今回はロボット刑事 第5話「二重犯人の謎」(脚本:上原正三、監督:奥中惇夫、助監督:平山公夫、技闘:風間健 (C) 東映)を紹介しましょう。『ウルトラマンA』の脚本を書きながら迷いが生じていたところに平山亨プロデューサーから誘いが来て、これ幸いと参加しての初執筆作。前後編ですが、自身の「琉球お断り」の実体験も重ね合わせたのか、Kと芝の両方に焦点が当たった話になっています。
野田圭一のナレーション「都内の有名宝石店の金庫が次々と破られ、宝石が盗まれた。怪盗は完全犯罪とも思える完璧さで手がかり一つ残さなかった。」
新條が事件を報じる記事を読んでいると
芝大造「そういえば昔、錠無しの松って奴がいた。どんな金庫でも見事に破るから錠無しの松だ。奴も手がかりを残さなかった。」
今どこにいるかといえば
芝大造「5年前にムショに放り込んでやった。わしは手がかりなしというのが奴の証拠だと睨んでな。とことんつけてやったんだよ。」
新條強「出所してるかもしれませんよ。」
芝大造「複数なら奴じゃねえ。奴は自分の技を技術だと誇りに思ってたくらいだ。」
さてある日の夜。どこかのバーに錠無しの松こと鴨野牛松(上田忠好)と青木(三上剛)がいました。
青木「うまくやりますかねえ、バドーのロボット。」
鴨野牛松「七つ道具のナナツマンだ。きっとやるよ。あそこの金庫には密輸し損なって没収されちまった宝石や金がわんさとつまっているはず。」
牛松は高笑いし、バーのママにこう尋ねました。
鴨野牛松「あ、お姉さん、今何時?」
バーのママ「1時です。」
鴨野牛松「1時ね。じゃあ、もう一本ください。」
さて牛松がバドーに頼んだのには理由がありました。
鴨野牛松「ちくしょう。この(右)手さえ使えたらなあ。」
その頃、羽田空港の金庫にはナナツマン (声:高田竜二ではなくて矢田耕司)が侵入。牛松が用意した見取り図を元に金庫室へ侵入。途中、警備員室の前では足の裏についていた吸盤を使って天井裏にくっついて歩いて目をくらましています。音を誤魔化すために警備員室のラジオのボリュームを開け、金庫に穴をあけ、宝石を掃除機のようなもので体内に吸い込みましたが
警備員(若尾義昭)「うるせえな。静かにしろ。」
とラジオを叩くと何故か雑音発生。するとその雑音が影響し
ナナツマン「くそ、ノイズだ。」
と苦しみました。なぜ雑音が発生するのかがわかりませんが、先へ進みましょう。思わずナナツマンは金庫室の外へ出てしまいましたが、ドアを乱暴に開けた音が警備員室にも聞こえてしまい、警備員二人が廊下に出てしまいました。警備員はナナツマンに気がつき、泥棒だと捕まえようとしましたが、敵いません。先ほどラジオを叩いた警備員が警察に知らせるように指示を出しましたが、ナナツマンは警察に知らせようとした警備員を手から発射したナイフで殺害。先ほどラジオを叩いた警備員は驚きつつも警棒で殴りましたが警棒は折れてしまい、最終的にはナナツマンが発射したナイフで殺されてしまいました。
そして翌朝。羽田空港の現場で警備員の死体を見ながら
芝大造「昔の金庫破りは人殺しはしなかった。ひでえ世の中になったものだ。」
と嘆いていると新條がやってきました。
新條強「親父さん、盗まれたのは宝石だけだそうです。」
芝大造「何! 宝石だけ?」
新條強「金とか現金はそっくりそのまま残っているそうです。」
それを聞いた芝は新條と一緒に金庫室へ入りました。そして閃きました。
芝大造「待てよ。錠無しの松も宝石ばかりを狙っていた。」
新條強「その鴨野牛松なら2週間前に出所してますからねえ。やっぱりそいつの仕業ですよ。」
芝大造「よし。当たってみるか。」
と二人で出ようとした、その時、その意見に異議を唱えたものがいました。
ロボット刑事K「芝刑事。こりゃ人間の仕業ではありませんよ。」
それを聞き
芝大造「なんだって?」
怪訝に思いつつもKの話を聞く芝と新條。
ロボット刑事K「見てください。この金庫は少なくとも50万ボルトの高圧電流で解かされています。」
それを聞き
芝大造「お前、まさか、ロボットかなんかの仕業だと言いてえんじゃないだろうなあ。」
ロボット刑事K「断言はできませんが、その考えで糸口は掴めるんじゃないでしょうか。赤外線スコープ!」
確かに何者かの足跡が残っているのが見えました。
ロボット刑事K「やはり人間ではない。」
ところが
新條強「K。これは人間の仕業だよ。落ちていた見取り図から、わずかだが指紋が検出された。やっと手がかりを残してくれたってわけだ。」
新條が手に持っていたのは先ほどナナツマンが持っていた見取り図。落としていったのです。わざと残した可能性もありますが、それは兎に角
芝大造「(鑑識に)指紋の割り出しを急いでくれ。」
ロボット刑事K「いやあ、それは私が…」
芝大造「(即座に)鉄屑野郎の力は借りん。(鑑識に)おい。(新條に)お前は錠無しの松、鴨野牛松を洗ってみてくれ。(Kに)ハハハ。残念だった。ロボットじゃなくて。」
Kは立場がありません。芝は立ち去ってしまいました。さてこの報いが後に芝に降りかかることになろうとは、Kも芝も知るはずがありませんが、Kはなおも食い下がります。
ロボット刑事K「ああ、待ってください。人間の仕業だと決めるのは危険ですよ。事件の本質を見失うことになりますよ。」
芝大造「なんだと? てめえ、このわしに意見しようというのか。」
ロボット刑事K「いや、忠告ですよ。だってあまりにも非科学的なやり方だと思うんです。」
芝大造「てやんでえ、べらぼうめ。どうせこちとらポンコツよ。だからてめえみてえな鉄屑野郎と組まされてるんじゃねえか。離せよ。痛えじゃねえか。」
ロボット刑事K「すいません。」
芝大造「馬鹿力だぜ。おお痛え。」
もはやKは芝を見送ることしか出来ませんでした。売り言葉に買い言葉。芝は意固地になってしまいました。とその時、足元に何かがあることを気がついたKは赤外線スコープを使ってみました。すると
ロボット刑事K「お、足跡だ。タイヤの跡。そうか。ここから車に乗ったんだ。よし。この車をつけてみよう。」
さて新條が牛松を連れてバーに行くと犯行時刻には牛松がそこにいたと判明。バーのママがはっきり覚えていました。
新條強「随分はっきり覚えてますねえ。」
バーのママ「時間を聞かれたんで教えてあげたんです。」
アリバイは完璧です。
鴨野牛松「やっと信じていただけたようですな。」
その頃、芝は記録を調べて
芝大造「刑務所内で作業中に右手首切断。そうかい。それで仲間を集めやがったんだな。」
そこへ新條が戻っていてアリバイが完璧だったと報告。落胆する芝でしたが
鑑識課職員「見取り図の指紋と鴨野牛松の指紋が一致しました。」
それを聞き、芝と新條は外へ出ました。行く先は後でわかります。
さてKはタイヤの跡をおって工場だか採石場だかの中へ。そこでナナツマンと遭遇しました。早速戦闘開始です。しばらくブレザーを着たまま戦った後、目の色が赤になり
ロボット刑事K「ゴー!」
展開はや。しかし、逃げられてしまいました。
その頃、牛松の家では牛松と青木が次の狙いのツタンの王冠について話していました。ブルームーンという宝石がついた王冠です。
青木「やるんですかい?」
鴨野牛松「今までのはこれをやるためのリハーサルよ。」
そこへやってきたのは芝と新條。見取り図に指紋がついていたと聞くや否や牛松と青木は逃走。ナナツマンまで現れました。逃げる牛松の真ん前に芝登場。
芝大造「さあ、おとなしくお縄を頂戴しろ。」
とそこへ現れたのがナナツマン。
ロボット刑事K「あ、危ない。」
ナナツマンの攻撃から芝を庇ったのですが、その隙を突いて牛松と青木は車に乗って逃げてしまいました。それを見て
芝大造「このロボット野郎。逃げちまったじゃないか。鉄屑野郎め。」
さてKはナナツマンを追跡。多摩川の岸でナナツマンと格闘。
ロボット刑事K「やはりバドーの犯罪ロボットの仕業だったな。」
またKの目の色が赤くなり
ロボット刑事K「ゴー!」
戦闘開始。今回は何度もブレザーを脱ぎます。それにしてもよく橋の手すりの上の立って蹴ることができますねえ。それだけでも見応えがあります。さて不利とみたのかナナツマンは右手から白い液体を噴射。Kはまともに浴びてしまい
ロボット刑事K「目が。目が見えない。」
ナナツマンは逃げてしまって、CM挿入です。
CMが明けると特別科学捜査室で牛松が次に狙うツタンの王冠の写真を芝と新條とKが観ています。東都美術館でツタン王国美術展が開かれるので、展示されるのです。
芝大造「冗談じゃねえ。また錠無しの松が…」
新條強「いい機械じゃないですか。」
さて東都美術館(ロケ地は聖蹟記念館)は警戒厳重。ハツカネスミにも反応する警戒装置がある上にツタンの王冠の特別展示室には窓がなく、忍び込むことは全く不可能。
芝大造「まず完璧な警備網だな。」
とそこへやってきたのは地獄耳平。「トクダネでっせ。」と持ってきた情報は
地獄耳平「王冠を狙ってる奴がいるんですよ。」
芝大造「錠無しの松だろう。」
地獄耳平「あれ? どうして知ってるんです?」
芝大造「何年デカをやっていると思うんだ。」
地獄耳平「さすが。」
芝大造「そこらのロボット野郎と一緒にされてたまるかい。」
それを聞き
ロボット刑事K「お言葉ですが人間だけと決めて警戒してるととんでもない事になりますよ。」
とKは言ったのですが
芝大造「星をとっ捕まえりゃ良いんだろ、とっ捕まえりゃ。」
やけに意固地になっています。
さて牛松は自動車の中で
鴨野牛松「人を殺した上に見取り図まで落とすなんて。全くドジなロボットだ。」
すると
バドー首領「心配するな。計画通り君達は美術館に忍び込むのだ。そして捕まるが良い。」
さらに
バドー首領「君達は留置場の中にいて王冠を盗む事になるのだ。アリバイは完璧だ。」
それを聞き
鴨野牛松「ああ、なーるほどね。」
その夜。牛松と青木は東都美術館に侵入。特別展示室にも侵入しましたが、警備装置が作動し、柵が降りてきて閉じ込められてしまいました。
芝大造「ふふふ。錠無しの松が錠有りになったなあ。」
落胆する(?)牛松。芝大造は勝ち誇ってこう言いました。
芝大造「おい、K。よく見ろ。ロボットかどうかな。」
芝は高笑い。そして芝は新條とともに帰宅しました。
芝大造「さあ。乾杯だ、乾杯だ。新條、今晩の酒は美味いぞ。」
なんて上機嫌。そこへKがやってきました。
芝大造「なんだ。まだ文句があるのか。」
ロボット刑事K「牛松は残っていてもまだ主犯のロボットは残っています。警戒を続けるべきですよう。」
芝大造「いい加減に勘弁してくれよ、K。口を開きゃロボット、ロボット。もうたくさんだ。とっとと失せろ。さ、新條。」
新條強「はい。」
芝はKの話に耳を貸そうともせず、そのまま食堂に入ってしまいました。心底落胆したKの目の色は青くなりましたが
芝奈美「ごめんなさいねえ、K。」
ロボット刑事K「いや、僕はなんとも思ってませんけど。それじゃあ。」
そうは言ったもののKはジョーカーを走らせ海岸へ。青い目のままマザーを呼びました。
ロボット刑事K「マザー、いつも芝刑事を怒らせてばかりいるんだ。僕はロボットなので人間とやっていけないのだろうか?」
するとマザーは消えてしまいましたが
ロボット刑事K「自分の思い通りの道を進め。マザーはそう言いたかったんだ。」
迷いが解けたのかKの目の色が青から黄色に戻りました。
ロボット刑事K「そうだ。僕は僕なりの捜査活動をすればいいんだ。」
さてここからKの反撃が始まる、というか、Kは捜査活動を再開させます。上記のセリフ、実はKだけに当てはまることではないのですが、それがわかるのは次回の話。このまま先へ進みましょう。芝にも芝のやり方があるのです。
その頃、東都美術館では空から気球に乗ってナナツマンが来襲。警備員は屋根からナナツマンが侵入した事には気がついていません。ナナツマンは天井を壊し、ケースの上の部分にも穴をあけ、王冠を吊り上げてしまいました。Kが駆けつけた時、王冠は既に盗まれた後。警備員もやっと盗まれたことに気がつきました。
ロボット刑事K「しまった!」
そうとも知らずに芝家では呑気にも
芝大造「いや、狙い通りに事が運ぶと本当に嬉しいねえ。」
新條強「全くです。」
と言っている始末。そこへ電話がかかってきました。その内容は当然
芝奈美「王冠が…」
それを聞いた芝は電話をかわり
芝大造「もしもし。盗まれた!」
ガーン! 芝の顔色が変わりました。
翌朝。Kはジョーカーを走らせ、ナナツマンの乗る気球を発見。ジョーカーは空を飛び、気球の風船部分から気体を抜いてしまうことに成功。気球は地上に落ちてしまい、Kとナナツマンの戦闘開始です。Kの目の色が赤に変わり
ロボット刑事K「ゴー!」
ブレーザーを脱いで本格的に戦闘開始。ナナツマンはKの頭に手から衝撃波(でしょうね)を撃ち込み、Kの電子頭脳に衝撃を与えましたが、その時、ノイズが発生。ナナツマンの電子頭脳にも狂いが生じてしまいました。いち早く立ち直ったKは反撃開始。ロボット破壊銃でナナツマンを倒しました。が、即座にコワシマン (声:塩見竜介ではなくて肝付兼太)が登場。Kは全然歯が立ちません。
野田圭一のナレーション「怪盗ロボットナナツマンを倒したKの前に、またまた現れた破壊ロボットコワシマン。ロボット刑事Kは果たしてこの強敵を倒す事ができるであろうか?」
次回へと続きます。
さて次回は今まで科学捜査を否定しまくってきた芝大造が岐路に立たされ、悩みまくります。上原正三は主人公と対立する側にも焦点を当てて話を書いていたのです。話のヒントは既に書かれていますが、科学捜査が万能かどうかもさりげなく問われた内容になっています。