。芝がKに送られて自宅に戻ってきました。手がかりが得られず不機嫌な芝。Kは外で新條の連絡を待つと言い、よかったら中にという奈美と由美には
芝大造「そんな貧乏神と口をきくな。中に入れてみろ。うちの中が油臭くなる。第一、鉄屑人間に暑いも寒いもあるか。」
と言う始末。Kは外で待つ事にしましたが
芝大造「今一歩というところで妙ちくりんなロボットが邪魔をしやがった。黒田は逃すし、全く忌々しい。」
中に入ると地獄耳平が上がり込んでいました。酒も飲んでいるので芝は怒りましたが
地獄耳平「人が折角黒田のアジト教えてやろうと思ったのに。」
ときくやいなや態度が一変。黒田が泊まるホテルの部屋を聞き出し、芝は出て行きました。
その頃、黒田は10億円を手にして翌日には日本から高飛びする手筈になっているとほくそ笑んでいましたが、そこへバドーの契約書が。
バドー「契約違反には死だ。」
当然、テナガマンも部屋を察知。黒田がドアを開けると新條が拳銃を構えていて
新條強「迎えに来たぜ。」
新條はトランクを置かせて黒田の身柄を確保しましたが、10億円のトランクは窓から手を伸ばしたテナガマンが持ち去ってしまいました。驚いた新條。その前段でテナガマンの腕によって薙ぎ倒されていたので拳銃を落としてしまい、その拳銃は黒田の手に。新條ピンチ。とその時、現れたのは敬太郎。どうしてここがわかったの? 弁護士というより、私立探偵ではないですか、職業は。兎に角、敬太郎の登場で新條は窮地を脱しました。最終的に新條は黒田に手錠をかけました。
新條敬太郎「強。油断すると命取りになるぞ。」
新條強「お陰様で長生きさせてもらってます。」
さてタイミングが良すぎた理由は
新條敬太郎「久しぶりに親父さんの顔を見によってなあ、そこでお前の相棒のKに会ってここにやってきたというわけなんだ。」
まだ相棒にはなっていないような気がしますが、そうなっているそうです。
新條強「それでKは?」
新條敬太郎「敵に背を向けるんじゃない。Kはお前を狙ったロボットを追ってった。さあ、連れてけ。」
全部セリフで説明するのは伊上勝脚本の特徴。Kは敬太郎の言う通り、テナガマンをジョーカーで追跡しています。朝になり、テナガマンの乗る車はどこかの川の河原に出ました。ヘリコプターが飛んできたのでテナガマンは合図。ヘリコプターが2本のロープが降りてきたのでテナガマンがトランプにつなぎ、ヘリはトランクを回収して発進。その時、Kがジャンプしてヘリに掴まりました。当然、テナガマンは妨害し、引きづりおろしてしまいました。万事休すか? 勝ち誇るテナガマン。
テナガマン「集金人の任務は終わった。ロボット刑事、ゆっくり始末してやる。」
ロボット刑事K「集金人? あの10億円はお前達には渡さない!」
テナガマン「なんだと?」
ロボット刑事K「機体に時限爆弾を今セットした。」
Kはそんなことをしていたのです。さてこれが良かったかどうかは後の伏線に一応なっていますが、とりあえず先へ進みましょう。ヘリコプターは爆発。
ロボット刑事K「さあ、どこにあの金を運ぶつもりだった?」
テナガマン「へへへ。俺達の組織の大金庫にな。二度と邪魔させんぞ。」
ロボット刑事K「その組織の正体は?」
テナガマン「貴様には探らせるものか。」
Kの目の色が赤くなり
ロボット刑事K「ゴー!」
ブレザーを脱ぎました。さてブレザーを着た状態のKを演じたのは主に中島律さんでブレザーを抜いた後のKを主に演じたのは金田治さんでしたが、この場面、少なくともヘリに掴まる場面は金田さんが演じたのではないかと思います。それは兎に角、戦闘開始。Kはテナガマンの長い右腕に苦戦しましたが、なんとか脱出し、テナガマンの肩の上に乗り、最終的にテナガマンは車に激突して爆発してしまったのでした。
ロボット刑事K「これで全ては片がついた。」
ところが待っていたのは芝大造の叱責です。
芝大造「なんだと? ロボットは自爆して10億円は灰になってしまった? 貴様、それでも刑事か。」
Kは返す言葉がありません。
新條強「まあまあ、親父さん。主犯の黒田は捕まった事だし、これにて一件落着と行きましょうや。」
新條がとりなし、芝の機嫌はなおりました。
芝大造「二人で祝杯でもあげるか。」
というわけで芝と新條は外へ出ました。さてジョーカーがやってきました。
ロボット刑事K「お送りします。」
芝大造「二本の足がある。余計な事をすんな。(と歩き出す)」
新條強「(芝を宥めて)そう堅いこと言わずに。さあ乗った。」
渋々、芝がジョーカーに乗ろうとしたその時
ロボット刑事K「音が。機械の音が留置場に。危ない、黒田が。」
そして警視庁に戻った芝、新條、そしてKが見たのは虫の息の黒田でした。
芝大造「誰がやった?」
黒田行夫「バドー。」
ナレーションがこう締めます。
野田圭一のナレーション「恐るべき怪ロボットの影の組織バドー。全ての目撃者は次々と消されていく。果たしてバドーとは何者なのか?」
とまあこんな感じで始まったロボット刑事。Kが変身しないというのがイマイチ人気が出なかった理由なのかもしれません。伊上勝が次に脚本を書くのは第11話と第12話。その後は中山昌一(平山亨の義兄でもある松村昌治)と上原正三が2話ずつ書いていくのでした。
なお芝大造は中々Kに心を開こうとせずにあのような罵詈雑言を浴びせまくりますが、その彼の心がどう変わっていくのかも『ロボット刑事』の見どころでもあります。