今回はロボット刑事 第26話「バドー火星に死す!!」(脚本:伊上勝、監督:内田一作、助監督:萩谷泰夫、技闘:三隅修 (C) 東映)を紹介しましょう。第1話と第2話を書いた伊上勝が脚本を書いています。一応、今までの話を踏まえた構成にはなっています。
冒頭、いきなり映るのは川崎にある長沢浄水場…と言うのはロケ地で、物語の中では
野田圭一のナレーション「中央原子力研究所。ここで新しく発明した原子力限定機。これをバドーが狙い、脅迫状を送った。芝刑事はこれを守るため、限定機を保管し、某所に隠した。」
そして中央原子力研究所から歩いて出てくる芝大造。しかし、何者かが狙っているようです。周りが真っ暗になり、人魂がいくつも飛んできました。怪談話なのでしょうか?
芝大造「何者だ?」
その質問に答えは返らず、人魂はなおも芝に近づいてきます。そして芝は倒れてしまいました。即座に現れるバドーのサイボーグ工作員3人。先に花火(?)がついている金属の筒を持って、倒れている芝に近づきます。そして芝をそのまま連れて行ってしまいました。
次に映るのは今の中央大学多摩キャンパスの下を通るトンネル。ジョーカーが出て来ました。乗っているのはKと新條。Kは芝の異変を察知。Uターンして芝のいるところへ向かおうとしたのですが、
新條強「K、あれはなんだ?」
新條が見たのは空飛ぶ大きな歯車。
新條強「バドーの怪ロボットか?」
新條、それは正解です。それは後でわかります。さて空飛ぶ歯車はジョーカーの後ろに周って追いかけているような動きを始めました。Kはジョーカーをバックさせて空飛ぶ歯車より後ろに行きました。新條はKにジグザグ運転するように指示を出しました。しばらくジグザグに走った後、ジョーカーは停車。新條とKはジョーカーを降りて逃げる事にしました。歯車は地上に降り、その正体であるハグルマン(声:加藤修ではなくて矢田耕司)になりました。そして新條とKの進路を塞いで高笑いします。
ロボット刑事K「貴様、バドーロボットか?」
ハグルマン「如何にも。バドー最強、いや、世界最強のロボット、ハグルマンだ。」
伊上勝脚本なのでハッタリかましたセリフです。でその声はやはり矢田耕司さんの声ですね。
ロボット刑事「来い。」
ハグルマン「行くぞ。グルマ!」
と言うわけで格闘開始。ハグルマンはまた大きな歯車になってKに飛びかかりました。まともに受けて倒れるK。しかし、ジャンプして体勢を立て直しました。ハグルマンも人間のような姿に戻りました。
ハグルマン「待て。お前の動きを止めてやる。」
Kは走ってトンネルの中に入っていきます。それを走って追いかけるハグルマンはトンネルの中で
ハグルマン「待て!」
「待て!」と言われたからなのか、Kは立ち止まって振り返りました。そしてKはジャンプしましたが、トンネルの天井に頭をぶつけそうになりました。うーむ。これ、真面目に映像化されています。落ちてきたKを蹴り倒すハグルマン。
ハグルマン「お前の戦いぶりは全て知っている。破壊するには惜しい相手だ。」
するとKは立ち上がってこう言いました。
ロボット刑事K「それがどうした?」
ハグルマン「意地を張らずにバドーにつけ。俺と仲間になろうではないか。」
この突飛な提案の意図を理解できずKは尋ねました。
ロボット刑事K「なんだと?」
ハグルマン「もはやこの地球はバドーのものだ。お前一人意地を張っても始まらん。」
それを聞き
ロボット刑事K「言うな。俺がそんな口車に乗ると思うか。」
かくして格闘再開。しばらく殴り合った後、突然、ハグルマンは走ってトンネルの外へ出ました。当然、走って追いかけるK。ハグルマンはジャンプしてトンネルの上の辺りに立ちました。
ハグルマン「よーし。これだけ時間を稼げば任務は終わった。」
ロボット刑事K「時間稼ぎか。」
ハグルマン「怒るな、怒るな。さっきの事は考えておけ。グールマー。」
ハグルマンは歯車になって飛び去ったのでした。それにしても今までのバドーのロボットは「グールマー」なんていう鳴き声みたいなものは言っていなかったような気がしますが、これは脚本に書かれているのかどうかまでは知りません。『仮面ライダー』の怪人みたいです。
さて次の場面は芝が大の字にされて、どこかで寝かされているところ。ロケ地は同じ長沢浄水場のような気もしますが、よく知りません。
バドー首領「芝大造。よく聞け。」
その声を聞き、芝は目を覚ましました。
バドー首領「バドーは今、水の水素原子を核爆発させる。」
そんな事ができるのかどうかはよく知りません。なお、芝は額から血を流しています。
バドー首領「日本中の水と言う水も、世界に繋がる海水の水も、全て一瞬にして大爆発させる最終兵器を発明した。」
驚く芝。新條が後ろから走ってくるのが見えます。
バドー首領「この目でゆっくり確かめるがいい。」
すると芝の目の前にある貯水池に何かが落ちました。新條は芝と合流。そして芝と新條が見たのは大爆発。その爆風を受けて芝も新條も倒れてしまいました。
さて、その頃、警視庁の特別科学捜査室にいた奈美と由美のところには、芝と新條が怪我をしたという連絡が来ていました。それを告げていたのは警官。警官は病院に案内すると言って、奈美と由美を連れ出しました。そして病院に到着したのですが、中に入るや否や、バドーのサイボーグ工作員が天井から飛び降りました。警官は倒され、奈美と由美は拉致されてしまいました。騒ぎを聞きつけたのか、頭に包帯を巻いた新條が駆けつけ、警官から話を聞きました。新條は二階から飛び降りてバドーのサイボーグ工作員に襲いかかりましたが、ハグルマンも加勢するなどしたため
ハグルマン「早く行け!」
と言われてサイボーグ工作員が奈美と由美を載せて去るのを虚しく見送る羽目に陥ったのでした。なおも新條はハグルマンと戦いますが、全く歯が立ちません。一方的にのされています。とそこへKが駆けつけました。
ロボット刑事K「新條さん、由美ちゃんと奈美さんを。」
Kがハグルマンと格闘開始。ハグルマンを掴まえたままジャンプしてKは別の場所で戦います。Kの目の色が赤くなり、帽子を脱ぎながら
ロボット刑事K「行くぞ。ブローアップ!」
ブレザーも脱いで格闘開始。
奈美と由美を乗せたワゴンをバイクに乗って新條が追いかけます。ちなみに新條はノーヘルです。滝和也もノーヘルが多かったですね。
さてハグルマンはまた歯車状に変形。
ロボット刑事K「来い。」
その頃、新條はバイクをジャンプさせてワゴンの屋根の上に乗ってしまいました。そしてワゴンの屋根の上からサイボーグ工作員を倒して行きます。
Kはジャンプしてハグルマンに立ち向かいます。ハグルマンは手足の生えた姿に戻っています。『柔道一直線』の地獄車のような動きをKとハグルマンがした後で殴り合いになりました。Kが倒れてしまうと
ハグルマン「グルマー!」
と叫んで歯車状になり、そのまま転がってKを押し潰しました。そしてまた戻ってKを再度押し潰しました。さらにまた転がって押しつぶし直そうとしたハグルマンでしたが、今度は立ち上がったKに受け止められてしまい、そのまま投げられてしまいました。
一方、新條はワゴンに乗っていたサイボーグ工作員を全員倒しました。そしてワゴンを止めて奈美と由美を救出しようとしたのですが、載せられていたのはなんと人形の首。
新條強「くそう。いつの間にすり替えやがった。」
ちょうどその頃、ハグルマンはジャンプ。
ロボット刑事K「待て。逃げる気か。」
ハグルマン「逃げやせん。俺の役目は終わったのだ。」
病院の屋上に立ってそう宣言するハグルマンの言葉を聞き
ロボット刑事K「なんだと?」
ハグルマン「芝刑事の娘誘拐作戦は完了した。」
ロボット刑事K「しまった。」
ハグルマン「また会おう。ハグールマー。」
Kは歯車状になって飛んでいくハグルマンを虚しく見送るのでした。
新條とKは芝に奈美と由美が連れ去られた事を報告しました。新條とKが謝罪する最中、ベッドに寝ていた芝のところには電話がかかっていました。
芝大造「え? バドーから長官に…え? 日本国の全面降伏を要求? そんなバカな。は。確かにこの目で見ました。確かに強力なものです。」
おそらく芝が見た兵器の話も出ているのでしょう。
芝大造「すぐに非常線と広域捜査をお願いします。」
そう依頼して芝は電話を切りました。そして奈美と由美がさらわれた件で謝る新條とKに対し
芝大造「良いんだよ。気にするな。あの子達にはいつも言ってある。いつどんな目に遭っても見苦しい真似だけはするなとな。」
とその時、バドー首領の声が聞こえてきました。
バドー首領「芝大造。わかるか。このわしが今何をしようとしているか。お前の隠した原子力限定機を貰い受けたい。あれがあれば、この大発明を自由に使える。わしは今、お前を殺すこともできる。」
それを聞き
新條強「黙れ。」
バドー首領は話を続けます。
バドー首領「しかし、わしは殺さん。全世界を火の海にするかどうか、それはお前の考え次第だ。お前はこの苦しみに耐えられるか。」
怒った新條は
新條強「やかましい。」
と叫んで花瓶を投げつけましたが、なんと花瓶に入っていた水から火炎が生じました。ここでCM挿入です。
CM明けると奈美と由美が拷問されている場面。サイボーグ工作員が何人か立っていますが、中央にはバドー首領(演じているの富川澈夫だが声は川久保潔のまま)がスリガラス越しに立っています。
バドー首領「苦しめ。苦しめ。バドーに逆らう者がどんな目に遭うか。お前達を誰が助けに来るかな?」
バドー首領は高笑い。奈美も由美も芝や新條やKが助けに来ると言い返しましたが、バドー首領はその答えを一笑にふして
バドー首領「そうかな? 世の中、そう甘くはない。」
その頃、Kと新條はジョーカーに乗って空から捜索していました。バドーの基地さえ探し出せればという新條に
ロボット刑事「中島巡査の服についていた泥を分析してみれば。」
と言いました。新條はそれを聞いて本庁に連絡しました。
その頃、都内の住宅では水道の蛇口を捻ると水ではなく火炎が出てくる事件が続発。病室にかかってきた電話で芝はそれを知り
芝大造「何? 都内全域じゃないか。至急、都民に水道の使用を禁止するように。」
と言って、電話を切りました。
芝大造「バドーの奴。」
芝は無理矢理病室を出てスーツを着て外出。高台の麓を小田急の電車が走るのが見えるところを歩いていました。バドーのカードが電柱(木製)についていました。芝は懐から奈美と由美が写っている写真を取り出して、それを見ながら言いました。
芝大造「奈美。由美。今度こそ、この俺もおしまいかもしれん。俺はバドーと話し合ってみる。そしてダメならその時は…。お前達、無事で帰れたら。」
そして写真を懐にしまってバドーのカードのボタンを押しました。するとハグルマンが現れました。
ハグルマン「呼んだのは、お前か、芝大造。」
芝は頷きました。
芝大造「お前達の首領に会いたい。」
ハグルマン「いよいよ、決心したか。連れて行け。」
サイボーグ工作員が4人やってきて、芝のところに行きました。
その頃、ジョーカーは空を飛んでいました。
ロボット刑事K「間もなく目的地です。」
新條強「きりがさきとは気がつかなかったなあ。」
ロボット刑事K「中島巡査のお手柄ですよ。バドー工作員に蹴られた時の泥でわかったんですから。」
どうやらバドーのアジトを突き止めたようです。そこは灯台でした。ちょうど芝が連れ込まれたところでした。奈美と由美が寝かされて拘束されたままです。灯台のそばではKと新條が別れて別行動。Kの前にハグルマンが現れました。ハグルマンと戦うK。戦いながら、こう言います。
ロボット刑事K「俺の体と引き換えに芝刑事親子を返してくれ。その方がバドーにとって有利なはずだ。原子力限定機がなくてはあの最終兵器も使えない。」
ハグルマン「なんだと?」
ロボット刑事K「全世界の水を爆発させればバドーも一緒に死ぬ事になる。」
ハグルマン「ふん。バドーにそんな抜かりがあると思うか。地球などバドーにとっては一つの星に過ぎないのだ。」
ロボット刑事K「何?」
一気に話が壮大になりました。とその時、警報が鳴りました。
ハグルマン「お前はバカだが、素晴らしい奴だ。もう会うことはないと思う。ハグルマン!」
どういう事かと思う間も無く、ハグルマンは歯車状になり、飛びました。Kはジャンプしましたが、歯車に跳ね飛ばされました。ハグルマンの歯車はそのまま灯台のベランダの上に乗って転がります。ちょうどその頃、新條も灯台の麓に到着。投げ手錠を使ってよじ登ります。
ロボット刑事K「新條さん。」
新條強「頼むぞ、K。」
新條もベランダに到着。その途端に灯台の根本が揺れました。なんと灯台そのものがロケットとなって飛んでいったのです。Kはマザーを呼びました。即座に
霧島サオリ「K、お乗りなさい。」
そしてKはマザーに乗り、灯台を追いかけました。灯台は火星へ向かっているようです。新條は灯台の中へ潜入することに成功していました。窓から外を見て、マザーが追ってくるのを新條も見ました。マザーの中では
ロボット刑事K「マザー、弟さんだから見逃すのですか?」
霧島サオリ「K、あなたには大変苦労をかけました。弟の事は、ジョージの事は、私が始末します。」
霧島サオリは覚悟を決めたようです。ジョージに呼びかけました。
霧島サオリ「ジョージ、ジョージ、返事をしなさい。ジョージ、ジョージ。」
しかし、返事はありません。ただ灯台は向きを変えました。今度はKが呼びかけます。
ロボット刑事K「バドー、聞け。ここにいるのは、お前のお姉さんの霧島サオリさんだ。無駄な真似はやめろ。」
するとジョージ(演じているのは富川澈夫だが声は川久保潔のまま)は不敵に笑った後、こう言いました。
霧島ジョージ「攻撃開始。」
なんと灯台の先端からミサイル攻撃(でしょう)。Kは決断しました。
ロボット刑事K「もう我慢できない。やります。」
灯台は火星に着陸。マザーも灯台のすぐそば、すなわち火星に着陸。新條は灯台の中でサイボーグ工作員と格闘。そして新條は芝達が閉じ込められている部屋のそばに辿り着きました。おや、3人とも拘束されてはいません。新條は部屋に突入。と同時にサイボーグ工作員も追いかけてきましたが、新條は彼らと格闘。ドアを閉めて立て篭もりました。と同時にサイボーグ工作員の背後にKが登場。灯台に突入したのです。既にブレザーを脱いだ状態です。Kは中に入って新條に告げました。
ロボット刑事K「新條さん、隣に脱出カプセル室がある。それでみんな一緒に逃げてください。外へ出ればマザービームが拾ってくれますから。」
なんとも目まぐるしい展開。本当に伊上勝の脚本は紙芝居のような作風です、息子の井上敏樹が評したように。というわけで新條は芝達を連れて脱出。最終的には芝達と新條はマザーに収容されました。さてKはサイボーグ工作員を倒した後
ロボット刑事K「バドー。バドーはどこだ?」
とバドー首領を探し回りましたが現れたのはハグルマン。
ハグルマン「K。行くぞ。」
というわけでKとハグルマンは格闘開始。なぜか火星の大地…という設定ですが、おそらくいつもの三栄土木か生田オープンでフィルターをかけて撮影したのでしょう…に戦場が移ります。
ロボット刑事K「火星に重力と気圧を合わせないと行かん。」
外に出たから、そうしたのでしょう。後は肉弾戦が延々と続いた後
ロボット刑事K「Kミサイル。」
ただし、ハグルマンには当てませんでした。周りで爆発しただけ。
ロボット刑事K「どうだ。見たか。」
威嚇しただけでした。ただこれは効いたようで
ハグルマン「K。見事だ。世界一のロボット。俺は、俺はバドーとともに死ぬぞ。さらばあ。」
そう叫んだハグルマンはジャンプして灯台に戻り、
霧島ジョージ「来るな。来るな、ハグルマン。来るな。来るな。」
そう言って螺旋階段を後退りしながら登るジョージに対し、ハグルマンは近づいて行きます。そしてジョージは部屋に入りましたが、ハグルマンも中に入り
ハグルマン「お前を地獄への道連れにしてやる。」
霧島ジョージ「やめろ、ハグルマン。」
この時のジョージの声は富川さん自身のような気がしますが、これだけではよくわかりません。ジョージは手に持った鞭でハグルマンを何度も叩きましたが、ハグルマンにそんなものが効くわけがなく
ハグルマン「バドー、最期の時だ。」
そのままジョージと共に自爆。モニターテレビで様子を見ていたサオリは思わず顔を覆ってしまいました。そして灯台も爆発。バドーはこうして滅んだのでした。
事件解決して、芝、奈美、由美、新條、そしてKは屋上にある屋外の食堂にいました。なんと芝はこう言いました。
芝大造「K、いつまでも一緒にやってくれよな。」
こんな言葉が出るとは第1話の時点で芝自身も思っていなかったに違いありません。芝はKを信頼するようになったのです。
芝奈美「お父さん、何を今更。」
芝由美「もうガミガミ言わない?」
こう言われて芝は照れながらも
芝大造「はい。」
新條はこう言いました。
新條強「いやあ、早く元気になってガミガミ言ってもらった方が良いです。なあ、K。」
それを受けてKはこう言いました。
ロボット刑事K「そうです。そうですとも。それじゃあ、(ビールが入ったジョッキを手に持ち)乾杯。」
乾杯する一同。皆、笑っています。ビールを飲もうとしたKを見て芝は気がつきました。
芝大造「K。お前、飲めるのか?」
芝も奈美も由美も新條も思わず立ち上がり
ロボット刑事K「え? そうか。」
思わず頭をかくKだったのでした。こうして『ロボット刑事』は終わったのでした。
まあ伊上勝の脚本なので面白そうな場面を並べただけですが、最終回にふさわしい話ではありました。なお原作萬画は石ノ森章太郎作品らしい悲劇的な最後を迎えますが、それについては別の機会で取り上げるかもしれません。