今回はロボット刑事 第9話「電気椅子スパイ!!」(脚本:上原正三、監督:折田至、助監督:平山公夫、技闘:風間健 (C) 東映)を紹介します。前後編の前編です。この前後編、バドーの契約者側もひねりが効いた構成になっています。
野田圭一のナレーション「葉山博士(田畑孝)とそのグループは、これまでのSSTマッハ3を二倍半も上回るマッハ8で飛ぶ事のできる超音速旅客機あすか号の設計図を完成した。そして警視庁特別科学捜査室に葉山博士とあすか号の設計図を守れとの特命が下った。」
そしてところ変わって今度は晴海辺り。
小田(北町嘉朗)「そのバドーってのは本当に信用できるのかね?」
小田物産社員(鹿島信哉)「は。バドーに不可能の文字はないと豪語しています。」
小田は小田物産という会社の社長。おおよそ察しがつくと思いますが、今回の契約者はこの男。少なくとも前編では。こういう書き方をしているのは(省略)。さて小田物産に即座にコシカケマン(声:大竹宏ではなくて細井重之)が登場。変な椅子の姿になっています。
小田「なんだい、この腰掛けは。」
すると
バドー首領「バドーのスパイロボット、コシカケマンだ。」
そう言われても「何それ?」という感じの契約者(予定)2人。
小田「コシカケマン?」
コシカケマンは立ち上がり
コシカケマン「よろしく。」
その声はやはり大竹宏さんの声ではありません。
小田「こんな奴に設計図が盗めるのかい?」
バドー首領は話を続けます。
バドー首領「それよりも小田、盗んだ設計図は5億円で売れる筈だな。その半分、2億5千万円はバドーがもらう。」
なおも小田は怪訝な感じで
小田「ああ。本当に盗めたらな。」
とりあえずバドー首領は話を進めます。
バドー首領「まずは契約書にサインを。」
コシカケマンが胸から契約書を印刷して(?)出しました。小田も社員も怪訝な顔ながら、小田は契約書にサインするのでした。
さて研究所にはコシカケマンが椅子の形をしたまま運び込まれました。運び込んだのは運送業者に化けた小田と小田物産の社員。ちょび髭を生やした警備員が「ずいぶん変わった椅子だなあ。」と怪しみましたが
小田「葉山博士のものですよ。何しろ日本の頭脳ですからね。このくらいの奴に腰掛けてもらわなくちゃ。」
この言葉に騙されて、コシカケマンは運び込まれました。さて出まかせかと思ったらそうでもなかったのが後でわかります。遅れてやってきたKも運び込むところを目撃しましたが、運び込まれた椅子がコシカケマンであることまでは察知できませんでした。
その頃、芝と新條は葉山博士の自宅を警備していました。芝は明らかに不満そう。
芝大造「全く馬鹿馬鹿しい話だ。盗まれもしねえ設計図を見張ったり、科学者のお守りをしたり。だいたいデカってのは、ホシを追い回すのが商売だ。」
すると新條は
新條強「でもね、親父さん。マッハ8のSSTだなんて空の革命ですよ。各国のスパイが狙っていることも事実らしいし、こいつは意義ありですよ。」
その直後にジョーカーが到着。芝、新條、Kが葉山博士の家に入り、Kが椅子を注文したかどうか確認すると
葉山博士「え? 届きましたか。」
ロボット刑事K「はあ、先ほど。」
葉山博士「昨年から注文していた椅子なんですよ。何しろ、予算がどうのとうるさくてねえ。」
椅子を注文していたのは事実だったようです。ただあんな悪趣味な椅子かどうかはよく聞くとわかりません。それは兎に角、葉山博士は右脚が悪いのか、杖をついています。そして葉山博士の息子の良一(矢崎知紀)はこんなことをKに頼みました。
葉山良一「モデルになって欲しいんだ。」
その目的は
葉山良一「宿題を作りたいんだけど、モデルがいないから上手くできないんだ。」
それを聞き
葉山博士「それはいかん。刑事さんは私達を守りに来ているんだよ。」
と公私混同を諭そうとしましたが
ロボット刑事K「いやあ、構いませんよ。良一君、私で良かったらどうぞ。」
と快諾したので良一は宿題の粘土像を作るのでした。
その夜。
バドー首領「コシカケマン。活動を開始せよ。」
椅子に化けていたコシカケマンは研究所内部で活動開始。
コシカケマン「わかりました。」
直後に警備員が入ってきましたが
警備員「おかしいなあ。誰が(椅子を)動かしたんだろう。まあ、いいや。」
とコシカケマンの化けた椅子に座ってタバコを吸い始めましたが、コシカケマンは電気椅子と化して警備員を感電させてしまいました。死んだ(?)警備員をそのまま置き去りにし、コシカケマンは保管庫に入れられていた設計図を入手。撮影しました。脱出しようとした時に遭遇した、先ほどのちょび髭を生やした警備員も倒して小田物産へ直行。設計図を印刷して出して小田達は大喜びしたのでした。
小田「流石バドーのロボットだ。仕事に抜かりはねえぞ。」
小田物産社員「5億に貰えるんですねえ。」
小田「そうだとも。これで俺達は億万長者だあ。」
と大喜び。
その頃。葉山博士は良一の作った粘土像を横に切って二つにし、何かを埋め込んだ後、元に戻していました。良一は眠っているので、その事は知りません。
翌朝。日本航空機研究所では警備員殺害事件を芝と新條、そしてKが調べていました。廊下の死体はナイフで一突き。研究室の死体は
芝大造「こっちのガイシャは無抵抗のまま黒焦げだ。タバコに火をつけて一服しながら。どうもわからねえ。」
その時
ロボット刑事K「昨日の椅子がない。もしや。」
そこで赤外線スコープで調べてみると車輪の跡が。しかも保管庫の方へと向かってついています。
ロボット刑事K「あの椅子がロボット。きっとそうだ。芝刑事。これは人間の仕業ではありません。」
この飛躍した意見に対して
芝大造「またかよ、K。」
なおも自説を説明するK。
ロボット刑事K「昨日運び込まれた椅子がないんですよ。」
芝大造「バカ。椅子が人殺しをするか。」
ロボット刑事K「しかし、もしかしてバドーの。」
芝大造「お前、勘ぐりすぎなんだよ、いつも。あの椅子はなあ、博士が去年から注文しておいた椅子なんだ。」
芝の言う事も一理あるのが困り物。さて設計図は置かれたままでしたが
葉山博士「いや、動かされています。おそらくスパイ。」
雲行きが怪しくなってきました。盗まれたかどうかが気になるところですが
葉山博士「心配は要りません。これは偽物なんですよ。」
どう言う事なのでしょうか?
葉山博士「こう言うことを予想してすり替えておいたんですよ。」
一応、本物のありかを芝が尋ねると
葉山博士「それは誰にも言えません。マッハ8は僕の命ですからねえ。」
じゃあ、一安心と思いきや
ロボット刑事K「でも、これが偽物だとわかると敵はあなた自身を襲いますよ、きっと。」
新條「良一君が誘拐される恐れもありますねえ。」
芝も頷き、Kに良一のボディーガードをするように命じました。
さて良一の通う小学校の前ではダンボールで作ったロボットに扮した人(増岡弘)が交通整理をしていました。ロケ地は川崎市立西生田小学校で、東映生田スタジオのすぐそばです。交通整理の人は本物のロボットが来たので驚き、学校ではKは人気者。Kは照れてしまいました。担任の先生(本田圭子)も良一が作った粘土像の出来をこう言って褒めました。
先生「なるほどよく特徴を掴んでるわ。モデルが良かったのね。」
そう言われてますます照れるKでした。
その頃、小田物産では設計図を売りつけた相手から「偽物」だという抗議の電話がかかっていました。小田はやってきたコシカケマンに
小田「やいやい。このドジロボット。何がバドーのロボットだい。偽物なんか掴まされやがって。」
当然驚くコシカケマン。
バドー首領「それはバドーの初めての失敗だ。葉山にいっぱい食わされたんだな。だが今度は失敗しない。コシカケマン、なんとしてでも設計図を手に入れるのだ。失敗は許さんぞ。」
その頃。研究所から戻る葉山博士を送った芝と新條は地獄耳平が覗いているのに気づき、その目的を尋ねました。
地獄耳平「いやあねえ、本物の設計図がどこに隠してあるのか、その謎を解きたくてねえ。」
芝大造「お前には関係ないことだろう。」
地獄耳平「そうは行きませんや。コンコルのざっと3倍の速さとくらあ、アメリカ、イギリス、ソ連、フランス、世界の国々がそれこそ何千億積んだって欲しいって言われるくらいですからねえ。ええ。」
「ソ連」と言うのが当時の情勢を偲ばせます。とそんなことを言っているところへパンスト被った二人組の強盗が車に乗ってやってきました。マシンガンを撃ちまくります。もちろん、小田と小田物産の社員の犯行。強盗団は葉山を連れ出そうとしましたが、芝と新條が体をはって、これを阻止。強盗団はトンズラしました。パトカーで追跡しようとしたものの、タイヤを撃ち抜かれて、それはかなわず。
芝大造「このうちも安全な場所じゃなくなったなあ。」
そんなことがあったとは知らず、Kは小学校で野球をして遊んでいました。先ほどの交通整理の人が何故か審判を務めたりしています。しかし、そこへコシカケマンが登場。良一を捕まえてしまいました。
葉山良一「Kさーん。」
その声を聞いたKが球を投げてぶつけるとコシカケマンは思わず手を離してしまい、良一は解放されました。良一の保護を先生に頼んでKはコシカケマンと格闘開始。当時は第二次ベビーブームと重なっていたのでプレハブの校舎も映っています。格闘の途中でコシカケマンは撤退。ここでCM挿入です。CMが明けると先生が仕事から帰るところ。
コシカケマン「先生、お茶でも飲みませんか?」
このナンパに先生が応じる筈がないですが、先生はコシカケマンに捕まってしまいました。
先生「誰かあ。誰か来てえ。」
そこにジョーカーが通りかかりました。コシカケマンは椅子になり、先生を座らせたまま走行して逃走。
ロボット刑事K「良一君、車を離れるな。」
Kはコシカケマンを追跡し、ジョーカーから離れてしまいました。しかし、これは罠。コシカケマンがジョーカーからかなり離れた頃合いで先ほどの強盗団は良一の拉致に成功。Kがコシカケマンから先生を助け出した時に良一の悲鳴が聞こえ、ジョーカーに戻ってみれば良一の姿はなし。
ロボット刑事K「罠だったのか。」
その夜。芝の家に知らせに行ったKに怒る芝大造。なお葉山博士も保護されています。
芝大造「馬鹿野郎。なんて間抜けなんだ、お前は。」
ロボット刑事K「すいません。」
芝大造「すいませんで済むと思っているのか。」
芝奈美「お父さん、誰にだってミスはあるわよ。」
一応、芝の言い分は
芝大造「わしはミスを怒っているんじゃない。ここへおめおめと戻ってきた鉄屑野郎の根性が気に入らねえんだ。どうしてとことん追い詰めて取り戻そうとしねえんだ。」
ロボット刑事K「申し訳ありません。これから直ちに追いかけます。」
すると
新條強「無駄だよ、K。こうなりゃ敵の出方を待った方が良い。」
どうすれば良いんですかねえ。とりあえず、Kは新條の意見に従ったようです。さて芝家に電話がかかってきました。出たのは由美でしたがなんと相手は葉山を指名。由美は葉山と電話をかわってしまいました。「言う通りにする」と答える葉山を見て、電話が切れた後
芝大造「奴らからですね。」
葉山は頷きました。葉山は出て行きました。
新條強「俺、ついて行きます。」
芝は頷きました。Kは入口の前で立ったまま。
葉山博士「一人で来いと言ってます。」
葉山は出て行こうとしましたが
新條強「それではみすみす設計図を奪われに行くようなものです。命なんでしょう、あなたの。」
それに対する葉山の答えは
葉山博士「命より大切です、良一は。」
この言葉に新條も芝も返す言葉はなく
葉山博士「お世話になりました。」
と出ていく葉山のポケットにKはいつもの発信機を入れました。悔しがる芝に
ロボット刑事K「芝刑事、諦めることはありませんよ。」
さて小田物産では良一が連れてこられ、葉山博士がコシカケマンが変形した椅子に座らされていました。
コシカケマン「では始めよう。」
電気を流して拷問を始めるコシカケマン。苦しむ葉山。良一も怒りますが小田と小田物産の社員に捕まえられているので何もできません。
コシカケマン「さあ答えるのだ、葉山博士。本物の設計図はどこに隠したのだ。答えなさい。」
苦しみ悶える葉山博士。何故かアップになる、良一が宿題で作った粘土像。と言うことは? 先へ進みましょう。
小田「答えなければ悪い方の脚を痛めつけてやる。」
小田は右脚を杖で殴りました。ついに
葉山博士「良一、ロボット。」
ところがそう言われても小田には理解できません。
小田「良一? ロボット?」
おうむ返しに言うだけ。
小田「良一が持っているのか?」
葉山は首を横に振りました。
小田「ロボットって言うのは、Kの事か?」
葉山博士「違う。」
小田「答えろ。」
葉山博士「いやだ。」
これにブチ切れた小田は
小田「電圧を上げろ。」
良一が「やめてくれえ」と叫ぶ中、また電気が流されて葉山博士は苦しみます。
その時、ジョーカーが葉山博士の発信機を頼りにやってきました。発信機かと思ったら
ロボット刑事K「葉山博士のポケットの装置は電波を跳ね返すだけです。それをこのレーダーでとらえますから。」
発信機だと思っていたのですが、違うようです。それは兎に角、ジョーカーは葉山博士の居場所を特定。さて小田物産では
コシカケマン「答えろ。答えるのだ。良一、ロボットとは、どういう意味だ?」
ついに葉山博士は失神。
小田「しぶとい奴だ。」
と杖で殴ろうとしたその時
ロボット刑事K「待て!」
新條とKは小田と小田物産の社員を捕まえ、Kはコシカケマンと戦闘開始。外に出て、材木置き場でKの目の色が赤くなり
ロボット刑事K「ゴー!」
ブレザーを脱いで本格的に戦闘開始。Kはコシカケマンの電気椅子攻撃などにも苦しみ、
コシカケマン「地の底にひきづり込んでやる。」
と高速回転を始めて地に潜り始めたのですが
ロボット刑事K「このままでは壊される。よーし、自力回転。」
逆方向にKが自力で高速回転したことにより、この拘束を解くことに成功。コシカケマンは逆に空高く飛んでしまった後、失速して真っ逆さまに落ちてしまい、頭が地中に埋まって脚をバタバタさせるだけの状態になってしまい、最期はロボット破壊銃で倒されたのでした。
さて戦闘が終わると芝も駆けつけて葉山博士を連れ出していました。芝によれば葉山は
芝大造「電流を流され衰弱がひどい。」
良一が「お父さん」と呼びましたが、その呼びかけには答えません。良一は泣き出し、それを目の当たりにしたKの目の色も青くなりました。
ロボット刑事K「すまない、良一君。許してくれ。」
とその隙を突いてハリサスマン(声:兼本新吾ではなくて加茂嘉久)が登場。その声は兼本新吾さんのものではありません。本当にクレジットは出鱈目です。それは兎に角、ハリサスマンは良一をさらい、追いかけたKにも耳から伸ばした針で目を突いて
ロボット刑事K「見えない。目が見えない。」
と言う状態にKがなり、ハリサスマンは良一を連れて逃げ、その後、例の海岸に辿り着いた(どうやって?)Kがマザーを呼び出し
ロボット刑事K「見えない。目が見えないんだ、マザー。」
と言ったところで次回へと続きます。
さて次回は良一の救出、設計図のありか(ヒントは既にいくつか提示されていますが)、Kの目がどうなるか、ハリサスマンとの攻防、契約者の(省略)など盛りだくさんの内容になっています。ただよく見ると上原正三が過去に書いた話に似たところはあるかもしれません。