今回はロボット刑事 第19話「沖縄の海に謎を追え!!」(脚本:上原正三、監督:折田至、助監督:高橋正治、技闘:三隅修 (C) 東映)を紹介しましょう。上原正三執筆の話は今回の前後編が最後になりますが、本土復帰直後の沖縄を舞台に取り上げた、かなりきつい内容の話になりました。
さて冒頭は島唄が流れる中、沖縄を空撮した場面です。そして場面変わると沖縄の波打ち際を比留間(藤沢陽二郎)を含めた若者達が逃げるところが映ります。沖に浮かんでいるボートに乗ろうとしたのですが、バドーのサイボーグ工作員の銃撃を受け、逃げられたのは比留間のみ。しかも彼も銃撃を受けています。
サイボーグ工作員「逃げなきゃ死なずに済んだものを。」
そしてまた島唄が流れる中、沖縄を空撮した場面が映り、次に比留間の乗ったボートが漂うのが映ります。比留間はボートに寝ています。銃撃を受けたからです。
そして場面変わって新宿。ジョーカーを止めたKは怪しい飛行物体が飛んでいるのに気づきました。それは小さな気球で気球の風船部分にはバドーの鉄のドクロのマークが付いています。そしてゴンドラには「Q」と「1」が書かれています。Kは追うことにしました。その飛行物体を若い女性(錦英)が回収。そこへ子供達が集まり、無邪気に欲しがりましたが、若い女性は子供達に渡してあげました。そこへKが駆けつけましたが、若い女性はKを見ると走って逃げました。Kは子供達に頼んで飛行物体を見せてもらいました。
ロボット刑事K「やはりバドーのマークだ。一体、何の目的で。」
そこへ新條も駆けつけてKに声をかけました。芝も一緒です。Kは例の飛行物体を見せましたが
芝大造「どうせ誰かの悪戯に決まっている。」
さて新條と芝が来たのは理由がありました。クリブネで漂流中の青年が巡視船に収容されたというのです。Kは子供達に飛行物体を返し、芝と新條に同行。青年、すなわち比留間のいるところへ向かいました。それを見送りながら、先ほどの若い女性リンは
リン「バルーンQ1、無事に東京に着きました。計算通りです。」
通信機の相手はバドー首領。
バドー首領「よし。リンは直ちに次の使命を実行せよ。」
リン「了解。」
さて比留間は中央鉄道病院に収容されていました。芝、新條、Kの尋問が続きます。比留間の仲間3人を銃殺され、比留間も肩を撃ち抜かれて漂流していました。誰の犯行で何があったのかを新條が尋ねると
比留間「畜生。」
新條「まさか海賊に襲われたんじゃ?」
比留間「もっと恐ろしい奴だ。」
芝大造「もっと恐ろしい奴?」
比留間は無言。
芝大造「洗いざらい話してみないか。我々も力を貸そう。仲間の仇を討とうじゃないか。」
ところが
比留間「話せば、俺は、殺される。」
新條強「誰にだ?」
比留間「奴らにだ。」
恐怖を抱いている比留間にKはこう言いました。
ロボット刑事K「比留間君、約束しよう。君の命は私達がきっと守ってみせる。さ、沖縄で何が起こったのか話してごらん。」
その言葉を聞き、比留間は話し始めました。
比留間「奴らはどでかい計画を立てている。恐るべき計画だ。」
ロボット刑事K「恐るべき計画?」
とそこへ「お薬の時間です」と看護師が入ってきましたが、この看護婦は先ほど登場したリンが変装したもの。芝が飲み薬を受け取った隙を突いて比留間を刺そうとしました。しかし、これは察知され、リンは逃走。K、芝、新條が一旦、外へ出ました。
芝大造「逃すな。必ず捕まえろ。」
Kの乗るジョーカーと新條の乗るパトカーがリンを追跡。芝はそれを見届けると比留間のいた病室に戻りましたが、もぬけの殻。
芝大造「どこへ行ったんだ。比留間、比留間君。」
芝は廊下へ出ましたが、やはり姿は見えなかったようです。
一方、リンの乗る車を追跡するジョーカーとパトカー。Kが合図し、ジョーカーは先回り。リンの乗る車は挟み討ちの状態となり、リンは車を止めざるを得ませんでした。リンが発信機を操作するとバドーのロボット、ギョライマン(声:北川国彦)が登場。なお、今回(と次回)は珍しく、ロボットの声のクレジットは合っています。
ロボット刑事K「貴様は?」
ギョライマン「バドーの用心棒ロボットギョライマンだ。」
というわけでKとギョライマンは格闘開始。新條と警官もギョライマンに襲いかかりますが、やはりギョライマンにはかないません。
ギョライマン「早く逃げろ、リン。」
この言葉を受けてリンは車を走らせて逃走。ジョーカーで追いかけようとしたKでしたが、ギョライマンの妨害によりそれはできません。
ロボット刑事K「こいつは私が相手にします。あの女を早く。」
新條と警官はパトカーに乗り、リンを追跡開始。
ロボット刑事K「さあ来い、ギョライマン。」
Kの目の色が赤くなり
ロボット刑事K「行くぞ、ゴー!」
即座にギョライマンは
ギョライマン「ギョライアタック」
とジャンプして頭突き攻撃。これを皮切りにブレザーを脱いだKとギョライマンとの格闘が続きます。一方、新條の乗ったパトカーは最終的にはリンにまかれてしまったのでした。
さて場面変わってここは晴海のフェリーターミナル。当時、奄美大島を経由して東京と沖縄を結んでいたフェリーの新さくら丸が映ります。エンディングでも撮影協力としてクレジットされている大島運輸が昭和48年当時運航していたフェリーです。新條は待合室を捜査しました。そして新さくら丸を見るとチャイナドレスを着たリンの姿が見えました。
新條「沖縄に逃げるつもりか。よし。親父さんに連絡だ。」
さてKとギョライマンとの格闘はまだ続いていました。海辺で
ギョライマン「ここまで来れば俺のものだ。どこからでもかかって来い。」
ロボット刑事K「私は泳げる。海の中でも恐くないんだ。」
戦いの場所は晴海付近のようです。ギョライマンは錨も武器にしていました。それを鎖に繋いで振り回し、Kを攻撃してきます。そして鎖でKを拘束することに成功。
ギョライマン「ギョライベルトロール。」
苦しむK。しかも
ギョライマン「このギョライベルトは塩水を吸うとキリキリと締まるようになっているんだ。地獄へ堕ちろ。」
そう言うとギョライマンはKを抱えたまま、海の中に飛び込みました。海底で苦しむK。
ギョライマン「バカめ。」
ギョライマンは魚雷を発射。魚雷は爆発しました。
ギョライマン「これで一人片付いた。残るは新條、芝の二人だ。ではあばよ。」
頭についたスクリューを回して浮上するギョライマン。あれ。Kは海の底に横たわったままです。このギョライマンの短慮が後に命取りになります。
さて芝も新さくら丸に乗船。こんな会話を交わします。
新條強「比留間君もこの船に?」
芝大造「わしの勘だがな。兎に角、この船にあの女が乗り込んだとなりゃあ。」
新條強「猫に鰹節。」
芝大造「(頷いた後)それに沖縄で何が起こったか、是非とも知りたい。」
新條は頷き、船内を調査(と言う名前の宣伝用タイアップ映像)。芝も捜索していますが、やはり見つけるのは困難です。焦る芝と新條。
そして新さくら丸は出航。その様子もしっかり映ります。
出航後、甲板に出ようとした芝と新條は比留間を発見。驚く比留間に
芝大造「わしら刑事だってことを忘れないでもらいたいね。」
新條強「君を襲った女もこの船に乗り込んだ。」
それを聞き、表情が変わる比留間。
芝大造「それでもわしらの力を必要としないと言うなら、それでもいいんだよ。」
新條が比留間の右肩を叩いて立ち去った(?)ところでCM挿入です。
CMが明けると海底に横たわっていたKが意識を回復しました。こういう表現が正しいかどうかはわかりませんが、こう書いておきましょう。Kはマザーを呼び出し、ギョライマンの鎖を解いてもらいました。そしてKは海上に上がり、ジョーカーに届いていた新條の通信の録音テープ(留守番電話のような機能でしょう)で新條と芝が今、フェリーに乗っている事を知るのでした。リンが乗っている事や比留間も乗っているらしい事を聞き、Kはジョーカーを飛ばしてフェリーのいるところへ向かいます。ギョライマンに狙われるかもしれないからです。
その頃、新條は船内を回ってリンを探し回っていました。芝は比留間から話を聞いていました。
比留間「俺達、工事現場で働いていたんです。賃金が良いというので行ったんです。ところが工事が終わるまでは家に返さないっていうんです。」
芝大造「何を作ってたんだね、そこで。」
比留間「それが。」
思わず芝は身を乗り出しました。
芝大造「聞かせてくれ。その仕事にはバドーが絡んでいるんだ。君一人の力ではどうにもならん相手なんだ。」
しかし、比留間はそれ以上は話しません。そこへ新條が戻ってきました。リンを見つけられなかったのです。ぼやく新條に芝は落ち着いて
芝大造「何、今に向こうから尻尾を出すさ。」
というや否や、冒頭で登場したものに似た気球が飛んできました。ただ「Q7」と書かれています。近くに落ちたので芝が拾い、東京に落ちた物と同じものだと新條が言うと
比留間「東京にも落ちたんですか、これが?」
子供達が騒いでいたと新條から聞くと
比留間「奴ら、本当にやる気なんだ。」
何をやる気なのか? 新條が事情を尋ねると
比留間「(飛ばしたのは)奴らですよ。」
新條強「じゃあ、沖縄から飛ばしたんだ。」
比留間は頷きました。そして話したのは
比留間「奴ら、飛行船に水爆を積んで東京へ飛ばす計画だったと聞きました。」
なんと。驚く新條。芝は尋ねました。
芝大造「じゃあ、これ(小さな気球)はテスト飛行ってことか。」
比留間は頷きました。つまり、あの小さな気球はその実験で飛ばしたものだったのです。新條は信じられないと言いましたが
芝大造「だが、逃げる比留間君達を射殺してまで秘密を守ろうとしたんだ。バドーならやりかねん。」
どうもいつもとは違って芝の方がバドーの犯罪であるという意見に前のめりです。刑事としての勘もあっての意見でしょう。改めて芝は命じました。
芝大造「新條、あの女を捕まえるんだ。締め上げて詳しい事を聞き出さなきゃ一大事だ。」
頭を抱える新條がふと脇を見ると、なんとリンがビキニの水着を着て日光浴してくつろいでいるのが見えました。新條が知らせると
芝大造「そっと近づくんだ。」
比留間を後ろに置き、芝と新條は静かに近づいて行きました。そしてリンを挟み討ち。
芝大造「さ、おとなしく来てもらおう。」
ところがリンはそれで捕まるようなタマではありません。リンは新條を薙ぎ倒し、芝も倒し、比留間を追いかけ始めました。いつの間にか黄色い全身タイツを身に纏っています。胸の辺りにはバドーのマークが描かれている、悪趣味な服です。比留間は甲板の片隅に追い詰められ、リンに襲われました。リンはナイフで比留間の額を傷つけましたが、新條が駆けつけて拳銃でリンが持つナイフを撃ち落としました。逃げようとするリンの退路を芝が絶ち、リンは挟み討ちに。そこでリンはギョライマンを呼びました。海中から現れ、新條に襲いかかるギョライマン。拳銃でかなう相手ではありません。
芝大造「新條、大丈夫か?」
そしてギョライマンとリンに芝は尋ねました。
芝大造「東京に水爆飛行線を飛ばすと言うのは本当か?」
律儀にリンが答えます。
リン「テストは全て成功したわ。後はね、計画を実行するだけよ。」
そしてギョライマンはこう宣言。
ギョライマン「我々の秘密を知った者は生かしてはおけん。」
無謀にも、いや、果敢にも比留間がギョライマンに襲いかかりましたが、もちろん、彼が勝てるわけがありません。
ギョライマン「貴様から片付けてやる。」
甲板の片隅に転がされた比留間に芝と新條が駆け寄り、ギョライマンとリンから身を挺して庇います。
ギョライマン「さあ、死ね。」
とその時
ロボット刑事K「ギョライマン!」
ジョーカーが飛んできました。と言うわけで大まかな流れは読めたと思いますが一応書きましょう。ジョーカーは甲板に着陸。Kはギョライマンと格闘開始。ジャンプしながら
ロボット刑事K「ゴー!」
と言ってブレザーを脱ぎます。
ロボット刑事K「私が相手だ、ギョライマン。」
ギョライマン「しぶとい奴だ。今度こそ海底に沈めてやる。」
Kはジャンプし、空中で立ったままくるっと回り(これは何度も流れてますが、やはり美しい)、比留間を守る芝と新條とギョライマンの間に割って入りました。Kはロボット破壊銃を発射しましたが、鎖に繋がった錨を回したギョライマンに弾かれてしまいました。新條と芝はリンを追跡。さてギョライマンとKの戦闘は続きます。
しかし、同じ手は通用せず、Kはジャンプしてそれを避けました。
ロボット刑事K「同じ手は二度と食わんぞ。」
そしてKが逆襲開始。最終的にはギョライマンが投げた錨をKが掴み、ギョライマンを投げ、海に落ちたところにロボット破壊銃を浴びてギョライマンは倒されたのでした。直後にリンがKの前に登場。
リン「今度は私が相手になるわ。」
今まで書きませんでしたが、リンの日本語は片言です。リンは銃を撃ってKを攻撃しました。しかし、Kはジャンプしてリンの銃を蹴って落としてしまいました。芝と新條も駆けつけました。
芝大造「K、そいつは人間じゃねえ。ピストルも通じねえ、バケモンだ。遠慮すんな。」
Kはリンの左手を掴んでいましたが
ロボット刑事K「私は女とは戦わない。たとえアンドロイドでもね。」
Kは新條にリンを放り投げて渡し、新條がリンに手錠をかけました。
さてここで芝家が映りました。どうやらその日は芝の誕生日だったようでケーキが用意されていましたが、奈美と由美は芝家で置いてけ堀の状態でした。時刻は夜の11時でした。那覇へ行くフェリーに乗っているとは知らされてなかったのです。
野田圭一のナレーション「大島運輸の新さくら丸は二日後に沖縄に着いた。」
昔は船便が主流でした、沖縄との行き来は。船なのでそれくらいかかってしまうのです。さて那覇港に降り立った比留間を彼の妹チヨ(おそらく上原智佐子)や弟じろう(おそらく太田守邦)や、そしてチヨの友達(おそらく盛島裕子)の女の子(いずれも小学生くらい)が出迎えましたが、そこで知らされたのは
チヨ「大変よ。お父ちゃん、帰ってこないの。兄ちゃん、探しに行ったきり。」
チヨの友達のお父さんと一緒に作業トラックに乗って行ったのだそうです。その話を聞き
芝大造「例の作業場へ行ったのかね。」
比留間が頷いた、その時、リンが手錠をはめられたまま、新條と芝を突き飛ばし、逃走。すかさずKも新條も追いかけました。
芝大造「逃すな。」
リンは走って逃げます。そして止まっていた車に乗り込み、発進させようとしました。新條とKが進路を阻もうとしましたが、そこに現れたのは
カラテマン(声:肝付兼太)「待っていたあ!」
その声も珍しくクレジット通りです。それは兎に角、カラテマンは琉球空手がモチーフだったようで道着を着て頭は握り拳を模したようなデザイン。Kを飛び蹴りし、新條も倒し、リンは車を発進させることに成功しました。追いかけようとするKと新條をカラテマンは妨害。カラテマンは本当に徒手空拳で戦う徹底ぶり。沖縄に因んで考えたのは間違いないでしょう。
野田圭一のナレーション「沖縄に上陸したロボット刑事Kの前に立ちはだかった怪ロボット、カラテマン。バドーは水爆飛行船で東京を空爆しようと企んでいる。ロボット刑事達は、この恐るべき計画を阻止できるか。」
次回へと続きます。
さてこの前後編、2023年9月6日13時54分時点でのWikipediaには
なお、沖縄でテレビドラマのロケを行ったのはこれが初だったという。
と書かれていますが、この記述は微妙です。と言うのは復帰前の沖縄も含めれば、1968年10月放送のキイハンター 第27話「殺しの招待旅行」第28話「太陽に帰った殺し屋」(脚本:池田雄一、監督:村山新治 (C) 東映)があるからです。復帰後の沖縄で初めてロケを行なったのが『ロボット刑事』だったのかもしれませんが、もう少し調べないと事実とは言い切れないと思います。
さて次回はバドーの契約者も登場。東京水爆攻撃の全容も明らかになります。もしかして、上原正三は本当に東京を水爆で破壊したかったのではないかなあ、と飛躍した事を思わず考えてしまいました。