ウルトラマン -帰ってきたウルトラマン Advent Calendar 2021-

はじめに

この記事では「帰ってきたウルトラマン」に登場したウルトラマンについて取り上げます。

名称

企画当初は「ウルトラマン」に登場したウルトラマンが帰ってくるという設定だったのは先述したとおりです。その名残で劇中では一貫してウルトラマンと呼ばれています。

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デザインも当初は初代ウルトラマンに線が追加されただけのもので、実際に第1話の撮影では、その姿で作られたスーツでアーストロンと戦う場面が撮影されています。しかし、商売上の理由もあってデザインが変更され、今の姿になりました。

ウルトラマンA』第14話のナレーション、および劇中での北斗星司とヤプールからはウルトラマンII世(ウルトラマンにせい)、『ウルトラマンタロウ』や『ウルトラマンレオ』のナレーションでは新ウルトラマンを略した新マン(しんマン)と呼ばれています。私は新マンと呼んでいました。

しかし、1984年に公開された映画『ウルトラマンZOFFY ウルトラの戦士VS大怪獣軍団』の公開に先立ち、ウルトラファミリー紹介時に各々に固有名詞の必要が生じました。この時、当時の円谷プロ社長・円谷皐によってウルトラマンジャックという正式名称が設定されました。なおウルトラマンジャックは元々はウルトラマンタロウ企画時に没になった名前でした。私は『ウルトラマンZOFFY ウルトラの戦士VS大怪獣軍団』を見て、あの「帰ってきたウルトラマン」に登場したウルトラマンが新マンではなく「ウルトラマンジャック」と呼ばれるのに違和感を覚えたのをよく覚えています。なので未だに新マンと呼んでしまいます。郷秀樹を演じた団時朗も「ウルトラマンジャック」という呼び名には違和感があるそうです。劇中でそう呼んだことはありませんからね、制作当時は。

変身方法

さて企画時は「ウルトラマン」に登場したウルトラマンが登場する予定だったので、変身方法もベータカプセルを使って変身する予定だったのですが、別人の設定だったのでそうではなくなりました。

さて変身方法ですが、郷が生命の危機に陥ったときに自然に変身することが多いです。郷の頭上に十字状の光が降ってくると、それに呼応するように郷が右手または両手を斜め上に挙げ、変身するというパターンが基本でした。これは第1話から見られますね。これは郷秀樹としてギリギリまで努力しなければならない、というウルトラマンの意志のようなものがあったからなのでしょう。第2話で慢心した郷秀樹が「よーし、ウルトラマンになってやる。」と叫んで右手を挙げても変身できなかったが印象的で、この話のテーマでもあります。

さて郷秀樹の成長に伴い、中盤以降は郷の意思による変身も多く見られるようになりました。これは郷が危機に陥るという描写を挟まなくてはならないので煩雑になるという作劇上の理由もあったのでしょう。意識的に変身する場合は右手を高く掲げることが多いです。私には第28話「ウルトラ特攻大作戦」(脚本:実相寺昭雄、監督:山際永三、特殊技術:佐川和夫)での変身が印象的です。

郷秀樹との関係

さてウルトラマンと郷秀樹との関係について書きましょう。当初は明らかに郷秀樹とウルトラマンは意識上は別人格として描かれていました。第2話が印象的です。ただ第4話ではキングザウルス3世に角を突き立てられて脚を負傷すると郷秀樹も脚を負傷していたりするなど、肉体は一体化していたことが明らかになっています。第22話では変身前に郷が腕を負傷したため、ウルトラマンも腕を負傷し、ウルトラブレスレットを使えずに窮地に陥っています。なお、映像では端折られましたが、市川森一が書いた脚本では腕を負傷した後も郷秀樹の姿でしばらく戦っています。

またウルトラマンの意識も郷と一体化されるようになりました。第37話「ウルトラマン 夕陽に死す」(脚本:上原正三、監督:富田義治、特殊技術:大木淳)が印象的ですね。

宇宙電波研究所長(成瀬昌彦)「郷の心は嵐の海のように荒れ狂っている。今なら勝てる。」

この時、郷秀樹は病院の屋上から飛び降りて変身します。ウルトラマンに変身できなかったら、郷秀樹は死んでいたところですが、宇宙電波研究所所長すなわちナックル星人が看破した通り、死んでも構わないと思ったわけです。これでは勝てるわけがありません。でウルトラマンも郷と同じ思いだったようで、こう言っています。

ウルトラマン「やはりそうか。私の技を研究し、私を倒すため訓練されているが、負けない,必ず坂田兄弟の復讐をしてやる。」

しかし健闘虚しく、ウルトラマンは一敗地にまみれることになります。

ウルトラマンの技

帰ってきたウルトラマン」に登場したウルトラマンも「ウルトラマン」に登場した初代ウルトラマン同様、多彩な技を持っています。初代ウルトラマンと同様、スペシウム光線や八つ裂き光輪が使えます。ただ八つ裂き光輪は2回(第3話と第4話)しか使わず、キングザウルス3世に破られてからは一切使わなくなってしまいました。ウルトラブレスレットが切断しまくる武器としても使えることも影響しているのでしょう。

ウルトラマンといえばスペシウム光線です。ウルトラブレスレットをウルトラセブンに授けられてからは決め技としての地位をウルトラブレスレットに明け渡してしまった感がありますが、最終話でゼットンを倒すなど、威力は初代ウルトラマン同様健在です。もっとも、「帰ってきたウルトラマン」で登場したゼットンは(おそらく予算の関係で)開米プロの造形の酷さも相まって、初代ウルトラマンが戦ったゼットンよりも力が劣るという説を唱える人がいるのは否定しません。

またウルトラブレスレット登場後も、宇宙甲虫ノコギリンを倒したウルトラショットなどの技を披露しています。(作劇の理由もあって)郷秀樹同様、心の弱さを度々見せたウルトラマンでしたが、能力自体は初代ウルトラマンに劣るものではなかったのです。

おわりに

この項では「帰ってきたウルトラマン」に登場したウルトラマンについて取り上げました。新マンという名に親しんでしまった私はウルトラマンジャックという公式設定を素直に受け入れる気になかなかなれず、制作が進んでいる「シン・ウルトラマン」という名前にも複雑な思いを抱いてしまいます。円谷皐がビジネス・ライクに名付けた名前というのもありますね、ウルトラマンジャックを受け入れがたい気持ちには。それに「ウルトラマン」ではバルタン星人も初代と2代目(と3代目?)も登場していて初代ウルトラマンという名前に親しんでいたので、別に無理にウルトラマンジャックと名付けなくても良かったんじゃないのと思います。

もっとも、これから再放送を見ていく人には関係のない話ですけどね。