恐怖の松屋牛鍋膳食券コンプリート2020

はじめに

本当はQiitaで真面目に書き直そうと思っていたネタでしたが、気がついたら本業で時間が取れなくなってしまった上に、いわゆるブロッコリーさんが『「全網羅テスト」という言葉について 〜または、PICTの落とし穴〜』という題の記事を書くそうですので、あちゃあ、私の書きたいネタよりも数段上のネタが書かれるぞ、というわけで安直に SpeakerDeckのリンクを貼り付けて、あとはそれにプラスαすることにします。

speakerdeck.com

このネタを書いたきっかけ

以前、松屋 Advent Calendar 2018というのを立ち上げたのですが、書き手が集まらず、じゃあ、いっそのこと責任をとって全部埋めてしまおうかと軽いノリで埋めました。そしたら、なーぜか注目されてしまいました。

adventar.org

牛鍋膳定食の食券コンプリートネタは当時やった人が知り合いにおりました。できるわけないじゃんねえ、と思って書いたのがこのネタです。

speakerdeck.com

今年はどうなのかと思って書いたのが先述のネタです。こうしてみると地味に店の分布が変化してますね。

さて、そもそも上述の資料で取り上げているのは「収集」なので「ソフトウェアテスト」とは立場が全く異なるわけなのですが、全網羅というのがソフトウェアテストの専門家の注目を集めたらしく、当時、そこそこ注目されました。

ここで余談です。スライドには「自宅から徒歩7500歩くらい」と書かれているかと思いますが、昨今の情勢で在宅勤務となる日もあり、運動不足になりがちだということで、毎日1万歩以上歩くことを日課にしておりました。すると3月までは92Kgくらいだった体重が12月現在は74Kgにまで軽くなってしまいました。2年前に買ったスーツのズボン、履かないでいるうちにぶかぶかになってしまい、ワイシャツも上着も既製品で賄えるようになりました。

まあこういう変化球を投げてみるのも幅が広がっていいかなあと勝手に思ってます。

qiita.com

大鉄人17

はじめに

この記事では1977年(昭和52年)3月18日から同年11月11日まで全35話、TBS系で毎週金曜19:00 - 19:30 に放送された石森章太郎原作、毎日放送東映製作の特撮テレビ番組「大鉄人17」を取り上げます。

大鉄人17(ワンセブン)の概要

大鉄人17は巨大コンピューターであるブレインが自分の分身とするために超生産能力で作り上げたロボットで、その名前は「オートダイオード・ワンセブン」を内蔵していることに由来します。ブレインの超生産能力は「オートダイオード・ワンセブン」に由来しており、スプーン一本をはじめ色々なものを生産することができ、自分自身を改良したり、自分の故障した箇所を修理したりすることができます。ブレインは自分の補佐役となるものが欲しかったのです。なおブレインは元々は佐原博士(中丸忠雄)が天変地異や自然災害の予測のために作り上げたものでした。ところがいつしかブレインは自我を持ち、人間こそが地球を壊しかねない災害である、という結論を弾き出してしまいました。時を同じくして野心を抱いたハスラー教授(大月ウルフ)によって連れ出されましたが、逆にハスラーを自分の奴隷にしてしまい、「私のことはミスターと呼びたまえ、ハスラー君」と見下していました。ところがそのブレインが作ったワンセブンは逆に「人類は地球になくてはならない存在である」という結論を弾き出してしまいました。そのため、ブレインに拘束されていたのですが、ローラーロボットによって父と母と姉を殺された南三郎少年(神谷政浩)によって拘束を解かれたため脱出し、以後は三郎と自分が与えたヘルメットを介して心を通わすようになりました。

ブレインが各地の囚人を集めて結成したのがブレイン党で、ハスラー教授の他、初期はキャプテンゴメス(平田昭彦)というテロリストとその部下のチーフキッド(山口あきら)が幹部でした。ブレインは超生産能力によって巨大ロボットを次々と作りあげ、人類を滅ぼすために暴れさせます。

ブレイン党と戦うのがレッドマフラー隊です。隊員達が赤いマフラーをしているのが名前の由来です。レッドマフラー隊はいくつかの小隊に分かれており、ブレインが逃げ出す前はブレインの警備を担っていました。佐原博士は日本支部を率いてもいました。で佐原博士に娘が二人おり、長女は千恵(竹井みどり)でレッドマフラー隊で博士の秘書代わりとなっており、レッドマフラー隊の一小隊の隊長だった中井隊長が婚約者でした。ところが中井は潜入捜査の途中で殺されてしまい、彼の後任は剣持隊長(原口剛)になりました。少し話がそれました。佐原博士の次女はルミ(島田歌穂)で三郎とは同年です。ブレイン党に肉親を殺されてからは佐原博士が三郎を引き取っていました。

話をレッドマフラー隊に戻しましょう。中井隊→剣持隊が頻繁に登場するので間違えやすいのですが、レッドマフラー隊はいくつもの小隊に分かれています。その制服は自衛隊のそれとよく似ており、ブレイン党の軍服はナチスドイツのそれとよく似たものとなっていました。戦闘場面もワンセブンとブレインロボットが戦う以外は普通の白兵戦となっており、他の特撮番組とは違って軍事色の強いものとなっていました。キャプテンゴメスと剣持隊長との駆け引きも初期の見所になっていました。

さてワンセブンは当初は3つの形態をとっていました。通常は要塞ワンセブンという形態をとっており、この状態で必殺武器のグラビトンに使う重力子の蓄積や、搭載マシンであるシグコンタンクやシグコンジェットを発信させたりしていました。空を飛ぶ時は要塞ワンセブンの形態から翼を広げた飛行ワンセブンになります。そしてブレインロボットのところに駆けつけると折り畳まれていた脚や胴体などを広げ、戦闘ワンセブンになったのです。

またワンセブンは当初は三郎少年の命令をヘルメットを通して聞いていましたが、目をチカチカさせて Yes か No かを答えていました。当初は言葉を話さなかったのです。時には三郎少年の命令を聞かず、自らのコンピューターが下した答えを優先させて動いていました。ですが、三郎少年には友情を感じており、第6話で三郎に自らの超生産能力で作り上げたサブマシンを贈っています。

ブレインは強敵で第12話「決死! ブレイン大爆破」(脚本:上原正三、監督:山田稔)で佐原博士がオーバーホールの隙をついて爆破した時も瞬時に超生産能力で復活してしまいました。

さて脚本は上原正三伊上勝が交代で書いており、上原は第1話など区切りとなる話を書いていました。基本的には前作「宇宙鉄人キョーダイン」同様、2 - 3話で一つの物語を描いていました。ですが徐々に伊上勝の担当話が増えていきます。そして最終回は伊上勝が書きました。

なお巨大ロボット物となったのはスポンサーの要望だったようです。

ガンテツ登場など

ところがこの作風が好評だったわけではなかったようです。ワンセブンのおもちゃは要塞ワンセブンや飛行ワンセブンから戦闘ワンセブンに変形する様子を忠実に再現していた(それは元々バンダイのデザイナーがワンセブンのデザインに絡んでいたからでもありますが)ので好評でしたが。なので路線変更が図られます。

まずギャグメーカーとして第16話で岩山鉄五郎ことガンテツが登場。高品正広が演じていたこともあり、ドカベン岩鬼に似た学ラン姿でした。レッドマフラー隊への入隊を志願し、毎回押しかけていました。

(2021年1月25日追記)

さて水島新司が最近亡くなって気がついたのですが、岩山鉄五郎の名前のモデルは「野球狂の詩」に登場した岩田鉄五郎かもしれませんね。あくまでも私見ですが。

(追記終わり)

次に超生産能力によりワンセブンが第19話から普通に喋る(声はナレーターも務めていた小林恭治)ようになり、内部にはコントロールルームも作られました。それと前後して第17話からは戦闘ワンセブンの状態から翼を広げて飛ぶ戦闘飛行ワンセブンという形態にもなるようになりました。

また敵もキャプテンゴメスが裏切りが失敗した末に戦艦ロボットごと戦死し、ブラックタイガー(山本麟一)が着任した後、チーフキッドは作戦の失敗を咎められてブラックタイガーに蹴り殺され、その後任にはブラックタイガーの弟子だったピンクジャガー(三東ルシア)とブルージャガー(太田美緒)が登場。作風は軽くなっていきました。

ワンエイト

ただワンセブンの弟ロボットワンエイト(声は市川治)が暴れた第22 - 26話は盛り上がりました。ワンエイトはワンセブン同様、心を持ったり、人と交流したりしていました。ですが流石にブレインも懲りたのか、ブレインに絶対服従させるためのサタン回路を内蔵させていました。激闘の末、佐原博士によりサタン回路は外され、以後はワンセブンの味方となりましたが、第26話で自らを犠牲にしてブレインロボットのハーケンクロイツごと散ったのでした。

ビッグエンゼル

また終盤の第33話で登場したビッグエンゼルも忘れてはいけません。これは第2のブレインともいうべき電子頭脳で佐原博士がブレインに対抗するために開発されました。ビッグエンゼルは死期を悟って突撃したブラックタイガーを瞬殺しました。そしてブレインとの対抗策を立案するために計算をしていましたが、最終回で「ワンセブン、三郎」という結果を弾き出すとオーバーヒートで爆発してしまったのでした。

最終回

さて最終回は第33話から第35話まで続く三部作です。ブラックタイガーが死ぬのは先述しましたが、その後、三郎がブレイン党に捕まります。ですがなぜかワンセブンは動こうとはしませんでした。それはブレインが半径2キロ以内、通称ブレインエリア内にあるあらゆるロボットやマシンを自分の指揮下に置く機能があったため、迂闊に近づけなかったのです。途中でワンセブンはシグコンジェットやシグコンタンクを出動させましたが、いずれもブレインに破壊されてしまいました。なのでジッとせざるを得なかったのですが、それを知らないルミとガンテツはワンセブンに三郎救出を懇願します。二人の熱意に負けたワンセブンは「さようなら」と言い残し出動。ゴールドネッシーを倒すことには成功しますが、ブレインエリアに入り込んでしまいました。仕方なく、ワンセブンは機能を停止しました。さて三郎はなんとか脱出に成功し、さらにはワンセブンの体内に入り込むことに成功しました。するとワンセブンのコントロールルームには操縦桿が備えられていました。ワンセブンは「こんなこともあろう」かと人が操縦できるようにしていたのです。こうしてワンセブンは三郎の操縦で復活。ハスラー要塞を破壊します。そして「ワンセブン、三郎」という答えをビッグエンゼルが弾き出したと知った三郎はそのままワンセブンとともに特攻すべくワンセブンを飛ばします。ところがブレインに突っ込もうとするその時、三郎はワンセブンの体内にいた小型ロボットのロボターに突き飛ばされ、そのままパラシュートで降下する羽目に陥ります。ワンセブンはそのままブレインと激突し、体内に備えられた核爆弾の爆発もあってブレインもろとも爆発したのでした。

この最終回、大きなツッコミどころがありますが、そうすると盛り下がるので無視しましょう。脚本が伊上勝だったからか「ジャイアントロボ」の最終回を連想させる終わり方です。なお「大鉄人17」という名は「鉄人28号」にちなんで名付けられたのだそうです。

adventar.org

宇宙鉄人キョーダイン

はじめに

1976年4月2日から1977年3月11日まで、全48話がTBS系列で放送された毎日放送東映製作の特撮テレビ番組「宇宙鉄人キョーダイン」を取り上げます。この番組は「仮面ライダーストロンガー」のスタッフが移行したため、アクションは大野剣友会、音楽は菊池俊輔が担当しています。ただ初期の脚本は藤川桂介上原正三が中心でした。

第1話のあらすじ

葉山一家の末っ子・健治(古川聡)の誕生日パーティの最中、世界的ロボット工学者の父・葉山博士(宇佐美淳)、長兄・譲治(夏夕介)、次兄・竜治(佐々木剛)が、知識を狙って侵入して来たダダ星人によって拉致されてしまいました。

やがてダダ星人のロボット群“ダダロイド”による地球侵攻が始まりましたが、発足した地球防衛軍でははが立ちません。

1年後、円盤に乗って2体のロボットがやって来ました。それがスカイゼルとグランゼルです。葉山博士が、健治と地球をダダ星人から守るため、2人の兄の記憶・人格を全てロボットに移植した“サイバロイド”でした。健治は、父と兄が帰れない事実に戸惑うものの、2体のサイバロイドと共にダダ星人と戦うことを決意するのでした。

初期の展開

上記の通り、ヒーローは2体のサイバロイドでした。サイバロイドは電子頭脳に特定の人間の人格をコピーしたロボットで、いわば「身代わりロボット」。その人間の過去の記憶、感情、性格、癖も全て記憶しています。クローンなどとは異なりますが、遺伝子も記憶しています。なお、サイバロイドの食事はダダニウムをガソリンと混合させ料理状にした物で、腹部から伸びるチューブで摂取します。

スカイゼルは健治の長兄譲治の身代わりで作られたサイバロイドです。色は赤でオープンフェイスという機能により、顔を開くと譲治の顔(の映像)が表示されます。その名の通り、モチーフは飛行機です。

グランゼルは健治の次兄竜治の身代わりで作られたサイバロイドです。色は青でやはりオープンフェイスで竜治の顔(の映像)が表示されます。グランゼルのモチーフは自動車でした。

さて2体は巨大変身する事が可能でした。これは次の2つに大別されます。

まずスカイゼルがスカイジェットという戦闘機に変形し、グランゼルがグランミサイルに変形して攻撃するパターンです。次がグランゼルがグランカーという大型特殊自動車に変形し、そのカタパルトにスカイゼルがスカイミサイルに変形して攻撃するパターンです。グランカーは屋外で地上走行可能なものが実際に作られ、撮影に登場していました。ミサイルを発射するためのカタパルトにスカイゼルが変形せずに乗ることもありました。私はグランカーのおもちゃを持っていました。

スカイゼルとグランゼルが巨大変身するということは敵も巨大変身するということです。第6話までは敵のダダロイド(要するにダダ星から来たロボット)も変形し、スカイミサイルやグランミサイルによって倒されていました。またキョーダインは基本的に複数話で一つの話が終わるようになっており、藤川桂介が脚本を書いた第1話から第3話までと上原正三が脚本を書いた第4話から第6話までで2つの話を展開していました。

ですが、この流れは開始早々に破棄され、ダダロイドは特に巨大変身しなくなりました。明らかに制作予算の関係でしょう。なので第7話以降は等身大での戦いが中心になりました。ダダロイドの着ぐるみも「仮面ライダーストロンガー」や「秘密戦隊ゴレンジャー」などから流用されることが多くなりました。

他のレギュラーは葉山博士の助手で地球防衛軍に入った白川エツ子(堀江美都子)、キョーダインのサポートをするために一緒にベース円盤に乗ってやってきたロボットのゴンベス(声は和久井節緒)、地球防衛軍と丸井大佐(伊達正三郎)と細井軍曹(沼田爆)、さらに「はなつみの歌」の謎を解こうとしている海堂博士(天本英世)でした。細井軍曹は非常に頼りなかったのをよく覚えています。

サイバーグラフィー

さて上述した通り、当初は2体のサイバロイドが戦っていましたが、それが子供達に受けたとは言い難かったようです。第15話から、キョーダインはキョーダイヤのエネルギーにより、擬似的な仮想人格(頭脳部分の副装コンピュータに記録された細胞記号を再生して実体を作り出すサイバグラフィーによるコピー人間)とサイバロイドボディ(キョーダイン本体)とが分離し、一定のポーズを取って「インダー・○○」の掛け声で実体化した仮想人格がサイバロイドボディに入ることでキョーダインへとなるようになりました。これは従来の変身物に近づけるための苦肉の策で本放送を見ていた、当時小学生だった私もそれを察していました。なので今までは顔と声が中心で回想場面にしか登場していなかった夏夕介さんと佐々木剛さんの顔出し出演場面が激増しました。この2体のサイバーグラフィーは姿形も性格も癖も譲治や竜治と全く同じでしたが、本物とは違って自分達はキョーダインであるという自覚があり、自分達の安全よりも健治達の安全を優先する行動を常にとっていました。それは最終回に繋がる重要な伏線と言えるでしょう。たまたまそうなっただけかもしれませんが。サイバーグラフィーもそこそこ強力で雑兵のロボ兵程度とは互角に戦っていました。

ただこの路線変更もさして効かなかったようで、今度は後述するように敵側のキャラクターを変更していくことになりました。

ところで東映は1975年(昭和50年)10月7日から1976年(昭和51年)6月29日までチャンネルは違えど「アクマイザー3」という3人の悪魔が人間のために戦うドラマを制作していました。この番組も着ぐるみのみしかヒーローとして登場しなかったのですが人気が出ず、途中から主人公のザビタンが魔法力(まほうりき)かわるんだらあで南雲健二という人間に変身するようになっています。仮面ライダーとの差別化をはたそうとしたのでしょうが、難しい物ですね。なおメインシナリオライター長坂秀佳でした。最初は「チェンジサビタン」と言って変身していたのですが、豊川出身の長坂は地元の三河弁を使った方が面白いのではないかと思いつき、「魔法力かわるんだらあ」というようになったという逸話があります。上原正三琉球の言葉を色々使って遊んでいたのを思い出しますね。

ガブリン

さてダダ星の実質的な大ボスがガブリンです。これは巨大な手の形をした巨大ロボットで、手のひらに当たるところに巨大な一つ目がついていました。「ガーブリン」というだけなのですが、なぜか部下は彼の意思を理解できました。当初はダダ星にいたのですが、地球には第22話にやってきます。宇宙を自分で飛んでやってきたのです。

デス五人衆

さてガブリンは5本の指にロボットを格納していました。それがデス五人衆です。第26話からはダダロイドに代わって彼らが暗躍するようになりました。それから第39話まで、再生したのも含めて彼ら五人がキョーダインと戦うようになりました。明らかに予算削減策ですね。ただそれなりに強かったのは確かです。親指から順にデスガッター、デスギラン、デスギャット、デスバイキン、デスフラッシュがおり、当初は単体でキョーダインと戦い、敗れましたが、第32話で再生されて、以後は5人まとめて戦っていました。再生デス五人衆は後述するガブリンクイーンの指揮下に入ったこともあいまって、雑魚キャラに堕してしまった感は否めません。

ガブリンクイーン

第31話から登場したのがガブリンクイーンです。その名の通り女性でダダ星ではガブリンにつぐNo. 2です。以降は彼女が指揮をとってキョーダインと戦っていました。変装の名人で健治のクラスの担任の先生になったり、大胆にも地球防衛軍の准将に変装して潜入したこともあります。第32話からはガブリンクイーンと再生デス五人衆がキョーダインと戦う話ばかりが制作されました。

ブラックナイト

ところが第40話に転機が訪れます。作戦の失敗続きについにガブリンが怒り、デス五人衆を解体してしまったのです。で解体したデス五人衆を元に生まれたのがブラックナイトでした。彼は月光の剣を持ち、キョーダインを圧倒しました。一度は月光の剣と同じくムー帝国に伝わる太陽の剣を手に入れたキョーダインによって第41話で敗れましたが、再生され、またキョーダインを圧倒しました。キョーダインは第44話でキョーダイヤで剣を作り、ようやくブラックナイトを倒すことに成功したのでした。ですがキョーダイヤで剣を作ったためにキョーダインはサイバーグラフィー体になる(?)ことができなくなってしまい、以後は最終回までサイバロイドの姿のままでした。この時期はオープンフェイスさえもしませんでした。本当にできなくなったのか、スタッフが設定を忘れたのかは定かではありません。

最終回

さて最終回です。藤川桂介上原正三も降板し、最終回を書いたのは江連卓です。海堂博士は「はなつみの歌」を流しました。これによりダダ星のアルファタ・ダダーリン王の脳髄が目覚め、真相を葉山博士に語ります。元は開拓するための星を探せとロボットに命じていたことを。それがいつしか侵略に変わってしまったのです。ダダ星のコンピューターはそのまま機能を停止し、葉山博士、譲治、竜治はダダ星を脱出します。地球ではガブリンクイーンが倒され、健治とキョーダインは葉山博士達と再会します。とそこへガブリンが飛んできました。キョーダインは葉山一家を救うため、(唐突に登場した)エネルギー極限発生装置を発動し、葉山博士や健治の制止も振り切って特攻。ガブリンとともに宇宙の星となったのでした。

おわりに

うーむ。こうして書いていて、改めて中途半端な作品に終わってしまったなあ、と思いました。巨大変形体同士の戦いが続けば少しは違ったのかなあと、ふと思いましたが、そうでもなかったような気もします。それは兎に角、次作は巨大ロボットが主人公の「大鉄人17」になったのでした。上原が最終回を書いていないのはもしかしたら「大鉄人17」の準備のためだったのかもしれませんが、真の理由は知りません。なおTBSは「宇宙鉄人キョーダイン」を全く再放送してくれませんでした。それも致し方なかったのかもしれません。

adventar.org

UFOロボ グレンダイザー

はじめに

1975年(昭和50年)10月5日から1977年(昭和52年)2月27日までフジテレビ系列で毎週日曜日19:00 - 19:30に全74話が放送された「UFOロボ グレンダイザー」を取り上げます。

宇宙円盤大戦争

1975年7月26日に東映まんがまつりで「宇宙円盤大戦争」というアニメ映画が上映されました。この映画の脚本を書いたのは上原正三でした。その内容は次の通りです。ヤーバン帝国に故郷・フリード星を滅ぼされたデューク・フリード王子(声はささきいさお)は敵の追撃を逃れて地球にたどりつき、宇門大介を名乗って平和に暮らしていました。しかし、捜索の魔の手はついに地球にも及び、その身柄引き渡しを要求して地球各地に攻撃の手が伸びてきます。デュークは元の姿に戻れば、もう宇門大介に戻れない事を承知で地球を護るため、UFOロボ・ガッタイガーに乗り込んでヤーバン軍に立ち向かうのです。さてこの映画、主要な登場人物は牧野牧場を営む娘の牧野ひかる(声は松島みのり)や弟の吾郎(声は清水マリ)、デュークを助けた宇門源蔵(声は久保保夫)と「UFOロボ グレンダイザー」に似ています。この映画は「UFOロボ グレンダイザー」のパイロット版に当たるのです。この映画の主題歌「戦え! 宇宙の王者」は「UFOロボ グレンダイザー」のエンディング「宇宙の王者グレンダイザー」に歌詞を変えて流用されました。音楽担当は菊池俊輔で彼も「UFOロボ グレンダイザー」をそのまま担当しています。この映画自体も「UFOロボ グレンダイザー」第72話「はるかなる故里の星」としてリメイクされました。ただし脚本は馬嶋満の担当です。

UFOロボ グレンダイザー

番組前半

さて「UFOロボ グレンダイザー」は「宇宙円盤大戦争」の設定を活かして「グレートマジンガー」の後番組として制作が始まりました。この頃、東映動画の制作体制が変更され、「グレートマジンガー」のスタッフは「鋼鉄ジーグ」へと異動となり、「UFOロボ グレンダイザー」の制作はそれまで「ゲッターロボ」や「ゲッターロボG」を制作したスタッフが行なうこととなりました。なので上原正三菊池俊輔などが「UFOロボ グレンダイザー」も担当することになったのです。というわけで作風は「ゲッターロボ」に近いものとなりました。ただフジテレビの要望により、「UFOロボ グレンダイザー」には「マジンガーZ」の主人公兜甲児も登場することになりました。これについて上原はやりにくかったことを述べています。前半の兜甲児は「マジンガーZ」当時同様の単細胞で、自身が開発したTFOという円盤で円盤獣と戦っていました。ですが、戦力から考えても所詮はボスボロット以下の雑魚キャラでしかなく、ボスや弓さやか以上に役立っていませんでした。見ていた私は兜甲児がマジンガーZに乗ってたことは当然覚えていたのでなんだか中途半端な感じがするなあと思ったものです。その不満は中盤、ダブルスペイザーやドリルスペイザーの登場で解消されることになります。操縦者が兜甲児になったからです。

さて「ゲッターロボ」や「ゲッターロボG」のような作風は敵のベガ星連合軍の構成に顕著に現れてます。「ゲッターロボ」では恐竜帝国のキャプテンがメカザウルスを操縦し、彼らとゲッターチームとの攻防も見どころでしたし、「ゲッターロボG」でも百鬼帝国の百鬼百人衆が戦闘ロボを操縦していました。ベガ星連合軍も各コマンダーが円盤獣やベガ獣を操縦していました。コマンダーはベガ星に占領された星からやって来た者がおり、デューク・フリード(声は富山敬)の幼馴染や知り合いも登場しました。彼らとの人間ドラマも「UFOロボ グレンダイザー」の見所でもありました。これは「ゲッターロボ」と「ゲッターロボG」でも培われた作劇です。ただ本放送当時、私は小学校低学年でしたので、正直申し上げて、グレンダイザーと円盤獣やベガ獣との戦いの方にしか目が行っていませんでした。

マジンガーZ」「グレートマジンガー」にはボスが登場しましたが、実は「UFOロボ グレンダイザー」にボスは2回ゲスト出演しています。第14話と第31話です。ただ脚本を書いたのは両方とも藤川桂介で彼は「マジンガーZ」と「グレートマジンガー」の脚本を多数書いています。当然、ボスボロットに乗って兜甲児を訪ねて来ており、第31話ではグレンダイザーが使用するスペイザーを真似たボススペイザーを製作したり、TFOを失った兜甲児にボスボロットを貸したりしていました。この友情にはデューク・フリードも感心し、兜甲児に「甲児君は羨ましいな、あんな良い友達を持って」と語っています。

デューク・フリードはフリード星の王子様ですから、兜甲児よりは思慮深い性格となっていました。兜甲児が単細胞で暴走しやすいところがあったのですが、デュークは落ち着いた性格になってバランスをとっています。今にして思えば、兜甲児の登場がいい方向に作用していたのかもしれません。

さてヒロインはシラカバ牧場の娘牧葉ひかる(声は川島千代子)です。彼は兜甲児からも好意を寄せられていましたが、それには気づかず、宇門大介に好意を寄せていました。前半は宇門大介の正体を聞かされていませんでしたが、中盤でそれを知ることになります。彼女の父親が牧葉団兵衛(声は富田耕生)でデュークを保護した宇門源蔵(声は八奈見乗児)と共同でシラカバ牧場を経営していました。キャラクターデザインの元ネタは『あばしり一家』の悪馬尻駄エ門なので「キューティーハニー」に登場するあの人と全く同じ容姿です。彼も当初は大介の素性を知らず、ひかるが大介に好意を寄せるのを苦々しく思っていました。ひかるの弟が吾郎(声は沢田和子)で彼は兜甲児と仲がよく、団兵衛を「父上」と呼んでいるので、これまた「キューティーハニー」に出てくるあの方と似てますね。あと前半はシラカバ牧場の近くの荒野牧場の息子荒野番太(声は緒方賢一)も三枚目として登場し、兜甲児に「四色旗」と呼ばれてからかわれていましたが、この人が出ていたのは高校時代に講談社の本で見るまで忘れ去っていました。

さてデューク・フリードが操縦するロボットがグレンダイザーです。普段は巨大な円盤であるスペイザーと合体しており、グレンダイザーはスペイザーと合体したまま出動し、飛行します。フリード星で作られたので宇宙空間も航行可能です。しかもフリード星の王族しか操縦できないようになっており、デュークが重傷を負ったので代わりに兜甲児が乗り込もうとした時は兜甲児を攻撃して搭乗を断念させています。兵器として開発されたためゲッターロボとは違って武器は豊富です。スペイザーもグレンダイザーも武器を持っています。

対するベガ星連合軍の構成は次の通りです。まずベガ星連合軍の総帥は強星大王ベガ(声は八奈見乗児)です。当初、この人はベガ星にいて月の裏にある前線基地スカルムーンにはいなかったのですが、第52話で消滅したため、スカルムーンにやってきます。次にスカルムーンで指揮をとるのがガンダル司令(声は富田耕生)です。この人は二重人格でレディ・ガンダル(声は沢田和子)が住んでいました。初期は顔が割れてレディ・ガンダルが登場していたのですが、第28話でガンダルが火傷の治療で整形手術を受けた後は顔が完全にスライドして登場するようになりました。その部下がブラッキー隊長(声は第2話以降が緒方賢一、第1話のみ富田耕生)でしたが、力押しの作戦ばかりが目立ち、戦果をあげられず、最終的には第27話で戦死してしまいました。ブラッキー戦死後、第28話からズリル長官(声は後の銀河万丈)が着任しましたが、彼はガンダルとは同格でした。

なお敵が操るのは前半が円盤獣で第52話からベガ獣が登場しました。円盤獣はその名の通り、円盤が変形するものでしたが、ベガ獣は普通のロボットでした。名前は最初のベガ獣キングゴリを除いて全てがギルギル、ガメガメというように二文字の繰り返しになっていました。この命名方式は永井豪の発案でしたが、いずれネーミングに苦しむことが予想されたことから、実兄の泰宇(ダイナミック企画)は当初反対したようです。ですが、最後までこの命名方式が貫かれました。

番組後半

さて先ほど少し触れましたが、グレンダイザーは後半、路線変更がなされます。それは地球製スペイザーの登場です。一番最初に登場したのは第35話に登場した空を飛ぶダブルスペイザーです。これは兜甲児が中心になって開発されました。当初はグレンダイザーと合体する機能はなく、グレンダイザーはダブルスペイザーにつかまって空を飛んでいました。スペイザーを使えばグレンダイザーは空を飛べるのですが、合体に6秒かかったり、胸部や腹部が収納された形になるので一部の武器が使えなくなるという弱点もありました。その解消のために開発されたのがダブルスペイザーです。

次に開発されたのが第41話から登場した海中潜航用のマリンスペイザーです。操縦者に抜擢されたのが牧葉ひかるでした。彼女は第23話で大介の正体を知らされてショックを受けますが、彼を手助けしたいと決心し、ダイザーチームに参加したのです。なお兜甲児は第2話でデュークの正体を知らされています。

3番目に開発されたのが第45話から登場したドリルスペイザーです。これはその名の通り、地中用のスペイザーで当初の操縦者は兜甲児でした。ですが第49話からデューク・フリードの妹マリア・グレース・フリード(声は吉田理保子)が登場し、彼女がメインパイロットになりました。当初は荒野番太をパイロットにする案もあったそうですが、没になり、マリアが登場することになったそうです。後にマリアは兜甲児に好意を抱くようになります。

なので番組後半のオープニングや出撃シーンはグレンダイザーも含めた4機が同時に出動する場面が定番になりました。それに伴って宇門研究所も改築されています。第52話までは円盤獣と戦い、第52話からはベガ獣と戦うようになりました。なお第52話は円盤獣とベガ獣キングゴリが登場しています。

さてこれはスペイザーと言えるのかどうかは微妙なところですが、ベガ星連合軍が深海に設置した海底基地を攻撃するため第67話で登場したのがウルトラサブマリンです。これは今までのスペイザーとは違ってグレンダイザーが乗り込んで操縦する形をとっており、かなり巨大です。マリンスペイザーの潜行限界深度は400メートルでしたが、ウルトラサブマリンは3000メートルまで潜れます。ズリル長官がこもっていた海底基地を破壊するという戦果をあげています。

最後に登場したのがスカルムーンを攻撃するために開発されたコズモスペシャルスペイザーです。スカルムーンとの攻防戦は第73話と第74話の前後編で描かれていました。グレンダイザーと合体するわけではありませんが、3機に別れており、操縦者は兜甲児、牧葉ひかる、そしてマリアです。

UFOロボ グレンダイザー」は全74話続きました。これは「マジンガーZ」に次ぐ本数です。上原正三は同時期に「秘密戦隊ゴレンジャー」や「がんばれ!!ロボコン」や「大空魔竜ガイキング」なども書いていた関係で全21話程度の本数に止まっていますが、初回やブラッキー戦死、ベガ獣初登場の話など重要な話を書いています。途中から田村多津夫や馬嶋満の書く本数が増えますが、第67話までを上原は書いたのでした。

adventar.org

(番外編)上原正三、一般ドラマへの誘い

はじめに

今まで上原正三が子供向け番組で活躍してきた様子を書いてきましたが、実は大人向けの一般ドラマへ誘われたことがありました。少なくとも2回あります。2回目があったのは本当につい最近知りました。この記事ではそのことについて書きましょう。

東芝日曜劇場への誘い

上原正三市川森一と仲が良かったことは今まで何度も書いてきました。「快獣ブースカ」で出会い、以後、「ウルトラセブン」、「怪奇大作戦」、「恐怖劇場アンバランス」、「仮面ライダー」(の企画)、「帰ってきたウルトラマン」、「シルバー仮面」、そして「ウルトラマンA」で一緒に仕事をしています。「ウルトラマンA」が終わった後、市川は同じアパートに住んでいた萩原健一の紹介で「太陽にほえろ!」に参加し、以後はずっと大人向けの一般ドラマを書いていました。その市川はある時、上原正三東芝日曜劇場へ参加しないかと言ってきたことがありました。私がこの話を知ったのは切通理作が編集に加わっていた『夢回路 魔法・怪獣・怪奇・ウルトラマン・青春・犯罪』(1989年、柿の葉会)という市川森一の脚本集に収録されていた上原へのインタビューを読んだのが初めてです。ウルトラマン屈指の異色作 沖縄出身脚本家・上原正三さんが挑んだタブー | 沖縄タイムス+プラス ニュース | 沖縄タイムス+プラス から引用しましょう。

■心の中に謝名親方がいる
 ―子ども番組ではなく、大人のドラマを書こうとは思わなかったのか。

 「ある時、市川森一が『子ども番組を卒業し、東芝日曜劇場を書かないか』と言ってきたんだ。なら、沖縄戦を描いた『収骨』ができるのか。絶対にできないわけだよ。かと言って、ヤマトの人の暮らしぶりを琉球人の自分が書いても、ろくな作品はできない。それよりも、自分を必要としてくれる子ども番組で頑張ろうと決めた。『秘密戦隊ゴレンジャー』(75年4月~77年3月)などは当初、プロデューサーが不安がっていたわけだよ。絶対にヒットするからと説き伏せた結果、今も続く戦隊ヒーロー物の先駆けになった」

 ―沖縄と日本の関係について、どう考えるか。

 「独立も含めて一度関係をリセットし、どうするかを真剣に考える時期が来ている。薩摩侵攻で、琉球王国を占拠した400年前の強引さが今も続く。民意を顧みず、基地を押し付ける政府の態度は沖縄を植民地としてしか見ていない証拠だ。これが差別なんだ」

 「薩摩侵攻の時に捕らえられ、2年間幽閉されても薩摩への忠誠を拒否したため、処刑された謝名親方(琉球王国の大臣)が僕の先祖。18歳の時、琉球人の誇りを持って東京に来てから60年、僕の心の中にはいつも謝名がいる」

そう。上原は市川の誘いを断ったのです。上原は1970年10月3日から同年12月26日までフジテレビ系列で放送されていた「紅い稲妻」というドラマで琉球空手の手解きを得た少女・松村奈美を主役にし、行方不明になった父親を探すために船で当時は本土復帰前だった沖縄から密航・不法入国させる話を書き、挫折したという過去があります。私はこのドラマを全く見ていないので推測に過ぎませんが、この苦い経験も背景にあったのではないかと思います。また既に書いた通り、円谷一に一般ドラマで沖縄問題を取り上げるのは難しいと言われていたのも影響していたのでしょう。

ただ市川自身は以後も上原や金城には友情を感じていました。それは上原も同様です。「知ってるつもり」という日本テレビ系列で放送されていた番組で金城哲夫が取り上げられた時は市川森一藤本義一とともにゲスト出演し、金城の話をしています。また後に1993年にはNHKで放送された「私が愛したウルトラセブン」の脚本を書いています。このドラマは虚実織り込まれていた物ですが、円谷プロの作品を書いたことを大切にしていたこともうかがえます。橋本洋二とはテーマ主義をめぐって対立しましたが、それも彼には良い思い出だったのです。なお橋本も「夢回路」などで市川に対してコメントを寄せています。

必殺シリーズへの誘い

さて一般ドラマへの誘いはもう一つありました。それは必殺シリーズへの参加の誘いです。「それゆけ!レッドビッキーズ」が朝日放送の希望で放送が延長されたことには既に触れましたが、朝日放送のプロデューサーは辰野悦央でした。1982年3月28日に「それゆけ!レッドビッキーズ」は放送が終わりましたが、辰野は1982年10月8日から放送が始まる「必殺仕事人III」から、前作「新・必殺仕舞人」までの仲川利久に代わって、必殺シリーズのプロデューサーになりました。その関係もあって辰野は上原にも声をかけたのです。ただ残念ながらこれも実現しませんでした。時期も流れた理由もわかりませんが、私は上原が他の番組の関係で多忙だったことが理由として挙げられるのではないかと思います。

news.mynavi.jp

ただ私は実現したら面白かったのではないかなあと思います。辰野が担当する前のいわゆる前期必殺シリーズには琉球出身の棺桶の錠が「必殺仕置人」で登場します。琉球出身という設定がうまくいかされた話はなかったのですが、必殺シリーズのような時代劇なら沖縄問題を盛り込んだ話を描けたのではないかなあと思います。

余談ですが、必殺シリーズの前番組の「君たちは魚だ」や「お荷物小荷物」では佐々木守が脚本を書いており、その関係で「必殺仕置人」の脚本に佐々木守を参加させることをプロデューサーの山内久司は考えていたそうです。佐々木の作風も緩急自在でしたから、実現していたら面白い話が生まれたのではないかなあと思います。

adventar.org

がんばれ!レッドビッキーズ・それゆけ! レッドビッキーズ

はじめに

この記事では1978年1月6日から12月29日まで全48話が放送された「がんばれ!レッドビッキーズ」とその続編に当たり、1980年8月29日から1982年3月28日まで全77話が放送された「それゆけ!レッドビッキーズ」を取り上げます。

「ロボット110番」の失敗

「がんばれ!レッドビッキーズ」は「ロボット110番」の後番組です。「ロボット110番」は「がんばれ!!ロボコン」の後番組として始まりましたが、1年間の予定を全うできず、1977年の年内に終わってしまいました。それは「がんばれ!!ロボコン」の後番組だったため、子供達がロボコンよりも物足りないと感じてしまったからでした。これは私自身の実体験からもそう言い切れます。

「ロボット110番」はロボット博士(石ノ森章太郎)の開発したガンちゃん達4体のロボットが、ロボットサービスセンターを結成し、「世のため・人のために活動する」物語です。ロボットサービスセンターは中村家(父を演じたのは工藤堅太郎で母を演じたのは久保田民絵)の庭を借りて事務所を構え、ロボット博士の研究所を建てるための資金を稼いでいるのです。リーダーは経理担当のミスターチーフ(声は八奈見乗児)。主に電話番を務めているのがパールちゃん。しっかりものケイくん(時計がモチーフで声は小原乃梨子)とドジなガンちゃん(声は野沢雅子)が外で働き、最後、ミスターチーフが売り上げを計算します。そして赤字だと判明するとミスターチーフが激怒して「バッテンパーンチ」と叫ぶと赤字を出したロボット(大抵はガンちゃん)に壁からパンチが飛び出てぶん殴られてしまうという流れでした。ごく稀にガンちゃんが黒字を出したことがあったのですが、いつもの癖でミスターチーフが「バッテンパーンチ」と叫んでしまったことがあります。これは本放送で見た記憶が残っています。

ですが、子供達にはさほど受けませんでした。まず一つ言えるのは「赤字」というのがわかりにくかったというのがあげられます。ガンツ先生の採点はテストの点を連想しやすいのですが、赤字というのは少なくとも私にはピンときませんでした。次に劇中で登場するロボットの数がロボコンと比べて極端に少なくなっています。ミスターチーフはガンツ先生のようなもの、パールちゃんはロビンちゃんのようなものだとしても他にはガンちゃんを除くと1体しか登場しません。「がんばれ!!ロボコン」の三期生はロボチャンを除いても6体いましたから明らかに数が減っています。あとロボコンは「ゴキブリこわい」という弱点があり、大暴れして周囲を破壊しまくるのも見どころでしたが、ガンちゃんの弱点は電話などのベルの音を聞くとお腹の蓋が開いてしまういうもので、ロボコンの弱点と比べるとさほど面白くはなかったです。なので私はいつしか「ロボット110番」を見なくなってしまいました。その関係で後述する番組も見ておらず、大人になってからファミリー劇場での再放送で見たのです。

がんばれ!レッドビッキーズ

というわけで「ロボット110番」の終了が早まったため、急遽制作が始まったのが「がんばれ!レッドビッキーズ」でした。ただ「柔道一直線」が始まった時とは違って企画はある程度進んでいました。また「柔道一直線」とは違って特訓が中心となったスポ根ドラマではなく、女子高生の女監督と少年少女達チームメイトやライバルチームとの交流が中心となった、ほのぼのとしたドラマでした。さて放送直前、『がんばれ!ベアーズ』(原題:The Bad News Bears)というアメリカ映画が1976年に公開されていました。この映画は弱小の少年野球チームを描いたものでした。私はレッドビッキーズの企画にはこの映画が影響しているのではないかと思います。それくらい、ヒットしていたのです。さてレッドビッキーズという名前は、女監督だから「赤」ということと、柳に飛びつくカエルを見た小野道風の逸話、そして石ノ森章太郎の故郷ではカエルをビッキと呼ぶことなどが元で名付けられました。柳の葉に飛びつこうと一生懸命跳ねる赤蛙達の姿をこの番組では描いていたのです。

物語は冒頭、野球部のマネージャーを務めていた江咲令子(林寛子)が女性なのでベンチ入りさえできないことに憤慨して野球部をやめてしまうところから始まります。その帰り道、令子は令子の母(高田敏江)が営むブティックの近所で長山庵という蕎麦屋をやっている長山茂造(深江章喜)が息子の長山茂雄(鈴木雅之)に野球を指導しているところに出くわします。それを見るうちに令子は子供達を集めて自分が野球チームを作り、監督となることを思いつき、茂造に話を持ちかけます。こうして茂造がオーナーとなり、選手を集めてレッドビッキーズが結成されました。令子はこれで連戦連勝だと甘い夢を見るのですが、実際はというと、初戦は1アウトも取れずに30点を取られて、1回コールド負けという惨憺たる結果に終わってしまいました。以後、令子はこの弱小チームを率いて行きますが、第2話から加入した石黒正人(日吉としやす)と彼の先輩の荒川尭の指導もあってチームの戦力は徐々にではありますが向上して行きます。途中加入したサウスポーのジュリ(高橋直子)とホームラン太郎(平山公彦)も戦力向上に貢献し、レッドビッキーズは最終話でリトルリーグの優勝チームになって終わるのです。ただ特に初めの頃は連戦連敗で相手チームから「ビッキー、ビッキー、赤蛙。車に轢かれてヒキガエル」とはやされるのがお約束でした。なお令子は野球好きで理論には精通していますが、ノックができないという弱点がありました。

チームのメンバーは当時の名子役が多数起用されています。途中からキャプテンに就任し、キャッチャーを守ったジュクこと野川信一を演じたのは増田康好、エースのノミさんを演じた古見則彦、チームの主砲のカリカリを演じた古川聡、主にショートを守った野球センス抜群の少女ナッツを演じた佐久間真由美、その兄のブラザーを演じた江村和紀など挙げていくとキリがありません。芸達者だったこともあったのでしょうが脚本も巧みで各人は長所もあれば短所もありました。例えばチーム最年少のトータス(加藤森士)はいつもミドリガメを持ち歩いており、トータスと呼んで可愛がっています。口癖もトータスが絡んだものが多いです。でエンディングではトータスに夢中でボールが飛んできても追わない場面が描かれています。彼がなぜそんなにトータスを可愛がるのかというと、それは亡くなった母に買ってもらったものだからです。彼は自動車修理工をしている父親(古川ロック)に可愛がられていました。また補欠のペロペロ(高柳裕之)はいつもペロペロキャンディーを舐めているおっとりとした太った少年ですが、亡くなった彼の父は柔道家で彼も柔道を得意としていました。そのため、バットに球が当たればホームランになりますし、負傷したジュクに代わってキャッチャーを守った時は柔道を応用して見事ランナーをブロックすることに成功しています。なおチームのメンバーにはあだ名がついており、皆、あだ名で呼び合っていました。

印象的な演出として石ノ森章太郎が描いた止め絵が何度も挿入され、登場人物の心情を表現していたのが挙げられます。これは次作でも踏襲されます。

またライバルも色々な人が出ていました。監督だけでも畠山麦奥田瑛二成川哲夫などが出ています。一番のライバルは同じ女性が監督だったビューティースターズでしょう。エースの小杉百合香(神亜子)はユリカボールを投げました。後にノミさんはジュクの協力でユリカボールを投げられるようになり、また小杉百合香とも仲良くなりました。余談ですが神亜子は増田や江村も出演していた「5年3組魔法組」では実質的主役と言ってもいいショースケを演じています。「5年3組魔法組」も人気番組で、これを見た子供達は皆、5年3組になることに憧れていました。残念ながら私は5年3組にはなれませんでしたが。

こうしてみると、劣等生の成長物語というのは「がんばれ!!ロボコン」と共通していたのだなあ、と思います。上原正三は半分強の27話を書いています。

レッドビッキーズの面々は今も交流があるそうで、少なくともファミリー劇場で再放送が行なわれていた頃はシゲこと長山茂雄を演じた鈴木雅之さんが幹事となって同窓会を開いています。DVDボックスが発売された時は当時の選手を演じた人が大挙集まって特別編が収録されていますが、それも鈴木さんの手腕があったからです。ただ全員集合したわけではなくて何人かは連絡が取れていない状態なのだそうです。40年以上前に制作されたドラマですから、仕方がないのかもしれませんね。

それゆけ! レッドビッキーズ

「がんばれ!レッドビッキーズ」が好評だったため次の作品もスポーツものになりました。ただ野球を題材にしたものではなく、バレーボールをテーマにした「燃えろアタック」でスポーツものの定番である、主人公の成長を中心に据えたものとなりました。当時はモスクワオリンピックを控えていたため、主人公はオリンピックの選手に選抜されて終わります。ただし、現実の世界では日本はモスクワオリンピックの出場をボイコットしていますが。

「燃えろアタック」の後番組が「それゆけ!レッドビッキーズ」でした。「がんばれ!レッドビッキーズ」の続編で前のレッドビッキーズのメンバーだったジュクこと野川信一その人がレギュラー出演しています。その他、前作でもレギュラーだった人が多数出演していますが、いずれも別人役です。

物語はこんな感じで始まります。子供達が野球を始め、選手募集のポスターを貼ります。それを見た野川信一が協力を申し出て「女監督はいいぞ」「シャボンの匂いがするんだ」と子供達に言います。子供達は小倉から音楽の勉強のために上京した星野ゆかり(斉藤とも子)に監督になってくれと頼み込みます。ゆかりは野球の経験がないので初めは断っていましたが、子供達の熱意にまけて一度限りという約束で監督を引き受けました。こうして試合が始まりますが、試合を通してゆかりは、子供達の中に音楽があることに気づき、以後も監督を続けることにしたのです。

この作品でも選手は当時の名子役が集められ、あだ名で呼ばれています。キャプテンのトロケンを演じた福田信義さんは「がんばれ!!ロボコン」で「まここ」こと大山まことを演じていた人です。ほぼ同時期の「仮面ライダー」(スカイライダーが出る方)にはボンゴ役で出演していますし、「5年3組魔法組」ではショースケの弟のユタカを演じていました。ただ作風は若干捻りが加えられています。ジュクは優等生でしたが、トロケンはガキ大将タイプでした。なので悪戯好きで終盤になると「悪巧み」を思いついては実行し、騒動を起こしていました。野球だけではなく、子供達が起こす騒動も番組の中心になっていたのです。他の登場人物絡みでも、エキシャは可愛い女の子に惚れるものの、その子はチームの他のメンバー(エースのミルクやトロケン)を好きになってしまうという話が2回も描かれました。なお2つ目の方は第59話「100パーセント片思い」(脚本:上原正三、監督:奥中惇夫)で劇中でトロケン達が「ハイスクールララバイ」を歌っています。かなり悪ノリしてますねえ。

もちろん野球にも力が入っています。第21話で前のレッドビッキーズのメンバーノミさんがゆかりに肘を痛めた時の話(「がんばれ! レッドビッキーズ」第26話「熱球をわが胸に」)をしたり、第40話ではシゲが登場して皆を指導しています。第51話ではレッドビッキーズの全国大会出場が決まり、トロケンの父小沢金平(小鹿番)が営む寿司屋が所属する町内会の会長(近藤宏)が大喜びしたりしています。

さて「それゆけ!レッドビッキーズ」では特筆すべきことがあと2つあります。その1つが監督交代劇です。第25話でゆかりは歌を作り、コンクールに優勝。その副賞として外国留学がついていました。ゆかりは悩んだ挙句、時を同じくして兄が出た体育大学を受験するために上京していた高原樹理(山田由紀子)にチームを託し、第26話で旅立ったのでした。なお樹里は器械体操が得意な少女でセオリーのいとこです。セオリーの母親が樹里の父親の妹でした。樹里はポパイというあだ名がつけられていました。交代直後はメンバーと軋轢が起きたのですが、すぐに仲良くなりました。またトロケンの父金平は樹里の指導に疑問を抱き、ついには自分がレッドビッキーズのメンバーの父兄を集めてオヤジチームを結成して対決したこともありました。やはりコメディーに力を入れていたのですね、当時のスタッフは。なお対戦結果はスタミナのなさを樹里に突かれてしまい、疲れ果てて白旗を挙げて判定負けと相成りました。この交代劇は斉藤とも子さんのスケジュールの都合だそうです。斉藤さんの所属する事務所の意向で契約が延長されなかったのです。

また「それゆけ!レッドビッキーズ」は当初は1年間の予定だったのですが、系列局の朝日放送の要望でさらに延長されることになり、当時朝日放送の制作枠だった毎週日曜19:00 - 19:30の枠に映って半年間放送が延長されました。朝日放送側のプロデューサーは辰野悦央でした。なお、上原正三は全77話中52話を書いています、私が数え間違えていなければ。毎週日曜日に移ってからは半年での放送にとどまり、後継作は作られませんでしたが、それでも全77話も放送されたのはすごいことだと思います。

adventar.org

ジャッカー電撃隊

はじめに

1977年4月9日から12月24日まで、テレビ朝日系列で毎週土曜19:30 - 20:00に全35話が放送された「ジャッカー電撃隊」を取り上げます。

制作までの流れ

秘密戦隊ゴレンジャー」は2年間も放送されました。これはスーパー戦隊史上最長で、これを破る作品は登場しないと私は思います。ですが、流石に2年間も続くと綻びが生じ、出演者のスケジュール調整も大変になりました。また新たなマーチャンダイジング展開(おもちゃの販売など)や番組の長期化によるマンネリ化対策として新たな作品が制作されることになったのです。今思えばバリブルーンを失ってバリドリーンやバリタンクが登場したのも、新たにオモチャを売り出すという狙いがあったのでしょう。

こうして新番組の企画が立てられました。Wikipediaでは次の通りとなっています。

前作の大きな特徴である色分けされたグループヒーローという要素は継承しつつ、前作との差別化として人数をトランプをモチーフとした4人に変更。また、娯楽性の強まっていった前作へのアンチテーゼも込めて、企画書ではドラマ性とメカニックを重視した作風とすることが強調されている。ドラマ性については、前作序盤で追求しきれなかったスパイアクション要素を発展させ、よりリアルな犯罪捜査を描き、さらに主人公側の人間像を描写することでアクション面以外で視聴者を惹きつけることを意図していた。

カニック要素としては、サイボーグという設定が導入されたほか、当時のスーパーカーブームを反映してメカデザインに取り入れている。第7話と第14話では実在のスーパーカーを登場させている。

企画段階のネーミングとして『科学特捜隊ボーグハンター(科学防衛隊ボーグハンター)』および『電撃戦グロスボンガー』が挙げられていた。「ジャッカー電撃隊」の名称は、トランプのイメージを強調するため「J・A・K・Q」から命名された。

ドラマ性を高めるというのはより高い年齢の人向けにしようという狙いもあったのでしょう。2年間続いたということはそれを見ていた子供達もそれなりに歳をとります。私はゴレンジャーの放送開始時は幼稚園に通っていましたが、「ジャッカー電撃隊」が放送された頃は小学校2年生でした。

番組の初期の概要

こうして「ジャッカー電撃隊」の放送が始まりました。初期のレギュラーはジャッカー電撃隊側が5人、敵組織クライムが1人です。

まずジャッカー電撃隊のメンバーを軽く紹介しましょう。スペードエースこと桜井五郎(丹波義隆)は核エネルギーで動くサイボーグです。オリンピック近代5種競技の金メダリストで彼がリーダーになりました。当初はオリンピックへの夢を大事にしたいという理由から、電撃隊加入を当初は拒否していましたが、後述する理由で考えが変わり、ジャッカーに加わりました。桜井五郎の姿のままでも中性子スコープという透視技が使えます。スペードエースの顔は赤地でスペードのマークが描かれています。武器はスペードアーツで鞭になったり弓になったりします。ゴレンジャーではアイマスクを変形させて武器にしていたのですが、ジャッカーが自分の武器をどうやって出していたのかは、そう言われてみれば覚えておりません。スペードマシーンという自動車を使っています。

二人目がダイヤジャックこと東竜(伊東平山こと後の吾羽七朗)は電気エネルギーで動くサイボーグです。元はプロボクサーでしたが八百長試合を強要されてボクサーをやめ、ハスラーをしていたところ、殺人事件に巻き込まれて逮捕されて日本に護送され、今の羽田空港で鯨井に出迎えられ、ジャッカーに勧誘されました。東竜の姿でも手からノコギリを出して使えるほか、電気エネルギーを使って透視もでき、ポーカーをする時は相手の手札を見ていました。ダイヤジャックの顔は白地に青いダイヤが描かれています。武器はダイヤソードという剣です。彼はマッハダイヤというフォーミュラーマシンに乗っており、この車も電気エネルギーで動きます。マッハダイヤは自動車レースのF2マシンを改造して作られており、撮影前は調整が大変だったそうです。なのでよく故障して撮影には苦労したそうです。

三人目はハートクイーンことカレン水木(ミッチー・ラブ)。彼女は元々はアメリカの刑事でクライムの犯罪を追っていましたが、クライムの策略で父ともども事故に巻き込まれ、父を失います。その事故現場に桜井が居合わせ、桜井はカレンを救出しますが、彼女は両腕を失うという重傷を負っていました。病室にやってきた鯨井に懇願し、磁力で動くサイボーグとなりました。武器はハートキュートというQの字をあしらった刃がついた盾(だそうですが、防御には向いていないと思います)を使い、磁力パワーを駆使してクライムの戦闘員クライマーを翻弄しました。そして桜井に命を救われたことがきっかけで桜井を愛するようになっていきます。彼女はハートバギーという車に乗ります。

四人目はクローバーキングこと大地文太(風戸佑介)。彼は元々は鯨井大介の弟子にあたる海洋学者でした。ある時、潜水艦などで海に潜って海洋調査をしていたのですが、酸欠事故で窒息死してしまいました。なので否応なくサイボーグ手術を受けて重力エネルギーで動くサイボーグとなりました。当初は寡黙な性格で他の3人にも敬語を使っていたのですが、第4話からはひょうきんな性格に変わり(というよりは変えられ)、他のメンバーを呼び捨てで呼ぶようになりました。また第4話では5年前に両親と幼い妹・奈美を飛行機事故で喪った過去が語られており、事件で知り合った少女の事故死に妹の面影を重ね合わせて事件解決に躍起になっていました。ひょうきんな性格になった理由は明白で、「ジャッカー電撃隊」には大岩大太のような愛すべき三枚目がいなかったからでしょう。武器は右手を変形させたクラブメガトンパンチ。そのまま殴ったり、電人ザボーガーのチェーンパンチのように右手を飛ばしたり、振り回したりしていました。他には自分が持つ重力エネルギーを使ってクライマーを押しつぶすキング重力プレスも得意技です。彼はオートクローバーというオートバイに乗っていました。

以上の4人を率いるのが鯨井大介ことジョーカー(田中浩)です。彼はサイボーグ手術の権威で4人のサイボーグ手術を自ら執刀しています。当初は彼が指揮をとっていました。現場に出ることは滅多にないのですが、なぜか第22話ではクライマーに変装して軽妙な演技をしておりました。彼は江戸川権八総司令のような世を忍ぶ仮の姿は持っておらず、あくまでも国際科学特捜隊の日本支部の長官として活動しておりました。

ジャッカーが操るマシンは他にスカイエースと呼ばれる飛行要塞とジャックタンクと呼ばれる特殊装甲車がありました。名前にある通り、スカイエースのメインパイロットは桜井でジャックタンクの主な操縦者は東でした。さて面白いことに東はダイヤジャックの姿でジャックタンクを操縦したことは皆無です。Wikipediaにそう書かれていたので「本当かなあ」と思って東映チャンネルで再放送された時にチェックしたのですが、確かにそうでした。また両マシンとも変身するのに使用する強化カプセルを積めますが、スカイエースからスカイコンテナをおろし、その中に積まれている強化カプセルを使っていた回数が多かったように思います。SF性を高めたのでしょう。

さて強化カプセルというのは変身に使うカプセルです。桜井達4人はこのカプセルに入り、エネルギーを充填されて変身していたのです。ゴレンジャーだとその場で「ゴー!」と叫んでくるっと回ると即座に変身できましたが、ジャッカーはそうではなかったのです。なので潜入捜査を行なっている時は後から仲間が現場に駆けつけてジャッカーの姿で登場し、例えば「エース、チェンジしろ」と言うのが定番でした。

対するクライムの方は大幹部が石橋雅史演じる鉄の爪(アイアンクロー)です。この人は右手が鋼鉄製の義手になっており、部下を処刑する時にこの義手を飛ばして倒しておりました。それが名前の由来です。普段は要塞島という孤島にあるアジトの中にいるのですが、まれに前線に出動したことがありました。「クライムに失敗は許されない」が唯一の掟です。

当初、クライムはクライムボスと呼ばれる幹部が機械怪物と呼ばれるロボットを率いて暗躍していました。他にクライムはデビルシャークという戦闘機やクライム装甲車を使って活動していました。

さてジャッカーの必殺技はジャッカーコバックというものでした。これはまず機械怪物を4人で敵の周りを取り囲み、頭部を密着させて、原子・電気・重力・磁力の4つのエネルギーを足から送り込み、空中に蹴り上げ、爆破させる、という技でした。

視聴率低迷

ところが、番組は子供達には受けず、視聴率は低迷しました。これにはいくつか理由が挙げられるでしょう。「ジャッカー電撃隊」という番組単独だったら上記のようなものでもよかったのかもしれませんが、「秘密戦隊ゴレンジャー」のような緩急自在の番組の後だと言うのが最大の不幸で、ゴレンジャーを見ていた子供達は物足りなさや難解さを覚えてしまったのです。これは実体験として言い切れます。まず暗い話が多すぎました。例として第12話「10ピラミッド!! 黄金仮面の迷路」(脚本:上原正三、監督:奥中惇夫)を挙げましょう。クライムに捕まった桜井は拷問を受け、さらに自白剤をうたれてしまい、ツタンカーメンの黄金のマスクのありかを吐くように強制されます。桜井は自分の記憶自身を喪失することによって秘密を守ることを考え、実行します。そのため、救出された時は廃人同様の状態になっていました。カレンは第1話で自分が逢った事件を再現し、それにより、桜井は記憶を取り戻し、回復するのです。「秘密戦隊ゴレンジャー」でもこういう話はありましたが、大岩大太のカレー好きやなぞなぞやマスターの軽妙なやり取りでその暗い場面を中和してバランスをとっていました。先述したとおり、「ジャッカー電撃隊」ではそういった場面は少なかったので、ただ暗いイメージが残りました。

またいちいち強化カプセルを使わないと変身できないというのも大きな制約になりました。そのため展開がどうしてもまどろっこしくなってしまったのは否めません。ゴレンジャーなら「ゴー!」と叫んでクルッと回ったりジャンプすれば即座に変身できましたが、ジャッカーではそうは行きません。そのため、序盤や中盤でジャッカーが変身した姿で登場することは皆無に近く、終盤に登場するのが実に多かったです。これも物足りなさを感じたことは間違いありません。

さらに必殺技はゴレンジャーストームやゴレンジャーハリケーンに比べると地味でした。全員が協力して放つという設定は受け継がれていたのですが、色々なものに変形していたゴレンジャーハリケーンの後というのが不幸でした。

そして最大の要因は強力な裏番組「クイズダービー」の存在です。「秘密戦隊ゴレンジャー」が始まった頃、TBSは毎週土曜日19:30 - 20:00には大橋巨泉司会の「お笑い頭の体操」を放送していました。「仮面ライダー」や「秘密戦隊ゴレンジャー」の企画が必要となった強敵でした。しかし「秘密戦隊ゴレンジャー」が放送された頃はマンネリ化していたこともあったのか、視聴率は低迷するようになり、「秘密戦隊ゴレンジャー」放送中の1976年1月6日からは「クイズダービー」に変わりました。「ジャッカー電撃隊」放送時には既にはらたいら竹下景子がレギュラーになっていましたが、私ははらたいらの前任者の黒鉄ヒロシが3枠に座っていたのを見た記憶もあります。以後、1992年12月19日まで放送が続く長寿番組となりました。「ジャッカー電撃隊」に物足りなさを感じた子供達はこの番組に流れてしまったのです。私も「ジャッカー電撃隊」をいつしか見なくなってしまいました。その流れで「ジャッカー電撃隊」の後番組である「透明ドリちゃん」などはほとんど本放送では見ていません。

ビッグワン

というわけで視聴率強化策がこうじられることになりました。石森プロは、クライムの背後にいた悪の未来人「エムペリアン」を追って来た未来人「ペイジワン」が、ジャッカーとともにタイムマシンで時間移動して悪の陰謀を砕くという案「タイムファイターの謎」を提案しました。トランプから連想したのでしょうが、これは今までの世界観とは大きく異なるため、採用されませんでした。そこで登場したのが宮内洋演じる行動隊長ビッグワンこと番場壮吉と林家源平演じる姫玉三郎です。

番馬はニューヨーク本部の科学技術長官となった鯨井大介の後任として第23話から登場します。機械怪物よりも強化された侵略ロボットであるアトミック魔女にジャッカーコバックが通じず、ジャッカーは磔にされてしまいました。ジャッカーは謎の白い超人に救われ、本部に戻ったジャッカーは全身真っ白の服と帽子に身を包んだ男が鯨井の席に座っているのを見て驚きます。彼が行動隊長の番場壮吉だったのです。番場はいつも手にステッキを持っていました。また神出鬼没でそれまでのジャッカーとは違って強化カプセルなしで瞬時に変身ができました。なお番場は鯨井より地位は低いらしく重傷を追ったカレンの手術のためにジョーカーが帰国してからはジョーカーの指令を受けて番場は行動しています。

時を同じくして着任したのが松山支部からやってきた姫玉三郎です。彼を演じていたのは初代林家三平の弟子の林家源平愛媛県出身です。なので伊予弁が得意という設定で落語も得意です。よくカレーやラーメンを作っていましたが番場はなぜか玉三郎が作る料理が好物でした。ですがさほど強くはなく、本部を侵略ロボットが襲ってきた時は真っ先に逃げようとする始末です。明らかにギャグメーカーですね。

必殺技もビッグボンバーに代わり、戦い方も若干変化しました。まずジャッカーのメンバーは事件の探索に乗り出します。そして事件の核心に迫りますが、一歩及ばず危機に陥ります。そこへ番場が変装した珍妙な人物が玉三郎を連れて登場。もちろん玉三郎も変装しています。ちなみに第27話「独裁者の野望!! 砕け!死の収容所」(脚本:上原正三、監督:竹本弘一)では番場はクロコダクル総統が尊敬するヒトラーに扮しています。番場と玉三郎は珍妙なやりとりを披露し、侵略ロボットやジャッカーを呆気にとらせた後、隙をついてジャッカーが変身する時間を作ります。その後はジャッカーの4人が今までと同様に侵略ロボットと戦い、追い詰めたところでジャッカーがビッグワンを呼び出します。そしてジャッカーは大砲ビッグボンバーを完成させた後、

ビッグワン「ジャッカー必殺武器ビッグボンバー」

と叫び、砲弾を放つのです。さてビッグボンバーは当初は普通の大砲でしたが、第29話からはゴレンジャーストームやゴレンジャーハリケーン同様、色々なものに変形するようになりました。その内訳は順に、クモの巣攻め、アフリカ象、とうもろこし、ウソつき退治、ビッグアロー、どぶねずみです。これだけではなんだかわからないでしょうが、詳細は映像を見て確認してください。ゴレンジャー以上にシュールなものです。ゴレンジャーに作風を近づけようとしたのでしょう。

ただ上記の強化策が成功したとは言いがたく、視聴率は向上しませんでした。私は小学館が出していた雑誌「テレビくん」でビッグワン登場とビッグボンバー登場を知ってはいたのですが、食指は動かず、本放送では全く見ておりません。上記の流れを正確に把握したのは大人になってから、それもテレ朝チャンネルで再放送したのを見てからです。なのでそれまではビッグワン登場後は5人で侵略ロボットと戦っていたものと思っていました。結局、「ジャッカー電撃隊」は全35話で終了となりました。上原正三はそのうち26話を書いていました。後番組は路線をかなり変更したファンタジー色豊かな「透明ドリちゃん」になりましたが、これも上原がメインシナリオライターを務めています。

奇遇なことに、ほぼ同時期に放送されていた「ロボット110番」も子供達の人気は得られず打ち切られています。それについては別の記事で扱いましょう。

adventar.org